堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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影使いのあの子はお固い子

 千雨との魔法についての話をしたマギは、千雨と話した事をネギとカモそして愛衣に話してみた。

 

 

「ええっ!?魔法の存在が噂として広まってる!?」

「まぁあくまで噂程度だが、インターネット上では魔法の単語がちらほらと見えたぞ」

 

 

 愛衣はマギが言った事に驚き慌てはじめる。魔法が一般人にばれてしまうのはとても不味いと言うのは承知の上だ。

 

 

「まほうがばれちゃうと、どうなっちゃんレスか?」

「魔法がばれるとな、カモと同じオコジョになっちまうんだよ」

 

 

 プールスが何時ものポジションであるマギの頭から魔法がばれた場合、どうなるかを聞きマギがオコジョになってしまう事を答えた。

 オコジョになってしまったマギ達と、幼女であるプールスが戯れる(オコジョと幼女の語呂がいいなと思ったマギ)事を想像したマギであるが、流石にオコジョになってしまったら面子以前に大切な者達を護る事が難しくなるだろう。

 

 

「次は俺と高音の試合か……魔法をばらそうとしない高音だが、あのロボットの試合じゃ影で殴り飛ばしてたからなぁ。大丈夫だと信じたい」

「でもお姉様は一度決めた事には一直線の真っ直ぐな人なんです。いい人なんですけど、マギ先生に対しても恐らく本気で……」

「まぁ一応、怪我させない範囲で速攻で勝負を決めるつもりだけどな。んじゃ行ってくる」

 

 

 プールスをネギに預けると、マギは試合会場へと向かった。

 試合会場にはもう高音が待っており、黒い大きなローブを纏っており、体のラインが見えなかった。

 

 

『さぁ片やロボットに勝ち、片や忍者に勝ったお二人の試合が始まります!それでは始めて下さい!』

 

 

 和美の試合開始の合図に、マギは拳を構える。

 

 

「フフ。マギ先生、遂に来ましたね私との試合が。この試合で私は貴方に真の力をお見せします」

 

 

 そう言ってローブに手をかける高音。頼むから派手なのは止めろと思いながら出方を伺うマギ。そして高音がローブを脱ぐと

 

 

「これが私の真の力、操影術近接戦闘最終奥義!『黒衣の夜想曲』!!」

「……うわぁ。派手だ」

 

 

 高音の背後には、影で出来た巨大な影人形が浮かんでいた。高音の後ろに巨大な人形が現れた事に、会場はどよめきだす。

 

 

『おおっと!行き成り巨大な人形が現れたー!CGか!CGなのかー!?』

 

 

 和美の実況にも熱が入る。影の帯が触手の様に動き、マギに向かって突っ込んできた。マギが躱すと、帯が会場に刺さる。切れ味は抜群の様だ。

 避けた矢先に、高音が背後に回る。高音が拳を振り下ろすと、それに連動し影の人形も拳を振り下ろす。破壊力も申し分なし。小さなクレーターが出来るほどの威力だ。

 

 

「随分と厄介な影みたいだっなっ!」

 

 

 マギが高音に向かって正拳突きを繰り出すが、高音が腕を交差させ、影の人形も腕を交差させ、マギの正拳突きを防いだ。拳から感じる固さで防御面でも一筋縄ではいかないと分かる。

 

 

「本当に厄介な奴だなこりゃ……」

 

 

 マギが呟いている間にまた帯が迫る。さらに帯の連撃が速いため、詠唱している時間も無い。高音の本気を見た事のないマギは改めて高音の厄介さを思い知った。

 

 

 

 

 

 

 

 マギと高音の試合を会場とは別の場所で見ている者が居た。超である。

 

 

「ふむふむマギサンと高音サンは良いように試合が運ばれていくヨ。派手にやってくれればやってくれる程、こちらもやりやすいと言った所ヨ」

 

 

 

 地下空間にて、マギと高音の試合を映像で見ている超は満足げに頷く。超の後ろにはちび刹那とタカミチが、結界のようなもので身動きが取れないでいた。

 

 

「超さん、一体何のつもりなんですか。クラスメイトの貴女が何故」

「すまないバカせつなサン。手荒な真似をするつもりはなかたのだが、私の雇った傭兵が容赦なくてネ。高畑先生も申し訳ない」

 

