堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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今年もあと僅かになりましたね
今年は今日を含めて2話しか投稿出来ませんでした。
来年は心機一転して、スモールステップで頑張りたいと思います。


修羅場 迫る

 夕映のマギが好きだと言う告白に未だに呆然と盗み聞きを続けるのどか。未だに嗚咽を続ける夕映の背中を撫であやすハルナ。

 

「ゆえ、そこまで思い詰めることなんて無いのさ。誰かを好きになるって気持ちなんてのは自分じゃあどうしようもないんだからさ」

「ッ……!」

 

 限界に達したのか、遂にゆえはハルナを突き飛ばし、その場から逃げ出した。

 

「こらバカゆえ!」

「違うです!違うですーー!」

「何が違うってのよ!待ちなさい!」

「ゆえまってーな!」

「夕映さん!」

「ゆえお姉ちゃん!」

 

 違うと叫びながら逃げる夕映を追いかけるハルナ達。逃げ出した先にはのどかが居る。慌てて本棚にへばりつき、気配を消して夕映に見つからないように願うのどか。

 逃げる事にめいいっぱいな夕映や夕映を追いかけるハルナはのどかの存在に気が付かない。

 がこのかとネギにプールスは本棚にへばりつくのどかを発見した。

 

「のっのどか!?」

 

 のどかは叫びそうになったこのかの口を慌てて塞ぐ。急いで塞いだからか走り去った夕映は気づく様子は無かった。

 

「のどかも帰ってこねぇし、どこまで行ったんだアイツ等」

 

 あまりに戻って来るのが遅いので皆を探すマギ。このままだと他の部員に怒られないのだろうかと考えていると、夕映が目の前にマギが居る事に気づかずに走り続ける。

 

「違うんです!違うんですー!!」

「だから何が違うってのよゆえ!」

 

 未だに自分の気持ちを否定し続ける夕映、そのままマギにぶつかってしまう。

 

「わぷ!すっすみませんでっ!?」

「やっと戻ってきた。ていうか何で走ってきたんだ夕映?」

 

 ぶつかった相手がマギだと分かると、思い切り後ろに後ずさった。その衝撃で本棚の本が夕映に降り注ぎそのまま本に埋もれてしまう。

 

「……いや本当にどうしたんだよ夕映」

 

 目の前で本に埋もれてしまった夕映に驚きと呆れが混じった感情のまま夕映を本から救出する。

 

「あうぅぅ……すみませんです」

 

 救出された夕映はマギにお礼を言うには言えたが、顔を直視出来なかった。

 ハルナも夕映に追いついたのだが、タイミングが悪い事に他の図書館探検部の部員に見つかってしまった。

 

「のののののどか!いっ今はおちちゅいて!」

「このかしゃん!このかさんももちついて!」

「あうあうあうあの!その!えっと!」

「嬢ちゃんたちに兄貴もとりあえず深呼吸して落ち着きな」

「お兄ちゃんとお姉ちゃん達どうしたんレスか?」

 

 このかとのどかとネギは落ち着こうとするが、完全に呂律が回っていない。カモが3人の慌てぶりに呆れ、プールスは何故慌てているのか分からない様子だ。

 

「おっのどかもそこに居るな。そろそろ列に戻った方がいいぞー」

 

 さらにマギにも見つかり、3人の心音は更に高くなる。

 修羅場までもう直前……

 

 

 

 

 列に戻る最中、布陣は横に3列。真ん中にマギ、右に夕映に左にのどかとなっており、少し後ろにハルナ。そして後方にネギとこのかが当事者でもないのにギクシャクと歩き、この光景に少々楽しみながらこのかの肩に乗るカモと、今一場の雰囲気が掴めないプールスがトコトコとついて行く。

 

「かっカモ君、うちどないひょー!?」

「まぁ落ち着きなこのかの姉さん」

 

 未だにパニくりなこのかを落ち着かせようとするカモ。

 

「でも、まさか夕映さんがお兄ちゃんの事を好きだったなんて」

「応援していた親友を好きになるって言うのはよくあることでさぁネギの兄貴。まぁ結構前から脈はあったようだけどな」

 

 ネギは夕映がマギを好きになった事に驚いていたが、カモは結構前からマギの事を気になっていた様子だった。

 とプールスがこのかのズボンのすそをくいくいと引っ張り。

 

