闇の魔法を使える武偵っておかしいか?   作:トナカイさん

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装填2   強猥?それは誤解だ!!

折り重なるようにして倒れたセグウェイたちが全て沈黙しているのを確かめると、俺達は体育倉庫の中に入っていった。

中ではアリアが跳び箱の中に入っている。

跳び箱から上半身出した状態で『今、私の目の前で何が起きたの?』という顔をしている。

俺達と目が合うと、ぎろ!と睨み目になって、もぐら叩きのモグラみたいに跳び箱の中へ引っ込んでしまった。

何だか、怒っているようだが…ああ、そうか。

確か、金次を助けた際にベルトのホックが壊れたんだよな…。

しかも金次がヒステリアモードを発動させた際に爆風でブラウスが捲れて『(寄せて上げる)偽造ブラ』を不可抗力とはいえ、直視されたのも怒りの原因の一つなんだろう。

つまり原因は。

 

「死ね、金次!!」

「うおぉぉ…危ねえ!?」

俺が繰りだした手刀を間一髪で避ける金次。

ヒス金だからこそ回避できたんだろう。

「突然何しやがる!?」

「うるせー、このロリコン野郎が―――!!

幼女に手をだしてるんじゃねぇ―――!!」

「だ、誰が…誰が…幼女ですって?」

あ、やばい。

地雷踏んだ。

「ま、待て落ち着け。

冷静になろう、な…?」

爆弾処理班の心境で爆発させないように慎重に言葉を選んで誘導させる。

「アリアならさっきのセグウェイどうにかできたよな?」

《話題逸らし》を使い強引に話題を変えた。

「と、当然よ。あんなおもちゃぐらい、あたし一人でも何とかできた。

これは本当よ。本当の本当」

強がりながらアリアは、ゴソゴソ。

跳び箱の中でうごめく。

幼女の生着替えタイム(服の乱れを直す)か。

誰得なんだ、この展開。

「そ、それに、今さっきの件をうやむやにしようたって、そうはいかないから!」

今さっきの件?

「えっと…?」

「あれは強制猥褻!れっきとした犯罪よ!」

なんだ…金次がしでかした件か。

幼女発言の責任取らされると思ったぜー。

よかったー。

「それは悪かったな。

この馬鹿なら煮るなり、焼くなり好きにしていいから」

「おい待て、見捨てんな!」

金次が非難の声をあげるが俺は金次にただ一言放つ。

「ま、頑張れや~」

親友?武偵憲章1条?

何それ?

食えんの?

 

 

 

「こうならば…道連れだ…」

金次は防弾制服の内ポケットから何か(おそらく胡椒)が入った壜を取り出し、俺の顔に振りかけやがった。

ま、まずい―――と思ったときにはもう遅く俺は盛大なくしゃみをしてしまった。

 

「はっくしゅん―――――!!」

―――――ぶおぉぉぉぉん。

 

凄まじい突風が巻き起こり体育倉庫の中は物が散乱した。

 

「な、ななな…何すんのよ―――――この、度ヘンタイ!!」

風が収まると下着姿(・・・)のアリアが顔を真っ赤にさせていた。

「さっ、さささっ…最低――――――!!

このチカン!人でなし!」

ぼこぼこぼことグーパンでおもいっきり殴ってくるアリア。

 

「あんたたち、二人とも強猥の現行犯で逮捕するわよ!」

 

「「今の(あれ)は誤解だ」」

声をそろえて抗議する俺と金次。

 

俺の悪い癖というか弱点。

 

ちょっとした刺激(主にくしゃみ)で魔力が暴発してしまい、周囲の人間に迷惑をかける。

なぜか暴発した魔力は武装解除呪文となって周りにいる人間、特に女子の服を脱がしてしまうというどこぞの薬味少年みたいな事をしてしまうのだ。

 

「「今の(あれ)は不可抗力というやつだ(よ)。理解してほしい」」

声をそろえて抗議すると金次は自分のベルトを外して、アリアが入っている跳び箱に投げてやった。

「あ、あれが不可抗力ですって!?」

アリアは金次のベルトで留めたスカートを抑えつつヒラリと跳び箱から出てきた。

ふわ。

見るからに身軽そうな体が、俺達の正面に立つ。

 

やはりアリアはちっこかった。

さすがは万年145cm。

これはどうみても小学生だろう。

脳内で『アリアちゃん10歳』というフレーズが出てきたがなんとか笑い出すのをこらえた。

 

「ハ、ハッキリと…あんた…!」

アリアは金次を見て怒り心頭という顔をしている。

ぎゅう、と拳も握りしめている。

そして、わわ、わわ、わ。ローズピンクの唇を震わせてから、がいん!言葉を発する勢いづけのためか床を踏みつけた。

「あ、あたしが気絶している隙に、ふ、服を、ぬ、ぬぬ、脱がそうとしてたじゃないっ!」

「ウワーキンジクン、マジサイテー」(棒読み)

「誤解だ!」

「そ、そそ、それに、む、むむむ」

がいん!

