てなわけでとある吸血鬼のお話です。
次話でひなた荘編完。
アリアメインに戻ります。
「さあ、第二ラウンドを始めよう」
濃い魔力が放出されると禍々しい魔素痕を纏った男の姿が見え________そして響き渡る轟音と燃え広がる灼熱の炎。
「ふん。情けない顔をしおって……」
そんな地獄のような状況下で_____。
私は奴とミツルとの戦いを眺めていた。
私がいるのは古びた旅館の屋根の上。眼下では闇の力を纏った男と愛……馬鹿弟子の一人が対峙していた。
先ほどまでの人形との戦いは見事だった。
まだまだ詰めが甘いところがあるが私の予想では人形の障壁を破る事なく、雷の魔法で殺られると思っていた。仕方なく手助けをしてやろうと考えていたが馬鹿弟子は私の想像を超えた魔法を繰り出し見事人形を倒してみせた。
いつの間に重力魔法など覚えたんだ?
ミツルが唱えた魔法は重力と闇が混合しているようにみえた。
重力魔法を使える魔法使いはそうはいない。
私が知っている重力魔法の使い手はまだあの学園の地下にいるはずだ。
世界を救った英雄の一人。アルビレオ・イマ。
今はクウ・ネル・サンダースなどという巫山戯た偽名を名乗っているが私の知る限り、最高の重力魔法の使い手は奴を差し置いていない。
私の知らない内に、アルビレオ・イマとミツルは接触していたのか?
だとすれば何時だ?
武偵高に入る前か?
中等部の頃のあいつが何をしていたのかは詳しくは知らない。
私があいつを見たのは武偵高の入学試験が初めてだ。
能力測定の際、能力者は個別に能力に応じた試練を受ける。
攻撃系の能力を持つ者は試験官相手に手合わせ、回復系なら傷ついた動物や人の治癒、防御系なら試験官が生み出した魔法に耐えられるか、など受験生によって異なる。
ミツルは攻撃系の魔法を使うとあって試験官相手に手合わせすることになったがそこで教師連中を驚愕させた。
あいつは試験官を務めていたタカミチのぼーやに近接格闘を挑んだからだ。
そこまでならまだ……いい。
タカミチのぼーや相手なら距離を詰める戦いをするのが得策だからな。
前例もある。まだ弱かったぼーや(ネギ・スプリングフィールド)が麻帆良の武道大会でそうした戦法をとって勝利を納めている。
だから戦い方について私は驚きはしなかった。
だが、しかし……ミツル、あいつはあろうことか、私の前で闇き夜の型を発動させた。
全くもってありえない出来事だ。
それは、かの究極技法、咸卦法と対をなす技法。
使用するには闇の眷属の膨大な魔力を必要とし、肉体と魂を喰わせる狂気の技法だ。
元々、まだ弱かった頃の私が生み出したもので使える奴は私とぼーやくらいな筈だ。
筈なんだが……ミツル、何故か奴は最初から使えた。
当時、タカミチの奴はあからかさまに手加減していたがミツルの魔法、術式装填により強力な一撃を受けて大怪我を負った。タカミチだから怪我ですんだが常人なら死んでもおかしくはない攻撃だ。
結局試験は手負いのタカミチが居合拳を放ちミツルと相打ちになって終わったが教師を倒せる受験生はそうはいない。
試験後興味が湧いた私は奴とO・HA・NA・SHIをした。
会話の後なんだか疲れた顔をしていたがSSR棟の屋上に連れて行きまあ、そこでもまたいろいろあって最終的には弟子にしたわけだが……。
それにしても気に入らない。
私に秘密でこんな楽しそうな事をしていたとは全くもって気に入らん。
奴が私を訪ねて来なければわからなかったな。
偶には役に立つな、あの筋肉ダルマも。
さて、前置きが長くなったが私がここにいる理由。
それを語るには_____。
時を少し戻る事になる。
光が車輌科に(勝手に)向かった頃。
東京武偵高、SSR棟の屋上。そこにあるログハウスの中でメイド姿の女学生と口の悪い幼女人形、そしてそ奴らの主人である私はワインを嗜んでいた。
「ふむ。やはりワインはフランスの物がよいな」
「クケケ。ワインヨリ、アイツノチノホウガスキナンジャナイカ?」
「確かにそうですね。マスターはミツルさんの事が大好きですから。この前血を吸った時も……」
「余計な事を言う口はこの口かー?この口だな」
ムニュ。ムギュムギュ。
メイドロボ、茶々丸の頬を両手で摘んで引っ張る。
口の悪い人形、チャチャゼロはすっかり見慣れた光景(毎度のことだが悪いのはコイツらだ)に口は出さず「ケケケ、ババアガテレテルナー」などと呟いていた。口の悪い人形めが、一体誰に似たんだか……。
