『アンケート実施』と書いてある場所です。
レインボーブリッジなどの湾岸地帯がよく見える。
隣の空地島は今は何もないが来年には宇宙軌道エレベーターの建設が予定されている。
ここから眺める湾岸の眺めは最高だ!
「
事務局長のネギ・スプリングフィールド氏によると……」
ニュースが流れるテレビからは麻帆良に建設中の軌道エレベーターや火星を映した映像が流れている。
「ネギも大変だな…。
火星か……。
高畑先生を通して交遊ができた薬味少年の事やあっちの世界の事を考えていると扉が開閉する音が聞こえ、四部屋ある個室の一室からアリアが出てきた。アリアは右手に『松本屋』と書かれた紙袋を持っている。
「あら?ミツル、あんた来てたの?」
「ああ。部屋に居ても暇だしな。
金次ならコンビニ行ったぞ」
「む?ちゃんと桃まん買ってくるかしら?」
手に持ってるその袋はなんなんだよ。そう思いアリアに聞くと。
「これは
時刻を確認したがすでに3時は過ぎている。
「あたしが欲しいのは
桃まん食べ過ぎだろうと思ったが指摘したら
天気予報が載っていたので確認すると台風1号が沖縄に上陸しているようだ。
新聞をペラペラ捲りながら読んでいるとリビングの戸が開かれ、この部屋の主である遠山金次が入ってきた。
『太平洋上で発生した台風1号は、強い勢力を保ったまま沖縄上空を北上しています』
入りっぱなしのテレビからはアナウンサの声が聞こえ、沖縄市街地の様子が映し出されていた。
「遅い」
ソファーに腰掛け鏡を見つめていたアリアが金次に文句を言い放った。
「どうやって入ったんだ」
金次はそう言いながら俺を睨んできたので誤解を解くことにした。
「俺は知らない。
俺が来た時にはすでに中にいた」
「じゃあ、どうやって……」
どうやって入ったんだと金次が聞く前にアリアは「あたしは武偵よ」と無い胸をはって言った。アリアの事だ。
どうせピッキングかカードキーを偽造したんだろう。
「カードキー造ったのよ」
「偽造すんなよ」
「レディを玄関先で待ちぼうけさせる気だったの?許せないわ!」
「逆ギレするような奴はレディとは呼ばないぞ、でぼちん」
「でぼちん?」
「額のデカイ女のことだ」
「あたしのチャームポイントがわからないなんて!あんたいよいよ本格的に人類失格ね」
金次にそう言ったアリアはイタリアの雑誌にモデルとして載ったことを自慢げに話すと鼻歌を歌いながら鏡に視線を戻した。
金次は洗面所に行き手を洗いながら「さすがは貴族様。身だしなみにもお気を遣われていらっしゃるわけだ」と嫌味ったらしくアリアに言った。
するとアリアは……。
「……あたしのことを調べたわね?」
何故か嬉しそうな表情を浮かべ金次がいる洗面所に入って行った。
俺はそんな2人が入った洗面所をチラッと見て関わる必要はないなと判断し、視線を新聞に戻した。
「ふむふむ、国民的アイドルK泥酔して公園で全裸……そういやこんなのあったな」
懐かしい事件や文化芸能の記事を読んでいると洗面所が騒がしくなった。
うるさいな。何を騒いでんだあいつらは。
「だから、あれは不可抗力だっつってんだろ!それにそこまでのことはしてねぇ!」
「うっせぇーなー!何を騒いでんだよ?」
うるさいので仕方なく洗面所に行くとアリアは。
「ミツル。あんたは認めるわよね?」
「なんの話だよ⁉︎」
「なんか、アリアの奴が初めて犯人を逃がしたんだと」
「へぇー。金次をかー」
「ちょっと待て!さらっと俺を犯人呼ばわりすんな!」
「確か99回連続逮捕してたんだろー。
「俺は犯罪者じゃねぇ!」
「……2人よ」
「2人?」
「あたしが逃がした犯人はあんた達2人よ!」
「「ちょっと待て!金次(光)はともかく、俺は犯罪者じゃねえ!」」
まったく、失礼な奴だな。金次の馬鹿はともかく俺が犯罪なんてするわけないだろ。
「強隈したじゃないあたしに!あんなケダモノみたいなマネしといて、しらばっくれるつもり⁉︎このウジ虫共!」
「「だからあれは不可抗力だってんだろうが‼︎」」
あれは事故だ。悪いのは脱がせた俺じゃなく、脱がす原因を作った金次だ。
「なあ、俺悪くないよなー親友?」
「ああ。ただの事故だしなー心の友よー」
うんうん。だよな。
そうだよな。
というわけで……。
「「あれはこいつの命令で……‼︎」」
お互いの顔を指差す俺と金次。
くっ……金次の奴。自分の事を棚に上げて俺に擦りつける気だな。
ヒスってないはずなのに狡猾な奴め。
「あー!もう、うるさいうるさいうるさーい!
