破壊神のフラグ破壊   作:sognathus

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ビルスの意により(流れでそういう事に)でウイスが彼方より連れてきた御仁はオジサンだった。


第4話 至高神の提案

「あの……貴方が……?」

 

「……」

 

紫と幽々子は呆然と目の前に現れた“オジサン”を見つめていた。

自称最高位の神と言うその見た目はただのオジサンは、紫達のそんなしらけた視線に気を悪くすることもなくただ腰に手を当てて答えた。

 

「そうですよ。今回はビルス様直々のお召しという事で参じました」

 

「えー? オッサンが神様なのか? ただの人間のオッサンじゃないか」

 

「ちょ、ちょっと霧雨さん!」

 

魔理沙が皆の意見を代弁するようなことを遠慮なく言う。

妖夢はそれを慌てて諌めようとしたが、オッサンと言われた神はそんな魔理沙の失言に苦笑しながら答えた。

 

「ああ、まぁ姿は何にでもなれるんだけどね。一応君たちとコミュニケーションがとり易くて、かつ今の私に一番近い精神状態と思ってこの姿にしたんですけどね」

 

「つまり、化身ということですか?」

 

「更にお疲れなのかしら?」

 

紫と幽々子の問いに男性は頷いた。

 

「そう、化身ですね。疲れてるのはまぁ……ね」

 

神の化身はがっくりと肩を落としながら語り始めた。

 

「いや、私もいくつもの銀河を任せられている身だから一所に止まる事ができないという事情はあるんだけどね? その所為で貴方達はあまり私の存在に馴染はないのかもしれませんが、自分から言わせればそれこそが私がちゃんと仕事をしている証拠でしてね」

 

「は、はぁ」

 

思わず始まった神の愚痴に曖昧に相槌を打つことしかできない紫。

それに対して幽々子は普段と変わらないおっとりした態度で柔らかく応じた。

 

「それはそれは、心中お察しします。やっぱり神様も縦社会なのねぇ」

 

「そういうことです。因みに完全に放置はしてないですからね? 各地に派遣した部下(神)からの報告はちゃんと目は通してますので」

 

「へぇ、まるで人間の会社みたいだな。なぁオッサンってちゃんと休んでるの?」

 

「休み? 基本ないですけど?」

 

「えっ」

 

神の素っ気ない返答に妖夢が思わず驚きの声を漏らす。

 

「私たち神は信仰によっていくらか支えられている面もありまして。土地神のようにその星に住む生物と関わりの強い神だとそれがそのまま自身の力にも影響するわけですが、私に近い上位の神となると……まぁ単純にやる気の問題でね」

 

「や、やる気?」

 

妖夢が神に似つかわしくない何とも人間臭い言葉に疑心暗鬼と言った様子で反応した。

 

「そうです。理性が薄い獣ならまだ気にならないのですが、知性と理性を持つ貴方達のような生き物となると……ほら、いろいろと我儘も言うでしょう? 私たちに思いを馳せるのは自由ですが、それが単純な欲望で、信仰心とは無縁だったりするとやる気が出ないんですよ」

 

「あーまぁ、何でもかんでも神頼みっていうのは、頼まれる神様からしたら鬱陶しく感じるかもな」

 

神の言葉に魔理沙が納得したような顔で頷いた。

彼女の共感の言葉に神はちょっと嬉しそうにしながら続けた。

 

「そう、そういう事。その結果、私の部下の部下、土地神やそれより少し上の神ですね。彼らがそんな上司の倦怠に呆れて代わりに奔走し、その成果の報告を私に直接上げてくるので仕事が増えて逆に暇は減ると……」

 

「はぁ、なるほどねぇ。それに対してわたし達はいつも暇と言ったら暇だな」

 

「ちょっと魔理沙、私はいつも暇じゃないわよ? いつも今日は何を食べたいなぁとか考えているのよ?」

 

「幽々子様それ立派に暇してますよ……」

 

「はは、まぁ仕事をしないからって安易にその上司の神をクビにもできませんしね。そんな事をしてしまったらその神に創られた奮闘している当の彼らが消えてしまうので。流石にそんな惨い事は私できません」

 

「……」(それは確かに言えてる。まぁ私の式神は……橙は可愛いから仕方ないわよね)

 

「それに、だらけていると言ってもそこは力のある神ですからね。私の直属と言うだけあって本当に必要な時は動くので処罰もし難いと……。ああ、本当に質が悪い、はぁ……」

 

「ご、ご苦労されているんですね」

 

「ありがとうございます。あ、煙草いいですか?」

 

妖夢の労いの言葉に神は微笑んでお礼を言いながら上着の内ポケットを弄る。

そしてその所作と同時に出た言葉に紫と妖夢は揃ってその場に固まった。

 

「えっ」

 

「はい?」

 

「いや、この姿もいいですね。こういう物理的な気の晴らし方も精神的に心地よいです。ふぅ……」

 

「は、はぁ……」(煙草!? 至高神が喫煙している!?)

