ハイスクールD×D〜転生したら騎士(笑)になってました〜   作:ガスキン

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第百十四話 触れるな危険!

イッセーSIDE

 

就寝時間を間近に控え、俺の部屋へグレモリー眷属とイリナ。さらにシトリー眷属。さらにはアザゼル先生にレヴィアタン様にロスヴァイセさん。そしてアーシアとスコルという大人数が集まっていた。理由は当然、これから始まる英雄派達との戦いに向けての話し合いだ。

 

「ね、ねえアーシアさん。スコルは?」

 

シトリー眷属の一人・・・ええっと、巡だっけ? 彼女が恐る恐るといった様子でアーシアに尋ねる。

 

「今は眠ってます。どうもお昼に山田先生にたくさん構って頂いた様で、とっても満足そうな顔でぐっすりです」

 

「そ、そう・・・」

 

膝の上で丸まったスコルを撫でるアーシアに顔を引き攣らせながら頷く巡。あー、まあ見慣れないヤツからしたら、神喰狼を膝の上に乗せるのって相当ヤバそうに見えるのかもな。

 

「よし、全員集まった所で作戦を伝えるぞ。既に京都で活動を行っていたこっち側の関係者を総動員して警戒態勢を敷いている。この地に詳しい妖怪達も協力を申し出てくれた。怪しいヤツがいればすぐに知らせてくれるだろう」

 

「英雄派は実験をするって言ってたんですよね? 何の実験何でしょう?」

 

「ふん、中二病集団のやる実験なんざどうせくだらんものに決まってる。んなもんに無理矢理付き合わされようとしている九尾の大将が不憫でしょうがないぜ」

 

匙の質問に憮然とした顔で答えるアザゼル先生。いつの間にかアイツ等を英雄派じゃなくて中二病集団って呼んでるけど・・・妙にしっくりくるな。

 

「まずはシトリー眷属。お前達は京都駅周辺で待機だ。おそらく、俺達がこのホテルを利用している事も向こうは知っているだろう。万が一襲撃をかけて来たら、その時はお前等が頼りだ。ホテル自体にも結界は張ってある。一般人以外には出入り不可能なシロモノだから展開中はお前達もホテルには入れない。気をつけろよ」

 

「はい」

 

「でもってグレモリー眷属とイリナだが・・・」

 

「もちろん、オフェンスですよね?」

 

最後まで聞く前に木場が割り込んだ。コイツ、さっきからずっと闘気を体中に纏わせてる。あのジークリートとの再戦が待ちきれないって感じだな。

 

「おう、そのつもりだ。この会議が終わった後、すぐにお前達には二条城へ向かってもらう。・・・お前等、昼間のあれだけじゃまだまだ暴れ足りねえだろ? 俺が許可する。あの勘違い野郎どもをぶちのめして、とっとと八坂姫救い出すぞ」

 

正面からの殴り込みですと? んなもん・・・最高じゃないですか! 思わずヒャッハー! と叫びたくなった俺は悪くないはず!

 

「それと、アーシア及びスコルも二条城へ向かってもらう。理由は・・・言わなくてもわかるよな?」

 

ッ・・・!? せ、先生、ついに投入する気ですか!?

 

「例の件を考えれば後方待機させておくのが正解なんだろうが、万が一、いや億が一の為の保険だと思え。何より、本人がそれを望んでいるからな」

 

「アーシアが?」

 

「・・・足手纏いなのはわかっています。でも私は・・・九重ちゃんのあの握り締めた拳から流れた血を見て決めたんです。イッセーさん達みたいに、私も命をかけて戦うって!」

 

アーシア・・・。凄いよ・・・。立派だよ・・・。でもね、命をかけるとか物騒な事を言うのだけは勘弁して欲しいな。

 

「わかったなイッセー。お前達の優先事項は八坂姫の救出。及び・・・アーシアを無傷で帰還させる事だ」

 

「イエッサー!」

 

どうやらこれが俺達のラストミッションになりそうだ。へ、へへ、体の震えが止まらねえ。これが武者震いってヤツか。

 

「ねえアザゼルちゃん。他にも助っ人を呼んでるんでしょ? ならそのノリでフューリーさんも一緒に・・・」

 

「却下に決まってんだろうが」

 

「ぷ~~~! 何よ何よ! せっかくフューリーさんと京都の街の散策とかしようと思ってたのに、アザゼルちゃんの所為で結局叶わずじまいだよ!」

 

「お前、俺の胃がビッグバン起こしそうになってた間にんな事考えてやがったのか・・・!」

 

頬を膨らませるレヴィアタン様に割と本気でキレかけているアザゼル先生。とそこへ、匙が声をかけて来た。

 

「兵藤、神崎先輩の事は聞いてる。マジで頼むぞ?」

 

「何他人事みたいに言ってんだ匙? お前もイッセー達の組だぞ?」

 

