ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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最近感想返しが全然出来てないのが本当に申し訳ないです・・・。


第百十九話 英雄の皆様はお帰りになるようです

おいペロリスト。ペロリストおい。何なの? お前等本当に何なの? 俺の可愛い後輩達が最高の思い出作りの為にやって来た場所になに湧いて出て来てくれてんの? 今回は誰かをペロる為じゃなくてテロの為に現れたらしいが、どっちにせよお前等本当に空気読めないんだな。

 

つーか、さっきからau派au派うるせえよ。アレか? DOCOMO携帯愛用者の俺をdisってんのか? ここにいる連中全員au信者か? それともペロリストはauじゃないと駄目って決まりでもあんのか?

 

何にせよ、お前等は見つけ次第即排除って決めてますんで。さっさと片付けて兵藤君達の所へ行かせてもらうぞ。・・・万が一にでも彼等の中の一人にでも怪我させてみろ。その時はお前等のボスを同じ目に遭わせてやるからな。

 

沸々と湧き上がる怒りそのままに、俺は手近にいたペロリストに殴りかかるのだった。

 

SIDE OUT

 

 

イッセーSIDE

 

「あ、ああ! あがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

思わず耳を塞ぎたくなるような絶叫の声をあげるヘラクレス。その体を包む紅蓮の炎は、未だその勢いを弱める事無くヤツを侵し続けていた。

 

「ったく、不細工なのは見た目だけにしとけっての」

 

地面を転げ回り、必死に火を消そうともがくヘラクレスを、まるでゴミでも見下ろすかのような目で見つめる美女。それは生物へ向ける様な目ではなかった。それに気付いた俺の背筋に冷たいものが走る。

 

「女宝!」

 

「あん?」

 

突然現れた球体が美女を包み込む。今のは曹操の声! 野郎、何をしやがった!?

 

俺が目を向けた先で、曹操の様子が変化していた。神々しい輝きを放つ輪後光を背負い、自らの周囲にボウリングの球くらいの大きさの球体を六つ浮かべていた。アレは・・・まさか、ヤツの禁手か!?

 

「『極夜なる天輪聖王の輝廻槍』・・・まだ未完成だが、ここで使わせてもらうぞ!」

 

やっぱり禁手か! くそ、このタイミングで何をしかけて来る気だ・・・!

 

警戒する俺達だったが、十秒くらい待っても、これといった変化は訪れなかった。俺達の前では、未だヘラクレスが転げまわっている。それを見て表情を崩したのは曹操だった。

 

「何故だ・・・! 女宝の力で、女の異能は封じられるはず・・・! ヘラクレスを包む炎も消えるはずだ・・・!」

 

「異能? お前は呼吸するのに一々特別な力が必要なのか?」

 

自分にとって炎を操る事は呼吸するのと同じ。だから異能封じも意味が無いって事か? め、滅茶苦茶な理論だな。でも、こうして目の前でそれが証明されているのだから納得するしかない。

 

「燃え゛る゛! 俺の゛体が燃え゛て゛い゛ぐ! 誰か゛! 誰がこ゛の゛炎を゛消じでぐれ゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」

 

「だったら、これならどうだ!」

 

グレートレッド召喚の儀式を続けていた魔法使いが魔法陣を出現させ、そこから大量の水が流れ出てヘラクレスを包む。だが、その水の中でヘラクレスは燃えていた。それどころか、洪水レベルで流れる水が瞬く間に蒸発してしまった。

 

「そんなモンでオレの炎が消せるかよ。消したけりゃ、ウルズの泉の水を用意するんだな」

 

「ウルズの泉・・・運命の三姉妹の長女、ウルズを由来とする泉。その泉水は、強力な浄化作用を持っています」

 

美女の言葉に続いてロスヴァイセさんの説明が入る。うおお、聞くだけで滅茶苦茶貴重な物だってわかるぞ。んなもん今からじゃどうやっても用意出来ねえだろ。

 

「~~~~! ~~~~!」

 

「・・・喉も焼けてしまったみたいだね。もう言葉すら絞り出せないようだ」

 

そう呟く木場の声には恐怖が込められていた。さっきまであれほど激しく転がりまくっていたヘラクレスが突如ピタリと動きを止める。助けを求める様に弱々しく伸ばされた手がぱたりと地面に落ちてしまった。・・・と、とうとう死んじまったのか?

