夏のうちに書き終わりました。
リアルがメチャ忙しく。執筆時間が取れなく……はい、言い訳です。スミマセン。
夏風邪にもなって……ええ、本当スミマセン。
UQの内容(最新話)と被って……訂正するかは今後検討します。
UQのネタバレも含みます。
駄目な方はバック推奨!
ガキィン______ッ‼︎
金属同士がぶつかるような音が響く。
無論、俺も目の前の雪姫も金属なんていう物騒なものを振り回したりしていない。
いや……金属以上に物騒なものを振り回してはいるが。
『ホオ? 重力魔法カ。 アルビレオノマネトイウ訳ダ』
雪姫の言う通り、俺は『
『ナルホド。ナルホド……最初カラソノキダッタトハナ。ククク……』
雪姫は冷笑を浮かべると魔法剣を振りかざして俺を弾き飛ばした。
くっ……痛てぇー。
『馬鹿メ』
雪姫は空中を飛び空いていた左手にも『断罪の剣』を具現化させた。
『ハハハ……マサカ闇ノ
何だ⁉︎
場所が変わった……?
いや、落ちつけ!
ここは多分俺の頭の中。
精神世界とかいうやつだ。
そして……あの雪姫も本物じゃないはず。
『フハハハハハハ……面白イ。面白イ。面白イナオマエ。特別ニ復習シテヤロウ。
闇トハ何ダ?』
……は?
……闇とは?
突然そんなこと言われても。
『光ニ対スル影。
昼ニ対スル夜。
聖ト邪。
善ト悪。
秩序ト混沌。
条理と不条理。
……ダガ、ココデ貴様ニ必要ナノハ……』
俺に言葉を投げかけつつも。
「来レ氷精。
大気ニ満チヨ……」
雪姫は呪文の詠唱を始めた。
雪姫が詠唱している魔法。
『モットシンプルナ
あれは……!
「
俺が驚きの声を上げたその時。
ピキピキ、と地面が凍りつき。
「
地面から巨大な氷柱が突き出した。
俺は咄嗟に魔法剣で氷柱を切り裂く。
俺に当たりそうな氷柱を切り裂いていると。
雪姫の姿が見えない事に気づく。
気づいてしまった。
______まずい⁉︎
『其ハ全テヲ飲ミ込ム暗キ穴二シテ、始マリノ闇……』
雪姫の姿を確認しようと視線を上に向けると。
「来レ氷精爆ゼヨ風精!」
その呪文の詠唱が聞こえてきた。
『始原ノ混沌ダ!』
やっちまった!
『
俺が気づいたその時には時遅く……。
大爆発が起きて、俺はその爆発に飲まれてしまった。
______ああ……やっぱり勝てねえのか。
『全てを飲み込む始まりの闇』
畜生……意味がわからねえよ。
『コノ意味ガワカラナケレバ……貴様ハワタシ二破レテ、ココデシヌ』
駄目だ……やっぱり俺じゃ雪姫には勝てねえ。
貰い物の……借り物の力じゃ、誰も救えないんだ。
また守れないんだ。
……また、大切な人を救えない。
『もっとも。
貴様はその意味を。
すでに知っているはずだがな……』
「えっ……?」
それは紛れもなく、俺が知る雪姫の声だった。
『終わりだ。
俺はもう……
知っている?
そうだ。俺はもう知っているんだ。
それは以前、雪姫に言われた言葉だ。
『泥にまみれても尚……前へと進む者であれ』
そうだ!
俺はもう知っている。
目の前の雪姫が偽物だということを。
俺のイメージが具現化された人造霊という存在だということも。
そして、俺は1人じゃないということも。
『あたしのドレイになりなさい!』
『全力でやってやるよ』
アリアとキンジと交わした約束。
『このむの〜』
『大好きだよ! パパ!』
守りたいと思う少女達。
武偵憲章一条______
『仲間を信じ、仲間を助けよ』
俺を信じて。
信じて戦う仲間がいることを。
「やられて……たまるかよーーー!」
気付いた時には。
俺は右手を前に突き出していた。
ドゴォォォォォという音が鳴る中。
俺は闇の吹雪を受け止め……いや。
『
それはつまり……
『善も悪も……強さも弱さも。
全てをありのままに。
受け入れ……飲み込む力‼︎』
______
『なっ! まさか……それは
______術式兵装……
「
俺の半径30メートル圏内を支配域とする。
その圏内を自在に飛び交う四枚の大盾が浮遊し、旋回する。
盾の性質は氷。色は黒。
厚さは1メートルほどだ。
形はどちらかというと縦に細長くギリシャ神話に登場する《アイギス》のようだ。
その盾の表面は鏡のように光を反射させていた。
『信じられん。
太陰道……すなわち、気弾・呪文拘らず敵の力を我が物とする闇の魔法《マギア・エレベア》の応用技にして究極闘法。
それを会得するとは……いや。できるか。私の弟子ならば。
……しかし新たなる術式兵装を生み出すとは』
新たなる術式兵装を生み出したことに驚きの声をあげる雪姫。
彼女の予想を上回る結果を生み出せたのなら……上々の出来だろう。
もっとも……一番驚いているのは。
他ならぬ……
俺自身なのだが……。
いや、だって。
ぶっつけ本番だし。他人の魔法を吸収出来ることは知ってたけどいざやってみると。かなり糞度胸がいる技なんだぜ?