とにかくあんた達明日、強襲科に来なさい!」
アリアは真っ赤になりながら俺達を交互に指差した。
「嫌だ!」
「断る!」
「ミツル。あんた来なかったら雪姫先生に借りたDVDばらまくから」
「はっ?」
「ミツルのこの一年間の醜態が記録されてるのよね!」
「なんでお前が持ってんだよ」
「決まってるじゃない!
借りたからよ。
残念でしたー、べー」
あっかんべをするアリア。
「今日、教務科に行ったら雪姫先生が貸してくれたのよ」
「あ、あの馬鹿教師…」
「ショックでパニックるミツルの顔を見たいって言ってたわ」
まずい、あれはまずい。なんとしてでも取り戻さないと。
アリアは金次に迫っている。
「あんた入試の時の成績Sランクだった!
直感だけどあんたとミツルはただの武偵じゃない。
特殊な条件下で何かしらの方法で力を発揮するタイプね」
鋭い、推理は苦手なアリアだか持ち前の直感力を発揮して調べたらしい。さすがは
その直感力は本物だ。
「金次とミツルはあたしと同じ
「よくない。何で俺なんだ」
「まあ、俺は『魔法拳士』だから前衛でもいいけど……」
魔法使いには二つのタイプがある。
後方から火力が高い魔法を放つ、まさしく砲台のような(魔法使い本来の)役目の『魔法使い』と前衛で詠唱を唱えながら肉弾戦で闘う『魔法拳士』の2種類が、な。
俺は右指の中指に嵌めている白い指輪を見つめた。
この指輪は雪姫から貰った物だ。
魔法の発動体になる物らしい。
弟子になった日にくれたから他の杖を使わずにずっとこれを杖にしている。
「金次、
うわ〜。アリア凄い事を言っている。
金次に何でもするって、それ性的にほにゃららすることだぞ?
普通の男なら今の台詞言われたら押し倒すくらいするんじゃないか……。
まあ、金次に限ってそれはな……いとはいいきれないな。
金次、ロリコンだしな。
現にアリアに馬乗りされて喜んでるし。(俺目線)
「一度だけだ!」
金次はそう言い、上に乗るアリアをソファーに押しのけた。
「一度だけ?」
「強襲科に戻ってやるよ!ただし、組んでやるのは一度だけだ。
最初に起きた事件を、一件だけ、お前と一緒に解決してやる。それが条件だ。
ただし、自由履修でな。
転科はしない。それでもいいだろ?」
俺がふと考え事をしている間に金次とアリアはそんな約束をしていた。
「いいわよ。ただし、全力でやんなさいよ」
「ああ。わかった。全力でやってやるよ」
通常モードの俺の、全力でな……とか思ってんのか。
悪いな、金次。
「金次、ちゃんと
俺は金次に警告しておく。
「普段のお前の全力でじゃなく、お前が持つ
「いや、それは……」
「何ミツル。あんた何か知ってんの?」
アリアがそう聞いてきたがさすがに金次の許可なく話していい事ではないのでとぼけた。
「さあな。武偵なら、Sランクなら自分で調べろ!」
その日の夜。自室に戻った俺の携帯に
「神崎・H・アリアの情報と峰・理子の情報全てわかったぞ?」
頼んどいたアリアと理子に関する情報が書かれた資料を女子寮の温室まで取りに行きその場で目を通していく。
「理子は原作より厄介になってんな…」
「原作?」
「いや、なんでもない」
「峰は国家機密Aに指定されている犯罪組織で基礎魔法を学んでいたらしい。
学校生活では一度も使ってないけどな」
「わかってるメンバーはほとんど予想通りか…」
ちうたんですら
「もう少し探ってみるが気をつけろよ?」
ちうたんは真剣な眼差しを向けてきた。
「なんだか嫌な予感がするからな……巨悪な臭いがピンピンするからよ。
こっちはこっちで調べてみる。朝倉にも連絡するがいいだろう?」
「ああ。頼む!」
一緒に写真を撮るともれなく美少女の幽霊も一緒に写るとかなんとか。
報告を終え女子寮に戻るちうたんを見送って温室から出ると知り合いの
女性にしては長身で目は細く閉じられている。姿格好は忍者が着るような忍び装束を身につけており、
「ニン、ニン」などと呟いているどっからどう見ても忍者だが本人は指摘されてもとぼけている。
そんな糸目忍者の名は……。
金次の戦妹、
単位不足で留年したらしい。
「会合でござるか?」
「まぁ、話し合いっす」
「拙者これから山に行くでござるが、光殿も一緒に行くでござるか?」
「山?」
「……
「ッ……⁉︎」
一旦寮に戻りサバイバルの道具と俺が普段使う武器、折りたたみ式ナイフと拳銃『ベレッタM93R(対テロ用)』を携帯すると男子寮の前まで来ていた楓さんと合流した。