 

「やれやれ、やっと耳障りな雑音が消えやがった」

 

スコルがパチンと指を鳴らす。すると、今までどんな方法でも消えなかった炎が一瞬で消えてしまった。そして、地獄という言葉すら生温い正に絶望的な苦しみを味わい続けていたヘラクレスの生死がようやく明らかになった。

 

「あ゛・・・あ゛・・・」

 

・・・結論から言えば、ヘラクレスは生きていた。だが、全身が焼けただれ、手足の一部が炭化しており、生きているのが奇跡と呼べるような状態だった。・・・けど、こんなになるまで苦しむのだったら、いっそ死んでしまった方が楽だったんじゃないだろうか。

 

「ヘラクレス!」

 

曹操達がヘラクレスの元へ駆け寄り、それぞれが持つフェニックスの涙をこれでもかとぶっかける。目を背けたくなるような姿から、辛うじて人間の姿を取り戻したヘラクレスだが、その精神までは回復する事は出来ていなかった。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 熱い! 熱いぃ! 俺の体が燃えていくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

「落ちつけヘラクレス! もう炎は消えた! キミは助かったんだ!」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

もう自分の状態すら認識出来ていないのか、ヘラクレスは獣の様な声で喚きながらジークフリート達の制止すら聞かず暴れ回る。無関係の山田先生を人質にする様な卑劣なヤツに同情する気持ちなんか微塵も無いが、ざまあみろと指差して笑う様な気分にもならなかった。

 

そんなヘラクレスが突如崩れ落ちた。曹操が槍の石突きによる一撃で昏倒させたのだ。周囲にいた英雄派のメンバー達がヘラクレスを抱え、後ろへ下がっていく。

 

「ヘラクレスは撤退させる。ここで彼を失うわけにはいかない」

 

「だが、曹操。あれではもう・・・」

 

半ば諦めたような魔法使いの言葉は最後まで続かなかった。俺でもわかる。ヘラクレスは“壊れた”。もう戦う事なんて出来ないだろう。・・・連中お得意の洗脳で無理矢理戦場に立たせる事は可能かもしれないが、まさか仲間にまでそんな真似はしないだろう。

 

「あの肉塊、しぶとさまでトロール並みかよ。もう少し念入りに燃やしてやればよかったぜ。・・・まあいい、次はそっちの雌だ」

 

「ひっ・・・!?」

 

スコルがグルリと周囲を見渡し、ジャンヌの所で視線を止める。見据えられたジャンヌの顔は青を通り越して紫色の様になっていた。たった今、ヘラクレスの身に起きた事が自分の身にも訪れる。その恐怖、そしてその絶望感は標的となったヤツにしかわからない。

 

「お前からもぽかぽかおねーさんの匂いがする。あの肉塊からもだ。つまり、お前はあの肉塊と同罪ってわけだ」

 

「ま、待って! 違うの! 私は止めようとしたの! だけどヘラクレスが勝手に・・・!」

 

言い訳にもなって無い様な言葉をこれでもかと並べ立てるジャンヌ。だが、そんなものはスコルには一切通じなかった。

 

「お前の御託なんざどうでもいい。オレが同罪って言ったらお前も同罪なんだよ」

 

何を語ろうが、自分の判断が絶対に正しい。社会では絶対に通用しない主張も、力を持つ者が口にすればそれはまかり通ってしまう。何故なら、力づくで周囲を納得させてしまうからだ。もうジャンヌが何を語ろうが、スコルの耳には届かない。ヤツはもうヘラクレスと同じ“罪人”としか見られていないのだから。

 

「ま、待て! 同志ジャンヌをやらせはしないぞ!」

 

「化物め! 我等が相手だ!」

 

ジャンヌへ近寄ろうとするスコルの前に、複数の英雄派のメンバーが立ちはだかった。

 

「止めろ! お前達では相手になら―――」

 

「失せろ」

 

スコルがそう口にする。それだけ、たったそれだけで、スコルの進路を阻もうとした者達が火達磨になった。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「熱い! 熱いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

「はっ、小さきものが何匹集まろうがオレの相手にゃならねえよ。この世界でオレを好きに出来るのは偉大なるものであるボスだけだ」

 

ボスという部分で僅かに頬を上気させるスコル。続いて、独り言にしてはやけに大きな声で語り出した。

 

「ええい、くそ! 早くボスに会いてえ! アーシアの姐さんやぽかぽかおねーさんの膝もいいが、やっぱりボスのが一番だ。今頃ハティやあの雌猫が独占してるかと思うとムカついてしょうがねえ! オヤジはオヤジでちゃっかり自分のスペース確保してやがるし・・・!」

 

な、なんかお冠みたいです。てか、怒るのは勝手ですけど、辺りに炎をまき散らすのは止めてください! いつこっちに飛んで来るかマジで怖いです!

