皆さんも録画するときはよく確認しましょうね
じゃないと自分みたいなことになります
それではどうぞ
へルマンとネギと小太郎の戦いはネギ側の勝利に終わった。
ネギの雷の斧で斬り裂かれたヘルマンは、上半身と下半身が綺麗に分かれており、下半身が完全に消滅しており上半身も徐々に消滅していった。
「やれやれ…あれだけネギ君に強さとは何なのかと説いていたのに、案の定返り討ちとは…我ながら恥ずかしいな。しかし一応上位悪魔でもある私を倒すとは、血は争えないという事かね」
上半身だけのヘルマンは清々しい表情をしていた。ネギと小太郎に解放されたアスナにこのか達、目を覚ました刹那がもう動けないヘルマンに近づいて行った。千鶴はまだ目を覚ましていない様で、雨に濡れない様にステージの方へ移した。
「ネギ君、君の事は少し調べさせてもらった。さっきの雷の斧は私の知らない魔法だった。先程の魔法は素晴らしかった…だが君はあれ以上の魔法を使えるはずだ。
ネギは如何やら雷の斧以上の雷系最強の呪文を覚えているようだ。ヘルマンの言っていることが本当ならヘルマンはとっくのとうに消滅していた事だろう。だがネギは
「僕は…あなたに止めを刺そうとは思いません」
「…ほう、何故かね?」
ヘルマンの問いにネギはギュッと杖を握りながら
「僕が強くなろうと思ったのは、もうこれ以上大切な人を失わないために強くなったんです。復讐の為じゃない…それに貴方は6年前に召喚されただけだし、人質のアスナさんにはエッチな格好をさせたりアスナさんの能力を無理に利用したりしましたけど、このかさん達にはあまり酷い事しなかった。それに貴方は何処か本気で戦っていない様に見えました。僕は貴方がそんなに酷い人には見えません」
「ふふ、君はつくづく甘いなネギ君。私は悪魔なんだよ?そう見せといて実は極悪人…なんてこともあるはずだ」
「それでも僕は止めは刺しません…それが僕が決めた事ですから」
例え相手が悪魔でも止めは刺さない…それがネギが決めた事である。
ネギの答えにニヤリとしたヘルマンは
「君はとんだお人好しだなぁ。やはり戦いには向かないようだ」
ネギをそう評した。ヘルマンは急に顔をしかめたと思ったら次には驚いた表情となり
「今しがた私の部下から念話が届いてね、君のお兄さんのマギ君と交戦したが、マギ君にしてやられたそうだ」
「お兄ちゃんが…?」
ネギは何故ヘルマンと戦っている時にマギが助けに来なかったのかと思っていたら、ヘルマンの仲間と戦っていたもようだ。
ヘルマンは心底驚いている様子で
「私の部下も一応上位悪魔のはずだが、マギ君は一人で倒してしまったのか…それとえらく混乱しているようでね『もう嫌だ嫌だ嫌だ』とずっと呟いているよ。やれやれ…一体何のトラウマを植え付けたんだろうねマギ君は…」
ヘルマンが言っているほどのマギのトラウマ…敵にトラウマを植え付けるマギの姿を半ば信じられず、半ば想像できてしまったネギ達であった…
時間を少し戻し、マギはへルマンの部下との交戦中であったが、マギは手足そして体や顔が浅く切られており、絶えず血が流れていた。
かえって部下の女とスライム娘は無傷に近く、女の方が優勢に見えた。
「如何したのぉ?随分とボロボロじゃなぁい。さっきまでの威勢は何処へ行ってしまったのかしらねぇ?」
女の絡みつくような喋り方を無視して、マギは黙って顔の血を拭ったが拭っても再度血は流れていく
「マギさん!」
亜子はボロボロになっているマギを見て、いてもたってもいられずマギの元へ駆けよろうとしたが
「来るな!」
マギの大声に亜子は駆け寄ろうとした足が止まってしまった。
「心配すんな亜子、今の俺の傷は大したことない」
