遅くなりましたがお楽しみ頂けたら幸いです。
次話の投稿ですが……
今月は多分、この作品の更新はないと思います。
多分。
来月まで少々お待ちください。
不意に目を覚ました場所は、見覚えのある草原だった。
某CMに出てくるようなこの木なんの木?不思議な木〜的な大きな木の真下で、木の幹を背に俺の体は寄りかかるようにしていた。
土や草の匂いがほのかに鼻をくすぐり、木の枝と葉の間から差すお日様の光が薄く眩しく感じる。
見渡す限りの青空と草と土と、小さな石ころしかない空間。
ポカポカと俺の体を照らす日の光は心地よく、起き上がりたい気持ちを削っていく。
ああ、二度寝したい。
その衝動を抑えることなんて……出来そうになかった。
だから。
ここがどこかとか。
今はいつなのかとか。
______自分が誰なのか、とか。
そんな些細な問題はどうでもよかった。
唯一気になるとすれば……。
「お目覚めですか?」
俺と同じ大木の根元に腰をかけて俺の横に座る、杖と本を手に持って微笑む眼鏡をかけた綺麗な少女のことだけで……。
見覚えがあるような、ないような、曖昧な記憶。
そもそも、自分の名前すら思い出せない自分が、彼女を覚えているはずもなく。
だけど不思議な事に彼女は自分の知る誰かに似ているような気がして。
よく見るとやっぱり知らないような気もする。
______よく知っている人が、いつもと違う服で笑っていると、違和感と同時にドキドキするみたいな。
そんな感じの気持ちだ。
ただ、唯一解るのは。
その少女は俺の知る少女より優しいという事。
何故なのかは解らないが、俺の知る彼女はもっとドSのような……?
なんとなくそんな気がしてしまった。
「まだ眠そうですね」
クスクスと笑うその仕草は上品で。
口元に添えた手やその指の白さすらも色っぽく見える。
この子となら、ずっと一緒にいられるような気がする。
この子となら______。
「駄目ですよ?」
真剣な口調ではっきりと「駄目です」と言われると何も言えなくなる。
「大丈夫です!
貴方にはちゃんと帰る場所がありますから」
丁寧な口調で「大丈夫」と言われると、なんとなく大丈夫な気がしてきた。
まるで誘導されているような気分になりながらも、逆にそれが心地よく思えた。
「貴方なら大丈夫! 貴方なら……。
どうかその身に宿る力であの人とヒカリを助けてください。
また、会いましょう……」
その言葉に促されるかのように、強い眠気に誘われて。
彼女の言葉が聞こえた。
「次会う時には………しましょうね?」
彼女が何を言ったのかは解らない。
だが。
______その誘惑は、とても甘美に……心に残った。
「……な…い!」
誰、だ?
「目を……なさい!」
俺を呼ぶのは一体誰なんだ?
「ほら、さっさと目を覚ましなさいよ! このむのー」
ガンっ、と頭を叩かれて目を覚ますとそこは以前、金次と共に理子と会った温室のバラ園で。
俺はバラが咲き乱れる花壇の中に大の字になって倒れていた。
「ここ、は……?」
温室の中というのは解る。
起き上がり周りを見渡しても俺が倒れているのはバラ園の一部だ。
今いる場所が温室というのは解る。
だが、問題はそこじゃない。
「え、あれ? バスは? 爆弾は? 俺、撃たれたはずじゃ……?」
何で俺はバラ園なんかで倒れているんだ?
俺達が乗ったバスが最後に向かったのはレインボーブリッジでお台場だ。
女子寮の側にある温室じゃない。
爆風で吹っ飛ばされたとしても飛ばされて辿りつけるような場所じゃない。
どうなっているんだ⁉︎
混乱しながらも俺は立ち上がってから腕時計を見てみた。
時刻は午前
バスはまだ来てない時間だ。
「……あ、そうか。
夢かー。夢を見てたんだな、疲れてんなー俺」
よくよく考えてみれば、あんな事原作ではなかったし。
単なる夢を見た……んだよな? きっと。
「落ち着きなさい。残念ながらアレは夢じゃないわ。
これから起きる現実よ」
声をした方を振り向くと先ほど俺をぶっ叩いた張本人であるキリナがまるで残念な人を見るような眼で俺を見つめていた。
「はぁ? 現実……何言ってんだ?」
あんなのがこれから起きる出来事だって?
