デート・ア・ライブ 千璃ホロコースト   作:泰邦

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※鬱注意


第十五話:心的外傷

 刃がすり抜ける。

 触れた感覚もないし、当然ながら手ごたえも存在しない。

 そこにいるはずなのに、当たらない(・・・・・)

 奇妙な感覚に思わず眉をひそめて動きを止める真那に対し、青年は極めて平静に言葉を紡いだ。

 

『やるだけ無駄だ。私の体はあくまでも宿主に帰属する。どんな方法をもってしても今の私を傷つけることなどできないし、仮に出来たとしてもそれをやらせるほど私は優しくないつもりだよ』

「……宿主が誰かは知りませんが、そいつを殺せばあなたも死ぬってことですかね」

『簡単に言えばそうなるが、やるだけ無駄だと思うがね』

 

 単純な実力でいうなら真那は確かに千璃を上回っている。とはいえ、それはあくまでも近接戦闘に限った話だ。

 本来の千璃の戦闘スタイルは遠距離から放つ圧倒的な物量の弾幕。何人たりとも逃れられない裁きの如き飽和攻撃こそが、彼女の最大の強さなのだ。

 もっとも、それを真正面から突き抜けてくる可能性がある存在こそがエレンであり、そのために近接戦闘の経験値を稼いでいる最中なのだが。

 千璃が肉体に完全に馴染むまでまだ時間も必要だ。今はまだ戦うべきではない。

 

『ある程度は軽減できるかもしれないが、彼の心的外傷も気になるところだ』

「兄様に余計なことをしてくれやがったようですが、何としてでも私が救って見せますよ」

『こちらとしても五河士道の心的外傷など考えてもいなかった。彼自身はただの人間だというのにな……救ってくれるというなら都合のいい限りだ』

 

 肩をすくめて自嘲する青年に対し、真那はその存在を随意領域で把握しようとする。

 だが、やはりおかしい。

 存在自体は随意領域で確認できる──というよりも、随意領域の中に随意領域が存在する一種の異物感。ASTの隊員やDEMの社員が使うそれとは一線を画す異質感。

 まさかとは思うが──この青年、存在そのものを随意領域で認識させているのか?

 真那はそう考えるが、同時にその考えを否定する。

 随意領域というのは端的に言ってしまえば"区切られた自分の世界"と同義であるが、だからと言って何でも出来るという訳ではない。青年のやっていることは真那の常識から大きく外れすぎている。

 随意領域を使って、自分の姿を他者に認識させるなどという使い方が出来るはずはない。

 

「あなた……本当に何者でいやがりますか」

『君たちにわかりやすく言うなら「天使」の意思。あるいは背後霊とでも言った方が通用するかね』

 

 常に微笑みを絶やさない青年の顔は最早一種のポーカーフェイスだ。

 言っていることがわからない。常識的にあり得ない。あるいは青年に常識を当てはめることの方が間違いだとでもいうのか。

 ──いや、事実としてそうなのだろう。

 精霊とは押し並べて人知を超えた存在だ。人の考えうる域にいるならばとうの昔に討滅されているし、それが出来ていないということは常識をことごとく外れているということ。

 真那が追っている精霊である狂三もまさにそうだろう。殺しても死なない。殺しても殺しても、何度も平然とした顔で現れる。

 ここにきて改めて思い知らされる常識外れの異能。

 ──そうだ。こいつらに常識などという杓子は通用しない。

 

「なら、あなたという『天使』を保有する精霊を殺せばいいだけの話です」

『君なら可能だろうな。だが、今は私よりも五河士道のことを気にした方がいいと思うがね』

 

 真那は士道を背後に置いたまま青年と相対しているため、今の士道の状態は見えない。しかし、随意領域を用いてある程度状態を確認するとは出来る。

 かなり酷い。うずくまる彼の脈拍は全力疾走でもしたかのように速く、全身に浮いた玉のような冷や汗が地面に落ちている。前後不覚になって立つことも出来ないのだろう。

 本当なら、すぐにでも士道の傍に駆け寄りたい。

 しかし、目の前に異質な存在がいる。DEMで培った経験が、彼に背を向けるなと本能に訴えかけている。

 だからこそ歯を食いしばってでも士道の前に立って、少しでも彼の盾になる。──兄の一大事に役立てなくて何が妹か。

 

