堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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今回から数話ほど閑話が2~3話ほど続きます

注意ですが、今回の話は不快な描写が多数あります
正直自分で書いてても不快でした。
途中まで読んで不快だと思ったらブラウザバックをお勧めします
それではどうぞ


~閑話~少女たちの憂鬱
あたしは皆のアイドルだ!


 ゴールデンウィークも終了して、生徒達各々はゴールデンウィークでの楽しかった思い出を噛みしめながら、授業に励んでいた。

 まぁ中にはゴールデンウィークなんてただの休みでしかないと考えている生徒も中には居るが

 

「たく…何がゴールデンウィークだよ。あたしとしては単なる多い休日でしかないっていうの」

 

 3-Aの長谷川千雨が帰路に着きながらそんな事を呟いていた。彼女はゴールデンウィークの休日間ずっと部屋に引きこもってネット三昧であった。

 と言っても彼女はただネットに明け暮れていた訳ではない。

 彼女は表向きはただ何処にでも居るようなごくごく普通の女子中学生であるが、ネットの世界ではただ今人気№1のネットアイドル『ちう』として活動しているのである。

 このゴールデンウィークは自身のホームページにあげるコスプレ写真や他愛のない話をブログに書き込んでいるのだ。

 そんな活動をやっており、ゴールデンウィーク中のアクセス回数はトップを維持していた。千雨はトップにいる事に愉悦を感じていた。

 感じていたのだが…

 

「ハァ…」

 

 千雨は何故か重い溜息を吐いていた。それはある一人の男を思い出しての溜息だ。

 

「マギさん…何であたしマギさんの事を考えているだ…?」

 

 千雨は自分のクラスの副担任であるマギ・スプリングフィールドの事を思い出していた。

 マギは2年の3学期に教育実習生として弟のネギと一緒に麻帆良にやって来た。

 しかし歳がネギが10歳、マギが17歳と明らかに労働基準法に違反しており、千雨は内心ふざけんなとツッコんでいた。

 ただでさえ変人集団のAクラスが更に変になると思い、頭が痛くなる思いだった。

 2年の時にクラストップを祝したパーティにも欠席し、今まで溜まっていた鬱憤を吐き出そうとしたが、ネギとマギの2人に自分の秘密がばれてしまった。

 しかしネギとマギは気持ちがるどころか逆に綺麗だと言ってくれた。

 更にマギは千雨に加工しない方が綺麗だぞと言ってくれて、試しに加工をしないで写真を投稿したら加工したのよりも人気が出てしまった。

 それにマギはもっと自分に自信を持てと言ってくれて、千雨は自分自身に少しだけ自身が付いて今迄自分から避けていたクラスメイトとも喋るようになった。

 マギのおかげで今迄退屈だった学校が少しだけ楽しくなったと思った。

 …そこからだろう、マギの事を意識し始めたのは

 

「いやいや絶対ないから。あたしが男を意識するなんて…ましてや先生だぞ?歳が近いからってないっての」

 

 千雨は自ら無いと言い切っていた。

 ネットアイドルではあるがアイドルと言っているのだ。アイドルは恋愛はご法度と言うのが。掟となっている。

 しかしそう言っていても千雨は何処かマギの事を目で追ってしまう。

 マギが他の生徒とかと話しているのを見てみると何処かムカッてしてしまう。

 だけども自分は学校では静かで根暗な感じで過ごしているのだ。マギに話し掛けようとする勇気がまだ持ち合わせていない。

 忘れよう。こんな時こそちうとして活動している方が嫌な事を忘れられる。

 そんな事を考えていたらもう自分の部屋に到着していた。

 

「考え事してたから早く帰ってきちゃったな…」

 

 そんな事を呟きながら千雨は学校の荷物を床に置いた。

 手を洗って、うがいをしてからパソコンの電源を点けると言うのが千雨の日常生活の流れだ。

 パソコンを立ち上げてみると、メールが一通送られてきた。

 ネットアイドルをやっていれば当然ファンからのメールが来るものである。

 メールの種類は人それぞれで、普通に頑張ってください!の様なメールもあれば結婚してくれー!みたいなちょっと千雨自身引いてしまうようなメールが来ることもある。

 さて今日は如何言ったメールだ?そう思いながら千雨はメールを開いた。

 

「何々…『僕のちうたん』っておいおいメールの題名からして痛い奴じゃねえか。メールの内容は何なんだ?」

 

 とメールの内容を読んでみようとしたが、何も本文が書いておらず代わりに写真が入ってるデータが送られていた。

 千雨は何のデータか調べてみると顔から血の気が失せて、体中から嫌な汗が流れてきた。

 

「おいおい…なんだよこりゃ」

 

 写真にはなんと…さまざまな千雨の盗撮写真が載っていたのだ。

 

 

 

「何?ストーカー?」

 

 翌日の放課後、マギは千雨から相談があるという事で誰も居ない生徒指導室で相談事を聞いてみて、その内容がストーカーだという事に驚いていた。

 

「何時誰にストーカーされたんだ?」

 

「いやストーカーはまだされてないんだけど、昨日誰だか分からない、変なメールと一緒にこんな写真が送られてきたんだよ」

 

 そう言いながら千雨は昨日送られてきた盗撮写真をプリンタでコピーしたのもをマギに渡した。

 マギは渡されたその盗撮写真なる物を見てみた。

 写真は千雨が授業を受けている所、うたた寝している所に体育の授業をやっている所。外でボーッしているなどの写真だ。

 一応着替え中やらシャワー中などの少し過激な写真などは見当たらなくて、過激と言っていいのか分からないが、転んでパンツが見えてしまった写真位か。

 そんな写真を見てアレ?と思ったマギ

 