「でッでもマギさん、さっきから血が流れ続けてるんやで!?大したこと無いじゃないやろ!?」
保健委員でもある亜子からしたらマギの傷は今すぐ治療しないとマズイ傷であった。だがマギは
「だから心配すんなよ亜子、見た目よりもそんなに傷はひどくは無いんだ。だから逆に亜子が来ちまうと危ないんだ。だから亜子はそこでじっとしていてくれ」
亜子から見たら酷い傷ではあるが、致命傷ではない。相手の攻撃を見切り致命傷な攻撃は完全に避けているのだ。マギの傷の殆どは攻撃の余波か飛んできた石のつぶてで切ったか、スライム娘の体を硬質化した攻撃をよけて掠った攻撃だ。
マギはハッキリ言ってしまえば女の攻撃は完全に避けているのだ。女も自分の攻撃が全て躱されて焦りの為か攻撃が単調になってきていたのだ。さっきのマギに言った事も挑発が混じっており、マギが何の反応を見せなかったことに苛立ちさえあった。
「そっちこそさっきからハァハァ言ってるけど大丈夫か?若いの装って実は結構老けてんじゃあねぇの?お・ば・さ・ん?」
逆に挑発で返されて、女はギリギリと歯が砕かれんばかりに歯ぎしりをして、マギを睨みつけていた。
「調子にのってんじゃないわよぉクソガキがぁ…!それよりも何でこのスライムのクソガキが攻撃してきてるのに、アンタは攻撃してこないのよぉ!?」
マギは最初脅かすためにスライム娘を攻撃したが、それ以降攻撃する事がなかった。
何故って…マギは頭の関節をゴキリ!と鳴らしながら
「その嬢ちゃんが泣きながら攻撃してるからなぁ…泣いてる女の子を攻撃する事はできねぇよ」
スライム娘はマギに攻撃するとき泣きながら攻撃していたのだ。そして泣きながら小さな声でごめんなさい…とマギに謝りながら攻撃していたのだ。
それを聞いた女はブチリとキレながら、持っていた槍でスライム娘を容赦なく斬りつけた。
「何敵に同情を誘ってんのよぉ!?アンタは私の捨て駒なのよぉ!捨て駒は捨て駒らしく私のいう事だけを聞けばいいのぉ!!」
「ふッふえええ!ゴメンなさい!ごめんなさいれすぅぅぅ!!」
槍に斬られてバラバラになっても直ぐに元に戻るスライム娘は泣きながら女に謝り続けた。
行き成り目の前で虐待を目の当たりしてしまったマギと亜子。
「ちょ!おばさん!ウチ今一よく分かって無いけど、小さい女の子を虐めるなんてどうかしてるで!」
亜子のおばさんと言う発言に女は血走った目を亜子に向けて、持っている槍を何も言わずに亜子に投げつけた。
行き成り槍を投げられて思わず固まってしまう亜子だが、マギが高速移動で亜子に近づき迫ってくる槍を叩き落とした。
「亜子の言う通りだが、テメェはなんでその嬢ちゃんをそんな風に扱うんだ?お前とお嬢ちゃん達は仲間じゃないのか?」
マギの仲間と言う単語を聞いて女はフンと鼻を鳴らした。
「私はねぇこのガキを仲間だとは一度も思ってないわよぉ、このガキは道具よぉ道具。
化け物もどき…女の言ったその言葉を聞いてスライム娘はピクリと反応した。
「化け物もどき?如何いう意味だそれは…」
「あらぁこのガキの出生が気になるのかしらぁ?いいわよぉ教えてあげるわぁ。このガキはねぇ…」
女の次に発せられた言葉にマギは耳を疑った。
「頭の狂った人間によって体を改造させられて造られた人造魔物…元々は人間のガキだったのよぉ」
「なん……だと……!?」
マギは目の前にいるスライム娘が、元々は人間の子供で改造させられて造られた人造魔物という事に頭の中が真っ白になってしまい固まってしまった。
固まっているマギの顔が滑稽だったのか、女はニヤリと笑いながら話を続けた。