「あなたが消えやがるまで、私はあなたに剣を向け続けます」

 

 そうしなければまずいと、真那は思うから。

 

『……ふふ。中々に勘が鋭い。ともすれば五河士道の記憶を消去することも視野に入れていたが、それだけ想われているのなら大丈夫だろう。……恵まれているな、彼は』

 

 それだけを言い残して、青年は空気に融けるようにして消えていった。

 随意領域に異物を感じられなくなった時点ですぐに反転し、士道のすぐそばまで駆け寄る。

 

「兄様、兄様! 大丈夫ですか、兄様!」

「う、あ…………真、那……?」

 

 ぼんやりとしていて焦点が合っていない。そんな状態でも構わず、真那は士道の両肩を掴んで必死に呼びかけ、徐々に焦点が定まっていく。

 いまだ顔色は真っ青で、救急車を呼んだ方がいいかと思案する。

 ともあれ、何時までもこの場にいるわけにはいかない。ASTの応援を呼んでいる以上、すぐにでも彼らはここに駆けつけるだろう。

 真那としては、士道を巻き込みたくはない。普通の一般人で居てほしい。何も知らないまま、平穏な日常を送ってほしいだけなのだ。たった一人の遺された家族である以上、その願いは至極当然だった。

 どうにかしなければという思いが先行して、真那は近くの公園にあるベンチに士道を寝かせたまま士道の服をあさくって携帯を取り出す。

 琴里ならばあるいはこういう時の対処法を知っているかもしれない。彼女は真那よりも長く士道と一緒に暮らしているのだから、真那の知らない士道も知っているはずだ。

 呼吸も落ち着いてきているが、顔色は依然として悪いままの士道を見て、どうしようもなく胸が苦しくなる。

 

 ──こんな時、自分は何もできない。

 

 思わず歯軋りをしてしまいそうになる自分を抑え、琴里に電話をかけようとしたとき。

 公園の入り口から一人の女性が声をかけてきた。

 

「どうしたんだ?」

「あ……えっと、その、兄が倒れてしまって……」

「……君は彼の妹かなにかかな? 私は村雨令音と言って、彼の高校の副担任なのだが」

「副担任、ですか?」

 

 無造作にまとめられた髪に、分厚い隈に飾られた眼。休日であるために私服だが、そのあたりを気にしている余裕は真那にはなかった。

 朦朧としつつも視線を令音に向けた士道は、真那の疑問を解消するように言葉を発した。

 

「令音、さん……どうして、ここに……?」

「君が倒れているのが見えたからだ。私の家はすぐそこだ。処置をして、すぐにでも病院へ連れて行こう」

 

 救急車を呼びたいところではあったが、急を要するという訳でもないし、令音としてもあまり大事にはしたくない。真那は士道が令音を知っているということで彼女を信用することにして、自分はASTへの事情を説明しに行かなければならないと考えた。

 本当は最後まで彼の傍に居たい。だが、真那にも立場がある。副担任ならば間違った行動など起こさないだろうという安心感もある。

 ぐったりとした士道に肩を貸し、令音は公園の外へと連れていく。

 

「……君は来ないのか?」

「……本当は行きたいところですが、なにぶん私にも用事がありまして」

 

 苦虫を噛み潰したような、ひどく心苦しそうな表情でいう真那に何を思ったのか、令音は頷くだけで何も言わずに士道を連れて行った。

 その後姿を確認したのち、真那は徐々に集まってきているASTのメンバーを見る。

 

 ──精霊に、この日常だけは奪わせはしない。

 

 

        ●

 

 

 琴里は、艦橋で大きくため息をつく。

 自分の席にあるモニターで映像を見るたびに、上下が逆転するかのようなショックを受けるのだ。

 

 ──本当に、自分たちのやっていることは正しいのか?

