堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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雨の日の出会い

 マギ達がエヴァンジェリンの別荘にて、どんちゃん騒ぎをしてたのと同時刻、子犬だと思って寮に連れて来たらそれは小太郎であった夏美と千鶴は…

 

「はぐはぐ!もぐもぐ!!…美味い!美味いでちづる姉ちゃん!」

 

「おほほ、まだ沢山あるからいっぱい食べてね」

 

 小太郎が次々とごはんをぺろりとたいらげるのを見て夏美はポカンと見ていた。小太郎がごはんを食べるまで至った経由を説明すると…

 子犬から元の姿に戻った小太郎。だが、凄い熱にうなされていた。

 千鶴は医務室に連絡しようとするが、起き上がった小太郎が近くにあったスプーンを投擲し、電話を破壊した。

 そして夏美の首筋に自分の鋭利な爪を突き立てて人質として、千鶴に食べるものと着替えを寄越せと要求した。

 千鶴は落ち着いた様子で、小太郎に名前と何処から来たのか尋ねていた。何時も保育園でやんちゃの子供たちと相手をしてるせいか、こう言った子供の相手は慣れている様子であった。

 小太郎は、如何やら記憶が失っている様子で、自分の名前も何処から来たのかも覚えていなかった。がアイツに会わないと…と誰かに会うつもりでいたようだ。

 千鶴が誰に会うのか近づいて尋ねると、小太郎は思わず手を振り回して、爪で千鶴の肩を切ってしまった。肩から血がどくどくと流れているが、千鶴は構わず小太郎を優しく抱きしめる。

 今小太郎はかなり熱がある。今動いたら倒れてしまうだから今はゆっくり休んで…と千鶴が小太郎に優しく論すると小太郎は糸の切れた人形のようにぐったりとしてしまった。

 漸く大人しくなったが、千鶴の肩から血が流れ続けているのを見て夏美が軽くパニくったのは余談である。

 小太郎はしばらく寝かせて、熱がある程度下がってご飯を食べ始めて今に至ると言う訳である。

 

「いや本当にサンキューな、美味いわー」

 

「もう平熱まで下がってるよ。凄い回復力」

 

 夏美は小太郎の回復力に舌を巻いた。千鶴も小太郎が良くなったのを見てよかったとそう思っていた。

 

「それで小太郎君、名前以外に何か思い出せたの?」

 

「いや全くや…頭ん中に霧がかかったみたいで」

 

 小太郎はこの短時間で自分の名前を思い出す事は出来たが、それ以外はまったく思い出せないでいた。

 そう仕方ないわね…と千鶴はそう言いながら

 

「それはそうと、小太郎君体を洗いましょうか。服を着させたけど今の貴方はとても汚いから」

 

「え?ちょちょい待ち!自分の体位自分で洗えるわ!」

 

 千鶴が小太郎をシャワールームに連れて行こうとして、小太郎は自分一人で洗えると抵抗した。流石に小太郎程の男の子では年上の女性と一緒にシャワーなんて恥ずかしすぎるのだ。

 

「あらこのしっぽよく出来てるわね。まるで本物みたい…夏美も早くいらっしゃい」

 

「ぎゃー下まで脱がさんといてー!」

 

 千鶴の慣れた手つきで小太郎の服を脱がしていく。小太郎は恥ずかしさのあまり赤面しながら絶叫した。

 夏美は小太郎が千鶴のおもちゃになった事にナムと合掌する事しか出来なかった。

 暫くすると漸く折れた小太郎が仕方なく千鶴たちとシャワーを浴びる事にしたのだが、小太郎は千鶴の肩の絆創膏に目が行った。

 

「ちづる姉ちゃん、その傷は俺が付けたんやろ?さっきは頭が朦朧としてたから、すまんな」

 

 小太郎は千鶴にすまんと素直に謝ったが、いいのよと千鶴は気にしていない様子だ。

 

「それよりも、何か思い出すまでゆっくりしてていいのよ小太郎君。訳ありみたいだから誰にも連絡しないわ」

 