 

 その傭兵事アーチャーは、タカミチを戦闘不能にした後、見回りと言う事でどこかへ行ってしまった。因みに千草はアーチャーと同伴である。

 

 

「何しろ時間がなくてネ。この大会も本来はやるつもりが無かたが、急遽開いタ。本来だったら1年かけて準備する予定だたヨ」

「それは異常気象によって、世界樹大発光が早まったからかな超君」

「正解。流石は高畑先生ネ」

「……超君。君の目的は何だ。返答によってはいくら元教え子と言えども見過ごす事は出来ないぞ」

 

 

 タカミチの問いかけに、一呼吸入れてから超は答える。

 

 

「なに大した事はないネ。世界に散らばる『魔法使い』の人数、私の調べた所、東京圏の人口の約2倍。全世界の華僑の人工よりも多い。これはかなりの人数ネ」

 

 

 タカミチは黙って話を聞いている。

 

 

「それにこの時代、彼らは我々とはわずかに位相を異にする”異界”と呼ばれる場所にいくつかの『国』まで持っている」

「……それで?」

 

 

 少しだけ顔色を変えたタカミチを見て、心配ご無用ダと超がそう言いながら

 

 

「一般人に迷惑をかけるような真似はしなイ。それはちゃんと約束するヨ。私の目的は、彼ら『魔法使い』。総人口6千7百万人、その存在を全世界に対し公表すル。それだけネ。大したことではないヨ」

 

 

 ちび刹那は大口を開けて呆然としていたが、薄々超の目的が分かっていたタカミチは表情を変えない。

 

 

「僕達、魔法使いの存在を公表して、君の何の利益があると言うんだい超君」

 

 

 フフと小さく笑うだけで、何も答えず去ろうとする超。

 

 

「食事はウチの美味しい物を届けるネ。不自由をさせて申し訳なイ」

「待ってくれ超君。これだけは答えてほしい。あの傭兵は一体何者なんだ。そして何故彼があの計画を知っている」

「……」

 

 

 黙って去って行った超。地下空間にはタカミチとちび刹那が残された。

 

 

「どうしましょう高畑先生……」

「まぁこのまま黙って捕まっている訳にもいかなくなったね」

「でもこの機械式の拘束具、ちょっとやそっとじゃ動きそうもありませんよ」

「大丈夫。こういう状況は君達よりも慣れているんだ」

 

 

 そう言ってタカミチは口をモゴモゴと動かした。

 

 

 

 

 

 

 場所はマギと高音の試合に戻る。マギは魔法の矢を拳に乗せて放つが、高音の影が頑丈すぎるせいで傷一つつかない。

 

 

「フンっ!!」

 

 

 魔法の矢が効かないなら直接と殴りつけても凹みもしない。自分の方が有利な状況に居ると見た高音は冷や汗を流しているが、余裕の表情を浮かべている。

 攻撃を止められたマギに、帯が襲ってくる。

 

 

「やれやれ固すぎるな」

「えぇそうでしょう。この最恐モードに打撃は通用しません。こんな下らない大会はさっさと終わらせて、マギ先生に正しい魔法使いと言うのは何なのかを教えてさしあげます」

「悪いけど、俺は正しい魔法使いって柄じゃあないな。今は先生をやってるが、基本は自由気ままに生きている方が好きだからな」

 

 

 そう言ってマギは高音と距離を開けた。会場の観客たちを見てみると、高音の影の人形を派手なCGだと勘違いしている様子だ。なら自分が派手な技を見せても問題ないはずと判断したマギ。

 

 

「なぁ高音、矛盾って言葉知ってるだろ?矛と盾を自慢してたらそれを見てた一般人にそれをぶつけたらどうなるって聞かれて何も答えられなかったって奴をさ」

「えぇ常識です。それがどうかしたのですか?」

「俺は此れを聞いたときこう思ったんだよ。盾よりも矛の方が強かったら簡単に貫けるんじゃないかってな。だからこそ、その最強モードを打ち破らせてもらうぜ」

「大きく出ましたね。出来るならやってみてください」

 

 