 

美味しそうに日本の銘柄っぽい煙草を吸う神の姿は哀愁漂うリーマンそのものだった。

紫の心の中は一般的な神のイメージと程遠い、そのギャップに混乱の嵐が吹き荒れていた。

 

 

「まぁ要するに何が言いたいのかと言うと、あまり存在感がないかもしれませんが、一番仕事をしているのはトップの私なんです」

 

「は、はい」

 

「こちらの伝承の一部には世界を作って直ぐに姿を消した、みたいな感じらしいですが、それは単純に忙しくて最低限の事をやった後は部下に任せたからなんですよ?」

 

「は、はい。分かります分かります」

 

紫と妖夢が揃って慌てて神に同調している時だった。

時々茶々を入れながらも一応は大人しく神の話を聞いていた魔理沙が異を唱えてきた。

 

 

「あのさぁ」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「話の腰折っちゃって悪いけどさ、わたしはまだオッサンが神様だと信じれないんだけど」

 

「あ……」

 

紫はそこで思い出したように声を漏らした。

つい勢いに押されてしまったが、考えてみればまだ彼が神だという確証は得ていなかった。

 

「ああ、なるほど。そう言われましてもねぇ……あ、私から生物の気配はしないでしょう?」

 

「えっ……あっ。ああ、まぁ……」

 

「まだ決定打が弱いですか。そうですね……でだったら……あ、そうだ」

 

妖夢の反応にまだ信用が勝ち取れていないと判断した神は何かを思い付いた様子で、紫に視線を移すとこう言った。

 

「ちょっといいですか?」

 

「あ、私ですか?」

 

「はい、貴方なかなか優れた存在ですね。……うん、気質も悪くない。あの、宜しければ少しお願いがあるのですが?」

 

「は、はい何でしょう?」

 

「直ぐにとは言いません、強制もしません。ちょっと貴女の可能性を拡げますので、何れ機会があれば私のお手伝いなどをしてもらえませんか?」

 

「え、え!?」

 

「いや、神を代行しろとかそういう無茶なお願いではありません。ただ気が向いたときにでも、この星で頑張っている神が困っている時にその助けとなって支えて頂きたいだけです」

 

「神の助け……」

 

「あ、別に信徒になれとかそういうことではありませんからね。あくまで自分の意思で、です」

 

「あの、先程私の可能性を広げると申されましたが、具体的にどのような事を?」

 

「私の側の知識を貴女に伝えます。それに当たって先ずはその知識を情報として収める事ができるだけの貴女の頭脳の容量の拡大ですね」

 

「容量……知識、ですか」

 

「識る、という事はそれだけで力にもなりますからね」

 

「なぁそれって危ないのか?」

 

漠然とした神の提案に魔理沙がちょっと警戒するような顔で訊いた。

まだ彼の事を神と信じられない身としては、その言葉をきな臭く思うのは当然だった。

 

「いえ、全く。容量の拡大と知識の伝授だけなので1秒もかからないでしょう」

 

「まぁ、そんなに簡単に済むなら……」

 

「ありがとうございます」

 

「え、あ……」

 

神は紫の承諾に微笑むと彼女の前に掌をかざして目を閉じた。

まだ言葉を紡いで自分なりに熟慮するつもりだった紫は、神の予想外に早い行動に慌てた。

 

 

だが、そんな焦りも虚しく、彼女が中止を求める前にその行為は終わってしまったようだった。

 

「……はい、終わり」

 

「「「え?」」」

 

余りにもあっさりした伝授の完了の言葉に幽々子、魔理沙、妖夢は呆けた声を出した。

 

だが伝授された当の本人は違った。

神の言葉を合図に目を開くと全てが変わって見えたのである。

 

「……!」

 

何も目の前に広がる景色や友人たちの姿が変化して見えたわけではない。

先程紫に伝授された知識が彼女が今まで持っていた情報を全て書き換え、更新し、価値観に大変革をもたらしたのだ。

知識が力とはよく言ったものだ。

自分が操る力自体は何も変わっていなかったが、今では与えられた知識によっていくらでも伸ばす術が思い浮かぶし、ここ(幻想郷)に住まう自分以外の“力ある者”に余裕をもって対抗する策もいくらでも浮かんできた。

だが識らない方が良かったという事もある。

 

「……」

 

紫は青い顔をしてチラリとビルスを見た。

そう、彼女はビルスに対する知識も得る事によって彼の力の恐ろしさを完全に理解したのである。

得た知識によってビルスに抗う案は熟慮すれば浮かばない事もなかった。

だが失敗した時のリスクが大き過ぎるし、何よりそういった策を講じても正面から力技で台無しにする程の力を彼は持っているのだ。

いくら策を巡らしても、巡らせた舞台ごと破壊されては全く意味がない。

結局彼に対抗するには真っ向から対峙する事が出来るだけの純粋な暴力しかないのである。

紫は静かにビルスの前に一人進み出ると恭しい態度頭を下げた。

 

「ビルス様、今になって恐縮でございますが、数々のご無礼ここに深くお詫び申し上げますわ」

 

「お、そういう事か。いいよ気にしてないから」

 

ビルスは紫の態度の変わりようを理解したらしく、既に幽々子からご馳走を貰っている事もあって彼女の謝罪を快く受け入れた。

対して紫の心境はその落ち着いた謝罪の様子とは裏腹に穏やかではなかった。

 

(幻想郷を守らなきゃ! 幻想郷を守らなきゃ!!)

 

そんな風に紫が人知れず使命感に燃えながら恐怖と闘っている時だった。

ある少女の一言が彼女の胃に今まで感じた事がない程一瞬で何とも言えない痛みを与えた。

 

「よっし、何かいろいろ解決したみたいだし、ビルスさんここはいっちょ催し代わりに弾幕ごっこでもしないか?」

 

その言葉に紫が凍り付き、それ以外のメンバーが賑わいを見せる中で霧雨魔理沙は邪気のない明るい笑顔でそう最恐の破壊神に誘いをかけた。




次はペース短めに、テンポよくと言っておきながら結局月2ペースに終わりました。
まぁ、月に2本出せたからマシかと開き直っては……改善にはならないので、常に心掛けて行こうと思いますw

さぁ、次はやっと弾幕ごっこです。

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