「そう言えば千雨って他の奴にネットアイドルをしてる事や、お前のファンに自分の私生活をあんまり明かしていないだろ?」

 

 そう普通だったら千雨=ちうと云う考えには行かないはずであろう。

 という事は千雨がちうだと知っている人物があんな盗撮写真を送ってきたのだろうか…

 そんな考えが千雨でも出たのか、まさか…とジト目でマギを見て

 

「まさかマギさんがあんな写真を撮ったんじゃ…」

 

「んなわけねぇだろうがおい。マギさんがそんな犯罪者みたいなことしません」

 

 やれやれだぜとマギが肩を竦めながらそう呟いた。

 

「ゴメンマギさん。変な風に疑って…昨日変なメールが来たせいで寝ている間でも何処からか見られてるんじゃないかと思って夜も眠れなかったんだ」

 

 見れば千雨が少しやつれているように見えた。自分の盗撮写真が送られたら不安で眠れないだろう。

 しかし困ったなぁと千雨は本当に困ったような表情を浮かべていた。

 

「あたし今週の休みに出かけて人と会う約束してるのに、これじゃあ外が気になって出られないぞ」

 

 如何やら千雨は今度の休みに誰かと会う約束をしているようだ。しかし盗撮写真なんて送られでもしたら外へ出るのが怖くなるだろう。

 困っている生徒に手を伸ばして助けるのが教師の役目だ。

 

「分かった。それじゃあ千雨が安心して約束してた奴に会うために、俺が一緒について行ってやるよ」

 

「いッいいのかよマギさん?若しかしたら危険な目にあうかもしれないのに大丈夫なのか?」

 

 千雨はマギが思っているのよりも危険なんじゃと思っていたが、心配すんなよとサムズアップをしながら

 

「俺はお前らの先生だぞ?先生が困ってる生徒を見捨てるわけがねぇだろうが」

 

 だから心配すんなと笑いながら千雨に言った。

 千雨はマギの笑顔を呆然と眺めていたが、ハッとして顔を赤くしながら俯くと

 

「あ…ありが…とう」

 

 小さい声でマギにお礼を言った千雨。いいってことよと笑って返したマギ。

 

「そう言えばこの事はネギや他の生徒とかには話したのか?」

 

 ネギやアスナや他の生徒にはこの事は話したのかと尋ねると、いや話していないと首を横に振りながら答えた。

 

「ネギ先生は言っても慌てるだけで駄目な感じが…他の生徒はいい奴ばっかなのは分かるけど、迷惑なるかもしれないから話してない」

 

 マギは千雨の言った事にフ~ンと呟いていたが、表情は何処か嬉しそうだった。

 千雨がマギの表情が気になって、何でそんな顔をしているのか聞いてみると

 

「いやさ、千雨が他の生徒達に無関心だったのに少しづつだけど心を開いている感じがして嬉しいんだよ」

 

「そんな事で喜ぶのかよ…でもあたしも3-A(変人集団)に馴染んじゃったのかな…」

 

 何処か諦めたような表情だったが、嫌そうな表情はしてなかった。

 マギは千雨が変わって行っているのを見て嬉しく感じていた。

 

「そう言えば、その会う約束をしてる奴とは何処で会うんだ?」

 

 マギは肝心の場所を聞く事を忘れていた。

 あぁそう言えばそうだったな。と千雨もすっかり忘れていて

 

「会う場所は秋葉原って所だ」

 

 

 

 

 

 休みに入り、マギは千雨と一緒にその秋葉原なる場所へと来た。

 秋葉原駅にておりて、マギは秋葉原駅の外にやって来た。

 来たのだが、マギは何だ此処は…と呆然としてしまった。

 

「此処が秋葉原って所なのか…」

 

 目の前に写る光景は麻帆良と違い別な意味で異質だった。

 道行く人は普通の恰好をしている者もいれば、リュックサックを背負い、バンダナを被り昔のような恰好をして歩いている人の姿もちらほらと見えた。

 またアニメのキャラクターの服装をしている人がいれば、メイド服を着てチラシを配っている少女たちも居た。

 メイド達を写真に収めて満足している男達も見える。

 

「やっぱマギさんも驚く?」

 

 千雨がそう聞いて来て、まぁなと呟いて返したマギ。

 

「何というか不思議な場所なんだな秋葉原って…」

 

「秋葉原、今はアキバって呼んでる人が殆どだけど、昔は電気街として有名だったが、日本のアニメが有名になり始めて、今ではアニメやら漫画やゲームとかのサブカルチャーの町に変わっちまったんだ」

 

 他には鉄道模型なんかの店もあるけどなと千雨が補足をする。

 

「へぇ~日本のアニメの事はあんま知らなかったが、町1つをアニメやゲームなんかの町へと変えちまうのは凄いな…」

 

 マギは改めて日本のサブカルチャーの凄さを実感した。

 

「んで、約束の人とは何処で会うんだ?」

 

 マギは本来のやる事を思い出して、千雨に場所を聞いた。

 あぁそうだったなと千雨は

 

「こっちにあるんだ。ついて来てくれ」

 

 千雨に案内されてマギは後をついて行くことにした。

 しかしそんなマギと千雨から100m程離れた場所で

 