「頭の狂った人間たちはぁ、私達魔物に対抗するためと言った大義名分を訴えていたらしいけどぉ、そのためにガキを誘拐して弄繰り回すなんて可笑しな話よねぇ?誘拐されたガキは戦争によって両親を失った孤児や捨て子が殆どでねぇ、中には普通の暮らしをしている家族から強引に誘拐なんて事もあったそうよぉ。このガキは両親が居たらしいけどぉ、その両親を殺されて誘拐されたのよぉ」
酷い。亜子は思わずそう呟いた。
「誘拐させられたガキ共は、頭の狂った大人たちのただの実験材料…体をバラバラにさせられたりぃ、頭の中をグチャグチャにかき回されたりぃ他には子供同士で殺し合いをしたりねぇ、そして殺した子供の肉を食べていたそうよぉ」
頭の中でその光景をイメージしてしまったのか、ヒッと短い悲鳴を上げながら震えだす亜子。マギはそんな亜子の肩を押さえ耳元で大丈夫だと囁き続けた。
「そして人造魔物の実験は失敗続きで、一人一人とガキが実験失敗で死んでいったわぁ。もう駄目かと思った矢先にこのガキが実験に成功したのぉ」
スライム娘が実験に成功した人造魔物だと言うのは分かった。ここからが面白いのよぉとクククと愉快そうに笑う女。
「実験には成功したけどねぇ、ガキは自分が人間ではなくなったことにショックを起して力を暴走して、頭の狂った人間たちは哀れに自分達が造った魔物に皆殺しになってしまったのぉ。このガキは脱走し当ても無くさまよっていたけど、もうガキは人間じゃあないから人間は、ガキの姿を見てガキの言った事にも耳を貸さずに石を投げたり、ガキを殺そうとしたこともあったそうよぉ。そしてしばらくして私達と出会ったのよぉ」
スライム娘は自分の過去を聞いてプルプルプルと震えが止まらないでいた。
つまりぃと女はスライム娘を指差しながら
「このガキはぁ、親を殺されたばかりか魔物に改造させられた可哀そうなガキだっていう事よぉ」
女がそう言った次の瞬間
「ふぇッふぇッ…ふぇぇぇぇぇぇんッ!!!」
スライム娘は突然狂ったかのように大泣きし、自分の体の一部を巨大な鎌のようにし矢鱈目鱈に振り回した。余りの威力なのか道路が砕かれ街灯などは綺麗に真っ二つになってしまったのだ。
突然如何したのかとマギと亜子は驚きを隠せないでいると、女は愉快そうにケラケラと笑いながら
「昔の思い出したくない記憶を思い出してキレちゃったのねぇ。こうなったらこのガキはもう止まらないわよぉ」
そう言った。この女は初めから知っていたのである。スライム娘がキレてしまうと手の付けようがない事を。このままでは被害が大きくなってしまう。
「何かあの子が可哀そうや…マギさん如何にかならんの?」
亜子は女の話を聞いて、気持ち悪いと言う感情よりも可哀そうと言う気持ちが強く、マギに如何にかならないかと尋ねた。
聞かれたマギは何も言わず、黙って暴走しているスライム娘に近づいた。
「マギさん何するん!?」
「何って、泣いてる子供は優しくあやしてあげるもんだぜ」
マギはそう言っているが、泣いてる子供と言っても物を簡単に切断する事が出来る子供だ。何も考えずに近づけば自殺行為だ。
女もこのままマギが自滅すると考えたのかニヤニヤと傍観する事に決め込んだようだ。
マギは黙って泣いて暴れ続けるスライム娘に近づいた。近づいている間スライム娘の鎌がマギの手足を切りつける。痛々しい傷がどんどんと増えていく。
マギはスッとスライム娘に手を差し伸べようとしたが…
「!いやぁぁぁ!!」
半狂乱のスライム娘は自分の一部を鋭利な槍へと変えると、マギの脇腹を貫いた。ズブゥという鈍い音が聞こえた。
「マギさん!!」
亜子はマギの脇腹が貫かれたのを見て悲鳴を上げてしまった。女は勝ったと確信した。脇腹を貫かれたのと手足の切り傷の出血、自分が手を下さなくても勝手にマギはくたばるとそう思った。
「あっあぁ…お兄ちゃん…」