 千鶴のニコッとした笑顔に思わず呆然としてしまう小太郎だが、直ぐにハッとして

 

「あ…ありがとう」

 

 とお礼を千鶴に言ったのであった。するとシャワールームのドアが少し開き、夏美が小太郎に

 

「小太郎君、一応言っとくけどちづ姉に惚れても意味ないよ。ちづ姉はマギさんにほの字なんだから」

 

「なッほホレへんわい!!」

 

 小太郎は思わず大声で夏美に言い返していたが

 

(あれマギ…何かこの名前どっかで聞いた事が…マギ…マギ…ネギ…駄目やまだ思い出せん)

 

 小太郎は何か大切な事を何とか思い出そうとした。

 

「夏美ちゃーん?人の大切な事をなんで簡単に話しちゃうのかしら~?」

 

「きゃー!ゴメンちづ姉~!!」

 

 千鶴と夏美のやりとりを無視しながら…

 

 

 一方エヴァンジェリンの別荘にてどんちゃん騒ぎをしてたマギ達は、外の世界に戻ってきて外が雷も落ちている程のどしゃぶりを見て、あーあとため息をついた。

 

「なんかさっきまで南国みたいなところにいたのに、この雨を見るとテンション下がるなー」

 

 外のどしゃぶりを見てこのかがため息をついた。

 

「今日の天気予報では雨が降るとの予報だったので一応折り畳み式の傘を持ってきているのですが、ここまで大荒れとは予想外です」

 

 用意周到な夕映は傘を持ってきていたようだ。

 

「エヴァちゃん、もしテスト勉強で時間が足りなくなったら、この別荘使わせてよ」

 

「私もお願いするアル」

 

 バカレンジャーのアスナと古菲は此れはいい勉強場所を見つけたと喜んでいたが

 

「別に構わんが、女には薦めんぞ。歳とるからな」

 

「「あ…」」

 

 そうだったとアスナと古菲は思い出した。別荘の1日は外では1時間、外の人より1日だけ早く歳をとるのだ。

 

「別にいいじゃん?1日や2日位は歳とっても」

 

「若いから言えるセリフだなそれは…」

 

 和美の楽観的なセリフに不老不死のエヴァンジェリンは何処か呆れたような表情だった。

 

「…ん?」

 

 エヴァンジェリンは何かの気配を感じ取ったのか、辺りをキョロキョロと見渡した。

 

「マスターどうしました?」

 

 茶々丸があたりを見渡すエヴァンジェリンにどうかしたのかと尋ねるが、なんでもない気のせいだったとエヴァンジェリンは返した。

 

「そうだマギ、この後お前に話したい事があるから少し残れ」

 

「…あぁ、了解だ」

 

 エヴァンジェリンの残れと言う命令に、マギも2つ返事で了解した。

 ネギ達はマギを残して先に寮へと帰って行った。道中は雨が土砂降りで、折り畳みの傘を持ってきていない者も居た事もあって、何も話さず寮まで駆け足だった。

 寮に辿り着いた時には、傘をさしていない者はかなりびしょ濡れだった。

 

「それじゃネギ君、困った事があればいつでも協力するよ」

 

「老師は弟子を助けるものアル」

 

「私達も協力します」

 

「だからなんでも相談してくださいです」

 

 何時でも力を貸すと言って和美たちは自分達の部屋に戻って行った。

 

「アハハ…なんか皆さん協力する事になってしまいました」

 

「まぁアンタも皆が協力してくれるから少しは楽になるんじゃないの?勿論アタシも協力するわ…ただし、あんまり無茶の事するんじゃないわよ?」

 

 アスナはネギのでこを指でツンツンしながら釘をさす。ネギも苦笑いしながら了承する。

 

「アハハ…ハイ皆さんやアスナさんにも、困った時にはいつでも協力してもらいます」

 

 だけど心配しないでください、とグッと握り拳を作りながらネギはアスナに

 

「皆さんが協力してくれる代わりに、僕やお兄ちゃんが絶対にアスナさんや皆さんを護ります!」

 

 それだけ言うと、ネギは一足先にアスナとこのかの自室に戻って行った。

 