「このかお姉ちゃん、ゆえお姉ちゃんがマギお兄ちゃんの事を好きになったらダメなんレスか?」

「ぷっぷるちゃん!えっと好きになっちゃだめってわけやなくて!そのっえっと!」

「まぁこの問題は当事者の大兄貴や嬢ちゃんたちに任せるしかねぇな」

 

 等と話している間に、マギとのどか夕映に動きが見えた。

 まず夕映が歩みを遅くし、マギとのどかと距離を置く。夕映が距離を置いたのに気付き、のどかが夕映と歩調を合わせる。

 2人が遅れているのに気付き、マギも歩調を合わせまた横3列に戻る。

 

「何か早足だったか?」

「いっいえ」

「大丈夫……です」

 

 謝るマギだが、2人の反応が余所余所しい事に気づき、何かあったのだろうと察する。

 何とかハルナだけにはのどかが先程の話を聞いていたと言う事を伝えようとするが、先に日本の名作の文学書コーナーに着いてしまった。此処のコーナーに着いてしまった事で更にややこしくなる。

 

「ここは日本の名作の本が結構あるんだな」

 

 そう言ってマギは一冊の本を手に取った。その小説は猫が語り部で代表の著作者の1冊だ。

 

「マギさんは日本の本は読むんですか?」

「まぁ読むけど、この本は読んだことねぇな」

 

 本の話題になったからか、のどかと夕映の表情もいくらか柔和になった。マギが手に取った本の題名を見て、思わずげっと声に出してしまった。

 

「何だ?そんなにこの本はヤバい本なのか?」

「いや今まさにタイムリーな本だなーと思っただけ。マギさんは三角関係って知ってる」

「まぁ言葉位は。まぁでも恋愛小説とかは読んだことはねぇけど、1人に対して2人が好きになるって奴だよな。んでこの小説ってオチはどうなるんだ?」

 

 気軽な感じでマギがハルナに話の終わりはどうなるかを尋ねると、ハルナは目を光らせ

 

「ホレた1人が話の途中で自害する」

「……まじかよ」

 

 気軽な感じで聞いた事に少々後悔するマギ。結局もう片方も死ぬと聞いてマギは何処か居た堪れない気持ちになった。更に畳み掛けるように三角関係の小説を次々に紹介するハルナ。どの小説も最終的に登場人物が死ぬと言う事にうへぇと疲れたような表情になりながら。

 

「……やっぱ恋愛ってしっかり考えないと駄目なんだな」

「まぁマギさんも三角関係には気を付けないとねぇ」

 

 疲れた顔色を浮かべるマギをからかうハルナ。恋愛を絡めると彼女は生き生きとしだす。のどかが近くで話を聞いていた事を知っていれば、もう少しは自重するかも……しれないが。

 

「ハルナ!名作に対する変な偏見を植え付けるなです!」

 

 夕映がハルナにがーっとツッコミを入れる。のどかは疲れた表情を浮かべるマギを見てハラハラしている。

 さらに後方でも色々とパニックになっていた。

 

「うぐっえぐっ……のどかお姉ちゃんっ夕映お姉ちゃんが死んじゃうレス……!」

「だっ大丈夫だよプールス!のどかさんと夕映さんに限ってそんな事……!」

「でも若しもの事があればウチは……あぁどうすればいいんや……!」

 

 幼少期に色々あり、人の死に敏感なプールスは三角関係の結末を聞いてしまい、三角関係=マギの事が好きなのどかと夕映が殺し合い、最終的にどちらも死ぬと勘違いし泣きだし、そんな事は無いとプールスをあやすネギ。

 しかしと最悪なイメージが払拭できないこのかと、そしてそんな光景もまっこれも青春だろうなと達観するカモとこちらもカオスに染まっていた。

 

 

 

 

 

 

 三角関係のコーナーにてマギが精神的に疲弊し、後方でネギ達がパニックになった以外に大きな問題も起こらず、無事に図書館島の探険が終わった。

 少し離れた場所にてのどかとマギが本の話題で楽しそうに会話しているのを眺め、何とか笑みを浮かべる夕映。これでいい。これでいいんです……と自分に言い聞かせるように

 とのどかが夕映に手招きをする。何事かと2人の元へ向かう。

 

「のどかにも今お礼を言ったんだが、ありがとな誘ってくれて、色々と図書館島の事を知れてよかったよ」

「いっいえ、マギさんが楽しめて頂けたのなら幸いです」

 

 マギが夕映にお礼を言い、夕映も動揺しながらも返す。その後も本についての話題で盛り上がっていると、ネギ達も集まってきた。

 そこでまた話題が仮契約のアーティファクトへと戻った。アーティファクトはその人の性質に合ったものが出てくるとネギの談で、ハルナがのどかのアーティファクトで弄り始めた。