 高音はあえて挑発する。自分のこの最強モードが打ち破られる事がないと言う絶対的な自信があるからだ。だがマギはその考えのさらに上を行く。

 

 

「魔法の射手 連弾・炎の9矢」

 

 

 マギは無詠唱で炎の魔法の矢を出した。高音はそれをそのまま自分にぶつけると思った。だがその考えとは斜めの方向へと向かう。

 その魔法の矢を右腕に集め始めるマギ。

 

 

「掌握!さらに右腕に集中!!」

「なっ何をやっているんですかマギ先生!?」

 

 

 高音はマギが闇の魔法を使った所を見るのは初めてだ。魔法の矢が集まったマギの右腕は炎で真っ赤に燃えていた。

 

 

『もっ燃えているぅ!マギ選手の右腕は真っ赤に燃えている!と言うか熱くないのか!?』

 

 

 会場のあっちこっちで俺のこの手が真っ赤に燃えるぅ!ゴッ〇フィ〇ガー!やら〇ートエ〇ド!と騒いでいた。

 

 

「行くぜ高音」

 

 

 マギは燃え盛る右腕を構え一直線に高音に向かって行った。

 

 

「くっはぁぁぁぁっ!!!」

 

 

 高音が拳を突きだし、影人形も連動して拳を突きだす。

 

 

「名づけるなら、炎神爆炎拳!!」

 

 

 マギの炎の拳と影の拳がぶつかり合う。最初は拮抗していたが、徐々に影の拳に罅が入り始めた。

 

 

「そんなっ私の最強モードが……!」

「悪いな高音。打ち破らせてもらう!」

 

 

 そしてマギが拳を振り抜くと影の拳が消し飛んだ。影の人形も限界が来たのか、消し飛んだ拳から徐々に消えて行った。

 

 

「あっう……」

「おっと」

 

 

 影の人形が消滅したためか、膝から崩れ落ちた高音をマギが抱きかかえる。

 

 

「凄いお兄ちゃん!」

「かっこいいレス!」

「流石大兄貴!」

 

 

 ネギプールスカモはマギを賞賛しているが、愛衣だけは慌てている。

 

 

「たっ大変です!服も影の使い魔の一部ですから、お姉様が気を失うと……」

「えっ……」

「あぁやべぇな……」

 

 

 愛衣の言った事に何が起こるか分かったネギとカモ。プールスだけ理解出来ずに首を傾げている。

 

 

「今の魔法は『闇の福音』の闇の魔法。どうしてマギ先生が禁忌の魔法を……何が貴方をそこまでしたのですか?」

「この大会はクソ親父が優勝した大会だからな。クソ親父と同じ舞台に立って、少しでもクソ親父に追いつきたかった。闇の魔法は少しでも早く強くなりたかったからだな」

 

 

 話をしながら頭を掻いていたマギが突然ビシリと固まってしまった。高音はマギが硬直したのが分からなかったが、自分の体が妙に肌寒いのに気づきハッと自分の体を見る。

 影の人形が消滅した事で、影で出来た服も消滅してしまい、真っ裸となっている。

 

 

「ひぅっ……」

 

 

 自分の大切な部分を腕で隠しながらマギを見ると、マギはそっぽを向いているが、顔は真っ赤である。おそらく見られてしまったのだろう。気になるマギに裸をまじまじと見られ、高音の羞恥心は頂点に立つ。

 

 

「ふぇっ……せっ責任とってくださぁぁぁい!!」

「ちょ!高音!?責任って何でだ!!」

 

 

 腕で隠しながら逃げるように会場を後にする高音。余りの光景に呆然としている観客たち。

 

 

『えっえー、大変なハプニングが起こりましたが、試合時間がまだ残っていますが、高音選手が試合を放棄したと言う形となったので、この勝負マギ選手の勝利です!』

「……なんか釈然としねぇ……」

 

 

 勝利したマギであるが、後にエヴァンジェリンの割と容赦のない飛び蹴りを顔面に貰うと言う情けない形でマギの試合は終わった。

 マギの試合の後は、クウネルと古菲の試合であったが、古菲の腕の負傷もあり、クウネルの不戦勝で終わった。

 そして武道大会は準決勝が行われる。

 

 

 

 

 

 

 


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