ハルケギニアの小さな勇者   作:負け狐

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終わらなかった。

恋バナも無かった。


その3

「キュルケ」

「心配しなくても、分かってるわよぉ」

 

 タバサの言葉にキュルケはそう述べ、目の前で唸りを上げているルイズに向かって指を突き付けた。そして、あなたは今からやる勝負の意味が分かっているの、と彼女に尋ねる。

 それを聞いたルイズは、そんなもの決まってるだろうと胸を張った。

 

「わたしがアンタにムカついたから」

「使い魔を賭けた決闘よ? そこは忘れたら駄目な部分だから」

「あ? ああ、そういやそうだったわね」

 

 そう言ってルイズは肩を竦めると、背中に背負っていたデルフリンガーを抜き放つ。いつものように肩に担いだ構えを取りながら、息を吐いて目の前の相手を睨み付けた。

 

「さっきからアンタをぶっ飛ばすことしか頭に無かったわ」

「ふふっ。奇遇ね、あたしもよ」

 

 杖を取り出しそれを右手で弄びながら、キュルケもそう述べ薄く笑った。

 それと同時、二人の雰囲気が変わり、空気がピンと張り詰める。面白がって見ていた周囲の生徒達はそれに飲まれたように口を噤み、先程までの喧騒が嘘のように広場に静寂をもたらす。

 それに飲まれていないのはごく一部。ギリギリ持ち堪えているモンモランシーと、分かりきっていたことだと苦笑するギーシュ。そして、物凄くやる気の無さそうな顔で二人の介添人をしているタバサだ。

 もうこれは事態の収拾が付かない。そう結論付けた彼女は早々に諦め、もうどうにでもなれと割と投げやりな口調でじゃあ始めると二人に述べた。生憎とルイズもキュルケもそんなタバサのやる気の無さに気付かなかったようで、コクリと頷くとお互いに少しだけ距離を取った。

 

「行くわよキュルケ!」

「来なさいルイズ!」

 

 瞬間、地面が弾けた。ルイズの姿が掻き消え、キュルケの立っていた場所が吹き飛ぶ。回りの生徒達が状況を飲み込めずポカンとする中、当の本人はそのままお互い第二撃を放とうと構えを取っていた。

 キュルケは呪文を紡ぐ。杖から生まれる炎は手加減などなしでルイズを消し炭にせんと飛来する。それらを難なく避けると、ルイズも手加減なしで剣を振り下ろした。

 

「ちょっとルイズ。今の当たったら真っ二つじゃない」

「当たったら消し炭になるような炎ぶっ放しといてよく言うわ」

 

 軽口を叩きながら、しかしその攻撃の手は緩めない。双方ともに地面に足を着けたまま、大して動くことなく攻撃を放ち合う。足を止めての殴り合い、そんなイメージを抱くようなそれは、まさしく喧嘩であった。

 最早決闘でも何でもないな。そう結論付けたタバサはゆっくりと二人から離れるとどこからか持ってきた椅子に座って本を読み始める。そんな彼女の姿を気にすることなく、ルイズとキュルケは斬撃と呪文を繰り返していた。

 いいのかい、とそんな彼女に近付いたギーシュは問い掛ける。その言葉に、タバサは知るかと短く答えた。

 

「そもそも。もう何を言っても止まらない」

「……ああ、それは確かにそうだね」

 

 じゃあ仕方ないか、とギーシュは肩を竦めながらモンモランシーのもとへと戻っていった。どうやらこれ以上干渉せず観客に徹するらしい。正しい判断だとタバサは思うと同時、逃げやがってとこっそり悪態を吐く。わざわざ聞きに来るならばいっそ巻き込まれればいいじゃないか。そんなことを続けて考え、そしてぶんぶんと頭を振りその両方を散らした。

 

「……父さまや伯父さまと同じになるところだった」

 

 ほれほれこっち来い、と怪しい笑顔で手招きしているジョゼフとシャルルを頭の中で殴り飛ばしながら、タバサは少しだけ考えを変えた。とりあえず、ある程度のところで終了させないと色々危ない。