 のどかが弄られたり、ハルナが自分のアーティファクトはどんなだろうかと想像を膨らませていると、いつの間にかのどかはマギの隣ではなく、夕映の隣に座りマギとのどかの板挟みになってしまった夕映。

 

「のっのどか?何故私の隣に座るですか?」

 

 何故自分の隣に座るのかが分からない夕映にのどかは

 

「ねぇゆえ、ゆえもマギさんと仮契約しない?」

「なっ何を言ってるですかのどか?そんな事出来るはずないです!」

 

 のどかの仮契約発言に動揺の色を見せ始める夕映。マギと仮契約をすると言う事は、すなわちマギと唇を……

 顔を赤くしながらもそれだけは絶対だめだと、自分に言い聞かせる夕映はのどかに反論する。

 

「そんな事出来るはずです……そんな事やったらのどか、貴方に対する裏切りになってしまうです……!」

「私、ハルナやゆえのおかげでマギさんと仲良くなれた。私1人だったらマギさんと仲良くなることが出来なかった。だからこんどはゆえにもマギさんと仲良くなって貰いたいって……」

 

 何故行き成りこんな事を言いだすのか、段々と場の空気が変わってくるのを感じ取る夕映。

 まさか……と最悪な展開を予想する夕映。そして、予想した最悪の展開は現実のものとなる。

 

「あの、ね……私、聞いちゃったんだ。その……夕映がマギさんの事好きだって」

 

 のどかの告白に夕映の頭の中は真っ白になってしまった。

 思わず夕映はのどかの方を向くと。

 

「なんで言ってくれなかったのゆえ……私そんなのイヤだよ」

 

 目尻に涙を溜めながらも必死に流さないようにするのどかの姿が其処には居た。

 

「ちっ違!私は……!」

 

 夕映は何か言おうとしたが、頭が真っ白で何も言葉が出てこない。

 

「ゆえ……」

 

 明らかにパニックになっている夕映を落ち着かせようとのどかが近づこうとするが、反発する様に離れそのまま逃げ出してしまった。

 

「ゆえ!?」

「如何いう事!?のどかさっきの話聞いてたの!?」

「えっと!うん!」

 

 ハルナがこのかに詰め寄り、このかもパニックになりながらも首を縦に振り肯定する。さっきまで三角関係の話でマギをからかっていたハルナだが、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。パニックになった夕映が今から何をしでかすのか分からないからだ。

 今一状況が掴めていないマギだが、今夕映の心情状況がよろしくないと言うのは理解出来た。逃げ出した夕映を急いで追いかけるマギに続くようにのどか達も駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 今夕映が走っているのは図書館島の地下4階。しかし自分が今どこにいるかなんてどうでもよかった。ただ今直ぐに皆の前から消えてなくなりたいと言う感情で一杯一杯なのだから。

 

「夕映!」

「待ちなさいゆえ!」

 

 しかしマギ達が直ぐに追いついてきた。パニック状態のままの夕映は壁にあった非常ボタンをガラスを叩き割りながら押した。

 途端にベルが鳴りだし、扉が通路を閉じようとしている。

 

「装甲防火扉や!」

「何でそんな物が!?」

 

 ネギのツッコミももっともだが、今は夕映を追いかけなければ。少しずつ扉が閉まっていく。

 

「あう!」

「のどかお姉ちゃん!」

「のどか!」

 

 そこまで運動に自信がないのどかが躓き転んでしまう。マギとプールスを助け起こしている間に防火扉が閉まってしまう。

 

「お兄ちゃんとのどかさん達はそこに居てください!僕とハルナさんで夕映さんを落ち着かせます!」

 

 防火扉から逃れられたネギとカモにハルナが夕映を追いかける。

 マギがのどかを助け起こすが、まだのどかの目からは涙は流れていた。

 

「ゆえ、どうして逃げたの……なんで黙ってたの……」

 

 ぎゅっと服を握りしめるのどかにマギは声をかける事が出来なかった。

 

「えぐっ夕映おねえちゃん……」

 

 のどかの涙を見て、プールスまでも泣き出してしまった。このままでは仲が良かったのどかと夕映の友情がさけてしまうのではないか……負の感情には敏感なプールスには居た堪れない状況だ。