「はぁ…はぁ…私服のちうたん、なんて可愛いんだ…それに引き替え何なんだあの外国人の男は…僕のちうたんと仲良さそうに話して…!あの場所に居るのは本来僕のはずだ…!」

 

 目を充血させて、息を荒くしながら千雨の事を舐め回す様に見ていて、マギの事は歯をギチギチと歯ぎしりしながら殺意の籠った目でマギを睨みつけている男が居た。

 街を歩いている人やメイド達はその男から離れたり避けたりしながら、関わらない様にしていた。

 

 

 

 マギと千雨は、千雨に案内されながらとある場所に来ていた。その場所と言うのが

 

「『メイドカフェヒンメル ご主人様を天国へ連れてってあ・げ・る♡』なんだ此処?カフェって事は喫茶店なのか?」

 

 千雨に連れられメイドカフェなる場所に到着した。初めて聞く単語に戸惑っているマギ。

 

「まぁ入ってみれば分かるさ」

 

 千雨がそう言いながら店のドアを開けた。マギも続いて店の中へ入ると…

 

『お帰りなさいませ!お嬢様!御主人様!』

 

 メイドの恰好をした少女たちが一斉にお辞儀をしながらマギと千雨を御出迎えた。

 メイド達にお出迎えされたマギは

 

「うおッ!?」

 

 思わず数歩後退りしてしまった。まさか自分の事を御主人様と呼んでくるとは思わなかった。

 客の事をお嬢様やら御主人様と呼ぶのがメイド喫茶の基本だと言うのは分かったが大勢の少女たちに御主人様と呼ばれるのは何処かむず痒い。

 

「これは千雨お嬢様今日は男性の方とお帰りですか?」

 

 1人のメイドが千雨と親しそうに話していた。どうやら此処のメイドとは顔なじみの様だ。

 

「ちょっと用があって来たんだよ。こっちの人は付き添いだ」

 

 マギはどうもと軽くお辞儀をした。千雨とマギを何回か見た後にあぁと頷いたメイドが

 

「千雨お嬢様が旦那様とお帰りでーす!」

 

「ちッちが!マギさんはただの付き添いだっての!!」

 

 メイドが勘違いしながら千雨とマギを席へと誘導した。千雨は違うと叫び散らしながらメイドを追っかけていた。

 席へと誘導されて座った2人にお冷が配られ、千雨はだから違うってのと呟きながらお冷を飲んでいた。

 マギはそんな千雨を笑いながら見ており、此処へは良く来るのかと尋ねると

 

「あぁアキバに来た時にはちょくちょく顔を出してたんだ。んでいつの間にか顔馴染になっちまったんだ」

 

 成程なとマギは千雨が学校では出さない素の自分を出しているのを見ていたから少しうれしかったのだ。

 メイドがメニューを持ってくると千雨は

 

「なぁさっちゃんは今日は来てるか?ちょっと渡したい物があるからさ」

 

「えぇ居るわよ。さっちゃん!千雨お嬢様がお呼びよ!」

 

 メイドがさっちゃんなる者を呼ぶとはーい!という声と一緒にやって来た。

 さっちゃんと言う人は、黒髪のロングストレートでメガネをかけている大人しそうなメイドだった。

 

「ちうちゃん久しぶりー!」

 

 さっちゃんは千雨の顔を見るや、嬉しそうに顔を輝かせて千雨をちうと呼んでいた。

 千雨も久しぶりとさっちゃんに軽く返した。

 

「千雨彼女は?それにちうって呼んでいるって事は」

 

「あぁ彼女は小向幸子、さっちゃんって言う名で活躍してるあたしの同じネットアイドルだよ」

 

 如何やらさっちゃんは千雨と同じネットアイドルの様だ。

 

「ねぇちうちゃん一緒に来てる彼はだれ?」

 

 さっちゃんは一緒に来ていたマギは誰なのか尋ねた。

 

「あぁ彼はマギさんだよ。あたしの学校の副担なんだ」

 

「初めまして。マギって言います」

 

「此方こそ初めまして。さっちゃんって呼んでください」

 

 マギとさっちゃんで自己紹介を終える。さっちゃんはマギをまじまじと見ながら

 

「マギ先生って若いんですね。おいくつ何ですか?」

 

「歳?17歳いやもう5月9日が過ぎたから18歳だな」

 

 18!?さっちゃんはマギの歳を聞いて驚愕する。18歳で教師になるなんて普通では有りえない事である。

 

「ちうちゃん、ちうちゃんの学校って変わってるって聞いてたけど、本当に変わってるんだね?」

 

「だろ?そう思うだろ!?そうだよ…あたしはこんなリアクションが欲しかったんだ…!」

 

 千雨は自分の考えと共感してくれたので嬉しそうだった。まぁそれは置いといて

 千雨は如何やらさっちゃんに渡したい物があるそうだ。ずっと持っていた大きな紙袋をさっちゃんに渡して

 

「これ、頼まれてたさっちゃんのネットアイドル用の衣装。ちゃんと寸法通りに作ったから着れるはずだぞ」

 

 千雨が渡したかった物は如何やらさっちゃん用の衣装の様だ。というか作ったと言っていたが、千雨は衣装なども作れるのかと千雨の器用さに感心していた。

 しかしせっかく衣装を貰ったといのに、さっちゃんの表情は曇っていた。どうかしたのかと千雨が尋ねると

 

「ゴメンねちうちゃん、せっかく衣装作ってくれたのに…若しかしたらこの衣装着ないかもしれないんだ」

 