 今はまだその場での殴り合いで済んでいるが、あのままヒートアップして周囲が見えなくなるとその被害は甚大なものになる。そう判断した彼女は立ち上がると口笛を吹いた。きゅい、とそれに反応して飛んできたシルフィードに飛び乗ると、少し席を外す、とそのままどこかに飛んでいってしまう。

 そうして介添人がいなくなった決闘であるが、当の本人達はそんなことはすっかり頭から抜け落ちているため、全く気にしていないのであった。

 

 

 

 

 学院長室にロングビルが飛び込んできたのはそんな時だ。大変です、と普段の彼女らしからぬ慌てた口調でオスマンへと詰め寄る。

 対するオスマンは、一体何じゃ騒々しい、と落ち着いた口調で彼女に問い掛けた。

 

「一大事です」

「落ち着け。世の中の大半は瑣末事じゃ。自分で大事にしているだけでな」

「いえ、これはその大半に当てはまらないものです」

「ふむ。一体どうしたんじゃ?」

 

 オスマンの言葉に、彼女は決闘騒ぎが起きていますと述べた。とある公爵の娘が入学してから最早お馴染みとなったその単語に、それのどこが一大事なんだかと彼は溜息を吐く。そもそもつい先日とある公爵の娘の使い魔が男子生徒との決闘を三十五件起こしたばかりだ。それでまた決闘だなどと、どう考えても瑣末事ではないか。

 そう結論付けたオスマンは、それで自分に何の許可を求めているのだとロングビルに問う。はい、と答えた彼女は、宝物庫の『眠りの鐘』の使用許可が欲しいと述べた。

 

「ん? 何故そんなものを?」

「それは勿論、出来るだけ早く決闘を中止させたいからです」

 

 首を傾げたオスマンにロングビルはそう返す。普段と違うその返しに、彼は少しだけ表情を怪訝なものに変えた。ひょっとして、自分が考えている連中と関係ない決闘騒ぎなのだろうか。そんなことを考え、しかしすぐに否定した。もしそうだとしたら、それこそもっと瑣末事である。最悪彼女が自分で適当に止めれば済む話だ。

 

「のう、ミス・ロングビル。その決闘、行っているのは彼女等かのう?」

「ええ、それは勿論」

 

 力強く頷いた彼女を見て、オスマンは益々表情を怪訝なものにする。どうにも話が噛み合っていない気がする、と思ったのだ。何か致命的なすれ違いをしているような。

 齢百を超えると言われるオールド・オスマンは、どうにもあの公爵家関係になると調子が出ないらしい。彼の知識の尽く斜め上を爆走する彼女達は、大分凝り固まった頭では捉えきれないのだ。

 

「すまんがミス・ロングビル。もう少しだけ細かく状況の説明をお願いしたい」

「え? あ、はい。現在、宝物庫近くの広場にて二人の女生徒が決闘騒ぎを起こしています。今はまだ周囲の生徒達に被害はないですが、このまま続くと何かしら負傷者ないし、建物や地形の破壊が広がるものと考え学院長にお話を持ちかけました」

「周囲の生徒や、建物と、地形じゃと?」

 

 天変地異でも起きるのか、と言わんばかりの予測である。そんなことを個人でやれるなどと普通は考えず、通常ならば一笑に付してしまうのであるが、しかし。

 彼は少なくともそういうことが出来るメイジを一人、知っている。そして、そのメイジの夫も似たような存在であることを知っている。

 そんなものから生まれた娘も当然そういうことが出来るし、似たような存在である悪友と色々と騒ぎを起こしていることを知っていた。

 

「……ミス・ロングビル。ヴァリエールの娘と決闘しているのは、誰じゃ?」

「ミス・ツェルプストーです」

「一大事ではないか!?」

 

 だからそう言っているじゃありませんか。呆れたようにそう述べるロングビルを見ながら、彼は慌てて宝物庫の中身の使用許可を書き始めた。

 

 

 

 

 

 

 才人がその場所にやってきた時には既に一歩遅かった。既に観客は各々安全な場所に退避を行い、広々とした空間で二人の少女が戦うのみと相成っている。衝撃の余波で吹き飛ばされた椅子の残骸が、恐らくもう一人ここにいたであろうことを窺わせた。