正気に戻ったスライム娘は自分に優しくしてくれたマギの脇腹を貫いてしまったのを見て、自分がとんでもない事をしてしまったと気づき、ゴメンナサイとマギに謝ろうとしたが…マギがフッとスライム娘を優しく抱き上げそしてギュッと抱きしめてあげた。
「ふぇッ…?おッお兄ちゃん?」
スライム娘は何故自分が抱きしめられているのか分からなかったが
「…大丈夫だ」
とマギが優しくスライム娘に囁いた。
「お兄ちゃん…?」
スライム娘は見上げてマギの顔を見てみると、マギは微笑んでいた。
「俺はお前が何者であろうと、怖がったりしない。お前はただの小さい女の子だ…もうあんなクソッタレな女のいう事なんか聞かなくていい。誰が何と言おうとも俺はお前が護ってやる」
マギはこのスライム娘とエヴァンジェリンの姿を重ねて見ていた。エヴァンジェリンもこのスライム娘も望まなくして化け物になったのだ。同情なんてむしのいい話ではあるとマギ自身そう思っている。だがこの子は俺が護ってやろうとそう決めたのだ。
「本当れすか?お兄ちゃんは私を護ってくれるんれすか?」
「あぁ俺はふざけた嘘は言わねえよ。お前は俺が護ってやる…だから今は思いっきり泣け」
マギがニッと笑いながらスライム娘にそう言うと、スライム娘は又大泣きをした。嬉しかった…初めて自分の事を化け物ではなく一人の女の子として見てくれたことにそして自分の事を虐めるのではなく護ってくれるという事に。
亜子はよかったと内心そう思いながら、一粒の涙を思わず流してしまった。
しかし女は納得できなかった。このままあのスライム娘がマギを刺し殺すと思いきやマギに優しくされ、暴走も止まってしまった。もう使えないと判断した女は怒りを露わにしながらマギを指差した。
「ちょっとアンタ頭が可笑しいんじゃないの!?そのガキは化け物なのよ!?なんで怖がったり気持ち悪がったりしないのよ!?」
「あぁ?この子は化け物じゃなくて、ただ泣いているか弱い女の子だよ。俺から見てみれば人を喜んで傷つけるアンタの方がよっぽど化け物だぜ。っとそう言えば元々化け物だっけおばさんは?」
マギは簡単に女をあしらってしまった。それがまた気に入らない女はギリギリと歯ぎしりした。このままでは悪魔としてのプライドの名折れだ。
と女は亜子の姿を目にしていやらしい笑みを浮かんだ。ある作戦が頭を過る…それは悪者が使う一番ベタな作戦。それは…
女は数本の槍を具現化させると、マギの足元の地面に投げ砂煙を上げた。砂煙で女の姿を見失ってしまうと
「ちょ!何するんや!離してぇ!!」
亜子の悲鳴が聞こえ、砂煙が晴れると亜子が女に捕まり首筋に女の鋭利となった爪が突きつけられていた。女がやった事は誰でも分かる人質作戦である。
マギは何故自分が女を怯ませている間に亜子だけでも逃がさなかったのかと、自分自身を責めた。相手が何の力も無い亜子を使わないという保証は無かったと言うのに
「さぁ大人しくしてないとぉ、この小娘の命は無いわよぉ」
「クソッタレ…!お前みたいな奴に卑怯だと言っても全然意味ないって言うのが、まさにこの事なんだろうな」
「ええそうよぉ。私みたいな悪魔がこんな美味しそうなごちそうに手を出さないわけないでしょう?」
「まッマギさんッ!助けて!」
亜子はマギに助けを求め、マギも大丈夫だと言おうとしたが余計な事を言って女が亜子に危害を加えるかもしれないと考えてしまい言えなかった。
女はマギが手を出せないこと良い事にニヤニヤと笑みを浮かべながら
「そうねぇ、このままアンタの目の前で大事な生徒が私にめちゃめちゃにされるのを只見てるしか出来ないってのも、面白そうねぇ」
女は亜子の頬を舐め回し、亜子はビクッとしながら悲鳴を上げる事が出来なかった。