「あ…もうアイツ本当に分かったのかしら」

 

「ネギ君は真面目やからなー倒れないか心配や」

 

「でもネギ先生やマギ先生があれほど強くなろうとした理由が、あの過去の出来事と言うのなら納得できます」

 

 でもねぇとアスナは走り去っていったネギを見ながら

 

「ネギやマギさんはほんとだったら、同い年の友達と馬鹿やってる年頃よね…」

 

「マギ先生はともかく、ネギ先生の周りは皆年上ですものね…」

 

「そいえばカモ君以外は何時も敬語やしねー」

 

「言われてみれば確かに…」

 

 アスナの頭の上に乗っていたカモも自分はため口だが、アスナ達は敬語だと改めてそう思いだす。

 

「同い年の友達でもいればえーのになー」

 

 アスナ達はネギをそんな心配そうな目で見ていた。

 …そんなアスナ達を天上の換気扇の隙間から何かがアスナ達を見ていた。

 ネズミではない。否そもそも動物ではない何かは、アスナ達を一瞥したのち何処かへ行ってしまった。

 

 

 あやかは上機嫌だった。

 寮の部屋に戻る道中、ネギと会ってネギがあやかの洋服を似合っていてとても綺麗ですと誉めてくれた。

 それを聞いただけであやかは有頂天、ネギが歩き去ったあとは鼻唄を歌い、小躍りするほどの喜びよう

 

「あぁ~ネギ先生こそが理想の少年ですわ…」

 

 そんなことを言っているうちにあやかは自分の部屋に到着した。

 あやかの部屋の同室者は…千鶴と夏美。今更だがあやかと千鶴達は同室者であったのだ。本当に今更だが…ドア越しから部屋の喧しさが聞こえていた。

 今日はいつにもまして喧しいですわね…あやかがそんなことを呟いていると

 

「ぎゃぁぁぁ!?ちづる姉ちゃんそこだけはやめてーな!!」

 

「うふふふ、小太郎君逃げちゃダメよ~♪」

 

「ちょ!小太郎君、そんな格好で逃げちゃダメだって!」

 

 部屋の中から見知らぬ少年とドタバタと言う騒音にあやかはビックリしながら

 

「ちッ千鶴さん!?いったい何事ですの!?」

 

 玄関のドアを開けると、小太郎が突進してきた。

 

「…え?」

 

 あやかは何故自分達の部屋に見知らぬ少年が居るのか理解できずにいたせいで、小太郎の突進を躱す事を忘れていた。そして

 

 ドゴスッ!!

 

「ぽぴー!!」

 

 小太郎の頭があやかの腹に強打、変な声を出しながら崩れ落ちた。

 

「あ…すまん」

 

 小太郎はわざとではないが、頭突きをしてしまったあやかに謝った。

 

「もぉ小太郎君、あんまり逃げないでよ…っていいんちょー!?」

 

 夏美は玄関前で蹲って悶えているあやかを見て短い悲鳴を上げるのであった。

 

 

 

「一体何なんですのこの子は!?」

 

 あやかは憤慨しながらテーブルをバンバン叩きながら小太郎が何者かを聞いていた。

 まぁ出会いがしらに頭突き喰らえば怒りもするだろう。おかげで昼食べたパスタを出しちゃいそうでした…とお腹をさすりながら呟くあやか。

 

「まぁまぁあやか落ち着いて」

 

 千鶴があやかを落ち着かせようとしたが、落ち着く様子は無かった。

 

「…それでこの子は誰なんですの?」

 

 あやかは小太郎を指差しながら何者なのかを尋ねた。この子は…と千鶴はなんて説明したらいいか少し考えた。

 流石に行き倒れの男の子を拾ったと言っても信じてはくれないだろう。

 如何したのものかと考えていると、夏美の顔が目に入りそうだといい案が浮かんだ。それは

 

「この子は夏美ちゃんの弟で、村上小太郎君ですわ」

 

 さらっと夏美の弟と嘘を吐いた。

 