「着ないってどうかしたのか?」

 

 千雨は何か理由があるのか尋ねてみると、さっちゃんは申し訳なさそうに

 

「うんあのね…今ネットアイドルの方はお休みしてるんだ」

 

 どうやらネットアイドルは今はお休みしてるようだ。如何してお休みしてるのか尋ねてみると

 

「この前にパソコンに変なメールが来て、そのメールに私の盗撮写真のデータが入ってたんだ…それを見て怖くなって、若しかしたら私の恥ずかしい写真がもっと撮られているんじゃないかと思って、それで今は活動はお休みしてるんだ」

 

「さっちゃんも撮られてたのか?私もほんの少し前にあたしの盗撮写真が送られてさ、それでマギさんに付き添いで来てもらったんだ」

 

 ちうちゃんも?とさっちゃんは驚いていた。

 

「ちうちゃんも被害にあってたんだ…ちうちゃんも気を付けてね。今日持ってきた衣装は持って帰っていいよ」

 

「いやとりあえず渡しておくよ。あたしとしてもさっちゃんがこの衣装を着てネットアイドルしてる姿見たいからさ」

 

 と何処か雰囲気が重くなってしまった。さっちゃんは重くなった雰囲気を払拭させようと明るく振舞って

 

「ちうちゃんとマギ先生も何か頼んでよ。今日はいっぱいサービスするからさ」

 

 マギと千雨が何かを頼もうとしたその時

 

「いや止めて下さい!!」

 

「え~いいじゃん!もっと俺達に奉仕してくれよぉ~」

 

「そ~そ~御主人様に何でもしてくれるのがメイドサンだろぉ?」

 

 2人のガラの悪い男2人が1人のメイドにしつこくしており、腕やらを触っていた。

 他の客たちは止めようとしたが、男たちのガラの悪さに委縮してしまい、何も出来ない様子だった。

 

「また彼らだわ…何時も私達にいやらしい事をしてくるの」

 

「前に止めようとしてくれたご主人様を大怪我させた事もあったし…」

 

「あの人たちのせいで男性恐怖症になって引き籠っちゃった子だっているし…」

 

 周りのメイド達も彼らの行いに何も出来なくて、ただ彼らが満足して店を出て行くのを待っている事しか出来なかった。

 

「何なんだよアイツ等…メイドはお前らの愛玩道具じゃねぇんだぞ。文句を言ってやる」

 

 千雨は男達に文句を言おうとしたが、待ちなとマギが千雨を止めて

 

「生徒に危険な事させるわけにはいかねえだろ?俺がちょちょいと片づけてて来るさ」

 

 そう言ってマギはガラの悪い男の所へ向かった。さっちゃんはマギを止めようとしていたが千雨が逆にさっちゃんを止めた。

 

「ちうちゃん大丈夫なの!?あの2人結構強いんだよ!」

 

「大丈夫だって、あのマギさんの方が断然強いからさ」

 

 ガラの悪い男達はなおもしつこくメイドに絡んでいた。

 メイドも涙目で止めてと叫んでいたが、それが逆に男2人を興奮させるはめになった。

 ついには胸に手を伸ばそうとしたが、マギがその腕を掴んでいた。

 

「あぁ?」

 

 胸に手を伸ばそうとしていた男は邪魔をしたマギの事を睨みつけていた。

 

「いい加減にしとけよ。メイドが泣きそうじゃあないか」

 

 そう言ってメイドを掴んでいる手を払いのけた。

 

「さっさと奥に行ってな」

 

「はッはい!ありがとうございます!!」

 

 助けてもらったマギにお礼を言ってメイドは奥の方へ走って行った。

 自分達の邪魔をしたマギに対して怒りを露わにしている男2人はガタン!大袈裟に席から立ってマギを睨みつけていた。

 周りの客はザワザワと自分達は如何すればいいのか混乱していた。

 

「おうおう外国人の兄ちゃんよぉ、何俺達の楽しみを邪魔してくれたわけぇ?」

 

「せっかく楽しくやってたのによぉしらけちまったぜ。こりゃテメェボコってもたりねぇぞおい」

 

「てか何さっそうと登場して、助けに来てんの?正義の味方気取りとかぁ超うけるんだけど!!」

 

 ギャハハハッ!と下品な笑い声を上げる男2人、そんな2人にマギはやれやれだぜ…と呟きながら頭を掻いて

 

「ギャーギャーギャーギャー喧しいんだよ…発情期かアンタら」

 

 マギの言った一言にブチリとキレてしまった2人は

 

「しッ死ねやこらぁ!!」

 

 1人がマギに殴り掛かってきた。店内では悲鳴が上がるが、マギは殴り掛かってきた男の拳をいとも容易く受け止めてしまった。

 エヴァンジェリンの元で修業をしてきたマギにとっては、こんな男の拳なんて目を瞑っても受け止められる。

 受け止められた男は驚きながらマギから腕を振り抜こうとするが、ビクともしない。マギが掴んでいる力が強すぎるのだ。

 

「てッテメェ離しやがれ!」

 

 腕を掴まれている男は離せと喚き散らし

 

「うるせぇな…ホイ」

 

 男が丁度腕を引っ張ろうとした所で手を放して、男は勢い余って後頭部を思い切り床にぶつけてしまった。

 頭を思い切りぶつけ呻いている男を見ながらもう一人の男は

 

「ふざけんじゃねぇぞ!!」

 

 自分が座っていた椅子をマギに振り下ろそうとしていたが

 

