闇の魔法を使える武偵っておかしいか?   作:トナカイさん

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某伝説の傭兵剣士の強さ表作ろうかなー。と思ったんですが、ある事に気づきました。
詳しい事は活動報告に書いたので答えられる方、案や意見をお願いします。

あと最期の『火のアーウェルンクス』のセリフは完全に作者の妄想です。
公式的に彼が好きなものではありませんのであらかじめご注意して、ご覧下さい。


装填17絶望の中で見つけた光。

雷鳴が迅り、ネギの身体はほんの一瞬で、炎を操る白髪の少年の真後ろに移動し、ネギはそこで右手を振り下ろし、強烈なボディブローを加えた。

ボゴォン、という鈍い音が聞こえ、すでに腹部に穴が空いていた少年の胸部に、ネギの正拳が突き刺さった。

ゴプっと口から液体を吐き出した白髪の少年、クゥァルトゥム・アーウェルンクス。

『火のアーウェルンクス』とも呼ばれている少年。

ラテン語で4番目という名を持つ彼は、肉体を、胸や腹を貫かれても尚、戦意を喪失させることなく、最期まで抗う仕草をした。

ネギがいればどうにかなるなー。とすっかり空気と化していた俺だが、そんな俺にも重大な任務が入った。

攻撃を加えてしまったネギはそんな『彼』に向かってなにやら、言葉を投げかけた。

俺からは2人との距離が離れていた為に、ネギと彼の声を直接聞くことができなかったので探偵科で習った武偵スキルの一つ。読唇術を使ってどんな会話をしているのか読み解いた。

探偵科で習ったばかりだが自信はある。

死神のノートを使って殺人をするような犯罪者相手だって読めるな。

自信満々で相手の唇の動きをよく観察して解いていく。

脳内でアンサートーカーが警告表示を出していたが、危険はないと判断して読む。

何故か読心術や読唇術には反応しにくい能力なので自力で解き明かすしかない。

 

 

(ミツルの読唇術で読んだ場合)

 

『何故、何故ですか。僕は貴方の事を忘れられないんだ。世界中で一番大好きだったんだ!愛していたんだ!ううん、違う。今もまだ愛しているんだ!どんなに離れていても、敵対していても世界中の誰よりも……』

 

 

 

(現実)

 

『何故、何故ですか。もう僕達は争う理由はないじゃないですか!魔法世界は救われる!火星の緑地化は進めています。もう《完全なる世界》の術式を発動する理由はないんです?

なのに何故貴方は……』

 

俺は読唇術を使ったことに、読唇してしまったことを後悔した。使うんじゃなかった。知ってはいけない禁断な秘密を知ってしまった。

これからネギにたいして、どうやって接していいのかわからなくなってきた。

 

「何やってんのよ!馬鹿ミツル!」

 

________スパァーンっと誰かが俺の頭をハリセンでぶっ叩いた。

痛ぇな、誰だよ。馬鹿力でぶっ叩いた奴は。そんな風に思いながら叩かれた頭を摩って、顔を上げると、目の前に俺をぶっ叩いた張本人。神楽坂明日菜がいた。

 

「痛えな。何すんだよ」

 

俺がそう言うとアスナは手に持つハリセンをもう一度振り上げ、勢いよく俺の頭をぶっ叩いた。

アスナが持つハリセンは、彼女がネギと仮契約(パクティオー)したことで得た魔法具(アーティファクト)で大剣とハリセンの形態を自在に交換できる。

その能力は、彼女自身が持つ魔法無効化能力(マジックキャンセル)の武器版だ。

魔法障壁を展開してても、気を纏いガードしても防ぐことは出来ない。

実に魔法使い泣かせな能力だ。

まあ、弱点もあるけどな。

けど、ハマノツルギはともかく、封魔の剣(ホウマノツルギ)はどういう効果があるんだ?