 視線を広場の中心に向ける。一足飛びで間合いを詰めたルイズがキュルケの脳天をかち割らんとデルフリンガーを振り上げ、キュルケはそれに反応し杖から炎の蛇腹剣を生み出す。斬撃を受け止めはしたものの、キュルケはすぐに飛び退ると目の前のピンクブロンドに悪態を吐いていた。彼女の右手にある『ブレイド』の呪文によって出来たそれは、たった一合で砕け散る寸前まで破壊されていた。

 

「馬鹿力ね」

「はぁ? アンタの呪文がヘッポコだからでしょ?」

 

 言うが早いかすぐさま剣を構えたルイズは再び突進の構えを取る。そこを狙っていたとばかりに巨大な火柱が上がり、広場は一瞬にして炎の渦と化した。一際大きく燃え上がり、そして一点に収束し消えていったその場所には何も無い。そこに少女が立っていたという痕跡すら燃え尽きてしまったような、それほどの炎であった。

 キュルケはふん、と鼻を鳴らすとすぐさま反転。再び『ブレイド』で杖を近接武装に変えると、とにかくがむしゃらにそれを振り上げた。衝撃で甲高い音が響き、体勢を崩していた彼女はそのまま吹き飛ぶ。途中で受け身を取り二本足で着地すると、足元に落としてしまっていた自身の杖を蹴り上げ受け止めた。

 

「熱いじゃないの」

「あら? あなたの体術がヘッポコだからでしょぉ?」

 

 クスクスと笑ったキュルケは、ルイズの煤で鼻の頭が黒くなっている部分を指差す。慌ててゴシゴシとそれを拭ったルイズは、ギロリとその目で彼女を睨んだ。

 

「ぶっ潰す」

「こっちの台詞よ」

 

 瞬間、周囲に生まれる地獄もかくやという炎の群れと、それを物ともせず突っ込む流星。それの余波で広場は半ば原型を留めておらず、観客の避難も段々と遠くなっていく。もう二人の姿など見えないのではないかというレベルまで離れてしまう者達もいたが、しかしそれでも帰るという選択肢を取る生徒達は殆どいなかった。

 二人の決闘がそれほど魅力的であった、という部分は多少はあるかもしれないが、その大半は被害が認識出来る場所にいないと危険だという理由である。

 そんな観客の中で現在一番二人に近いのは間違いなくこの少年であった。止めようにもどうしようもなく、かといって放っておいて帰るということも出来ない。結果として近くで見守るという傍から見ると勇者の決闘を見届ける姫のようなポジションで立ち尽くしていた。

 

「いや、でもこれどうすんだ?」

 

 一人呟くが、生憎それに答えてくれる人物はどこにもいない。自分を賭けて勝負をしているというシエスタに誑かされてここまでやってきたものの、目の前にはもうそんなことどうでもよくただ相手を叩き潰そうとしている少女二人がいるばかり。騙された、というわけではないのだろう。きっと最初はそういう体で話を進めていたのだろう。

 それは分かったが、だからどうしたと言われると彼としても何とも言えないわけで。

 

「タバサはどこ行ったんだろうな……」

 

 逃げた、ということはないだろう。何だかんだであの三人は全員が全員面倒見がいい。小競り合いや被害の少ない喧嘩ならともかく、ここまでの規模となるともう知らんで通すとは考えられないのだ。となれば何かしら手段を講じるために姿を消していると考えるのが妥当であるが、しかし。

 そこまで考え才人は目の前を見る。そろそろ被害が広場から学院に拡大しようとしているところであった。双方共にどう考えても人間相手にぶっ放すようなものではない大技を叩き込み合っている。伝説の使い魔だとかルイズの剣におだてられたとはいえ、現状才人はまだ精々普通の達人である。あれに介入したら確実に消滅するであろうことは想像に難くなかった。

 

「こんにゃろぉ!」

 

 ルイズの斬撃で森の木々が薙ぎ倒される。当然キュルケはそれを避け、あるいは受け止めながら反撃する。

 

「そぅれ!」

 