 

 狂三は人を殺す。だから止めなければならない。止めなければ、彼女はこれからも人を殺し続ける。止めるには、デートして、デレさせて、士道にキスをさせて──。

 それで、彼女はとまるのか?

 二人は幸せなキスをして終了。そんな陳腐でありふれた物語のようにいくならどれほど楽だったことか。

 

「……神無月。士道の様子は?」

「ひどい頭痛などがあったようですが、今はぐっすりと眠っているようです。十香ちゃんには令音さんが」

「そう。令音には迷惑かけるわね」

 

 だが、実際に動ける人員としては彼女が適切だったのも確かだ。

 真那と面識があるのは琴里だけだが、間に士道を挟むことで副担任として令音が接触できるし、十香に関してもほかの船員よりは信頼を得ているということもある。何よりほかに動かせる人員がいなかったというのもあるのだ。

 十香と接触した謎の女性。折紙と接触している樋渡千璃。

 〈ラタトスク〉の人員と権力を最大限に使って彼女たちを監視している。特に前者は精霊の可能性があるため、見逃すわけにはいかなかった。

 どうにもうまくいかない。当初の予定ではこれほどの事態になるとは思ってもいなかったのだから。

 

「……」

 

 モニターに流れているのは、狂三が銃を撃って青年たちを血の海に沈めているところ。そして、それを見ておそらくはフラッシュバックを起こしたのであろう士道。

 吐いてこそいないが、映像越しでもはっきり分かるくらいに顔色が悪くなっているし、前後不覚になってうずくまっている。

 

 ──士道にこんな思いをさせるために、〈ラタトスク〉に協力させているわけじゃないのに。

 

 確かに精霊を救うというのは〈ラタトスク〉の第一目標だし、既に三人の精霊を封印することに成功している。能力そのものに疑う余地はない。

 しかし、それで士道が潰れては元も子もないのだ。

 一人の精霊のせいで士道には消えない心的傷害を負った。克服自体は不可能ではないだろうが、少なくとも相当の時間がかかると思われる。

 琴里は思わず口にしていた飴をかみ砕き、こぶしを握り締める。

 

「司令」

「……ん、悪いわね、神無月」

「いえ。指令を支えることが我々の役目でもありますので」

 

 極めて真剣な様子で、琴里がかみ砕いた拍子に落ちたチュッパチャップスの棒をハンカチで回収しながら、神無月はいう。

 それに、だからと言ってここでやめさせるという手段もない。

 すでに士道は三人の精霊を封印した。三人分の霊力を持つということがどういうことか、琴里はよくわかっている。

 ここでやめれば、士道は〈ラタトスク〉から追われることになるだろう。封印した精霊の力を士道が使う可能性もまたゼロではない以上、今後精霊が危険に晒されると判断したならば──士道を、殺さなければならないかもしれない。

 それだけは避けたいし、琴里としても士道を殺したいわけではない。

 

「ままならないわね」

「……司令が気に病むことはないのですよ。我々のせいにしたところで、我々は誰一人として貴女を責めるような真似はしません」

 

 それだけ、〈フラクシナス〉の船員は琴里のことを慕っている。

 いくら大人ぶっても年齢的にはまだ中学生。司令などと担ぎ上げている自分たちを責めることはあれど、担ぎ上げられた琴里を責めることなどありはしない。

 だから、責任を我々に転嫁してくださっても結構です。神無月はそういっている。

 

「……そうね。でも、私は司令官なのよ。人の上に立つ以上、情けない真似をするわけにはいかないの」

 

 ウッドマンから与えられた信頼の証でもある立場だ。琴里としてはこの立場だからと言って逃げる真似はしたくないし、それで船員たちを責めるような格好悪い真似をしたくはない。

 神無月がやや残念そうな顔をしていると、自動ドアが開いて誰かが艦橋へと入ってくる。

 誰だと思って視線を向けて見れば、息せき切らせて琴里の前まで来た椎崎が慌てたように告げた。

 