残念ながら火星から地球を救った劇場版は観ていないからよくわからないんだよな。

この際、聞いてみるか。

 

「なぁ、アスナ。アスナが使……⁉︎」

 

アスナに声をかけた瞬間、殺気を感じた。

アスナは気づいていない様子で首を傾げているが、この殺気を向けてくる奴らは只者ではない。あくまで直感でしかないが、かなりの強者だ。

 

俺はアスナを自分の方に抱きしめる形で寄せ(アスナは突然抱きしめたことに怒ったのか顔を赤くしたが、今は聞いてる場合じゃない。今すぐにやることは状況の把握だ)、周囲を素早く見渡した。

すると背後、俺らから50mくらい離れた所と右斜め前、左に30m離れた所に突然、黒い球体が現れた。

俺の左側に、雷の能力を操る、『風のアーウェルンクス』が突如あらわれた。

嫌な予感がしたので右斜め前に視線を向けるとそこには……。

 

ゴスロリの服を着た白が特徴な女神鳴流剣士『月詠』がいた。

背後を振り返ると、女性型フェイト。『水のアーウェルンクス』までいた。

 

……完全に囲まれたな。

 

『あ、コレ、詰んだなー』と思いながらも抱きしめていたアスナを放し、風のアーウェルンクスを、睨みつけながら問いただした。

 

「何故お前ら、『完全なる世界』がいる?」

 

〈完全なる世界〉(コズモエンテレケイア)

3年前まで存在していた秘密結社。

地球の各地や『魔法世界』で様々なテロや戦争を起こした犯罪組織。

 

ネギま!の原作で最期は雪姫の超絶封印白薔薇魔法によりボス以外の幹部を氷漬けにし、アスナとネギが封魔の剣を振るい、『千の魔法を使う男』に取り付いた『始まりの魔法使い』を滅した(逃がした?)事で解散した筈の組織だ。

 

雪姫に以前聞いたが、『始まりの魔法使い』の行方については今だ調査中だと聞いていた。

 

まさか、奴らが目の前に現れるなんて想定外だ。

はっきり言って、『勝てない』。

今の俺ではコイツらと戦りあっても勝負にすらならない。

絶望的なくらい差がある。

何故なら原作でもフェイト・アーウェルンクスと同レベルの強さを持っていたからだ。

某伝説の傭兵剣士による強さ表によると……その強さは推定10000以上。

闇の魔法を、俺が今使える最強の呪文『雷の暴風』を術式装填しても無理だ。勝てない。

強さ表によると、イージス艦で強さ1500程だ。

それを考慮して考えると……。

無理だ。勝てない。逃げろ!

頭の中で、心の中の自分がそう叫んだ。

自分の事ならよくわかっている。

そもそも、俺は自分から積極的に行くタイプじゃないだろ?

無理だ。めんどくせえ。戦ったら、動いたら、疲れるだろう?

やめよう。逃げよう。そうだ。それがいい……。

 

頭の中で、俺は自分に向かってずっと同じ事を言っていた。

 

だか、隣でアスナがハリセンを大剣にして構えたのが目に入った。入ってしまった。視えてしまった。目についてしまった。なら、『逃げる』という選択肢は消えた。

同時に、頭の中に、女神とアリアに言われた言葉も思い出した。

 

『無理、疲れた、めんどくさい。これらは人間が持つ可能性を封じ込めるよくない言葉。

言うのは禁止』だと。

 

それに……。

 

もっと単純で……。

 

わかりやすい行動を起こしたくなった理由。

 

それは……。

 

 

「女が戦おうとしてるのに、『男』の俺が先に逃げるわけにはいかねぇよな……」

 

そうだ。俺は『男』なんだ。

『女』を、『女性』に戦いを任せて自分だけ逃げるなんていう事はできない。

これでも、元極道だしな。(前世では)

 

俺は、制服の内ポケットに入れていた、愛銃を取り出して、安全装置を外し、それを敵の一人である女剣士に向けて放った。

当たらなくてもいい。躱されてもいい。

どんな強者であろうが、拳銃の弾を防ごうと、あるいは、躱した直後には隙ができて必ず動きは止まる。

その時がチャンスだ。

俺は《瞬動術》を使い、月詠の背後に回った。

その無防備な背中に一撃を加えようとしたが、その時。

仲間である『風のアーウェルンクス』と『水のアーウェルンクス』が同時に動いた。

『風のアーウェルンクス』はネギと同じように雷化していて、俺より速く動くことができている。

俺が月詠に一撃加えるより速く、俺の腹部に蹴りを入れてきた。

 

