破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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話の最後でタイトルを回収するというセンスのない話です。
皆さん久しぶりです。
相変わらず拙い文ですが、それでも続ける気はあります。


第8話 最悪の展開

「我は征服王イスカンダル! 隻眼の賢王フィリッポス2世が息子である!」

 

「……」

 

「……」

 

セイバーとランサーは呆気にとられた顔で突如目の前に降臨した大男を見た。

キャスターに続きまたもや堂々と名乗りを上げた人物にセイバーはまたかと一瞬気が遠くなった。

それはランサーも同じだったが、セイバーと違って自分から真名を名乗ったサーヴァントを見たのはこの時が初めてだったので、驚きの度合いではこの時のランサーのそれはセイバーを超えていた。

 

「ライダーァァァァ!?」

 

ライダーのマスターウェイバー・ベルベットは自分のサーヴァントの奇行にショックを受け、悲鳴のような奇声をあげた。

 

「お、お前何を考えているんだよ!? よりによって自分から名乗るなんて馬鹿か!?」

 

「馬鹿とは少々無礼ではないか? マスターよ、これから華々しく心躍る戦をするやもしれぬ相手に、名を伏して渡り合おうなど、それ、王の行いとして有り得ぬものと解らんか」

 

「ぎゃん!?」

 

自分の腕を横からポカポカと半泣きで叩いていたマスターにライダーは反省しろとばかりに強烈なデコピンを叩き込んで黙らせると、尚も茫然と自分を見つめている二人の戦士に改めて宣言するように迫力のある銅鑼声を響き渡らせた。

 

「失礼した。先に名乗った通り余は征服王イスカンダルことマケドニア王、アレクサンドロス3世である。此度はライダーのクラスを賜りこの聖杯戦争に覇を唱えんと参戦したわけだが……貴公らなんだその顔は?」

 

ライダーは唖然とした顔から剣呑な目つきへと変わり自分を睨み始めていたセイバーとランサーに不思議そうな顔をする。

困ったことに彼にはこの二人の熱い戦いに余計な水を差してしまい、興を削いでしまったという自覚は無いようであった。

 

「物怖じせず堂々と名乗ってもらったところ悪いがライダー、貴公は私とランサーの決闘に不躾な横槍を入れたのだが」

 

「その自覚、よもや無いとは言わせまいぞ」

 

と、セイバーとランサーから当然の非難を受けたライダーだが、こともあろうに何とそれを豪快に笑い飛ばし、反省の色など微塵も見せずまた己の話を始めた。

 

「おおそれは悪かった悪かった。だがまぁ許せ。王の行いだ。ここは余の大器故と理解せよ」

 

「何だと……」

 

「貴様……」

 

いよいよ自分から二人の優先して倒したい共通の敵という立場を作り始めたライダーの愚行にウェイバーは真っ青になる。

 

(一体こいつは何を考えてぇぇぇぇ?! ……て、うん?)

 

ウェイバーが今度はライダーのマントを引いて自制を促そうとした時、彼は自分達とは丁度反対の方向に妙な一行が居ることをその目に認めた。

 

「なんだ? あいつら……」

 

「む?」

 

「なに?」

 

「……」

 

ウェイバーの言葉に一触即発の展開を見せようとしていたライダーとランサーはウェイバーの視線の先を追った。

一方セイバーは自分のマスターと同じ「あいつ」という無礼な物を言いをしたライダーのマスターに無言の抗議をしつつ、自分が今最も守らなければいけないモノに彼らの注意が行くことを許してしまった自分の油断を心中で強く憤ったのだった。

 

「子供……? と、一緒に居るのはあれは……ありゃ一体……?」

 

「ほぉ、確かに頭上から見ていた時は小さくてあまり気になる事はなかったが、実際に見ると誠に奇妙な」

 

「……」(言われてみれば)

 

ランサーもここにきて漸くセイバーの連れが奇妙さに気付いたようだった。

 

 

「おい、何かあいつらこっちを見ているな」

 

「そのようですねぇ」

 

「イリヤ達を見てるの?」

 

「おやおや、物語の人物が作者に注意を向けるのは……いや、これもありかもですな!」

 

四者四様の反応を見せる中、やはりキャスターだけちょっとズレていた。

見れば、短い間だったとはいえ白熱した戦いから突如舞い降りた緊迫した雰囲気という展開にも関わらず彼は片手に白紙の本を掴み、もう一方の手にはペンを握って楽し気であった。

 

 

「おい、セイバー。あれはお前の連れか?」

 