「店の備品をそんな事に使うんじゃねぇよ」

 

 ネギに叩きつけていたハリセンを何処からか取り出して男の頭に振り下ろした。

 かなり容赦なしで頭に振り下ろしたために、男は余りの痛さに椅子を落としてしまった。

 マギは落ちそうになった椅子をキャッチして代わりに自分が座ってしまった。

 

「さて…とアンタら今迄この店で悪さしてたみたいだな。そんじゃその悪さした分、キッチリお仕置きしないとな」

 

 最初にマギに殴り掛かろうとしてきた男の胸倉を掴んで、マギはでこピンの用意をした。

 

「結構痛いからな、歯ぁ食いしばっておけよ」

 

 そう言ってマギは破壊神のでこピン(最弱バージョン)を男の額に当てた。かなり弱めにやったが、一発だけでかなり赤く腫れていた。

 しかし一発だけではなく、何発も連続ででこピンを食らわした。男は悲鳴を上げたかったが、余りの痛みに逆に泣き出してしまった。

 でこピンが終わり、男は額を押さえながら悶えていた。

 さて次は…とマギはもう一人の男の方を見た。

 もう一人の男の方はヒッ!と短い悲鳴を上げながら逃げようとしたが、マギが逃すはずも無く簡単に捕まり

 

「アンタはこれだ。悪い事をやったガキにやる有名なお仕置き…頭グリグリの刑だ」

 

 マギは男の頭を拳と拳で挟んで頭をグリグリし始めた。

 ただのグリグリではない。マギがグリグリするたびに頭蓋骨がミシミシと軋むのだ。

 

「いッイテェ!止めてくれぇ!!」

 

「んあ何か言ったか?聞こえねぇな」

 

 マギはすっとぼけて、グリグリを続けた。グリグリするたびに男の悲鳴が続いた。

 グリグリすること数分、マギは漸く止めた。

 ガラの悪い男2人はマギ対する感情は怒りから恐怖へと変わっていた。

 

「ゆッ許してくれぇ…俺達が悪かったよぉ…!」

 

「もうこんな馬鹿な事やらねぇから許してくれぇ!」

 

 土下座をしながら2人はマギに許して欲しいと懇願していた。

 だったら最初からやるなよと内心呆れているマギ

 

「だったらもう此処には足を入れるなよ?もしまたここで悪さしてるって聞いたら…今度は容赦しないからな」

 

「「ひッひぃ!!」」

 

 2人はマギの迫力に失神しそうだった。

 

「分かったんならさっさと失せな」

 

「「はぃぃぃッ!」」

 

 男2人は一目散に退散しようとしたが

 

「おい待て!」

 

 マギに呼び止められて、立ち止まってしまった。まさかまだ何かあるのかと恐怖で足が震えていたが、マギがレジの方を指差しながら

 

「金、払ってから出ろよ」

 

 ただ飯ぐらいは犯罪だからなとマギが付け足して言った。2人は急いで財布から慌てているために万札をレジに叩きつけながら一目散に店から出て行ってしまった。

 男達が居なくなってシン…と店の中が静まってしまった。

 やべ…やり過ぎたかとマギは冷や汗を流していたが、次の瞬間には拍手喝采の大歓声だった。

 あの男達にが逃げ出したのを見て特にメイド達は大喜びの様だった。

 とマギの所へ一人の中年男性がやって来た。胸元に店長と言う名札を付けている所からこのメイド喫茶の店長なのだろう。

 

「この度はありがとうございます。彼らの行動には私自身困っており、彼らのせいで引き籠ってしまった子も出てしまうほどで…ですが貴方の御蔭で彼らも当分この店には来ないでしょう。本当にありがとうございました」

 

「いッいや俺はああいった奴らが気に食わなかっただけですし…」

 

 お礼を言われても困りますって。とマギは店長にお礼を言われるほどの事はしていないと言う。

 しかしいえいえと店長も譲れず。

 

「今日は御主人様の料金はタダとさせて頂きます。メイドさん達しっかり御主人様をご奉仕しなさい!」

 

「ちょ待ってくれって何もそこまで…『御主人様ぁ~』っておわぁ!?」

 

 そこまでしなくてもと言おうとしたが、殆んどのメイド達がマギに群がって、マギは揉みくちゃにされてしまった。

 もみくちゃにされているマギを千雨とさっちゃんは見ていた。

 

「な?別に心配しなくても大丈夫だったろ?」

 

「今度は違う意味で大変な事になってるんだけど…」

 

 メイド達は顔が良いマギが店を救ったヒーローとして必要以上にご奉仕されており、マギ自身四方八方メイドに囲まれてどうすればいいのか分からず顔を赤くしていた。

 

(って何マギさんはでれぇ~っとしてるんだよ!?もっとしっかりしろよ!!)