「私はねぇ男も好きだけどぉ、女も好きなのよねぇ。特にアンタみたいな小娘を壊すのが最高に興奮するわぁ」
だから…と女は亜子の衣服に手を伸ばし
「こんな邪魔な服は剥いじゃいましょうねぇ!」
亜子の服の背中の部分を容赦なく引き千切った。亜子の白い肌と…大きな古傷が露わになった。
「んん?何よぉこの背中の傷はぁ?」
「!!いやぁ!見んといてぇ!!」
亜子は泣き叫びながら背中の傷を隠そうとするが、隠せるものではなかった。亜子の背中の傷は亜子自身のコンプレックスであり、マギにも見せたくなかった傷である。
亜子の傷を見て女は大笑い
「何よぉアンタのその傷、なんでアンタみたいな小娘にそんな傷があるのよぉ?おっかしいわねぇ!」
「いや…いややぁ…ウチ、マギさんにはまだこの傷は見せたくなかったのにぃ…!」
亜子は自身の思いをマギに伝えた後に自身のコンプレックスの傷の事を告白しようとした。だが女のせいでマギに傷を見られてしまった。もうどうすればいいのか亜子自身分からなくなってしまっていた。
「安心しなさいよぉ、アンタのその傷が目立たない程に体中を傷だらけにしてあげるからぁ!!」
女は亜子に向かって鋭利な爪を振り下ろし、亜子はギュッと目を瞑っていた。
このまま亜子の体に傷が入ると思いきや、マギが女の目が追いつけない程の瞬間的な速さで女に近づき、容赦なく女の顔面を殴り飛ばした。
「!!ぐほぉ!?」
女はマギに殴られたことに驚く瞬間も無く殴り飛ばされ、壁に叩きつけられた。
亜子が呆然としている間に、マギは自分の上着を脱ぐと亜子に羽織らせてあげた。
「マギさん…?」
亜子は自身が助かりマギにお礼を言おうとしたら
「亜子、俺はお前の傷を見ても気持ち悪いとかそんな事は思っちゃいない」
自身の傷の事を言われ思わず体が震える亜子。それになとマギは話を続ける。
「人間誰にだってコンプレックスはある。そのコンプレックスに負けない様に必死に前を向いて歩いて行くんだ。だがなもし負けそうになったら誰かを頼れ。お前も傷の事でバカにされたり気持ち悪がられた時は俺に言え。俺がそんな奴らブッ飛ばしてやる。だから今は泣くな」
「うッうん!」
亜子はマギが自身の傷を見ても気持ち悪がったりしなかった。それだけでも亜子は十分救われた気持ちになった。
一方殴り飛ばされた女は口を切ったのか口から血が流れているのを見てキレた。女である自分を殴っただけでなく血を流すとは…殺してやる!と女はマギを睨みつけようとしたが出来なかった。マギの方から膨大な魔力の力が感じられたのだ。
(なッ何よあの男、まだ魔力が上がっているなんて…まだ実力を隠していたって言うの!?)
女が体中から冷や汗を流しているとオイとマギは魔力を溜めながら
「テメェ俺の大切な生徒を泣かせるとは…俺は女は殴らないことにしてるが外道は別だ。だから…五体満足で帰れると思うなよ」
マギの周りで巨大な魔力の渦が巻き起こり
「マギウス・ナギナグ・ネギスクウ! 来たれ炎の精闇の精!! 闇よ渦巻け燃え尽くせ地獄の炎 闇の業火!!!」
マギは手の平に魔力の塊、本来は闇の業火である魔力の塊を
「術式固定!! 掌握!!」
取り込んだ。そしてマギの体がみるみるうちに変化していった。体は漆黒の闇のように真っ黒に髪の色は紅蓮の炎のように真っ赤に。これはそう修学旅行では最終的に扱えず自爆してしまった
「術式兵装 紅蓮夜叉!!」
エヴァンジェリンの元で修業し、習得した闇の魔法である。闇の魔法を発動し、マギは闇の魔法を修行するときにエヴァンジェリンにある事を教えて貰った。
『いいかマギ、闇の魔法は名前は大層な物だが所詮は魔法だ。だがしかし魔法と言っても一瞬の気の緩みによって魔法に飲み込まれるぞ。特に怒りや憎しみなどでな…怒りに飲み込まれるな。逆に乗りこなせ』
