今回は魔法探偵……ではなく魔法武偵になった少女の話です。
???
「……ハアハアハアハア」
激しく息を乱しながら暗闇の中を走っています。
駆け出す最中に何度も何度も転んでしまいました。
「くぅ……ハアハア。マズイです。早く外に出ないと……」
岩や硬い地表の天井や壁を触りながら私は外を目指して暗闇の中を駆け抜けます。
「マズイです。浦島先生と
彼らとの戦闘で持っていた荷物や装備品を落としてしまうというミスを犯した私は唯一残された初心者用の杖を片手に探知呪文を使って地上へと繋がっている道を選んで進んで行きます。
「こんなことになるなら猫探しの
タタタッと駆け出しながら進む私の背後から突然炎を纏った蜂が数匹飛んできました。
「……ッ⁉︎」
間一髪で気づいた私はその蜂から逃れようとして頭を下げましたがそのまま勢いよくズザァァと地面に頭から滑るようにヘッドスライディングをかましながら倒れてしまいました。
今のスライディングで手足を擦りむいたが気にするほど重症な怪我は負っていません。
蜂はさっきまで私の頭上があった場所で爆発しました。
痛みに耐えながら起き上がると音もなく
「な、何故貴方がここに……」
私の質問には答えずにソイツとソイツの仲間である眼鏡をかけてた白いロリータファッションに身を包んだ神鳴流の女剣士と黒い長髪で口にキセルを加えたちょっと陰険な感じがする少女は私を拘束しようと近づいてきました。このままでは捕まる。そう思った私は《遅延》させておいた魔法を解放しました。
「
土埃を発生させ、目くらましをしてから逃走を計ったがそんな子供騙しにかかるほど彼らは甘くありませんでした。
「ふん。無駄な事を……」
「そないな技で逃げられるわけないやろ〜」
「ふー。退屈ねー。いい毒薬も持ってなさそうだし……後は貴方たちに任せるわ」
「貴様……また何もしない気か……。
いくら貴様が我が主と協力関係にある
「くだらない。貴方をそこの女共々毒してあげてもいいのよ?」
「まぁまぁ、落ち着きません……皆さんやらないならウチが貰うてもええか?」
「ふん、好きにしろ!ただし30秒だ。30秒以内に殺れないのなら燃やしてやる!」
「そうね。3分待ってあげるわ。3分逃げきれたら毒してあげる」
「結局みなはんやる気やないか〜。まぁ、ええわ。ほなウチからいくでぇ〜」
背後からそう言った奴らの一人は私に向けて日本刀を横に振るってきました。
「斬空閃」
曲線状に気を放って敵を斬る技をその
私はとっさに竜牙兵を召喚して防御させたが竜牙兵は一撃で斬り裂かれ技の衝撃によって5〜6mほど吹っ飛ばされました。
「うっ……」
岩に全身を強くぶつけてしまったが倒れたままでは危険だと思い、痛む体を無理やり動かす為に魔力によって身体能力を強化しました。
狙われているという殺気を感じ、すぐにその場を飛び跳ねたが私が飛び跳ねたタイミングとほぼ同時に女剣士の声が聞こえました。
「斬鉄閃」
螺旋状に気を放って、敵を斬る技が私がたった今までいた場所に直撃しました。
私がたった今までいた岩場は大きく抉れ瓦礫が散乱しています。
もし回避できなかったら潰れたトマトやふ⚪️っしーの梨汁⚪️ッシャーみたいに潰れされた上に真っ赤な液体が飛び散るくらいに悲惨な光景となっていたです。
「状況は最悪です。襲撃者が一人ならまだしも複数人いてその中に奴らがいるなんて……。
正直私一人では荷が重いです」
襲ってくる月詠の攻撃を回避しながら私は今おかれている立場と状況を頭の中で整理しました。
奴らは昔より凶暴性が増してますね……。
昔は『制限』がかかっていたようですがさっき殺す感じで襲ってきましたし……。
誰かが人間を殺せるように『調整』し直した?
誰が?