 

「ど、どうしましょう。スコルちゃんがあんなにワイルドな子だったなんて・・・」

 

この状況でそこを気にするのかいアーシアさんや!? ディオドラに攫われてから何か逞しくなってないか!?

 

「アレが本来のスコルなんだろう。リミッターかけた状態で人化すればもう少し大人しくなるとは思うが」

 

そして、こんな時でも分析ですかアザゼル先生。子犬スコルもとい子どもスコルか・・・。なんだろう、ちょっと見てみたいかも。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

その雄叫びは匙のものだった。見上げれば、ドラゴンとなった匙の体から放たれる黒い炎が、蛇の様な動きで九尾の体を完全に拘束していた。

 

―――猛っているな我が分身! いいぞ、その猛りで我の力を制御してみせろ!

 

「言われなくてもやってやらぁ! カッコつけた手前、兵藤達に情けねえ姿は見せらんねえからなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

あらやだ! 匙ちゃんったらいつの間にあんなイケメンに!? それはそうと、今の声ってヴリトラか? 龍王の一角だけあって、声に何とも言えない迫力があるぜ。

 

「しまっ、九尾が!?」

 

「ゲオルク!」

 

「これで・・・よし! 始まるぞ!」

 

魔法使いが叫ぶ。九尾の足下の魔法陣が激しく輝くと同時に、空からバチバチという音が鳴り始めた。まさか・・・本当にグレートレッドを呼び寄せたのか!?

 

「結果的に神喰狼の存在が真龍を呼び寄せるきっかけになったのかもな。・・・こんな状況でなければ素直に喜べるのだが」

 

睨むようにスコルを見つめた後、曹操は空に生まれた裂け目へ目をやる。だが、その表情が不意に曇った。

 

「ッ・・・!? この闘気、グレートレッドじゃない・・・!? まさか、この闘気は・・・!」

 

目を見開く曹操。そして、ついに裂け目から巨大な存在が姿を現した。全長十数メートルほどの細長い体のドラゴン。あれ、グレートレッドじゃないじゃん!

 

「西海龍童、玉龍! そして、やはりあなたか・・・!」

 

玉龍・・・!? え、それって確か五大龍王の!? それにあなたって・・・!?

 

曹操が見つめるのは玉龍の背中。そこには小さな人影が・・・って、落ちて来たぞ!

 

怒涛の急展開にただ着いて行くので精一杯な俺達を前に、その人影は地面にゆっくりと着地した。まるで幼稚園児の様な背丈しかないその人物は、一目で人間ではないとわかった。だって、黒い肌で、体毛が金色で、猿みたいな顔をしている様な人間がいるわけがない。

 

「ようやく来てくれたか」

 

「アザゼル先生、もしかして・・・」

 

「ああ、このじいさんが援軍だよ。闘戦勝仏・・・初代孫悟空だ」

 

「へえ・・・え!?」

 

「久しぶりじゃな聖槍の。前に見た時はこーんなチビだったくせによくもまあそれだけデカくなったもんじゃ」

 

自分の腰辺りへ手をやるその人物・・・初代孫悟空に、曹操は笑みを浮かべて答えた。

 

「そこまで小さかった憶えはありませんし、あなたにだけはチビと呼ばれたくはありませんね、闘戦勝仏殿」

 

「言ってくれるぜぃ。それと・・・そっちのベッピンさんは神喰狼じゃな。まさか、この地で北欧の神殺しに会えるとは思ってなかったぜぃ。しかも、人の姿となっておるとは、流石の儂もビックリじゃ」

 

 

「何者だジジイ?」

 

スコルの視線が孫悟空に移る。その瞬間、ジャンヌは全速力で魔法使いの元へ駆け寄った。

 

「ゲオルク! 早く、早く私をこのフィールドから出して!」

 

「何を・・・?」

 

「いいからお願い! もうこれ以上この場にいたくないの!」

 

「逃がしてあげなよゲオルク。これ以上再起不能者を出したくないし」

 

「自業自得だ・・・と言いたい所だが、あの女性が神喰狼と関係があるなど予想出来るはずが無かったか」

 

ジャンヌの足下に魔法陣が展開する。あの紋様・・・転移するつもりか!