 のどかは懐にしまっていた自身のアーティファクトを取り出した。のどかのアーティファクトは人の心の中を覗く事が出来るもの。しかし、親友である夕映の心の中を見る事に負い目を感じている。

 ここは1人の教師として、生徒の背中を押す事にした。

 

「のどか、時にはやらずに後悔よりもやって後悔の方がいい時もあると思うんだがどうだ?」

「マギさん……はい!アデアット!」

 

 マギの一押しで決心したのかいどのえにっきを出現させる。

 

「でもマギさん、この分厚い防火扉どうするんや?」

「まぁそうだよな……とりあえず壊すか」

 

 事を見守っていたこのかが防火扉をどうするのか問いかける。装甲防火扉と言う事もあって、かなりの分厚さだ。それをマギは壊すと言いだしたのだ。

 確かにマギならこの分厚い扉を破壊するのは難しくは無いだろう。しかし本気で壊したりしたら、周りにも被害が及ぶ可能性があるのではないだろうかと危惧する。

 マギは防火扉の前に立つと、包帯を巻かれた腕を大きく振り上げると。

 

「ふんっ」

 

 短い気合と共に扉を殴りつけた。分厚い扉はまるで障子紙の様にいとも簡単に破れた。

 

「急ぐぞ」

 

 マギが続けて防火扉を破壊し、その後をのどか達が続いて行く。

 のどかやこのかはマギが魔力を使って、目の前の分厚い扉を破壊してると思っているだろう。

 否、マギは魔力と気は一切使っていない。咸卦法も一秒も使っていない。

 今のマギは包帯が巻かれた腕、先程もマギの事を襲おうとし、現在も段々と制御が効かなくなり、暴れるならと防火扉を殴らせたのだ。

 しかし包帯を巻いていた方の腕からは段々と感覚が薄れてきた。本来なら気にする事なのだろうが、今は夕映の方が心配なので夕映を優先する事にした。

 ……この判断が後の大事に繋がるの事になるとはこの時は知る由も無かった。

 

 

 

 

 

「夕映さん」

「やっと追いついたわよこのバカ」

 

 行き止まりの滝にて夕映に追いついたネギとハルナ。

 

「だから言ったでしょ。あんたがマギさんを好きになってもそれ自体は何も悪い事じゃないって。要は此れからの選択をどうするかって事でしょ?」

「僕、まだ人を好きになるって事が良く分からないですけど、でも夕映さんがお兄ちゃんを好きになっても、それはのどかさんへの裏切りじゃないと思います」

「もちろんアンタがどんな選択をしても私も応援するよ。たとえアンタがマギさんにモーレツにアタックしてもね。なーにアンタとのどかならさっきの三角関係みたいなことにはならないさ」

「落ち着いてのどかさんと話し合いましょう?のどかさんだって分かってくれます絶対!」

 

 ネギとハルナの説得にも、夕映は首を横に振る。

 

「違うですハルナ、ネギ先生。私は選んでしまったんです、のどかに対しての酷い裏切りをすると言う選択を。昨日私はのどかとデートしたマギさんに相談を受けて」

 

 言葉を詰まらせる夕映。

 

「……どうしたの?」

「酷い裏切りをしたです。何よりも私が恐れているのはのどかに嫌われる事なのに……」

「ゆえ……アンタ一々考えすぎだって。人間一度恋すりゃ誰でも……」

 

 いえ、私は自分が許せないですとハルナの説得も遮る。

 

「心の底からのどかを応援していたはずが、あんな最低な事を。愚劣でっ阿呆でっ汚らしいっ!……最悪です」

「そんなっ夕映さんはのどかさんのために頑張れる、素晴らしい親友じゃないですか!そんな自分を卑下するなんて、先生として許しませんよ!」

 

 ネギは先生として、今の自分の思った事を素直に夕映にぶつける。

 だがそれでも夕映には届かず、辛そうながらも笑みを浮かべる夕映。

 

「ありがとうございますですネギ先生。ですが……私はそんな自分を許せないんです。出来る事ならこれからものどかの親友として、恋の応援をしたかったです。ですが今の私にはそんな資格なんて無いんです。こんな……醜い感情を持っている私なんか、私なんか消えてなくなればいいのに……」

 

 遂には涙を流し始めながら後ずさる夕映。このままでは飛び降りそうだ。

 

「ちょ!ゆえそれは流石に洒落にならないって!」

「夕映さん!」

 

 ハルナとネギが急いで駆け寄ったが遅かった。ネギの手が届く前に、夕映は飛び降りてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




それでは皆様良いお年を

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