「―――ファッ?」

 

レヴィアタン様の頬を引っ張りながらアザゼル先生が軽い口調でそう言うと同時に匙の表情が一瞬で間抜けなものへ変わった。

 

「お前の新たな力をお披露目するには絶好の機会じゃねえか。連中に見せてやれよ。ヴリトラの・・・お前の黒い炎をな」

 

「ちょ、待ってくださいよ! いきなりそんな事言われても・・・」

 

「匙」

 

「何だよ!」

 

俺は匙の肩を掴むと、とびっきりのスマイルをお見舞いしてやった。

 

「ようこそ地獄へ」

 

「しゃおらぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「うぼあっ!?」

 

や、野郎・・・。清々しいくらいの右ストレートブチ込んでくれやがってぇ・・・!

 

「ああそうかよ! わかったよ! やってやるよ! 英雄派だろうがなんだろうがやってやればいいんだろうが! だがその前にもう一回殴らせろや兵藤ぉ!」

 

「HAHAHA! いいぜ匙! その気迫で頼むぞ!」

 

「よし殺す! ぶっ殺してやる!」

 

「お、落ち着きなさい元士郎!」

 

「どいてくれ由良! そいつ殺せない!」

 

「あわわわ! 元ちゃんの目から光が無くなってるよ!」

 

「ね、ねえ、アーシアさん。ちょっと撫でてもいい?」

 

「え? あ、はいどうぞ」

 

「うわあ、モフモフだぁ・・・!」

 

「わ、私にもモフらせて・・・!」

 

「いい機会だから言わせてもらうよ! アザゼルちゃんは乙女心が全然わかって無いよ! そんなんだから周りが結婚する中取り残されるんだよ!」

 

「ぐふっ!? て、テメエ、セラフォルー・・・! 言うてはならん事を・・・! つーか誰が乙女だ誰が!」

 

「え? 私まだ処女(おとめ)だよ?」

 

「知るかボケ!」

 

「そうだ木場。お前のおかげで面白い案が浮かんだ。修理に出していた“アレ”も戻って来たからな。早速試してみようと思っている」

 

「はは、それは心強いな。僕もあの男との再戦が楽しみだよ」

 

「私も前に出たいんだけどな~。まあ、アーシアさんを守らないといけないし、しょうがないんだけどね」

 

「・・・ぷっ。クスクス」

 

狭い室内に怒声や叫び声が響き渡る。そうやって誰も収拾がつけられないカオスな空間に静けさを取り戻させたのは、ロスヴァイセさんの笑い声だった。

 

「あん? 何笑ってんだよロスヴァイセ? お前も俺が一人身なのがおかしいのか? お互い様の癖に」

 

「違いますよアザゼル先生。さっきから聞いていれば、誰一人英雄派との戦いについての不安を口にしない。まるで、勝つのが当然だと言わんばかりに。それが何だかおかしくって」

 

・・・言われてみれば、俺達さっきから神崎先輩とかスコルの事とか、そう言った事ばかり気にして、英雄派の連中の事をまるで考えて無かった。何でだろう。シトリー眷属とのゲームに負けてから二度と慢心はしないって決めたはずなのに。

 

「イッセー。お前今、自分が慢心とか油断とかしていると思ってるだろ?」

 

「え? わ、わかるんですか?」

 

「その顔を見りゃわかる。だがなイッセー。それは慢心でも油断でもねえ。実力に裏打ちされた“余裕”ってヤツだ。昼間の戦いを思い出せ。お前達に連中より劣ってる所は何一つねえよ」

 

「余裕って、俺にそんなもの無いですよ。いつも一杯一杯なのに」

 

俺が手を振りながら答えると、アザゼル先生は俺の頭を乱暴に撫でた。

 

「はは、そうだな。お前はそうやって全力で走ってる方が似合ってるぜ」

 

これは・・・もしかして褒められた? うわ、なんか恥ずい。・・・そして匙、テメエは今すぐそのムカつく顔を止めろ。さっきの仕返しのつもりか?

 

「ともかく、みんなそれぞれの役目をしっかり果たせ。それさえ出来れば俺達に負けはねえ。・・・勝って帰るぞ!」

 

「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」

 

拳を突き上げる先生に倣い、俺達も一斉に拳を突き上げた。待ってろよ曹操! 待ってろよ英雄派! 今からぶん殴りに行ってやるからな!

 

そして、俺達は二条城へ向かう為、ホテルを出てバス停へと向かうのだった。

 

イッセーSIDE OUT

 

 

真耶SIDE

 

生徒達の就寝時間まで残り三十分を切っていた。私は窓を開けて夜風を浴びながら手もとの写真を眺めていた。

 

「うふふ、たくさん撮れたなぁ」

 

映っているのは全部スコルちゃん。仰向けで万歳したり、私の指を舐めたり、色々なスコルちゃんの姿を写真に収めてしまった。もちろん、それだけじゃなくて、思う存分モフモフもさせてもらった。結局、それだけで一日が潰れてしまったけど、私は後悔は全くしていません!