 

「あ、あは、よかった。助か―――」

 

 

ジャンヌが魔法陣の中で安堵の溜息を吐いた次の瞬間―――ヤツの四肢が爆発と共に吹き飛んだ。

 

「ひ、ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?!?!?!?」

 

そして、断末魔ともとれる悲鳴を残し、ジャンヌは姿を消した。その場には本体から分断された手足だけが残されたが、それも炎に包まれ、数秒でこの世から消えてしまうのだった。

 

「間抜けが。タダで帰すと思ったか」

 

ジャンヌから四肢を奪った張本人は、ただそうするのが当然だったかの様な表情でジャンヌが消えていった場所を見つめていた。

 

「くそ、ヘラクレスだけじゃなくジャンヌまで・・・!」

 

「まだフェニックスの涙は残っている。大丈夫なはずだ・・・」

 

うう、まさかのグロシーンだったな。アーシアと九重にはショックが大き過ぎたんじゃ・・・。

 

「あ、あのゼノヴィアさん。どうして私の目を手で隠すんですか?」

 

「ああ、何でも無い。キミにはちょっと刺激が強かったからな」

 

「む~、何も見えないのじゃ!」

 

「ゴメンね、九重ちゃん」

 

おお、ナイス判断だゼノヴィア、イリナ! 咄嗟にアーシア達の視界を隠した二人に、俺は心の中で喝采を送った。

 

「坊主、もう諦めたらどうだ。今のを見てわかったろ。こっちは既に過剰戦力ともいえるほどの面子が集まってんだぜぃ。まさか、ここから逆転出来るなんざ思ってねえだろうな?」

 

「・・・」

 

曹操は答えない。だが、その表情からは隠しきれない悔しさが滲み出ていた。ヤツにとって最大の誤算は、スコルという規格外の存在。そして・・・それを送り込んだ神崎先輩という存在だったのだろう。

 

「・・・ふ、ふふ。そうですね。あなたのおっしゃる通りです。今回の勝負、どうやら戦う前から勝負がついていた様です。“彼”の掌で踊らされているとも知らず俺達は・・・滑稽にもほどがある」

 

「では、曹操・・・」

 

「すぐに撤退するぞ。これ以上戦力を失うわけにはいかない。それに、神喰狼・・・何よりも“彼”への対抗策を早急に練り上げる必要がある」

 

指示したわけでもなく、英雄派のメンバーが素早く一ヶ所へ集まり、魔法使いが再び転移魔法陣を展開させ始めた。

 

「野郎! 逃がすかよ・・・!」

 

「待て、イッセー」

 

ブースターを噴かそうとした俺を止めたのはアザゼル先生だった。

 

「先生!? 早くしないとアイツ等逃げちゃいますよ!」

 

「俺達の目的を忘れるな。九尾の大将を助けられれば、連中なんざどうでもいいんだよ」

 

「それは、そうですけど・・・」

 

「その感情は次に会った時に存分にぶつけてやればいい。なあに、どうせ嫌だって言っても向こうから会いに来るだろうさ」

 

アザゼル先生と話している間に、向こうは準備を済ませてしまっていた。

 

「・・・王道の強さ、存分に味わわせてもらった」

 

「は?」

 

謎の言葉を残し、曹操達は消えてしまった。王道? なんのこっちゃ?

 

「先生、今のってどういう意味だったんですかね?」

 

「そうだな・・・お前はお前のままでいろってこった」

 

うむむ、よくわからん。よくわからんからとりあえず置いておこう。なにはともあれ、英雄派を京都から追い出す事が出来た。後は先生の言う通り、八坂さんを元に戻すだけだ。

 

「つっても、どうすりゃいいんだ?」

 

匙と玉龍によって大人しくなった九尾を見上げ、俺はそう漏らした。

 

「おうおう、ちゃんと事前の打ち合わせ通りにやってくれたな玉龍」

 

『約束守れよジジイ! 京料理を腹いっぱい食う事を励みにオイラは頑張ったんだからな!』

 

「・・・俺だけでも何とかなった様な気が・・・」

 

『ああん!?』

 

「な、何でも無いッス!」

 

―――何を誤魔化す必要がある。はっきり言ってやるのだ我が分身よ。貴様なぞいなくとも、我と我が分身だけで十分だったとな。

 

『上等だよヴリトラァ! なんだったら今からおっ始めてやろうかぁ!?』

 

ちょ、何ケンカ始めようとしてんの!? 止めろよ! 怪獣大決戦なんかスクリーンの向こうでしか望んでねえんだよ!