チャチャゼロの態度にイラついていると玄関の扉がノックされた。
ええい、こんな時に誰が来やがったんだ。
茶々丸を解放して玄関に行かせる。しばらくすると茶々丸の奴が珍しく笑い声をあげていた。
「マスター。お客様がお見えになりました」
「客だと……誰だ?」
「それが……」
茶々丸の返答を待つ前にソイツは人の家の中にヅカヅカと上がり込んできた。
「よう。来てやったぞ、ロリババア」
私の前に現れたのは全身筋肉のダルマ男。
こいつの顔を見るたびに昔イカサマで取られた
「ジャック貴様……何しに来た?」
イラついていた気分がさらに悪くなった。
「おいおい、せっかく来てやったのにあいかわらずの態度だな、オイ」
溜息を吐くかと思えば変顔をしだす馬鹿な男。
一見馬鹿っぽい(実際馬鹿だが)奴の名は、ジャック・ラカンという。
こことは異なる世界。魔法世界の住人で伝説の傭兵剣士、
《千の刃》、《つうか、あのおっさん剣が刺さんねえーんだけどマジで⁉︎》などの様々な二つ名を持つ最強の元奴隷剣士でその強さはありえないほど強く、常識では考えられない事を平然と行なう。
理論上では脱出不可能な空間を気合で破ったり、全身からおかしな光線出したり……私が言うのもなんだが規格外な奴だ。
最早チーターだと長谷川などは言っていた。(ぼーやは究極の努力の人と言っているが……)
「んだよ、せっかく遠路はるばる来たのに麻帆良にいねぇし、じじぃに聞いたら東京にいるって言ったから来てみれば……随分な扱いだな」
「ふん。貴様などと馴れ合う気はない」
馬鹿の顔など見たくないわ。
「まあ、俺は同窓会に参加するついでに来たからいいんだけどな……ってか、聞いたぜ?」
同窓会?
なんだそれ?
というかそのニヤついた顔、今すぐ辞めろ!
「何をだ?」
ニヤつき顔を睨みつけてガン見してやるとラカンの馬鹿はニヤついたまま、奴が知らない筈の事を聞いてきた。
「新しい弟子取ったんだろ」
「何故貴様が知っている⁉︎」
一体誰がこの馬鹿に喋ったんだ?
奴の顔がいい獲物(からかいの対象)を見つけた者の顔つきになった。
「いろいろと噂になってんぞ。
ボーズの事もあるし、どんな奴かちょくら見にきた」
「余計な手出しするなよ」
「それは相手次第だな……」
この馬鹿と関わらせたらミツルの奴に悪影響を与えかねん。不本意で面倒だが私が護ってやらねば……。
「ぼーやにしたみたいな無茶な修行はさせんぞ」
「金さえ払えば俺は誰にも稽古してやる。
今なら300万ドラグマでエターナルネギフィーバーとラカンインパクトを教えてやろう」
「……あんなのできるのは貴様くらいだろうに」
気を纏って凝縮させて飛ばすのはまだしも、全身からおかしな光線を出せるのは目の前のこの馬鹿くらいだ。
「そうか?」
首を傾げる
此奴は自身がバグで出来てるという自覚をいつになったら持つのだ……まあ、今さらだがな。
「まあ、稽古(手出し)するかどうかはまずは会ってみないとわからんな。
さてと俺は行くがババアはどうする?」
顔を再びニヤつかせ、奴は私に付いてくる気があるか尋ねた。
この馬鹿は私に喧嘩売ってるんだな?よし買ってやろう。
「そうか、氷漬けにされたいんだな?」
「はー。素直じゃねえロリバアさんだな」
「
眠れる永劫……」
「マスター止めてください「ええい、離せー茶々丸。この馬鹿は氷漬けにせんとわからんのだ!」落ち着いてください。その魔法を使われたら私や茶々ゼロも一緒に氷漬けになります」
「ぬ……そうだな」
「オイオイ……マキゾエデトジコメラレルトカ、カンベンダゼー」
失念していた。筋肉ダルマはどうなってもよいが茶々丸や茶々ゼロはいなくなっては困る。
べ、別に寂しいとかそんなことは思わん。
ただ、家事できる奴がいないのは困るからな。
まあ、いざとなればミツルにやらせるが……文句いいながらもなんだかんだ言ってやるしな。あいつは将来いい主夫になるな。
「ふん。茶々丸達に免じて許してやろう。
行くぞ、さっさと来い」
「素直じゃねえなー」
「ケケケ、ババアハアイツノコトニナルトカホゴニナルカラナー」
駆け出した私の背後からチャチャゼロの呟きが聞こえたが聴き取れなかったことにしてやろう。
過保護とかそんなこと、ありえん!
