堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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侵食する非常識

「たく……本当に何なんだよこの学園は……!」

 

 

 吐き捨てるように呟く千雨。彼女が何故不機嫌なのか……

 それは会場に来ていた2人の男性の話が耳に入ってきたからである。

 

 

『すげーなここの武道大会!他の格闘技大会なんて目じゃないぜ!』

『あぁ流石麻帆良学園って感じだよな』

『けどこの武道大会もそうだが、この学園祭自体凄いよな』

『だな、学生が作ったと思えない様な本格的なアトラクション、クオリティの高いお店。どれも有名なテーマパークに引けを取らないぞ』『けど、こんな凄い学園祭をやっているのに全然情報が入ってこないんだよな。せいぜい学園祭のちょっとした情報しかネットには掲示してないし……何か余り外に情報を出したくないって俺思っちまったよ』

『それに今の現代科学じゃあんなロボットを作るなんて難しいだろうし、それに予選や本選でバトル漫画みたいな光線技、それに影分身に巨大な人形。終いにはあのでっかい樹、やっぱりここは何かおかしいよな』

『この麻帆良自体、可笑しなもので溢れかえってるって感じだな』

 

 

 この会話を盗み聞きしていた千雨は自分以外の者がこの学園の可笑しさに気付いたと思い、満足そうに頷く。

 だが……

 

 

『けど別にあんまり気にしてないけどな!』

『学園祭が楽しければそれでいいしな!』

 

 

 気にしていないように笑う2人に、思わずズッコケそうになる千雨だが、何とか耐えた。

 

 

(ちげーんだよ!あたしが求めていたのはそういんじゃねぇんだよ……!!)

 

 

 歯ぎしりをする千雨。彼らが麻帆良に対して余り気にしていない態度を取るのは、認識阻害が働いている方と言う事を彼女はまだ知らない。

 

 

「それにこのふざけた掲示板……魔法、魔法ってくだらねー。現実に非現実を混ぜようとすんじゃねーよ」

 

 

 悪態をつきながら千雨はある掲示板を見ていた。その掲示板は現在の麻帆良の事が書かれており、先程から魔法魔法の言葉が載り続けている。

 非現実を認めていない千雨は、この掲示板に匿名で魔法の存在を真っ向から否定する。

 ネットアイドルで鍛えたネットの書き込み、そうそう論破される事はないと自負している千雨。

 これで少しは掲示板も落ち着くだろうと思った千雨。

 しかし

 

 

「おいおいなんだよコレ……」

 

 

 数分後には新たな書き込みが載っていた。魔法を大々的に肯定するような書き込みだ。

 更に書き込みの内容も学術的な内容で書かれており、千雨の書き込みは悉く論破された。

 掲示板は落ち着くどころか、この書き込みのせいで魔法を信じている者達で盛り上がっていた。

 

 

「誰だよこんなふざけた事を書いた奴は……」

 

 

 千雨は頭を掻きながら呟いていると

 

 

「無駄ですよ千雨さん」

「っ……茶々丸さん」

 

 

 行き成り茶々丸が千雨に話しかける。

 

 

 

「此方の世界を否定している貴女が突っ込みを入れていい世界ではありません。覚悟をもたない者がこれ以上先へと行くのはお勧めしません」

「茶々丸さんアンタ……」

 

 

 感情の読み取れない顔で見つめられ、思わず生唾を飲み込む千雨であった。

 

 

 

 

 

 

 

「……んっあぁ……」

「気が付いたかマギ」

 

 

 闇の魔法を酷使したマギは休むために横になっていた。

 

 

「エヴァか、俺どれくらい寝てたんだ?」

「30分くらいだ。少しは回復したか?」

「少しだけな」

 

 

 マギが上体を起こしたのと同時にネギ達がぞろぞろとマギへと集まってきた。

 

 

「お兄ちゃん大丈夫?」

「あぁ何とかな」

 

 

 ネギ以外もマギが大事ないか尋ねようとするがエヴァが

 

 

「悪いが貴様等は出てってくれ。今からマギと大事な話があるからな」

 

 

 行き成り2人きりにしろと言ってきたエヴァンジェリンに文句を言おうとしたアスナだが、エヴァンジェリンの発する圧に何も言えずに渋々と言った形でまたマギとエヴァンジェリンの2人きりの状態へと戻る。

 

 

「ネギ達を追い出すなんて、そんなに大事な話なのか?」

「あぁそうだな。とても大事な話だ。単刀直入に言うぞマギ……この麻帆良祭の間はもう闇の魔法は使うな」

 

 

 自分の師から闇の魔法の使用禁止を命じられた。

 

 

「理由を聞いていいか?と言っても何となく分かってるんだけどな」

 

 

 クウネルがナギの姿になった瞬間にマギはキレ、そのまま闇の魔法半ば暴走に近い形へと、異形の怪物になりそうになっていた。

 

 

「さっきのあの馬鹿との戦いで、お前は半ば闇の魔法を暴走させていた。正直な所、あと一歩遅かったら会場は地獄になっていたかもしれない。お前なら使いこなせるかと思ったが、やはりあの魔法はそう簡単に使いこなせる者じゃなかったか……いいか?学園祭が終わるまで、絶対に使うんじゃないぞ」

「分かったよ。俺だって暴走してまで闇の魔法を使おうとは思わないさ。心配かけるなんて悪かったな」

「ふっふん!暴走したお前の相手をするのが面倒だと思っただけだ!」

 

 

 そう悪態をつくエヴァンジェリンだガ、本心はマギには暴走なんてしてもらいたくない。そう強く思っていた。

 暴走して最悪マギが大切に思っている者達が傷付けばマギは後悔するだろうから。

 

 

「んじゃ俺はもう少し横になったら行くって事をネギ達に伝えといてくれないか?」

「ふん、分かったよ。だったもう少し寝ていろ。まったく手のかかる弟子だお前は」

 

 

 呆れたように溜息を吐くエヴァンジェリンはネギ達を呼びに行った。

 エヴァンジェリンの足音が聞こえなくなったの確認し、ふぅと深く息を吐いたマギ。

 

 

「悪いなエヴァ」

 

 

 そう言いながら、マギは自身の右手首を見る。

 右手首には黒いあざのような物が浮かんでいた。

 だがそのあざのようなものはうねうねと蠢いており、少しづつ本当に少しづつだが、大きくなっていた。

 闇の魔法が少しづつマギの体を侵食していた。

 

 

「……まぁ何とかなるだろ。要は闇の魔法を使わなければいい話だ」

 

 

 心配をかけないようにと、マギは手首に包帯を巻いた。

 

 

「よしネギ達の所へ行くか」

 

 

 軽く伸びをしたマギはネギ達の所へ向かった。大丈夫だと自分に言い聞かせながら。

 

 

 

 

 

 

 だが、このマギの行動が後の麻帆良を大きく歪めてしまう事にまだ気づく事は無かった。


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