「ちょいまってなちづる姉ちゃん、俺は別におとう「弟よ…ね?」え゛?あッはいそうです」

 

 自分は弟でもなんでもないと言おうとしたが、千鶴の凄味のある笑顔にビビってそうですとしか言えなかった小太郎。あやかも如何やら信じたようだ。

 

「その弟さんが如何してこんな所に?」

 

「ええ実は…夏美ちゃんの御実家は話せない程にドロドロで複雑な家庭の事情があってね…それはもうお昼のドラマみたいに。それで小太郎君には夏美ちゃんしか頼れる人が居なかったの」

 

「そ…そうなのですか」

 

(ちょちづ姉!?私のとこの家族はいたって普通だよ!!)

 

 千鶴が嘘泣きをしながらあやかに嘘の夏美の家の事情を話したが、家族はいたって普通だと小声で千鶴にツッコミを入れた。

 

「そう言う事情でしたら…しょうがないですね。当分は此処に居ても宜しいですよ」

 

「ほんとか!?サンキューな姉ちゃん。恩に着るわ!!」

 

 当分は此処に居てもいいとあやかが許可してくれて、小太郎はありがとうと素直に頭を下げた。

 

(小太郎君と言うのも素直な少年みたいですが、ちょっとキツイ目つきにギザギザ爆発頭…まるで何処の大草原の野生児かと思いましたが、夏美さんのご家庭の事情が複雑ならそうなってしまうのでしょうか…)

 

 あやかは未だに千鶴の嘘を信じこんでいた。

 

「でもやはり私の知る限り少年と言うのは、ネギ先生の様な愛らしい天使のような御方ですわ…あぁネギ先生」

 

「うわぁ…いいんちょー、欲望がダダ漏れだよ」

 

「あやか姉ちゃんってちょっと危ない姉ちゃんかいな?」

 

 夏美と小太郎がひそひそ声であやかの事を話していたが、小太郎はまたもやネギと言う名前を聞くとまたもや頭の中に靄がかかったような状態になった。

 

(駄目や…まだ何も思い出せない。本当に大事になことがあったはずなんやけどな…)

 

 何も思い出せない事に焦りを覚え始めた小太郎。

 

 

 

 そんな小太郎を部屋の天上のわずかに開いた隙間から何かが覗きこんでいた。

 それは小さい水たまりみたいだった。数は3、しかし水たまりには無い目がキョロキョロと動いておりさっきからずっと小太郎の事を見ていた。

 

「ククク…」

 

 水たまりから笑い声が水たまりからしたと思えば、水たまりが不規則に盛り上がり、ギュルギュルと形を成して行った。

 そして水たまりたちは形を人の女の子の形と変わった。背丈はチャチャゼロと同じぐらいだろう。右から眼鏡真ん中は短髪左は長髪の女の子彼女たちはスライムだったのである。

 

『彼の様子は如何かね?』

 

 と突然念話がかかってきて、短髪のスライム娘が念話に応じた。

 

「あぁ混乱の魔法がきいてるのか、女と呑気にいちゃついてるぜ」

 

「一時的な記憶喪失の様です」

 

 もう一人眼鏡のスライム娘が念話に加わった。小太郎の記憶喪失はこのスライム娘達や念話をしてる者が関係しているようだ。

 

『そうか、確か彼は懲罰中で特殊能力は使えなかったはずだね。気は一応使えるようだが…よろしい君たちは作戦通りに動いてくれ』

 

 念話の主がスライム達に作戦通りにと命令し、ラジャとスライム娘たちは応じた。

 …あぁそれとと念話の主が話を変えて

 

『そう言えば君たちの末っ子だが、まだ見つからないのかい?』

 

「はい、私達も作戦を行いながらあの子を探していましたが、結局は見つかりませんでした」

 

「アイツは泣き虫でオッチョコチョイだからなぁ」

 

「この学園の魔法使いに見つからないか心配…」

 

 長髪のスライム娘がぼそりと言った。如何やら彼女たちの他にもまだスライム娘が居るようだ。

 そうか…と念話の主が溜息を吐きながら

 