で、到着したわけだが……何をしているのだ、あの馬鹿弟子は。
ネギのぼーやや神楽坂明日菜がいるので手を出す気はないがこれはかなりまずい状況だ。
隣に座る
「……筋肉ダルマめ、どこに行った?」
「マスター、ミツルさんが倒しました」
「お?」
視線を眼下に向けるとミツルの奴が雷を操る似非フェイトを手に持つ黒い刀で突き刺すところだった。
「ふん。まだまだ甘いな……」
「その割には嬉しそうですが……」
「余計なことをほざく口はこれだなー。この、このー」
茶々丸の頬を摘んで左右に引っ張る。
まるで本物の皮膚みたいで気持ちいい。
やるなーハカセ。
ロボらしさが感じないがこれはこれでいい。
「ユリッテルトコロワルイガ……ヤバイゼ、アレ」
誰と誰が百合るんだ⁉︎
とチャチャゼロに突っ込みを入れる寸前になって気づいた。
全身から嫌な汗が出てきた。
なんだこの感じは……来る。
「もう、会える頃と推理していたよ」
突然現れたソイツは呆然とするミツルの方に歩を進めてきた。
全身から発する圧倒的な気迫。
これに似た感じを昔、魔法世界の祭壇で感じた。
此奴の気配は何処か
アレはマズイ。
ミツルには荷が重い。
すぐ様動こうとしたが私の肩を掴む奴がいた。
「まあ、待てロリババア」
「ジャック、貴様なんの真似だ。
それに何処に行ってた?」
私を静止したのは筋肉ダルマだった。
奴は何処から手に取ったきたのか、その手にはバナナを握っていた。
……まて、そのバナナどうした?
「ちょくら探検と人助けをなー」
「貴様が人助けなんてするわけなかろう」
騒動を起こしたの間違いだろ。
今度は何をしでかしたんだ?
「随分な言いおうだな、このロリババア。ちょくら密林部屋からメカを掻っ払ってきただけだが?」
得意げに背中に担いだ着ぐるみのようなメカを見せてきた筋肉ダルマ。
メカにはミサイルやらゴツい武装やらが付いていた。
「臨時とはいえ武偵高の教師を務める私の前で盗みを働くとはいい度胸だな、オイ……」
「借りただけだすぐ返す……ふん、よしちょっとサイズがキツイが何とか着れたな。
拳だと手加減しにくいからこれなら遊んでやれるな。
それじゃあ俺はあっちの
龍樹だと⁉︎
古代龍が何故いる?
辺りを見渡せば巨大な魔法陣からどデカイ召喚獣が三体出現していた。
奴らはこの辺りを灰塵にする気か。
「ちょっ、待てジャック……あの馬鹿、勝手に行きおって……。
ふん。まあ、いい。言われんでも死にそうになったら助けてやるさ……」
筋肉ダルマはさっさと行ってしまったが問題ない。
私一人で助けは十分だ。
まあ、そうそうあの馬鹿弟子なら殺られることはないとは思うがな。
……なんて思っていたさ。
ミツルが戦っている相手。奴が術式装填なんかしなければな。
「仕方ない……面倒だが助けてやるか」
「マスター……ツンデレるのはほどほどに「喧しいわ!」」
活動報告にてストーリーに関するアンケート実施始めました!