 

「ええい、話が進まんから黙っておれ。・・・さて、そうは言ってもどうするべきかのぉ。儂が仙術で正気に戻してやってもよいが、ここでは時間がかかるしのぉ」

 

「・・・私にやらせてください」

 

誰もが一斉に振り返る。名乗り出たのはアーシアだった。決意を込めた目で九尾を見つめている。

 

「アーシア。だが、お前の神器は傷は癒せてもこういう分野の治癒は・・・」

 

「それでもです。結局、守られていただけだった私がお役に立てるのは今なんです」

 

その言葉には、アザゼル先生ですら圧倒する力強さがあった。先生はそれ以上何も言わず、アーシアに道を譲った。

 

「・・・オ・クァーン様。どうか、お願いいたします。八坂姫様を・・・九重ちゃんのお母様を助ける為に力をお貸しください」

 

跪き、祈りを捧げるアーシア。刹那、彼女の体から莫大なオーラが立ち昇り始め、それが九尾の全身を瞬く間に包み込んでいった。

 

「ア、 アーシア!?」

 

「う、嘘・・・!? この神聖なオーラ・・・ミカエル様以上だわ!」

 

ゼノヴィアとイリナが目を剥く。てかヤバい! 今アーシアに近寄ったら絶対消滅してしまう! それだけのオーラを出しているんだ!

 

「九重ちゃん、手を・・・」

 

「は、はい!」

 

その神聖さにあてられたのか、敬語で返事をしつつアーシアの手を握る九重。

 

「あなたの声を八坂姫様に届けます。あなたの想いを、あなたの気持ちを、八坂姫様に伝えてあげてください」

 

「私の声・・・」

 

九重は一瞬だけ目を瞑ると、静かに口を開いた。

 

「・・・母上。母上が『禍の団』に攫われてから、私は精一杯自分に出来る事をやって来ました。皆が不安にならない様、母上の娘として、決して弱い姿を見せない様、全力を尽くしました」

 

でも・・・と九重はさらに続ける。その声は震え始めていた。

 

「でも、本当は誰よりも泣きたかった! 誰よりも悲しみたかった! もしかしたら、このままもう母上とお会い出来ないのではないかと思った時など、心臓が止まってしまうかと思いました!」

 

「九重・・・」

 

我慢してたモンがぶっ壊れちまったんだな。けどいいさ、もう我慢する必要なんて無いんだ。

 

「母上に会いたかった! 母上に抱き締めてもらいたかった! 母上に撫でてもらいたかった! ずっと、ずっとずっとずっと! ずっとそれだけを望んでおりました!」

 

ッ! お、おい、八坂さんの目に光が・・・!

 

「戻って来てください母上! もう・・・もうこれ以上、私を一人にしないで!」

 

九重の心からの叫びが夜空へ木霊する。それに合わせて、八坂さんの体を包む光もより輝きを強める。

 

「くっ・・・!」

 

その眩さに視界を奪われる。そうして、再び目を見開いた時、そこには巨大な九尾ではなく、九重と同じ巫女装束の女性・・・即ち、人の姿を取り戻した八坂さんが立っていた。

 

「は、母・・・上・・・」

 

「・・・九重、お前の声が聞こえた。・・・頑張ったな。お前は自慢の娘じゃ」

 

「母上・・・母上ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

大粒の涙を流しながら八坂さんに抱きつく九重。そんな九重を、八坂さんもまた優しく抱きしめた

 

「っしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

そして、そんな二人を見て、俺はつい天に向かってそう叫んでしまうのだった。

 




『待っとったでその言葉ぁ! 任せんさい! おばちゃんが何でも叶えたるからなぁ!』

以上、アーシアにおねだりされたオカンの心の声でした。

オリ主は結局間に合いませんでした。というか間に合わせませんでした。展開上、まだ戦場で顔を合わせるわけにはいかなかったので。

それと、私はau大好きです(迫真)。

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