ネギま! 原作の主人公ネギ少年が同じように闇の吹雪を術式兵装してた描写あったけど。
ネギは生まれながらの天才だし。ナギというチーターの遺伝子を受け継いでいる主人公だし。
人外街道まっしぐらな闇の素養がある子だったから。
それに比べて……
一方の俺の力は確かに心の中に巣食う闇があって闇の魔法を発動させることは出来るけど。
けど……それは
だから……出来るとは解ってても、成功するなんて信じられなかった。
そう。信じられなかったんだ。
俺は。
心の中でいつも信じていないんだ。
人を。
受け入れてなかったんだ。
周りを。
何もかも。
だから、妻を喪ったあの時も何もできず。
今回も諦めようとしていたんだ。
怖いから。弱いから。
だから……
諦める。
逃げる。
そんな選択ばかりしていた……だから守れなかったのに。
『信じて、立ち向かう』
そんな簡単な、大切なことも出来ないんだ。
僅かな勇気を出せなかったんだ。最期まで。
そんな俺だから……彼女。雪姫……の人造霊に言われるまで気づかなかったんだ。
『傷ついても、倒れそうでも、どんなに疲れていても……絶望してさえいても。前へと進もうとする意思。そんな強さがあることに』
「
俺は心の何処かできっと恐れていたんだ。
強い力を持つということに。
「
だけど俺は悟った。
俺は一人じゃないということに。
俺には俺を必要として受け入れてくれる、頼れる仲間がいるということに。
どんなに苦しんでもただひたむきに……前へと進むべきだということを。
道を示してくれる師匠がいるということに。
そんな師匠が待ってるんだ!
出来ないなんて言えない!
いや……違うな。
出来る。出来ないじゃない。
やるんだ!
やってみせる!
やっと気付けたんだ。
それが俺が密かに(本人には死んでも言う気はないが)尊敬する。そして……敬愛している雪姫の弟子として取るべき道だということに。
そんな想いを抱きつつ。
俺は瞬動術を使い一瞬で雪姫のもとに接近し、右腕に装填させたコオル大地を解放する。
俺の様々な想いが籠った無数の氷柱が遅いかかろうとする中。
「くくく……いいだろう。ではその成果……見せもらおう!」
雪姫は余裕の表情で氷柱を防ぐと氷属性の矢や槍を無数に放ち。
俺は術式兵装『永久凍土』を発動させたまま、矢には、矢を。
槍には槍を放って対抗する。
何時間。何百時間経ったのだろうか?
時間の感覚が曖昧になる中。
ギンギン、ガガガという破壊音が鳴り響き闇と氷の属性を持つ力が拮抗する。
そして。
徐々に激突していた片方のそのパワーの出力が落ちていく。
まあ、何百時間もの間。一つの魔法を維持していたのだから当然だが。
『ハハハハ。どうしたミツル?
もう終わりか⁉︎
たかだか数百時間で‼︎』
「うぐっ……」
だがそれでも身体……いや、心に蓄積されたダメージは思いの外デカイ。
精神世界の中とはいえ。同じ空間で何百時間と戦うのは精神的にまいる。
だが……それでも。
不思議と負ける気はしない。
『ん? 何故笑っていられる? 自分が置かれている状況が解らないのか?』
状況?
ははっ! 雪姫とタイマンしてボコられることか?
そんなのはいつものことだ!
いつものこと……なんだけど。何故かな。全く負ける気がしねえ!
ここが現実じゃないからか、あるいは目の前の相手が雪姫の姿をした魂だけの存在だから。
だろうか?
……解らない。
解らないけど負ける気がしない!
相手は強い。
確かに強いけど……勝てないとは思えない。
本物じゃないからだろうか?
いや違う。本物だろうがそうじゃなかろうがこの気持ちは変わらない。
まあ……もし戦って負けたら相当恥ずかしい気分になるとは思っているのだが。
本物の雪姫じゃないのに勝てなかったら悔しいと思う。
悔しいだろうが、そんなことはどうでもよくなると思う。
なんて言えばいいか解らないが。
なんかへんな感じの……このワクワクとした気持ちを現すとしたら。そう……
こういう風にドキドキするのも悪くない。
そんな風に思う気持ち?