 

「はあ、可愛かったなぁ」

 

オカルト部のみんなで飼ってるって言ってたっけ。・・・今度遊びに行ってみようかなぁ。

 

「・・・あれ?」

 

ふと、写真から外へ目を移すと、駒王学園の制服を着た子達が何人も外へ出て来た。あれは・・・兵藤君にアーシアさん!? それに木場君達まで!? ど、どうしてこんな時間に!? もうすぐ就寝時間ですよ!?

 

「と、とにかく止めないと!」

 

私は寝間着姿のまま部屋を飛び出し、すぐにエレベーターで一階へ降りた。そして急いで外に飛び出たけれど、既に兵藤君達の姿は無かった。

 

「ど、どこへ行ったの・・・!?」

 

一瞬だけ悩み、私はひとまず京都駅の方へ向かう事にした。街の明かりがあるとはいえ、夜の一人歩きはやっぱり怖いなぁ。

 

「な、なんて怖がってる場合じゃない。早く探さないと・・・!」

 

「何を探すのかしら?」

 

「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

背後からの突然の声に、私は思いっきり叫び声をあげてしまった。な、何!? ひょっとしてお化け!?

 

「はあい、お姉さん。こんな時間にそんな格好で歩いていると危険よ?」

 

振りかえった私の眼前には、夜でもはっきりわかる綺麗な金髪の女性と、その横に並ぶとっても背の高い男性だった。

 

「あ、あああああなた達は!?」

 

「そんなに怯えないで。私達は・・・ただの観光客よ。そういうあなたはどなた?」

 

「え? あ、わ、私は山田真耶と申します」

 

「真耶ね。いい名前じゃない。それじゃあ改めて聞くけど、真耶はこんな時間にそんな格好で何をしていたのかしら?」

 

そ、そうだ。ひょっとしたらこの人達、兵藤君達の事を知ってるかもしれない。

 

「あ、あの! この辺りで制服を着た子ども達を見ませんでしたか!」

 

「制服を着た子ども達?」

 

「私とその子達は修学旅行でここへ来たんです。もうすぐ就寝時間なのに外へ出て行くのが見えたから私・・・!」

 

「なるほど、探しに来たのね。でもゴメンなさい。そんな集団は見て無いわね」

 

「そう・・・ですか。兵藤君達、どこへ行ってしまったのかしら・・・」

 

「兵藤君?」

 

「いなくなった子の一人です。茶髪で結構特徴的な髪形をしているんですけど・・・」

 

「ふうん・・・」

 

「おい、ジャンヌ。こいつは使えるぞ」

 

「使えるって・・・あなたねえ。勝手な真似したら曹操に怒られるわよ?」

 

「はっ、これまで何人に同じ事して来たと思ってやがる」

 

「・・・それもそうね」

 

「あ、あの、何の話を・・・?」

 

「ああ、こっちの話よ。そうね・・・。真耶、よければ私達も探すのを手伝いましょうか?」

 

「ふえ!? そ、そんな、見ず知らずの方にご迷惑をおかけするわけには・・・!」

 

「ふえって・・・可愛い反応するわね。こうして言葉を交わした時点で見ず知らずとは言えないでしょ。いいから手伝わせてよ。困った時はお互い様って言うじゃない」

 

ど、どうしよう。でも、一刻も早く兵藤君達を見つけないといけないし・・・。ここまで言ってくださる方の厚意を無下にするわけにもいかないし・・・。

 

悩みに悩んだ末、私はお二人の力を借りる事にした。そして、二人は早速私に有益な情報をもたらしてくれた。

 

「そうだわ、真耶。さっきは見てないって言ってしまったけど、そういえばそんな感じの男の子を見た憶えがあるわ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ええ、案内してあげる」

 

歩きだす二人の後を、私はぴったりと着いて行った。

 

「本当にありがとうございます。なんてお礼を言ったらいいか・・・」

 

「いいわよお礼なんて。だって・・・あなたには私達の役に立ってもらわないといけないもの」

 

「え?」

 

いつの間にか辺りから音が消えていた。闇はさらに深く濃くなり、まるでこの場だけ隔離されてしまったかのようだった。

 

・・・怖い。ここにいたら駄目だ。そんな警鐘が頭に響く。それと同時に、猛烈な睡魔が私を襲った。

 

「お休み、真耶。いい夢を・・・」

 

その言葉が耳に届いたのを最後に、私の意識は完全に沈んでしまうのだった。




というわけで、山田先生がピンチです。・・・え? ピンチなのは山田先生じゃない? はて? じゃあ誰なんでしょうね?

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