また床を踏んだよ。

「胸を見てたぁあああっ!これは事実!強猥の現行犯!」

頭から火が出そうな勢いでアリアは続ける。

「そっちの度ヘンタイは公衆の面前で服脱がした!

強猥!強猥の現行犯で風穴空けてやる!」

今度は俺を睨みつけて怒ってる。

耳まで真っ赤にさせてるよ。

事故(道連れ)なのに。

「よしアリア、冷静に考えよう。いいか。俺達は高校生だ、それも今日から2年だ。「待て、金次…」中学生を脱がしたりするわけがないだろう?

年が離れすぎだ。だから―――安心していい」

「遅かった…」

がくりと項垂れる俺。

そんな俺を不思議そうに見つめる金次。

おそるおそる、アリアの顔を見ると、アリアは、わぁあー!という口になって両手を振り上げた。

声が出てないのは絶句してるからだろう。

そして―――ぎぎん!と涙目になって俺達を睨みつける。

あたしは中学生じゃない!!(・・・・・・・・・・・)

がすんっっっ!踏みつけた床がとうとう弾けて木片が飛んだ。

―――やばいな。

金次の馬鹿のせいで地雷を踏みまくってる。

「……悪かったよ。インターンで入ってきた小学生だっ…「お前はもうしゃべるな―――!!!!

 右腕開放!魔法の射手(サギタ・マギカ )雷の(コンウェルゲンティア)101矢!!!《・フルグラーリス |雷崩拳(らいかほうけん)!!!」

ぎゃあああぁぁぁ――――――!!」

言ってはいけない《地雷》を踏みまくる金次にたいし、俺は武力行使に出た。

風の魔法、それも電撃系の初歩の魔法だが拳に乗せて放てばもの凄い威力が出る。

電撃系なら相手を麻痺させることもできるしな。

「まったく、金次の馬鹿は。

いくらアリアが小学生みたいな(ナリ)してるからって…」

はっ!?

しまった。

「こ…こんな…やつら…助けるんじゃ、なかった」

ばぎゅばぎゅん!

「うわあぁぁぁっ!」

足元に撃ちこまれた2発の銃弾に、俺は青ざめた。

撃ちやがった。

それも二丁拳銃で!

 

あ た し は 高 2 だ !!!(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

一難さってまた一難。

まあ、この学校《武偵高》なら日常茶飯事だから慣れてるけどなー。

 

「待てっ!!」

まだ《闇の魔法》が続いていた俺は、至近距離から撃ってきたアリアに飛びかかり、その細腕を両脇に抱え込んで後ろに突き出した。

ばりばりばりっ!がきんがきんっ!

アリアは反射的に引き金を引き、背後の床が着弾した音を上げる。

2丁とも弾切れになった。

そのまま取っ組み合いになったが

「―――んっ―――やぁっ!」

くるっ。

体をひねりアリアは柔道の跳ね腰みたいな技で、体格差をものともせずに俺を投げ飛ばした。

「ぐっ―――!?」

さすがはSランク武偵。

格闘技もうまい。

「逃げられないわよ!

あたしは逃走する犯人を逃がしたことは!1度もない!

―――あ、あれ?あれれ、あれ?」

アリアは叫びながらスカートの内側を両手でまさぐった。

「探し物はこれか?」

さっき投げ飛ばされたときにスっておいた弾倉を掲げ―――アリアから遠い場所へ投げつける。

「―――あ!」

遠くの茂みに落ちていくそれを目で追ってから、アリアは無用になった拳銃を上下にブンブン振り回した。

原作でも同じみのやったな!やったな!という動作だ。

「もう、許さない!ひざまずいて泣いて謝っても、許さない!」

拳銃をホルスターに収めるとセーラー服の背中に手を突っ込み―――じゃきじゃき!

そこに隠していた刀を、二刀流で抜いた。

「糞―――!!少しは人の話を聞けよ!

魔法の射手(サギタ・マギカ) 光の3矢!(セリエス・ルークス)

 

「強猥男は神妙に―――っわぉきゃっ!?」

アリアは俺に向かって駆け出してきたが俺が咄嗟に放った魔法に驚き真後ろにぶっ倒れた。

 

「こ、この…みゃおきゃっ!」

立ち上がろうとしてまた倒れた。

いつの間にか意識を取り戻した金次がアリアの足元に銃弾をばら撒いていた。

 

その銃弾を踏み、両足が真上を向くくらい勢いよくコケている。

本当漫画みたいだ。

 

「逃げるぞ、金次!!」

「ああ。ごめんよ」

 

金次とともに駆け出すと、背中で、彼女の捨て台詞が聞こえた。

 

 

「この卑怯者!でっかい風穴―――空けてやるんだからぁ!」

 

 

これが俺、八神 光(やがみ みつる)&遠山金次と。

 

後に『緋弾のアリア』として世界中の犯罪者を震え上がらせる鬼武偵、神崎・H・アリアの硝煙のニオイにまみれた、最低最悪の、出会いだった。


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