「た、大変です司令! し、士道君が、士道君の姿が消えました!」

 

 

        ●

 

 

 夢を見ていた。

 とても幸福なユメで、みんなが笑って過ごしていて、誰も泣かずにすむ、幸せなユメだった。

 でもそこに自分はいなくて、みんなは自分のことを気にせずにいて、笑っていた。

 いつも喧嘩している十香と折紙の二人の仲が良かった。

 琴里と真那はまるで姉妹のように仲良くしていた。

 四糸乃とよしのんは〈ラタトスク〉の女性メンバーと一緒に甘いものを食べていた。

 神無月は琴里に放置プレイされて悦んでいた。

 狂三は亜衣麻衣美衣の三人娘と買い物をしていた。

 皆幸せそうで、一部の隙もないほどに、これ以上ないほどのハッピーエンドの姿がそこにあった。

 それがすごく眩しくて手を伸ばしたけれど、届くことは無くて。呼びかけても誰も自分のことに気付かずに笑っていて。どうにか自分のことを気付いてもらおうとしたけれど、誰も自分に気付いてくれることは無くて。

 そこで、目が覚めた。

 

 

        ●

 

 

 目が覚めた場所は病室のようで、何時かもここで目覚めたことがあったなとぼんやりした頭で考える。

 少し視線を下に向けると、着替えた覚えもないのに病衣を着ていた。ひどく汗をかいた覚えがあるのでそれはそれで都合がよかったのだが。

 腕には脈拍などを計る機械が付けられており、士道の状態をモニタリングしていたのだろう。今は安定した波が描かれているが、倒れた時はどうだったのだろうと他人事のように思う。

 とても体がだるくて仕方がなかったが、尿意ばかりは我慢のしようもない。のろのろとした動作で計器などを外し、部屋から出てトイレへと向かう。

 幸いすぐ近くだったのでうろうろせずに済み、再び部屋に戻ってきた。

 

「…………」

 

 トイレの鏡に映った自分の顔は酷かった。

 目の下に隈が出来て、目はうつろで覇気がない。まるで士道ではない別の誰かのような気分さえしてしまうほどだ。

 自分の感性がよくわからない。あれだけ凄惨な人の死体を見て平然としていられる方がおかしいのか、それとも自分のように思い出すだけで頭痛がする方がおかしいのか。

 何時までもここにいては迷惑になるだろうと考え、纏めておいてあった自分の衣服を持って部屋の外へ出る。

 いつも利用している転移装置は琴里たちの許可が無ければ使えないだろうから、令音あたりに頼もうと思って探す。

 なんとなく、今は琴里に会いたくなかった。

 そうしていると、どこかへ向かっている令音を見つけたのでちょうどいいと思って声をかける。

 

「令音さん」

「……シンか。君はまだ安静にしているべきだと思っているのだが」

「大丈夫です。まだちょっとだるいですけど、十香たちの夕飯も作らなきゃいけませんし」

「……今日くらい休みたまえ。彼女たちには私から説明しておいた。あとで顔を見せてやるといい」

「はい。十香には迷惑もかけましたし、あとで謝らないと」

「……本当に大丈夫か? なんとなくだが、今の君には違和感が感じられる」

 

 会話の内容そのものに違和感はない。だが、それを話す彼自身に違和感がある。

 どこを見ているのかわからない瞳。抑揚のない話し方。汗に濡れて気持ち悪い衣服を持っても平然とした表情でいる。

 今の彼を一人にするのは危険だと考え、令音は彼を部屋へ戻そうとする。

 

「部屋に戻るんだ。食事もこちらで用意するし、君の服の洗濯くらいなら私がやっておく」

「いや、そこまで迷惑かけるわけには……」

「これくらいなら問題ない。むしろ君には普段から私たちの無茶に付き合わせているんだ。こんな時くらい頼ってくれて構わない」

 