 

 千雨から見たらでれぇ~っとしているように見えており、マギの事を睨みつけていた。

 その後メイド達と記念撮影を撮って、メイドカフェヒンメルを後にした。

 

 

 

 余談だが、その後ガラの悪い男2人は店に足を運ぶことも無く、ガラの悪い男仲間がその2人を馬鹿にしていたが、男2人は酷い目にあった、殺されるかと思ったと半ば半狂乱状態で喚いており、男達は言葉をうのみにして話に尾ひれがつき『メイドカフェヒンメルには化け物の様な強い男が来る』という噂が立つようになったと言う…

 

 

 

 さっちゃんに渡す物を渡した千雨とマギ。

 まだ時間があるという事で、千雨はマギにアキバの色々な所を案内してあげた。

 アニメや漫画のフィギュアやロボットのアクションフィギュアのお店ではマギ自身男という事で興奮しており。

 昔ながらのゲームショップでは日本のゲームの歴史を体感した。

 同人誌ショップでは自分が知っている日本のアニメのパロディ漫画にはこんなに種類があるのかと感心した。

 ただ…18と書いており、通せん坊ののれんをマギが潜ろうとして、千雨は全力で止めた。

 取りあえず一通り回る事が出来て、結構いい時間だったので少し休むことにした。

 休もうとしたところに公園があったので、マギと千雨は一休みする事にした。休日という事で公園には子供達も大勢いた。

 ベンチに座ったマギと千雨だが、マギが缶コーヒーを買ってきて、千雨に渡した。

 千雨は渡された缶コーヒーを一気飲みしてしまうと

 

「今日はありがとなマギさん。おかげで色々と助かったぜ」

 

 改めてマギにお礼を言った。別に気にすんなとマギはそう返す。

 

「俺も今日は自分が知らない場所を知る事が出来て楽しかったし、それに…」

 

 それに?マギが何を言おうとしてるのか首を傾げていると

 

「学校ではどっちかというと静かな方だった千雨が、自分が好きな場所だと生き生きしててそれに輝いていて、何処かギャップを感じるところもあったけど、うん可愛かったな」

 

「かッ可愛い!?」

 

 マギに可愛いと言ってもらえて、千雨は顔を赤くしてしまったが、正直言って嬉しい。もっと可愛いと言ってほしかった。

 千雨は今日こそ自分の気持ちを言ってしまおうと思った。告白とかではなくまた一緒にアキバを回ってはくれないかと

 

「なッなぁマギさん?もしよかったらなんだけど、また今度一緒にアキバを回って…」

 

 千雨がそう言っているのに、マギは何故か前方を見ていた。何事かと千雨も前を向くと自分とマギの前に変な男が立っていた。

 その男は秋葉原駅にてマギと千雨を見ていた、あの男だった。未だに息を荒くしており、特にマギに対して敵意の視線を送っていた。

 

「さっきから何なんだアンタ?さっきから何で俺達の事をつけていた?」

 

 マギはアキバを回っている時に、目の前の男が行く場所に一定の距離を置いてついて来ていたのだ。

 男はマギの事を指差しながら

 

「僕のちうたんから離れろ!この汚らしい阿呆が!!」

 

 と突然大声で喚きだした。周りに居た子供を連れた親たちはヒソヒソとマギと男を交互に見ながら話していた。

 マギは目の前の男が千雨の事をちうたんと言っていた事や、僕のという事を喚いているのを見て間違いないと思った。

 目の前の男が千雨を盗撮した犯人だと。

 

「思い出した、あたしアイツの事知ってる」

 

 千雨は目の前の男の顔を思い出してたようだ。知り合いなのかと尋ねると全然違うと首を横に振った。

 

「アイツは元麻帆良学園の学生だ。それも良い意味と悪い意味で有名だった」

 

 マギは千雨に目の前の男が如何いう人間なのか聞いてみた。

 

「まだあたしが中1の時、アイツは麻帆良大学の工学部に居た学生だったんだ。超やハカセほどじゃないけどかなり頭が良かった。色々な物とかを発明して社会に貢献したらしい」

 

 そこまで聞いていると目の前の男は良い事をした奴だと思われるはずだ。

 けど此処からが最悪だと千雨は話を続ける。

 

「その男は自らの欲望で色々悪さをしていたらしい。自分で発明した盗撮用の道具で狙った女を次々に盗撮してたらしい。けど超やハカセが麻帆良で頭角を現してからは風当たりが悪くなって…そこからは見境なしに盗撮を続けていて遂には学校を退学させられたんだ。その時の学校新聞の事は良く覚えている」

 

「流石はちうたん、僕の事をそんなに知ってるなんて嬉しいよ…そうさ僕はあんなつまらない学校を抜けて正解だったよ。僕の事を無視して天才中学生をもてはやしてさ、僕の方が天才だって言うのが分からないだよアイツ等は…だけど外に出た途端何もかもが自由だった…だけど外の女を盗撮しても何も面白くなかった。それで次に目標にしたのはネットアイドルだったのさ…面白かったよぉネットの前ではあんなに綺麗な恰好をしてるのに、他の事ではまるっきり正反対。僕はそんな彼女たちの秘密を握ってるんだと思うともう…快感だよ!」

 

 男は下品な笑みを浮かべていた。千雨は男を睨みつけていた。

 

「アンタはさっちゃんも狙ったのか?ふざけんなよ!さっちゃんはなネットアイドルを始める前はあたしと同じで根暗な感じだった。だけどネットアイドルを始めたお蔭で皆から支持されて自信を持ち始めて、リアルでもあたしよりも明るくなって、友達も増え始めたんだぞ!そんなさっちゃんの人生をぶち壊すつもりかアンタは!?」

 

 さっちゃん?…あぁ思い出したよと男はわざと思い出す素振りを見せた。

 

「最近僕が狙った黒髪の眼鏡の子だね。あぁ彼女の反応も良かったよぉ…彼女の恥ずかしい写真を送ったら彼女次の日からビクビクし始めてね、外に出ても誰かが自分を見てるんじゃないのか…もしかして目の前の人が私を盗撮してるんじゃないかって疑ったりねぇ。彼女は最近狙った女の中でもかなりの上位ランクだよ!!」