(あぁエヴァ、確かに俺は頭に血が上ったけどな…逆に怒りが一周回ってクールになっちまったぜ。もう飲み込まれる心配はなさそうだぜ)
マギはどん!と言う音が付きそうな位に女を指差しながら
「覚悟しな、この紅蓮夜叉の姿になった俺にテメェみたいな雑魚じゃまず勝てねぇよ」
「この…調子乗るんじゃわいわよガキがぁ!!」
女は槍を構え突撃しようとしたが、紅蓮夜叉の姿になったマギが一瞬で間合いを詰めた。
「なッ!え!?」
「おせぇよ」
マギは一瞬の間に女の顔や体にラッシュを決めた。
「ごほぉ!あのガキ…あの一瞬で私に12発も攻撃を喰らわせるなんて…」
「15発だ間抜け」
マギはそう言いながら、女を蹴り飛ばした。女は数回バウンドしながら地面に叩きつけられた。
「おら立てよ。まさかこれで終わりな訳ねえだろな?」
マギは拳を構えながら女が立ち上がるのをまった。するとフフフフと女が自分の方が不利なはずなのに笑みをこぼしていた。
「何が可笑しいんだ?」
「何が可笑しい?可笑しいわよぉ。私がまだ本気を出していないのに勝った気になってぇとても滑稽だわぁ!!」
そう言うと女は体をゴキゴキと鳴らしながら変形していった。体はどんどんと脹れあがり、人間の腕が裂けて中から虫のような腕が現れたり、体を突き破って同じく虫のような腕が現れた。背中からは蝙蝠のような翼を広げ、口は裂け、新たに小さな目がぎょろぎょろと辺りを見渡していた。変身の仕方に亜子やスライム娘は思わず悲鳴を上げてしまった。
そして女は腕は蜘蛛のような8本の腕、蝙蝠の羽裂けた口に複眼と見るにおぞましい姿の化け物へと変わった。
「ふふ私の本来の姿はサキュバス…だけど私自身この姿が嫌いだから人間の姿になっているんだけどねぇ。でもこの姿になれば人間の姿の時よりも数倍の力を発揮できる。アンタももうおわ「説明が長いんだよ馬鹿」ぐへぇ!!」
マギは自身の力を説明していた女サキュバスを説明途中に殴り飛ばしてしまった。これにはさすがの亜子もええーと呆然としてしまう。
「態々やられる奴の説明なんか聞かねえよ。ほらさっさと掛かって来いよ」
「クソガキがぁ!!」
サキュバスは8本のうでに槍を持ってマギを攻撃するが、マギには一向に当たらなかった。
「なッなんで当たらないの!?普通の人間だったらとっくにくたばっているのに!」
サキュバスは槍が当たらないことに焦っているとマギが
「俺の紅蓮夜叉は、簡単に言えば力を増大させる魔法だ。だが尋常じゃない程の力だ…だからテメェぐらいの魔物だったら」
マギは一瞬でサキュバスが持っていた槍を細切れに破壊してしまった。
「負ける気がしねえな」
サキュバスは細切れになった槍の柄を舌打ちしながら投げ捨てると、蝙蝠の羽で上空へと舞い上がった。
そしてマギに標準を当てると口に魔力を集中し始めた。
「だったらこれならどう!?悪魔族の技で最強クラスの技、これを喰らったらアンタもただじゃすまないわよぉ!悪魔の息吹き!!」
サキュバスの口から特大などす黒い闇の魔力の波動が放たれた。
波動は真っ直ぐ狂いもなくマギに向かっていった。
だがマギは別段慌てる様子もなく、やれやれだぜと呟きながら
「知ってるか?そうやって自分の技をペラペラ喋る奴は、必ず負けるってな」
そう言ってマギは前方に手をかざすと魔方陣を展開、魔力の波動を防いだ。
否防いではいなかった。波動が魔方陣から飲み込まれていったのだ。
マギは波動を全て吸収すると、さらに自分の力に還元してしまった。
サキュバスは唖然とする。自分の技が吸収されてかえってマギをパワーアップさせてしまったことに。