『一応私や、私の従者も君たちの末っ子を探してはいるが、いかんせん彼女は末っ子の事を毛嫌いしてるからなぁ。何か問題にならないか心配だ』

 

「まぁあの子の出生が出生ですからね…あの人が毛嫌いするって言うのも何処か分かります」

 

「だけど出生がアレだからと言っても今は私達の仲間…」

 

 メガネのスライム娘と長髪のスライム娘がそう言っている。まぁそういう事だと短髪のスライム娘が

 

「まぁ私達は私達でアイツを探しておいて見つけたら、叱っといてやるからさ旦那も見つけたら一応確保しておいてな」

 

『了解だ。君たちの作戦成功を祈っているよ』

 

「旦那もな。まぁ旦那だから失敗する事もねぇけどな」

 

 それだけ話すと、スライム娘達は念話を終了させた。

 

「さてそろそろ時間だからいくぜ」

 

「了解です」

 

「了解…」

 

 スライム娘達は人型からまた液体状に戻って小太郎たちが居る部屋の屋根裏を後にした。

 

 

 

「ふむ…やれやれそれでは始めるか」

 

 学生寮の外、豪雨が降っている中傘も差さないで黒マントを着た男がそう言いながら学生寮へと向かっていたのだった。

 

 

 

 のどかと夕映は大浴場に向かう道中暗い表情であった。

 何故暗い表情なのかは、別荘で見たマギとネギの過去である。

 

「まさかマギさんとネギ先生の過去にあんなことがあったなんて」

 

「ええそうですね」

 

 のどかの言った事にも、夕映の返事は何処かうわの空であった。

 

「夕映私…ね、マギさんが魔法使いだって知った時はドキドキが止まらなかったし、魔法で戦うマギさんを見てもカッコイイなんて思ったり、自分が魔法を使えるんじゃないかって思って嬉しかったりって何処か浮ついた気持ちでマギさんと一緒に居ようとした。けどマギさんは私達が知らない所で辛い事や怖い事悲しい事とぶつかっていたんだね…」

 

「私もですのどか。私も自分が魔法使いなったらなんて甘い気持ちで魔法使いになろうとしてましてたですが、魔法使いになるにはそれ相応の覚悟は必要だと改めて知りましたです。こんな自分が恥ずかしいです」

 

「私も…」

 

 すっかり気持ちが落ち込んでしまった。

 

「でももう違うです!私達はもうそんな浮ついた気持ちだけでなく、マギ先生に協力すると決めたんです!」

 

「そッそうだよね夕映!頑張ろう!!」

 

 オーッ!とのどかと夕映は気持ちを切り替えてマギに全面的に協力すると張り切っていた。とそんな事をしてるうちに大浴場に到着した。

 

「お、遅かったじゃん2人とも何やってたの?」

 

 脱衣所で服を脱ぎ終わったハルナが、のどかと夕映を見つけて何があったのか尋ねていた。

 

「いえ別に、私達の事よりもハルナは大丈夫なんですか?漫画の〆切」

 

「なはは。いや~本当はまずいんだけど、風呂位は入っておかないとねぇ」

 

 実際ヤバい様子だ。と何時ものようにワイワイ騒いでいる3-Aの生徒達

 裕奈は裕奈で、録画していた怪しそうなぬるぬる系美容グッツを使用していた。

 

「あれ?そう言えば亜子は?」

 

 アキラは亜子の姿なかったので如何しているのか気になっていた。

 

「亜子は何か外部のサッカー部の集りがあるらしくてね。この雨の中ついてないよね~」

 

 裕奈は亜子がまだ寮に帰っていないのを知っており、確かにこんな雷もなっている中を帰って来るのはついていないだろう。

 生徒達がワイワイ騒いでいるので気づいていないが、大浴場の扉がゆっくり開いてスライム娘達が入ってきた。

 

「獲物がわんさか居るぜ」

 

「ターゲットは4人です」

 

「それ以外は無視…」

 

「えーいいじゃん。6年ぶりのシャバなんだしちょっくらあそぼーぜ」

 