 

 今思い出しても興奮する!と男は鼻息を荒くしていた。

 でもね…と急にテンションが下がり始めた。

 

「最近じゃあ満たされなくなったんだぁ…だから今度は秘密を握って、狙った女を僕のおもちゃにして遊ぶんだぁ。その最初のターゲットは君なんだよちうたん…君の事はずっと見てたんだぁ学校から寮までそしてネットアイドルとして活躍してる所も…ネットアイドル№1のちうたんを僕のおもちゃにするんだ!」

 

 千雨は目の前で喚き散らしている男を見て怖いとは思わなかった。ただ単に気持ち悪いと思った。

 こんな男のおもちゃになるなんて死んでもごめんだと思った。

 

「冗談、アンタみたいな男におもちゃにされる位だったら死んだ方がましだ」

 

「そうい事だ。俺の大切な生徒に近づかないで欲しいな。これ以上調子に乗ると痛い目にあうぜ」

 

 マギが千雨を護る形で立ち塞がる。男はそんなマギを見てフンと鼻を鳴らした。

 

「何だよお前は、ちうたんを護る正義の味方気取りかよ。違うねちうたんの騎士は僕の役目だ。お前の役目じゃないんだよばーか!」

 

 男はマギに向かってアッカンベーをした。男は精神が子供の様だ。情緒不安定なのか

 

「それにお前よく見たら外国人じゃないか。外国人で僕よりイケメンなんてムカつくよ…だから今からお前の顔をグチャグチャのブサイクにしてやるよ…おい出てこい!」

 

 男の言った事が合図だったのか、公園の中にぞろぞろと人相の悪い男達が入ってきた。その数ざっと数えて30人。

 更に男達は手に金属バットやら木刀に角材、鉄パイプもあればスタンガン、果てにはナイフなんて持ってる奴もいる。

 よくもまぁこんなに集まったものだとマギは呟いていた。

 公園に居た人たちは流石にこれは危ないと思い、子供を連れて我先にと公園の外へ出て行った。

 

「皆僕が集めたんだよ。お前をグチャグチャにして病院送りにしたら賞金をあげるってね。さぁ!目の前の男を病院送りにした奴一人だけに賞金をくれてやる!」

 

 男はそう言って不良たちに札束を見せびらかした。

 この男達は要するに金に釣られた哀れな男達という事なのだろう。

 大金を見て、男達は目を光らせながら下品な笑みを浮かべていた。

 

「へへ悪いな外国人の兄ちゃん、俺達が大金を手に入れるためにここはひとつボコられてくれや」

 

 バットを持った男の1人がマギに向かってそう言った。

 千雨は震えていた。まさか自分を手に入れるために大勢の不良を雇ってマギを病院送りにさせるなんて

 

「なッなぁマギさん、これは流石にヤバいって!下手したら殺されちまうよ早く逃げるか、警察に連絡しようって!」

 

 千雨がそう言っているが、マギは心配すんなと千雨に笑いかけながら優しく頭を撫でまわした。

 

「あんな奴らなんかに俺は負けないさ。俺を信じてくれ…な?」

 

 マギの笑顔に千雨は頷いた。今のマギだったら大丈夫だと心のどこかで納得しているようだ。

 

「それと千雨、若しかしたら此処から先はあんまり女の子には見せられない事かもしれないから、俺がいいぞって言うまで目を瞑っていてくれないか?」

 

 マギの願いを聞き入れて、千雨は目を瞑った。いい子だとマギは優しく呟いた。

 

「何だよお前、自分がボコられるのをちうたんに見せたくないのかよ!安心しろよ、ちうたんがお前の事を忘れるほどの精神的ショックを与えてから僕の物にしてやるんだ」

 

「あぁ?何勘違いしてるんだ?俺がお前らを全員ぶちのめすんだよ。ただその表現が過激すぎるかもしれないから、千雨には見せたくないんだよ」

 

 マギはそう言った次の瞬間、不良と男は大爆笑していた。

 

「何言ってるんだお前!たった一人でこの大勢に勝つつもりかよ!?漫画の見すぎじゃねえの?」

 

 男はまだマギの事を馬鹿にしていた。しかし知らないだろう…マギの恐ろしさを。

 

「あぁ勝つつもりさ。それと大怪我をしたくない奴は此処からさっさと逃げ出す事を勧めるぜ」

 

「へッやれるもんならやってみろ!」

 

 1人の不良が木刀を振り回しながらマギに近づこうとした。

 しかしマギが其れよりも早く、一瞬で不良の前に立っていた。

 

「へ?」

 

 不良は思わず変な声を上げていた。

 

「忠告はしたぞ。それでも分からなければ覚悟しておけ」

 

 バキィッ!とマギのパンチが不良の顔に抉るように入り、数m程吹き飛ばされて公園の木に顔面から突っ込んだ。

 ずるずると木からずり落ちて地面にぐったりと倒れると、そのまま起き上がってこなかった。

 不良達や男は何が起こったのか分からず呆然としていたが、オイとマギの声に一斉にマギの方を向いた。

 

「俺お前らみたいな人間に対しては容赦しないつもりだから…骨の1本や2本は覚悟しておけよ」

 

 マギから漂っている不思議な感じに思わず不良たちは後ずさっていたが

 

「何やってるんだよお前らは!相手は一人だろ!?一斉にかかれよ!!」

 