 杖から生み出される炎が大地を綺麗に抉り取る。無論ルイズはそれを避け、あるいは受け流しながら反撃する。

 そのたびに何かしらの悲鳴が上がり、そしてどんどんと黒煙が濃くなっていくのだが、二人は知ったことではないと戦闘を続けていた。

 

「……とりあえず、人の被害だけは出さないようにした方がいいな、うん」

 

 元凶をどうにかするのを諦めた才人は、踵を返して避難している生徒達の方へと向かった。一番近くで見ていた集団の中にギーシュがいるのを発見した彼は声を掛け、この状況についての意見を交換し合う。どうやら既に生徒達はそのための準備を済ませているようで、後は何かきっかけがあればすぐさま逃げ出すらしい。

 

「だから君は安心してあの二人に介入してくるといいさ」

「死ぬから。俺死体も残らないから」

 

 ぽん、とギーシュに肩を叩かれ、しかし才人は首をブンブンと横に振った。能天気で楽観的な性格をしていても、それで命を投げ出すほど考えなしではないのだ。

 が、それでも彼はそう思われても仕方のない性分ではあった。一応見届けてくる、とギーシュに述べると、才人は再びルイズ達の戦闘がよく見える場所まで歩みを進めていく。その背中は見ているものからすれば死を覚悟した者の姿であり、凡そ理解出来ない類の行動であった。

 

「ちょ、ちょっとギーシュ!? いいの、彼そのまま見送って」

「……まあ、大丈夫じゃないかな」

 

 多分、きっと。そう続けた言葉は風に消えた。

 

 

 

 

 やはり既存の呪文ではどうにもならない。キュルケはそんなことを思いつつ舌打ちをした。向こうの性質を知っているからどうにかなっている部分もあるが、それではいつまで経っても決定打にはならない。

 

「ヘクサゴン・スペルでも撃てれば話は別でしょうけど」

 

 王家にのみ伝わるとか始祖の血がないと使えないとかそんな話を聞いたことがある呪文のことを思い出し毒づくが、ないものねだりをしても仕方がない。思考をすぐさま切り替え、彼女は真っ直ぐにルイズを見た。

 ついでに、今度タバサと試してみようとどうでもいいことを考えた。

 その一方、ルイズもルイズで忌々しげに舌打ちをしていた。何だかんだで剣を振り回し暴れるようになってからのパートナーは基本的に目の前の彼女だった。共に成長し合ってきた以上、当然のことながらお互いの性質を理解している。彼女の太刀筋を一番近くで見ていたのはキュルケなのだ。分かりきっているそれでは、いつまで経っても決定打にはならない。

 

「母さまや父さまみたいに呪文を使えればまた別なんだけど」

 

 天変地異もかくやという竜巻を作り上げつつも物理も強い母親、地味ではあるがその効果は抜群の水を操りつつ近接は母以上の父親。そんな二人の戦闘スタイルを思い浮かべ毒づくが、ないものねだりをしていても仕方がない。思考をすぐさま切り替え、彼女は真っ直ぐにキュルケを見た。

 

「そろそろ、決着といくわよ」

「そうね。あたしもそう思ってたわ」

 

 そう言いながらルイズは剣を握った手をだらりと下げる。同意しながらキュルケは杖を一振りしその先端に小さな火球を作る。

 普段見たことのないその姿に、間近で見ていた才人は一瞬だけ首を傾げ、しかしすぐさま猛烈に嫌な予感を覚え距離を取った。

 

「俺今完全にバトル漫画の解説役ポジションだ」

 

 解説すら出来ないけどな、と一人自虐しながら、彼はそれでも二人の一挙一動を見逃さんとそれを見詰める。それはさながら、師匠の技を盗まんとしている弟子のごとく。

 先に動いたのはキュルケ。先端の火球を足元に落とした。それを合図にするように、地面を縦横無尽に火が走る。無数の蛇のようなそれは、一人の獲物に食らいつかんとその牙を今か今かと光らせた。

 

「何よ、いつの間にこんなの編み出したの?」

「まだ未完成なのよ、これ。炎の蛇、『炎蛇』の呪文ってところかしら」

「ミスタ・コルベールじゃない」

「あ、そういえばそうだったわねぇ」

 

