待っていた皆さん遅れてしまい申し訳ありません
マギと楓の試合は、楓が降参した事によりマギの勝利となった。
その次に行われた古菲と真名の勝負。本来銃を使う真名は、銃が使えないために不利かと思われた。
だが真名は、日本硬貨で一番大きい500円玉を指で弾く指弾を巧みに使い古菲を攻め立てる。
解説の薫が真名が使っている指弾を羅漢銭と説明し、硬貨は武器になるんだなと思ったマギである。
不利に立たされていた古菲だが、チャイナ服につけていた尻尾の様な布を槍として使う布槍術を繰り出して反撃。
500円玉と布の槍の攻防戦という、一見変わった戦いが繰り広げられていたが、使っている本人たちは真剣だ。
しかし真名が隙をついて、古菲の腕に500円玉をぶつける。ゴキンといった鈍い音が聞こえ、マギや小太郎にエヴァンジェリンと言った者は今ので折れたと確信する。
古菲は肉を切らせて骨を断つ。布で真名の腕を絡み取り、引き寄せる。真名の零距離の指弾、古菲の渾身の拳法の一撃がぶつかり合う。
しんと静まった会場で、先に古菲が膝をつく。古菲が負けたと思いきや、真名の背中の衣服がはじけ飛び、そのまま前のめりで倒れる真名。
和美が10カウントを取り、立ちあがらなかった真名。よって古菲が勝利した。
腕を折られながらも、弟子であるネギの手前でみっともない真似を見せないという古菲の姿に、古菲のファンの格闘家たちは歓喜の涙を流した。
これで古菲も次の試合に進出……かと思われたが、腕の骨が折れていると言う事で、泣く泣く棄権となったのだ。
そして最後の試合、クウネル・サンダースVS大豪院ポチ。大豪院ポチも中国拳法の使い手らしく、アクションスター張りの連撃をクウネルに浴びせる。
だが、クウネルが何かをしたのか一瞬でポチがステージに沈みそのまま10カウントを取られてしまい、呆気ない終わり方となってしまった。
試合が全て終わり、次からは準々決勝となるのであった。
『まだ興奮が冷めないと思いますが、ここで1時間の休憩を取らせていただきます。会場に居る皆さまはトイレ休憩をなさるか、適度な水分補給をお願いします。また試合を見逃した方がいらっしゃれば、今まで起こった試合のダイジェストを流しますので安心してくださいまた――――』
和美が司会としての説明をしている中、次の試合に出る者や負けてしまった者は各々の事をしていた。
その一人として、ネギと戦い本気の一撃を貰い暫く横になっていたタカミチがやっと歩けるまでに回復した。
「おうタカミチ。もう動けるのか?」
「一応鍛えているからね。でも2ヶ月くらいでここまで成長するなんてね……1年もあったら僕なんか追い抜かれるかな」
「冗談。そんな簡単に追い抜かれないように、俺がアイツのデカイ壁になってやるよ」
マギとタカミチが談笑していると、ネギを連れたアスナが刹那と一緒にやってきた。
「高畑先生、怪我はもう大丈夫ですか?スイマセン。うちのネギがもう……」
そう言いながらアスナは強引にネギに頭を下げさせた。
「はは、別に気にしていないさ。真剣勝負だったんだからね。それよりもすまなかったねアスナ君。大人げなくネギ君相手に本気を出してしまって。さぞ心配だったらろう?」
「いえあっアタシは別に……それよりも高畑先生の方が心配でしたから」
ネギの前で此処まで言うアスナに対して、苦笑いを浮かべるマギとタカミチ。
アスナは何かを言いたそうだったが、黙り込んでしまい沈黙が続く。アスナではなく刹那がタカミチに話し掛ける。
「高畑先生、実は超さんの動向なんですが、私の式神に会場の裏を探らせて気になるものを見かけました」
そう言って刹那の式神、ちびせつなが現れた。刹那と違い明るい性格のちびせつなは久しぶりに会ったアスナやマギとネギに挨拶をした。そのちびせつなが案内するとのことだ。
「ふむ、そうだね。ネギ君との試合も終わった事だしそっちに手を付けるか……」
そう言ってちびせつなの案内の元、超の動向を探る事にしたタカミチ。
「アスナ君、君とエヴァンジェリンの試合を見てたよ。エヴァンジェリン相手に頑張ってたじゃないか」
「そっそうですか?ありがとうございます」
タカミチに褒められ顔を赤くするアスナ。
「……だけど僕としては君は魔法なんて世界に関わってほしくなかった。これは運命なのかな……だとしたら残酷すぎる」
タカミチの悲痛な呟きは誰にも聞こえなかった。
「ネギ君とマギ君はまだ試合は続くからね。僕に勝ったんだからネギ君にはぜひ優勝してもらいたいな」
「僕に期待しすぎないでよタカミチ。師匠やお兄ちゃんが居るんだから、優勝は難しすぎるよ」
「そうだぞ。それに優勝するのはこの俺なんだからな」