寝言は寝ていえ、と思いつつ、キリナの顔を見ると意外にも彼女は真剣な眼差しをしていた。
「まあ、そう思われても仕方ないわね。
でもこれは現実よ。現実に起きるわ」
「……おいおい、キリナ。いくら予知能力者として
「Eよ」
そう、キリナはEランク武偵だ。
変わり者が多い武偵高の中でも異端扱いされる超研の中でさえも、落ちこぼれ扱いされるほどの、そんな力しかキリナは持っていない。
「ええ、そうよ。私はEランク武偵よ。
でも誰も私の能力を知らないわ」
そうだ。キリナは予知能力を使えるとされているがそれがどんな能力なのかは誰も知らない。
予知とはそもそも不確実なものである為、正確な測定が困難なものだ。
しかし、古代から現代まで様々なところで予知能力者は活躍してきた。
身近な人だと白雪なんかがそうだ。
彼女、というより彼女の家。
白雪などが使う予知能力には予知や予兆を夢という形で知る
キリナの能力も『託』並みに不完全なものなのかもしれないな。
「キリナの能力が予知能力というのはお前が武偵高に来た時に聞いていたが、それがどんな力を秘めているのかは確かに知らないな。だけどそれがどんな能力であれ、仮にあの夢の出来事が現実で起きる事だったとしても止めようがないだろう?」
なんたって相手は姿さえ見せずに俺やヒカリを倒す化け物だ。
これがゲームならセーブポイントでセーブして勝てるまで何度もやり直す、なんて事も可能だが残念ながら現実はゲームじゃない。
死んだら普通、終わりなんだ……。
「まあ、普通はそうよね」
「だろ? だったら「でも私にはできるのよ!」は? 」
「私にはできるのよ! 私なら『なかったこと』にできるの」
「は、はあ⁇」
キリナの言っている意味がよく解らない。
いくら予知能力を持っていようと、止められなければ意味がないという事も解らないだろうか。
「大方、アンタは私の能力をただの予知能力とか思っているのでしょうけどそれは違うわ。
私の能力はただの予知能力じゃない。
ただちょっと時間を巻き戻せるだけよ」
「も、戻せる……時間を?」
困惑する俺。そんな俺をあざ笑うかのように……。
「そうよ。それが私の能力。俗にいう死に戻り。
「 は、はあー⁉︎ ちょっ、ちょっと待て!
『リセットOKな人生』? 死に戻り?
……時間を戻せるだって⁉︎」
キリナがさらっと爆弾発言した。
「SF⁉︎ タイムマシンかよ⁉︎「タイムマシンじゃないわよ」すげえ‼︎ キリナ、お前すげえよ‼︎「そ、そうかしら?」ああ、すげえよ!
『死に戻り』なんてそんな事も魔法で出来るのか⁉︎」
「魔法じゃないわ。魔法は学べば誰でも使えるもの。これは私だけの能力よ。
「魔法じゃない⁉︎ 魔法じゃないなら科学か?
カシオペアとかを持ってるのかー?
「科学じゃないわよ。固有能力よ! カシオペアって何?
それとまたさらっと女の名前出したわね、いっぺん死になさい」
ただ普通に疑問に思った事を口にしたのに、頬を膨らませるキリナ。
今の発言に怒らせる要素あったか?
「まあ、突然言われても普通は信じられないわよね。
いいわ、これを見なさい」
バラ園の片隅をキリナが指を指す。
キリナが指す指先の方向には小さな砂山があった。
小さな子供が作るような簡素な砂山。
ただ、普通の砂山とは違い山の天辺に木の棒が刺さっていて木の先端には小さな火が灯っている。
さらに砂山の麓にはアルファベットでM FSという文字が刻まれている。
「これがセーブポイント。この火が灯っている間、私の能力は有効なのよ」
「こんな砂山がセーブ……ポイント?」
「ええ、そうよ。ルールは簡単。
1、セーブポイント(砂山)を作る。
2、死ぬと自動的にその地点に戻る。
それだけよ」
無い胸を一生懸命張って告げるキリナ。
うん、張れてねえ。
「本当は誰にも言うつもりはなかったんだけど今回はバスジャックの他に、正体不明な敵に襲われるなんて今までのやり直しにはなかった不測な出来事が起きてるから仕方ないわね。
説明を続けるわよ。今言った通り私は死ぬとセーブポイントに戻れる。
ここからが大事なとこだけどこのセーブポイントを作る時に『戻り方』を設定出来るのよ。
戻り方にはいくつか種類みたいなものがあって。
今回は身体ごと連れ帰る
「か、身体ごと……あれ?
でも俺の身体は爆発で吹き飛んだはずじゃ……?」
「そうなんだけどね。私も失敗したと思ったんだけど……何故だかアンタの身体、再生してるのよ。
人間辞めてるよね、アンタ」
グサリ。
キリナの人間辞めてる発言に俺のライフは削られた。
これからは人間を辞めてる奴(キンジとか)を見かけたら優しくできそうな気がする。
というか、キンジよ。
早く人間辞めてくれ!
そして俺より目立ってくれ!
キンジが目立てば俺は平和に暮らせる。
多分。
「まあ、アンタは魔法使いだし。再生や治癒の魔法で治したとかでも不思議じゃない……かな?