 別の名前考えておこう、そう呟きながらキュルケは杖を振った。瞬間、無数の蛇がルイズに襲い掛かる。ただの蛇ならばまだ脅威にならないであろうその体すら炎で出来ているそれは、彼女を締め上げようとうねりを上げ、牙で喉笛を食いちぎらんと顎を広げる。

 その蛇を、ルイズは剣先を少し動かすことで絡めとった。半身をずらし、絡めとった蛇を体の回転で別の蛇にぶつけ、そして剣を振り上げる。その動作で作り上げた道を、彼女は一足飛びで駆けた。

 当然、その道の終点にはキュルケがいる。

 

「ツメが甘いわよキュルケ」

「未完成だって言ったでしょ。っていうか何よそれ、あなたらしくない」

「父さまの真似よ。力だけじゃ駄目って口を酸っぱくして言われてたもの」

「の割に、もう次の瞬間には力押しなのねぇ」

「う、うううるさいわね! いいじゃない、分かりやすくて!」

 

 突っ込んできたルイズの一撃は普段のそれであった。一瞬だけ虚を突かれたキュルケも、すぐに我に返るとそれに反応し受け流す。軽口を叩きつつ、しかしこれ以上彼女の間合いにいてはいけないとキュルケはそのまま空中へと飛び上がった。

 こうなれば特大の一撃を。そんなことを考えつつ彼女は近くにあった建物の壁に足をつける。この位置ならばすぐさま間合いを詰めることは出来まい。一瞬だけそう考え、しかし悪友の破天荒さからそうでもないかと頭を振った。

 

「あ! ちょっとキュルケ! 何でそんなとこまで逃げるのよ! 卑怯じゃない!」

「あらルイズ。メイジならこの程度は当たり前でしょう? 悔しかったらここまでくればいいじゃない」

 

 挑発をしつつ、精神力を溜める。準備が出来たら再び広場に降りて呪文を放つ、それが理想だが恐らく無理だろう。そう考えたキュルケはルイズが真っ直ぐこちらに突っ込んでくるのを見越して呪文の詠唱を始めた。

 案の定、ルイズはピクリと眉を動かし、分かったと少しだけ腰を落とした。剣は普段通りの肩に担いだ構えを取ったままで、である。

 

「呪文なんかなくてもその程度の距離は跳べるわよ!」

 

 いや、無理だから。という才人の言葉に反応してくれる者は生憎いない。

 

「そうね。ルイズならそう来ると思ってたわぁ」

 

 大地を蹴り、跳躍力のみで宝物庫の壁上部にいるキュルケに向かい突っ込む。それを見て楽しそうに笑ったキュルケは、溜め込んだ精神力を全て吐き出すがごとく杖を眼前に構えた。

 

「食らえキュルケぇぇぇぇ!」

「吹き飛べルイズぅぅぅぅ!」

 

 最早何も考えていないとにかく全力の一撃。お互いが繰り出したそれはぶつかり合い、双方を叩き潰さんとうねりを上げ。周囲を巻き込んで炸裂する。

 学院中どころか、周囲の森すら飛び越えるほどの大爆音が響き、そして同時にそれに付随した破壊の力が吹き荒れる。

 

「ったぁ。こぶ出来たじゃない」

「こっちの台詞よ。髪傷んじゃうわぁ」

 

 その中心で何事もなかったかのように立ち上がった二人は、そこでようやく現在の周囲の状況に気が付いたらしい。広場がどうなったのか、森がどうなったのか。

 キュルケが足場にしていた建物が、どうなったのか。

 

「あ、まず……」

「あ、あらぁ? この廃墟って、宝物庫?」

 

 冷静になった二人は決闘をそこで取り止めたが、まあそれで倒壊した宝物庫はどうなるものでもなし。

 何事だ、とやってくる教師陣を見ながら、どうしたものかと顔を見合わせるのであった。

 




才人を賭けてルイズとキュルケが決闘するのは一巻にあるしその結果宝物庫が壊れるのもその時だし原作の流れと間違ってないな、うん。

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