 男の声にそうだと思い始める不良達。さっきのはまぐれだ。油断してたんだと思い込み今度は残りの29人が一斉にマギに突っ込んだ。

 しかしそうなってしまえばマギの思う壺である。

 エヴァンジェリンに習った格闘術をもってすればこんな不良たち目ではないのだ。

 迫りくる不良達を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返していた。

 不良達は、マギが忠告してた通り逃げておけばよかったと今更ながら後悔していた。

 マギは本当に容赦がなく、骨を軽く折ったりしたり、顔面を容赦なく踏んで鼻の骨を粉砕したり、鳩尾を殴って呼吸困難にさせたりした。

 阿吽絶叫が続く中、マギは5分ですべての不良達を戦闘不能にしてしまった。

 

「ばッばけもんだぁ!逃げないと殺されるぅ!」

 

 不良の一人がそう叫びながら一目散に公園から逃げ出した。

 他の不良達も一人で逃げる者もいれば、動けなくなった者を連れて逃げる者も居た。

 マギにこれ以上関わったら本当に殺されてしまうと身を持って実感したのだ。

 

「おッおい何勝手に逃げてるんだよ!お前達には前金を払ったじゃないか!あいつをちゃんと潰してくれよ!!」

 

 男は逃げようとしている不良の一人を捕まえてマギを倒せと叫んでいた。

 しかし、マギの怖さを体感した不良の一人としては、もうこれ以上マギには関わりたくなかった。

 

「うッうるせぇ!あんな奴に関わったら命が幾つあっても足りねぇよ!そんなにアイツを殺してぇなら自分で殺せ!!」

 

 そう叫んで男を突き飛ばして、自分が持っていたナイフを男に投げ渡した。そして自分がマギを潰すために雇っていた不良達は全員逃げ出してしまった。

 公園に残っているのはマギと千雨に男だけだ。

 一応もう大丈夫だろうと、マギは千雨に目を開けても良いぞとそう言った。

 

「マギさん、不良達は何処行ったんだ?」

 

「あぁ皆お帰りになったのさ…さて残りはアンタだな」

 

 そう言ってマギは男に近づいた。男はナイフを振り回そうとしたが、男よりも早くにマギは取り上げた。

 これで何も抵抗が出来なくなった男

 

「くッくるな!来るな来るな!!ねえちうたん!僕だけのちうたん!ねぇ助けてよ!早くこの男を殺してよ!!」

 

 男もただ喚いているだけだった。

 千雨はそんな喚いている男に近づくと男の顔に平手打ちをした。

 千雨が男を叩いた音が公園に響いた。

 

「アンタだけのちうだって?ふざけんなよ!あたしは皆のちうだ!アンタみたいな人の不幸を楽しむような男の物なんかになるわけねぇだろ、このクソッタレのアホンダラ!!」

 

 千雨に叩かれたのと、罵倒されたせいで男の精神が崩壊した。

 

「うわぁぁぁぁん!ちうたんにぶたれたぁぁぁぁ!!」

 

 地面を子供が駄々をこねるように暴れまわっていた。そんな男を見ていたらパトカーのサイレンが此方に近づいて来るのが聞こえた。

 如何やら騒ぎを聞いた誰かが警察に知らせたのだろう。

 

「おい行こうぜ千雨、後は警察に任せよう」

 

「だな」

 

 マギと千雨は公園を後にした。未だに公園で大声で泣き叫んでいる男は警察に拘束された。

 そして男の精神状態などを調べた後に、その男の家へ家宅捜査をしてみると、男の部屋は今迄撮った盗撮写真で埋め尽くされていた。

 中には盗撮被害に出されていた被害者の写真と男の部屋にあった写真が一致していた。

 しかも被害者の中には脅迫状を送られていた女性も少なくは無いそうだ。

 さらに盗撮の量が量なので、男にはそれ相応の罰が与えられるだろう。

 こうしてネットアイドル内でも騒がれていた盗撮犯は無事に捕まったのであった。

 

 

 

 帰りの電車の中、マギと千雨は何処か疲れた表情を浮かべていた。今日一日で色々な事があり過ぎたのだ。

 

「マギさんありがとう。今日は色々と助かったよ」

 

「何言ってるんだよ、生徒を助けるのが先生としての役目だしな。それに俺もアキバを見て回って楽しかったしな」

 

 実際自分が知らない物を知る事が出来て満足だった。

 

「それにさっき言ってた事は少し痺れたな。あたしは皆のちうだって言うのは流石はトップのネットアイドルだな」

 

「とっ当然だっての!あれぐらい言えないとトップのネットアイドルはやっていけないっての!」

 

 千雨はそう言い切ってマギから視線を外した。

 

(でもいつかは誰かだけのちうになってみたい。なんてな)

 

 時々マギの事をチラチラと見ていた千雨。マギは千雨のちょっと熱い視線に首を傾げていた。

 こうして色々とあったが、千雨の休日は無事に過ぎたのであった…

 後日であるが、盗撮犯が捕まったという事で、さっちゃんは千雨に作ってもらった衣装をさっそく着て撮影をした。

 衣装と云うのが、いま巷で流行っている魔法少女物のヒロインの衣装で、ファンたちはさっちゃんの衣装も絶賛したが、さっちゃんが復活してくれたことに喜んでいた。

 そしてさっちゃんも漸く心から笑う事が出来たのであった。

 

 

 




今回は千雨の話でした。
自分で言っていながら千雨を話としてあんまり組み込んでいなかったので
今回千雨メインの話にしてみました
次回は誰になるか楽しみにしていてください

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