「言葉に気をつけろライダー。次は彼女……達をあれ呼ばわりすることは許さない」

 

「……?」

 

ランサーは、少女達をあれ呼ばわりしたライダーの無礼に釘を刺したセイバーが何故か一瞬悩まし気な表情をしたのが少し気になった。

 

「そうか、あ……あの者達はお前のマスターとその連れであったか」

 

「……」

 

(無言のところ、肯定とも見えるが……何となく違うようだ。彼らは一体……)

 

「まぁそう警戒しないでも別に危害を加える気など誓ってないぞ? ……と、セイバー?お前何か苦しげではないか?如何した?」

 

ランサーと同じ疑問をライダーも持ったらしい。

第一印象は人の都合など全く顧みない豪放磊落な男な印象を受けたが、どうやら王と名乗るだけあって人の心の機微にもある程度は敏いようだった。

ランサーは密かに彼の評価を上方に修正した。

 

「……ライダー、一つだけ願いたい事がある。彼女らには構うな。いや、貴公を信じてないわけではない。念の為だ。いいな? 特に……」

 

「「?」」

 

急に声を潜めて神妙な面持ちになったセイバーの態度の豹変にライダーとランサーは興味を引かれて彼女に顔を寄せる。

 

「特にあの……異形の……二人組にはちょっかいを出すな」

 

「異形のというとあの青い顔の男とへ……」

 

「そうだ!」

 

セイバーは最後まではライダーに言わせなかった。

見るとライダーを黙らせたセイバーの顔はこれまで見た事がないほど逼迫した表情をしており脂汗まで滲んでいた。

そして彼女の目は殺気まで宿らせてハッキリと『それ以上は言うな』と語っていた。

しかしそれが不味かった。

 

そうまでして関わるなと言われると俄然興味を持ってしまうのが、世界の果を目指した好奇心の塊のような(ライダー)である。

 

「ほほう? ふふっ、そうか」

 

「ラ、ライダー? き……おま、ま……!」

 

ライダーの悪戯めいた瞳の輝きにセイバーが気付いた時には既に遅かった。

 

面白そうな顔をして笑ったライダーは嬉々として大声でビルスたちに声をかけたのだ。

 

「おーい、そこの者達! そうだ、お前達だ!」

 

 

「何かあいつ僕達を呼んでるな」

 

「ええ、そのようですね」

 

「え? 戦いはこれで終わり? 次はお話するの?」

 

「吾輩はここで様子を見させて頂きます。いやはや、何やら波乱が起こりそうで期待に胸が高鳴りますな!」

 

「好きにしろよ。で、どうする? まぁ暇だったから僕は行くけど」

 

「お供致します」

 

「イリヤも!」

 

三人がライダーの招きに応じようとした時だった。

実はこの場にはもう1人のサーヴァントがいた。

彼はセイバーとランサーの戦いを見ていた時のライダーと同じく高所から今までの流れを見ていたのだが、彼はライダーのある言葉に我慢ならず次は自ら姿を現すつもりだった。

だがちょうどその時にライダーの注意が妙な雑種と魑魅魍魎へ移った事で事態が新たな展開を見せ、彼は出てくるタイミングを失したのだった。

 

それで今、ライダーは自分がいる方を見ながらも自分には気付かずに、雑種と魑魅魍魎共に声を掛けている。

それが彼にとっては我慢ならぬ無礼に感じ最早看過できなかった。

ライダー達は彼には気付いていなかったし、彼も高所より下々の雑種を見下ろすという揺るがない構図に文句はなかった。

だがそれでもどのような状況であれ、単純に自分を不快な気分にさせたというだけで彼にとっては到底見過せぬ万死に値する無礼であった。

これはとんでもない我儘であり理不尽な理屈そのものであったが、自分以外の全ては彼にとっては下等であり従って当然であったので、彼に思い直すという考えが浮かぶことなどまずあり得なかった。

だからこそ状況はさらに混迷を見せたのだった。

 

「ん?」

 

ザン、とビルスがライダー達の方へと歩みだそうとしたところで、彼のつま先の真ん前に金色の剣が天より飛来して突き刺さった。

 

「戯れもそこまでだ。我がいる方を見ながら我を無視して事を進めようなど、我という法を無視する愚行に値する無礼。雑多な雑種共よ、疾く畏まり我にあまねく平伏せ」

 

「あ?」

 

「……っ!!」

 

ビルスの不機嫌な声とセイバーの声にならない悲鳴はこの時、完璧に重なった。




2年ぶりの投稿なのに展開が動かなくてすいません。
しかしこれを次の話を作るためのモチベに……したい。

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