魔法についてはよくわかんないけど。
どうやらキリナの中で、俺の身体が再生したのは俺が高位の魔法使いである雪姫の弟子だから、という理由で納得したらしい。雪姫は吸血鬼だから治癒魔法は苦手なんだけどな。
「うん、そうよねー。
そうに違いないわ」
「ああ、まあそれでいいや……うん」
説明したいが自分でもよくわかんないや。
だから俺の身体が再生したのは雪姫にそういった魔法を教わっていたから、という理由にしておく。
「それよりこれからどうする?」
キリナの能力でバスジャックが起きる前の過去に戻れたのは解った。
腕時計を見ると午前7時15分を指している。
バスが男子寮前に着くまであと30分は猶予がある。
バスジャックが起きたのは8時20分くらいだから……まだあと一時間くらいは余裕がある。
一時間で対策を立てられればいいのだが……。
「前回の二の舞は避けたい。相手は雲の上から魔法を放てる奴だから……魔法に対処できて空中戦を想定した戦いが出来る人の力を借りたいな。
刹那さんや雪姫に連絡をしてもいいか?」
刹那さんはともかく、雪姫は来てくれないと思うが。
立場上、教務課は介入しないはずだからな。
「うん、事件を解決するには人手がいるものね。
私も装備科の先輩達に連絡はしてみるわ。
だけどバスジャック犯の方はどうする?」
「そっちはアリア達に任せていいと思う。
本来ならアリアやレキがいれば解決出来る事件だからな。
無理に介入しようとすると前回みたいにイレギュラーが起きる可能性がある。
対処出来なさそうなら介入するが、基本的には無干渉でいこう」
前回は偶然バスに居合わせただけで襲われたからな。
二の舞を避けるなら最初から接触しなければいい。
おそらく、俺達が余計な介入をしなければ武偵殺しも予定外な行動は取らないだろう。
「バスにワザと乗り遅れるって事?」
「ああ、そうだ。理由は解らないがキンジの腕時計は壊れてないはずなのにアイツは乗り遅れてたからな。主人公補正なのか、原作通りに進めようとする世界の意思なのかは解らないが『流れ』を壊そうとしたらまた襲われるかもしれないからな。
世界の『修正力』とかで……な」
「うーん……その可能性もないとはいえないわね」
「多分、俺達が下手に介入しなければ解決出来るはずなんだ。
怪我人は出るかもしれないけどな」
頭によぎるのは頭部を撃たれるアリアの姿。
助けてやりたい。
何とかしたい。
そう思う。
だけど手を出してしまえばその矛先は自分や親しい人に向けられるかもしれない。
ヒカリが撃たれて解った。
俺は家族が傷付けられるのは耐えられない。
ヒカリを、大切な家族を失うかもしれない……あんな恐怖はもう体験したくない。
だから……俺は見捨てる。
アリアが撃たれるのを解った上で、助けないという選択肢を選ぶ。
「だけど例の襲撃者はどうするの?
アンタが言う『修正力』とかがその
「ああ、策なら……ある」
正直、ないがな。
時間がもっとあれば策を考えられるのだが……そんな時間はないからな。
せめてあと一日あれば何かしらの策を講じられたのかもしれないが。
ないものはない。
だがないとはいえない。
嘘も方便ではないが、ここは士気を上げる為にもあると言っておく。
「自身があるようね。
確かに魔法バカなアンタなら如何にか出来るかもしれないわね。
それにやられっ放しっていうのも嫌だし……」
「だろう? だったら俺達が取る行動は一つ。
目には目を。歯には歯を。イレギュラーにはイレギュラーを、だ!」
武偵ならではの返しでそう言った俺に……
「なるほど……イレギュラー(あんた)ね?
どうなるか解らないけど、全てあんたに託すから頑張りなさいよ。むのー‼︎」
キリナは俺が仲間を見捨てる覚悟を決めているとは知らずに言う。
笑顔で、グーに握った親指を立てて。
信頼した眼差しで。
「ああ、任せろ!」
俺は罪悪感に苛まれながも出来るだけ笑顔で叫んだ。
大丈夫だ!
きっと大丈夫だ!
そうさ。
きっと……イレギュラー(雪姫とか刹那さん)が何とかしてくれるさ。
緋アリ20巻を読んだ感想。(ネタバレ含む)
8倍桜花ってなんだーっ⁉︎
強い、強いって言ってた覇美をワンパンってキンジさん、マジ人間離れ人間⁉︎(今更感)
レーザー3つを同時に破るとか……哿さん、マジ人間辞めてるなー。
など、ツッコミ満載でした。
紳士が生きていたのは予想通りでしたが。
そんなことより……覇美可愛い、覇美。
猴も可愛いよ、猴も。
セーラちゃん、哿さんに下着拾われちゃったけど泣き顔がよかったよ。
もちろん、アリアも可愛い。
ようするにロリはみんな可愛い!
可愛いは正義!
でも一番は表紙の白雪だ!(ぽきゅん、ぼきゅんが……)
あれ? なんだか背後から寒気が……。