 でも、とりあえず一度だけ家に帰ってシャワーを浴びたいと彼は言う。着替えも持ってきたいというので、結局令音は折れて一度だけ彼の家に向かうことにした。

 彼女の権限で転移装置の使用は可能だが、琴里に報告する義務がある。これは令音の独断行動だとしてくれて構わないと思い、転移と同時に報告のデータを送る。怒られることは承知の上だが、琴里は絶対に許可をしないと思ったからでもある。

 転移と言っても真下に移動することしか出来ないが、幸いにも十香たちの住むマンションのすぐ傍に降りることが出来た。先ほどまで令音が十香たちと話していて、戻ってきた直後に彼と会ったからだ。

 慣れた手つきで家の鍵を開けて中に入り、電気をつけて風呂場へと向かう。まずは服の洗濯だ。

 洗剤と水を入れて洗濯機を起動させ、自分は病衣から着替えるための服を取り出す。動きやすいものが良いと思い、少々野暮ったいがジャージを持っていくことにした。

 そして病衣を脱いで風呂場へ入り、シャワーを適温になるまで流してお湯をかぶる。

 

「……ふぅ……」

 

 かいた汗がお湯で流れていく。軽く頭と体を洗った後にバスタオルで拭き、ジャージに着替える。

 多少さっぱりした気分になった彼はリビングで待っている令音へと声をかけた。

 

「すみません、待たせてしまって」

「……構わない。待つのは慣れているのでね」

 

 砂糖がたっぷり入ったコーヒーを飲みながら、令音は答える。テレビに映っているのはここ最近のニュースだが、令音はぼーっとした表情でそれを見ている。

 見ているだけで興味はなさそうだったが、彼が洗濯を終えるまで待つ必要がある。量が少ないのですぐに済むというが、余った食材で夕食を作ろうとしていた彼を令音が見とがめる。

 

「待ちたまえ。食事はこちらで用意しておくから、君は安静にしておくべきだ。何ならソファで一眠りしてくれても構わない」

「いや、そういう訳にも……生鮮食品なんかは早めに使わないと痛みますし」

「そうはいってもだな……」

「大丈夫ですよ。そんな不意に倒れたりしませんから」

「む……」

 

 十香たちは〈ラタトスク〉で食事を用意するとのことだったので、彼はとりあえず自分と令音の分だけ用意することにした。

 忙しくて食事をとれていないといったからだ。食材が余っていたので都合がいいと言えば都合がよかったのだが。

 夕食は簡単なもので、適当な大きさに切った野菜のサラダと焼き魚、白ご飯とインスタントのコーンスープという組み合わせ。和洋が混じった食卓だが、それを気にしないのは二人とも同じだった。

 

「……ふむ。やはり君は腕がいいな。美味しい」

「そうですかね?」

 

 親が家を空けることが多かったので、必要に駆られて覚えた技能ではある。だが、それで喜んでくれるならよかった。

 彼はそう思いながら食事を口に運ぶ。なぜか令音がちょくちょく観察するように見てくるのが気になったが、彼は気にすることなく食事を食べ進める。

 食事が済んだあとで洗濯物を部屋の中に干しておき、タイマーをかけて乾燥機をつけておく。これで明日には乾いているはずだ。

 令音がまだ食べ終わっていなかったので食器は洗っていなかったのだが、士道が洗濯物を干している間に食べ終えて洗い物までしてくれていたらしい。

 食後のコーヒーを飲んでいる彼女にお礼を言って、〈フラクシナス〉に戻ることを了承する。

 

「何時までいることになるんですか?」

「……そればかりは私もわからない。だが、今後の経過しだい、といったところか」

 

 少なくとも明日の学校は休むことになるだろう、と令音は言う。

 彼は納得しづらかったが、普段はあまり表情を見せない彼女が念を押すように言ってくるので、渋々ながらも了承することにした。

 

 ──しかし、今日の夕飯は味が薄かったかな?

 

 令音は美味しいと言っていたが、彼はそれだけが少し気にかかっていた。

 

 




神無月ェ……

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