奴の強さはどのくらい変わっているんでしょう……。
昔、
あの時、フェイトが裏切らなければ私達は消されていたかもしれません。
『リライト』で『完全なる世界』の術式の中へ……。
それほどフェイト並に厄介な奴らなのです。
さて、困りましたね……どうしましょうか。
奴が起動してるということは
ですが少なくともエヴァさんクラスの術師が関わっていると考えた方がよさそうですね。
そんな風に考えながら月詠が繰り出す神鳴流の気を使った斬撃を避けていると私の周囲3mを取り囲むように蜂が覆いつくしました。
その数、じつに30匹ほどです。蜂は私を取り囲むとボッボボという発火音と共に一斉に燃え始めました。私はすぐ様防御結界を展開する為にアリアドネーで使っていた長剣を呼び出しました。
呪文を唱えると魔法陣が展開し魔法世界にあるアリアドネー騎士団の魔法剣が出てきました。
私はすぐ様着装し防御結界を展開しました。
「アリアドネー九八式 瞬時絶対対物小隊結界!!! 」
剣を回転させながら呪文を唱えます。
剣を防御に使い、飛んできた蜂の爆発から身を護ります。
身を護りながら事態を打開する為に、一瞬の隙を生み出す為に、攻撃呪文の詠唱を始めます。
「
呪文を唱えると魔法陣が展開され数10本の魔法の槍が出てきました。
「
魔法の槍を
「やっぱりです……。予想通りです」
私はそう言いながら次の手を撃つことにしました。
今までただ闇雲に逃げていたわけではないのです。
私が逃げていた方角には秘策があるのです。
「鬼さ〜ん〜こちらです!」
ワザと挑発しながら身体強化した身体で走りながら敵3人を誘導した。
背後から放たれる気を使った斬撃やら気弾やら火魔法やらをかわしながら進んで行くと天井が高くなり開けた岩場のドームみたいな広い空間に出ました。
ようやく戻ってこれた。ここは発掘現場で私達が彼らに襲われた場所でもあるのです。
ドームの中央に立つと私はまず床に落ちていた私の愛銃であるクリス ヴェクターを拾いマガジンに特殊な弾を装填します。
この弾は対超能力者用に開発された物で特に魔法使いに絶大なる効果があるものです。
開発には中学時代の友人数名が関わっていて、
「ここまでです!」
「何がここまでなんだ?」
「もう降参ですか〜?」
「捕まって堕ちる魔法少女もいいかも……ネタができたわ」
「魔法探偵……いえ、今は
いざ尋常に勝負です‼︎」
私はそう名乗りをあげ3人組に向け手に持つ銃、
私の銃に使う弾丸は.45ACPを使っていてマガジンの装弾数は30発入るのです。
そのマガジンに入っている30発全ての銃弾を全て特殊弾に変えました。
銃口から放たれた弾丸はまず火のアーウェルンクスの魔法障壁に当たると魔法障壁が強制解除され、彼の身体にも銃弾が幾つも命中しました。
被弾した彼は呻き声をあげ、私を睨みつけながら呪文を放とうと魔法を発動させようとしましたが魔法は発動しませんでした。
被弾した彼からは大量の魔力が消失しています。
「これは……⁉︎」
彼は驚きの声を上げました。無理もないです。彼からは魔法の力が失われたわけですから。
切り札を使うことになるとはこちらとしても予想外でした。
女剣士の方を見ていると銃撃した際に弾みでかけていたメガネが落ちたようで『眼鏡〜眼鏡〜』とまるで一昔前のコントみたいなことを言いながら地面を這いつくばっているです。
黒髪少女は何やらスケッチブックを出して絵を書き始めたです。
なんとも自由な人達です。
「時間もあまりないことですし、さっさと終わらせるです!」
あの弾は長くても3分しか効果が出ません。
あの弾の名は新開発されたばかりの『魔力消失弾』と言います。
まだ試作品なのです。
『魔法禁止弾』をベースに武偵用に開発された物です。
私は逃げまどう中で遅延させておいた魔法を解放して彼に向けて放ちました。
「これで終わりです!」
ゼロ距離から私が今撃てる最大の雷系呪文を放ちました。
「
_____ドオォ____ンという爆発音がなり響きました。
爆風により、辺り一面は土埃に包まれ岩と土でできた壁や天井は崩れ落ちました。
もの凄い威力です。
さすがは大呪文。ゼロ距離とはいえとんでもない威力です。
さすがにあの人形でもこれほどの威力ならただではすまないでしょう。
そう思い土埃が晴れたあと、彼の姿を探すと彼はお腹の部分に穴を開けた状態で立ち上がりました。
「まだやるですか?」
私は彼に銃を向けましたが彼が喋るよりも先に聞いたこともない男の人の声が突然聞こえてきました。
「やめたまえ!
今の君の状態では彼女には勝てないよ?」
私と彼の間に突然その男性は現れました。
「貴様……」
「はじめまして、というべきかな?」
彼はそう私に声をかけてきました。
私と男性を睨みつけてくる彼を無視して……。
「やめたまえ、君の攻撃は僕には当たらないよ?」
彼が手を動かしましたがその男性からは見えない位置、男性の背後で動かしたにも関わらずその男性はまるで背後を、死角を見えているかのようにそう言いました。
「何故攻撃していないのにわかる?」
「初歩的なことだよ……
チッチッチと右手の人差し指を回しながらそう答えるスーツ姿の男性。男性は左手にステッキを持っています。
「推理したからだよ……予知とも言っていい。
もっとも、私の物は推理や予知を超えた物だけどね」
「予知⁉︎」
「予知だと⁉︎」
「そうとも。
私はこれを
「条理……予知?」
「貴様、一体なんのつもりだ?
主との同盟を忘れたのか?」
「もちろん覚えているとも……ただ、君達の都合で僕の計画を狂われされたくないからね。
僕の曾孫が育つ為には彼女、夕映君の力が必要なんだ。
だからここで君達に夕映君を殺らせるわけにはいかないんだよ。
もっとも、殺られそうなのは彼女ではなくて君達の方だったがね……」
「ふっ、ふざけんなー!」
「騒がしいのは嫌いだよ。
また
謎の男性はそう言っていつの間にか、手に持っていた銃で彼を撃ちました。
撃たれた彼は黒い球体に捕縛され、一瞬にして消えました。
「さあ、君達はどうする?」
残りの少女達に問いかけると黒髪の少女も女剣士もその場から魔法を使ったように忽然と消えました。
「……君ももう帰りなさい。
遅くても
そう言った男性、謎の紳士は先程の彼女達のように忽然と姿を消しました。
まるで転移魔法を使ったかのように忽然と……。
2時間半後、散々彷徨って道に迷った私は元の場所に戻ってドームの崩れた天井を登り地上に出るとそこは古い旅館のような場所でした。