なんていうかな。面白い?
そう。面白いんだ。
拳を交わす度に、魔法を撃ち合う度に楽しさが増していく。
もっと撃ち合いたい。
もっと楽しみたい!
もっと……もっと、もっと。
そんな風に思っていると。
雪姫は呪文の詠唱を終えてその魔法を撃ってきた。
『これで終わりだ。
雪姫は容赦なく、闇と氷雪が合わさる大魔法を撃つ。
向かってくる大呪文。
その呪文に向けて。
俺は周りを飛び交う四枚の大盾を展開した。
雪姫を。人造霊を取り囲むように。
『なっ、この布陣はまさか……』
「『太陰道』。八神流敵弾吸収陣……『四面楚歌』」
呪文が盾に当たった瞬間、盾がほんのり光り輝き。呪文を跳ね返した。
盾から盾へと。
まるでタスキを繋ぐリレーのように。
盾から盾へと反射した呪文は雪姫に当たるまで繰り返し放たれる。
『くっ、そんなもの』
雪姫は時には氷の盾で防ぎ。あるいは同じ魔法をぶつけて相殺されて防ぐ。
しかし、雪姫が呪文を放つ度に、その呪文を俺は吸収していく。
そうして10発ほど撃ち合ちあった時だった。
雪姫の動きが鈍る。
『ぬっ……か、身体が動かぬ⁉︎』
ようやく効いてきたか。
俺が生み出したこの術式兵装は攻撃や素早さを重視したものではない。
どちらかというと防御と束縛系だ。
単純な攻撃力なら『獄炎煉我』。疾さなら『疾風迅雷』の方が上回る。
なら何故このような術式兵装を生み出したのか。
それは闇と氷の属性が関係している。
氷の属性は破壊、封印や束縛。相手を『閉じこめる』のなら氷属性が使いやすいからだ。
そして闇を取り込んだ理由としてはその特性に『精神への干渉』があるからだ。
まあ、単純な『束縛』なら水や風でもいいのだが。
だがここは『精神世界』。
精神への影響を与えるなら『闇』だ。
『ぐぬぬぬ……私が、この私がただの人間ごときに……』
「悪いな偽雪姫。
転生者で。
なにより……
雪姫の弟子だからな。
普通の人間では務まらねえよ。
本当は一番解ってるだろ?
アンタも雪姫なら。
「……悪いな。これで終わりだ!
雷の暴風を発動させ、動きを止めたままの雪姫に放つ。
否……放とうとした。
だが放とうとした俺の意識は失った。
『ピカッ! ガガガガガガッ‼︎!』
どこともなく放たれた。
たった一発の雷によって。
『______?』
何が起きたか解らなかった。
気付いた時には俺は地面に伏せていて。
頼みの綱の術式兵装も解除されていた。
そして。
そんな俺をあざ笑うように。
化け物が目の前に立っていた。
『……ふっ、保険をかけといて正解だったな。
私一人だけと、誰が言った?』
偽雪姫の声が聞こえて。
顔をその声のもとに向けると。
其処には化け物がいた。
人間ではない。
存在が人間とは違う。
どちらかというと魔族に近い。
俺はソイツと偽雪姫の顔を見て全てを悟った。
『ククククっ、紹介しよう。
我が本体が貴様の修業の為に貴重な時間やコネを使いわざわざあちらの世界から呼び出したもの。
それが此奴。
『雷の上位精霊______』だ』
ここまでの修業はほんの
ここからが本当の修業の始まりということを。
ところで。
魔法を発動させるには必要なことがある。
精霊魔法という名称の通り。闇の魔法を始めとしたネギま! の魔法を発動させるには精霊の手助けを借りなければならない。
発動には魔力。俗にいう自然エネルギーを消費する。
魔力量が多いほど、強力で。扱いが難しい魔法を放てる。
そして……もっとも大切なことだが。
発動させたい魔法を具体的にイメージさせること。
それらが揃わなければ魔法は発動しない。
ま、当たり前といえば当たり前だな。
俺は女神から闇の魔法の素質を特典として転生前に貰っていたから当たり前というように魔法を使っていたが。その出来て当たり前という思い込みが当たり前だと思ってしまったことが。
俺が今まで千の雷を発動できなかったという理由にあたる。
漫画の知識で知ってるから使える……なんて甘いことは当然ないわけで。
雷そのものを。
千の雷という具体的な魔法を理解し、イメージさせなければ当然発動するはずがなかったのだ。
『
風魔法電撃系最強の呪文。
広範囲殲滅呪文の一つで、もう一つの世界。
そしてあまり知られていないが、元々は雷の上位精霊が使う技を人間用にしたものがこの技の由来だ。
続きます。