 短髪のスライム娘の提案に眼鏡のスライム娘は全くと言いながらも、スライム娘達はお風呂の中に入って行った。

 そして千雨や桜子にまき絵などをお風呂の中でくすぐると云ったイタズラを軽くしていった。

 

「きゃはは楽しぃ~!」

 

「あんまり遊ばないですよ」

 

「ターゲットはあの4人…」

 

 長髪のスライム娘が言ったターゲットとは和美に古菲のどかに夕映であった。

 スライム娘たちは気づかれる事無く接近し、のどか達を飲み込んだ。

 

「ちょ!何此れ!?」

 

「みッ身動きが取れないアルごボボ!!」

 

 和美は身動きが取れない事で、このお湯がただのお湯ではないと直ぐに気づいた。

 だが気づいたときはもう遅く、朝倉の眼前で短髪のスライム娘がにぃと笑っていた。

 

「…あれ?のどか~夕映~何処行ったのよ…」

 

 ハルナが気づいた時にはのどか達の姿は大浴場から消えていた。

 

 

 

 

「はぁ~こんなに雨降ってるのに、大変な事になっちまったねぇ全く…」

 

 マギは傘をさしながらそんな事をぼやいて学園都市の中を見回っていた。

 何故彼が学園都市を見回っているのかと言うのはほんの少し時間を遡る。

 マギはエヴァンジェリンに一人だけ残るように言われて残ったマギ。

 

「なぁエヴァ、何で俺だけを残したんだ?…と言っても何となくだが俺だけ残された理由も分かるけど」

 

「分かっているなら話は早い…今さっき方麻帆良に何体かが侵入してきた」

 

 やっぱりかぁとマギはそう呟いた。自分もその侵入者の気配を感じ取ったが気のせいだと思いたかったが、エヴァンジェリンが言っている事だから本当なのだろう。

 おまけに魔力反応もあったから最低でも魔法使いだとは分かる。

 

「エヴァに鍛えて貰って魔力探知が向上したのを、こんな形で使う事になるとはな…」

 

「ぼやくなマギ、私と茶々丸は一応ジジイに侵入者の事を報告しておく、お前は学園都市を見回って敵がいないか探して、もし見つけたら排除しろ」

 

「気よ付けて下さいマギ先生」

 

 マギにそれだけ言うとエヴァンジェリンと茶々丸は学園長の元へと向かって行った。

 で今に至るのだ。

 

「何でこんな雨の日に敵が来るのかねぇ。いやこんな雨だからこそなのかな?たく敵も天気を考えてほしいな。はぁ…めんど」

 

 とマギは何時もの口癖が出そうになっておっと、と口を閉じた。

 今この口癖は封印しているんだ。そんな簡単に約束を破るなと自分自身を叱った。

 それに今まさに侵入者は若しかしたら自分を狙ってるかもしれない。そう思って気を引き締め直した。

 

「…まさかとは思うが、若しかしてもう侵入者はネギやアスナが居る学生寮の中に…なんて流石にねぇよな」

 

 マギがそんな事を呟いてないないと言っていたが、残念な事にもう侵入者もとい侵入スライム娘が学生寮に侵入して、のどか夕映和美に古菲の計4人を捕らえてしまったのである。

 そんな事を露知らないマギは

 

「まぁそんな事が起きてもネギが居るから大丈夫だろ。アイツは最近になって強くなってきているからな」

 

 とネギの力を信じているらしく、自分は今は見回りに専念しようとしたその時

 

「ふぇッふぇぇぇぇぇん」

 

 何処からか小さい女の子の泣き声が聞こえてきた。マギは一瞬空耳かと思ったが、確かに今女の子の泣き声が聞こえてきた。

 

「ふぇぇぇぇん、お姉ちゃんたち何処ぉ?」

 

 姿が見えない女の子は如何やら姉達をはぐれてしまった様だ。こんな雨の中ではぐれるとは女の子もついてないな…マギはそんな事を考えていた。

 

「やれやれだぜ」

 

 学園内に侵入した者達を探すのも大切だが、泣いてる女の子を助ける事も大切だ。

 マギは女の子を助ける事を優先する事にした。

 