「ぐッ……⁉︎」

 

強烈な膝蹴りが腹部に入り、俺はあまりの痛みに気を失いかける。

その場に、硬い土の上に、ひなた荘の庭に倒れそうになるがなんとか片膝を立てて踏ん張った。

常人なら今ので跡形もなく吹き飛んでいてもおかしくない。

 

「けほっ、けほっ……痛ぇな!」

 

痛む腹を抑えながら立ち上がると俺が立ち上がることは想定していなかったようで、『水のアーウェルンクス』はアスナに視線を向けていたせいか、隙だらけだったので、『風のアーウェルンクス』の攻撃を回避しつつ、近づいた俺は彼女の手前で《瞬動》を使い、運動エネルギーを増して勢いをつけて、その身体に向けて魔力を込めたストレートパンチを叩きこんだ。

 

ただの魔力を込めたちょっと強いパンチだったが、至近距離から放ったせいか、魔法の矢より威力は落ちるものの、それでも少しはダメージが入ったようだ。

 

『水のアーウェルンクス』の意識が逸れた隙を狙い、アスナがハマノツルギで『水のアーウェルンクス』の胸を貫いた。

『風のアーウェルンクス』が邪魔しようとしたが、咄嗟に『闇き夜の型』を発動させた俺が彼の行くてを阻んで、アスナと『水のアーウェルンクス』が一体一になる状況を作り出した。

そして、俺は『風のアーウェルンクス』と『女剣士』の2人を相手にするつもりで立ちはだかった。

 

絶望的だ。

目の前の相手には到底敵わない。

それは変わらない。

だけど……。

 

 

「よくもったな。

後は任せとけ!」

 

「後は我らに……」

 

「ミツル殿はゆっくり休むでござる」

 

「よくやったな……少年」

 

「ミツルだけにええかっこはさせんでぇ〜」

 

素子。刹那。楓。マナ。小太郎の5人が動けるようになったのか、そう声をかけて、俺の隣に並んでくれた。

 

そうだ。そうだった。

 

俺は……『俺達』は1人や2人じゃない。

 

『仲間』がいるんだ!

 

『武偵憲章第一条。仲間を信じ、仲間を助けよ!』

 

俺達は。俺は……今は『武偵』なんだ。

あの頃の『ヤクザな自分』でも、『無力な自分』でもない。

俺には『今』、『護り、助け合いたい仲間』がいる。

1人じゃない。

 

そう思うとどんなに目の前の相手と差があろうが、絶望感があろうが不思議と『大丈夫!』と思えてきた。

 

「呪文の詠唱に入りますから、時間稼ぎお願いします」

 

そう目の前の頼もしい『先輩』や『同級生』に言うと、彼女らは当たり前とばかりに口を揃えて叫んだ。

 

「「「「「「任せろ(なさい)!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が呪文の詠唱に入った同じ頃、ネギは『火のアーウェルンクス』にトドメを刺そうとしていた。

本当ならそこまでするつもりも、必要もなかったが、彼が抵抗して自身の能力で作り出した『爆発する火蜂』を大量に発生させ、あろうことか無関係な筈の『ひなた荘』を燃やす勢いでいるために彼にとって不本意だがトドメをさして終わらせようとしていた。

 

「ふ、また勝てないのか……。

所詮は人形。主に調整をしてもらわなくては変わらない、な……」

 

「貴方は人形じゃない。

前に言った筈です。人形でいる必要はないんだって!」

 

ネギは顔を歪ませながら、全てを終わらせる為の呪文を発動させた。

 

「もし、次があれば……次があるなら、その時は一緒に紅茶を……ミルクティーを飲みましょう!」

 

『火のアーウェルンクス』は苦笑いを浮かべながらこう返した。

 

「俺はカレーしか飲まない!」

 

その言葉に、ネギも彼も笑い合い、両者最期は笑顔のまま別れた。

 

「さようなら……千の雷‼︎」

 

電撃系最高呪文。『雷の暴風』の実に10倍の威力がある広範囲殲滅呪文が彼に炸裂し、彼は塵となって消滅した。

 

 

 

 

 

 


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