マギが自信満々に宣言するのをタカミチは満足げに頷いた。そして目的の場所に向かおうとしたタカミチはアスナの方を向いて言った。
「アスナ君。学園祭巡りの約束は明日だったよね?楽しみにしているよ明日」
それだけ言って今度こそ向かったタカミチ。タカミチの後ろで嬉しさで顔を真っ赤にしたアスナが失神してネギやプールスと刹那が慌て、マギがやれやれだぜと呆れるといった光景が出来上がっていた。
ちびせつなの案内の元、タカミチは大きな下水道を歩いていた。ちびせつなが言うには会場の隣にある塔に超やハカセの部屋を見つけ、そこから地下の下水道に通じる通路を見つけたの事。
この奥に巨大な格納庫みたいな空間と機械がいっぱい詰まった部屋を目撃したようだ。
「麻帆良にこんな下水道あったのに驚きだけど、その部屋と言うのは研究施設か何かかな?」
「恐らくは、私機械とか苦手なのでハッキリとは……」
「そう言えばちびせつな君、さっき話してた今の自分は自立型という事だけど、本体の刹那君とは」
「只今私、完全にスタンドアローンです!」
胸を張ってそう答えるちびせつな。不用意に念話で連絡を取ってしまうと、相手に察知されてしまう危険があるからだ。
「本体と違って明るいかんじだね、ちびせつな君」
「ちょっとバカなのでー」
暗い下水道の中で明るく会話をしているタカミチとちびせつな。だがその2人の会話に横槍を入れる者が現れる。
「やれやれ、こんな所まで来てしまったカ。ネギ坊主にもらったダメージは癒えたカ高畑先生?」
チャイナ服ではなく、色々と仕込んでいそうな服装の超が現れた。
「やぁ超君。この下水道の奥に何があるのかな?よかったら僕に教えてくれると嬉しいんだけど」
「それは出来ない相談ヨ。元担任に申し訳ないが、私には時間がないネ。明日、学園祭が終わるまで大人しくしていてもらうヨ」
ニコリと笑い拒否する超。
「そうか……元教え子にこんな事をしたくはないけど、少し痛い目を見てもらう必要があるみたいだね」
そう言ってポケットに手を突っ込めるタカミチ。
「おぉ怖い。だたら私も手を打たせてもらうヨ。出てくるネ」
超が指を鳴らし、その合図で超の背後にアーチャーが現れた。
「ふむ……超よ、彼が君の計画の邪魔になる者の一人と言う事でいいのだな?」
そう言って投影魔法で、白と黒の対となる双剣を出して構えるアーチャー。
「君は何者だい?」
「超に雇われた傭兵だと思ってくれるといい。そしてマギ・スプリングフィールドに対して深い憎しみを抱いていると付け加えておこう」
「そうか……だったらなおさら君を放っておくわけにはいかないな」
不意打ちな形で居合拳を放つタカミチ。双剣で防ぐアーチャーであるが、一発当たっただけで双剣はいとも簡単に砕けてしまった。
すぐさま新しい双剣を投影するアーチャー。タカミチの居合拳とアーチャーの投影魔法によって生み出され続ける剣の攻防が繰り広げられる。
戦闘力が皆無なちびせつなと、余裕そうな超は2人の戦いを傍観しているだけだった。
アーチャーの双剣が十数本折られた所で、ネギに貰ったダメージで息が荒くなったタカミチ。
「流石は噂に名高いタカミチ・T・高畑。魔法が使えなくともここまでの力とは御見それした」
折れて柄だけになった双剣を捨て、タカミチを賞賛するアーチャー。
「君は誰なんだ?それほどの実力があれば少しは名が知れ渡っているはず。そして何故マギ君に対して憎しみを抱いているんだ?」
「私はしがない傭兵さ。何故私があの男を憎んでいるかって?まぁマギ・スプリングフィールドと深い面識がある貴様には特別に教えてやろう……“
アーチャーが言った事にタカミチは顔を強張らせた。それが隙になってしまう。アーチャーはタカミチの間合いに入る。
瞬時に防御に入ろうとしたタカミチに抉るような正拳突きを繰り出したアーチャー。正拳突きが当たった場所はネギに桜華崩拳を喰らった場所と同じだ。ダメージが上乗せされる形で膝を着くタカミチ。
「なっ何故その事を知っているんだ……」
「全てを話すわけがないだろう?傭兵としての必須事項だ」
当身を当て、タカミチの意識を刈り取ったアーチャー。
「ご苦労だったヨ。まさか高畑先生をこうも容易く倒すとハ」
「彼が手負いだったから出来た事だ。全快の彼と戦っていたらこうも簡単に倒せはしないさ」
気を失っているタカミチを担ぎ上げるアーチャー。そしてこっそり逃げ出そうとしたちびせつなも捕まえてしまう。
「コイツはどうするんだ?このまま握り潰した方がいいかな?」
「いや、その式神も連れて行くヨ。消して刹那さんに何かを感じ取られたら厄介ダ」
無力化されてしまったタカミチと、もともと無力に近かったちびせつなはそのままアーチャーと超に連れられ、下水道の奥へと連れて行かれたのであった。