「な何をしたのよアンタは今!?」
「何したって今から俺に負けるやつに、一々説明するつもりはねぇから」
マギはマギウス・ナギナグ・ネギスクウと詠唱を始める。
「来たれ魔剣よ 神々を裏切った炎の魔剣 名を
マギの手の中から炎で揺らめく魔剣が現れた。
マギは炎の魔剣を構えるとサキュバス向かって跳躍、サキュバスがガードする前にマギは無数の斬撃を放った。
「煉獄殺陣剣…斬り刻まれ、炎にのまれよ」
マギの斬撃でサキュバスの腕や足に翼が切断され、斬られた場所から発火し両断された手足が炎に焼かれて灰塵へと化した。
「ギャァァァァァッ!!私の腕が足がぁ!」
サキュバスは斬られた痛みと傷口が焼かれる痛みで悲鳴を上げた。翼も斬られ飛ぶ力も失いそのまま落下していき、地面に叩きつけられた。
マギも静かに着地し、動けなくなったサキュバスにゆっくりと近づいていった。
手足と翼を斬られ動く力を失ったサキュバスにとって、ゆっくりと近づいてくるマギが処刑人しか見えなかった。
サキュバスは今更ながら自分はマギには絶対勝てないと言うことと、マギを怒らせてはいけないと言うことを理解した。
マギはサキュバスの顔を掴むと持ち上げた。メキメキとサキュバスの顔から骨の軋む音が聞こえてくる。
「ごっごめんなさいぃぃ。私が私が悪かったからぁ、もうアンタやアンタの仲間には手を出さないから見逃して。お願いだからぁ」
サキュバスはマギに必死に命乞いをした。
だが無表情のマギはサキュバスの命乞いに聞く耳を持つつもりなんてなく
「もう遅いんだよ。地獄で懺悔しな」
それが死刑宣告となり、サキュバを掴んでいる右腕が光だし
「右腕開放 闇の業火 黒炎龍拳!!」
紅蓮夜叉によって何倍もの強力になった闇の業火が、龍の形を成してサキュバスを飲み込み空へと打ち上げられた。
空へと打ち上げられたサキュバスは断末魔を叫びながら、闇の炎に焼かれていき文字通り塵も残さず消滅してしまった。
サキュバスが消滅したのを確認するとマギは紅蓮夜叉を解除して、いつも通りのマギの姿へと戻った。
そして亜子の元へ戻ると怪我はないかと聞いて、亜子は大丈夫だと頷くと
「マギさん…マギさんは一体何者なんや?」
ここまで来たら誤魔化すのも無理がある。マギは亜子に自分の正体を正直に話した。
「亜子、今まで黙っていたんだが俺は魔法使いなんだ」
「へッへぇ~魔法使いなんや…」
自分の正体を告白したのに、亜子の反応はなんか少し薄い。
「なんだよ、魔法使いだっていうのにリアクションが薄いな」
「いやマギさんさっきいきなり変身したから、スーパー○イヤ人かと思って…」
「いや誰だよそれ」
マギは日本の漫画をあまり読まなかったので、髪の毛が金髪に変わる某バトル漫画の主人公を知らない。
まぁそれは置いといて
「魔法使いの存在は秘密なんだ。だからこの事はあんまり喋らないでほしい」
「うん分かった。りょうか「と言ってもクラスの何人かはもう知ってるんだけどな」って駄目やないか!!」
亜子は了解しようとしたが、すでにクラスの何人かは自分の正体を知っているというカミングアウトに思わずツッコミを入れてしまった。
「まぁ取りあえずだ。ネギやアスナ達の魔力の反応を世界樹らへんで確認した。亜子も来てくれ」
「ネギ君も魔法使いなんやな。てかアスナも魔法使いの事をしってたんやな」
とにかくとマギはいきなり亜子をお姫様だっこをして、亜子の顔を赤らませた。
「お前も来い」
「はっはいれす!」
スライム娘がマギの背中に飛び付き、おんぶするような形になった。
亜子とスライム娘がしっかり掴まったことを確認したマギは、ゆっくりと浮かび上がり亜子とスライム娘が降りおろされないような速さで、世界樹の元へ飛んでいった。