「おーい、誰か其処に居るのか?」

 

 マギは泣き声が聞こえた方向に向かって声を出した。だが声が聞こえた方向からは声はするが女の子の姿や気配が感じ取れなかった。

 気のせいだったのか?マギはそう思いながら声が聞こえた方向へ歩み寄ってみた。

 とその時

 

「きゃあ!?」

 

 マギの足元から先程泣いていた女の子と同じ声で悲鳴が聞こえてきた。

 マギはビックリしながら足元を見た。足元は水たまりしかなく、何処にも女の子は居なかった。

 何だ気のせいか…と思いきや、マギの足元にあった水たまりからキョロキョロと目が現れて

 

「ふぇぇぇ、大きいお兄ちゃん私事を踏まないでよぉぉぉ」

 

 水たまりが行き成り喋り出した。

 

「!うぉう!?」

 

 此れにはマギも吃驚仰天、思わず後ずさりした。今足元にあった水たまりはマギに踏まないでほしいと泣いているような声で懇願していた。

 マギは冷や汗を流しながらあの水たまりが何なのか分析し始める。

 

(これは如何見ても、スライム…だよな?てか若しかしなくてもこのスライムは侵入者の1人だよな絶対…どうすんだこれ…)

 

 マギが如何するか悩んでいる間も、スライムの女の子は泣きながらお姉ちゃんたちどこぉ?と探していた。

 恐らくお姉ちゃん達と言うのもあの子と同じスライムなのだろう。如何するか…そのお姉ちゃんなるスライム諸共排除してしまうべきか…

 だがマギは如何してか排除しようとする考えがスッと消えてしまった。

 例え相手がスライムだとしても、一人雨の中でお姉ちゃんたちとはぐれたのはどんなに心細かっただろう。俺も甘いもんだなと自嘲気味に笑うマギ。

 だが、泣いている女の子を助けないと言うのは英国紳士の名折れだとそんな事も思っているマギ。

 マギは泣いているスライム娘の所まで近づくとひざを折って、スライム娘に顔を近づけた。

 

「ひぅ!?なッなんれすかお兄ちゃん?私になんの様なんれすか?」

 

「やぁお嬢ちゃん?でいいのか?お嬢ちゃんは何で泣いているんだ?」

 

 マギは改めて何故泣いているのか尋ねてみる。スライム娘は嗚咽を混じらせながらも

 

「お姉ちゃんたちやおじさんとはぐれたんれすぅ。ここに来るまではいっしょだったのにぃ…ふぇぇぇぇんお姉ちゃぁぁぁん」

 

 お姉ちゃん達の事を思い出したらまた泣き出してしまった。マギはこのスライム娘は精神的に幼く、人間でいう所の幼稚園児の年少位だろうとそう思った。

 分かった分かったとマギはスライム娘を何とか泣き止ませた。

 

「俺がそのお姉ちゃん達を見つけてやるから、もう泣くのはよせって」

 

「…本当?本当にお姉ちゃん達をいっしょにさがしてくれるれすか?」

 

「あぁ探してやるさ。俺は嘘は吐かないからな」

 

 お姉ちゃん探しを手伝うと言うと、スライム娘は大喜びで水たまりの体をプルプルと震わせていた。

 お兄ちゃんありがとうれす!と言われると、マギは気恥ずかしくなり頬をポリポリと掻いた。もし俺に妹がいたらこんな感じなのかな…とも思ってしまっていた。

 …だがほのぼのとした雰囲気は突然終わりを迎えた。

 

「…マギさん?なにやってるんや?」

 

 突然なじみのある声が聞こえてきて、マギはゆっくりと振り返った。

 其処には傘をさしている亜子が怪訝な表情で、マギの事を見ていた。

 

「…マジでかよ…」

 

 マギは自分自身が背中に嫌な汗を大量に流しているのを実感している。

 この雨の中、今まさにマギの秘密がバレそうになっているのであった……

 

 

 




今回の原作に出てないスライムと亜子の介入はかなり前から考えていた話です

次回もお楽しみください

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