図書館島での調査が中途半端に終わってしまった翌日、ネギはエヴァンジェリンの元でさっそく修業を開始する事になった。
ネギは仮契約をしたアスナと刹那にこのかと一緒にエヴァンジェリンの元にやって来た。マギはというと仮契約(事故)をしたのどかと、のどかの付き添いで来た夕映とネギに中国拳法を教えた古菲も一緒にネギの修業の様子を見ていた。
エヴァンジェリンはネギの準備が完了したのを見ると飲んでいたトマトジュースを飲むのをいったん止めて
「よし今から坊やの修業を開始する。言って置くが私の修業は今までやっていた甘ったるい修業とはわけが違う。途中で根を上げたり、私から見て無理だと判断したら容赦なく切り捨てるぞ」
「はい!宜しくお願いします!!」
ネギのいい返事に良しと頷くエヴァンジェリン。
「では従者たちに魔力を供給させろ。それと刹那貴様の気は抑えておけ。相応の練習が無ければ魔力と気は相反してしまうからな」
エヴァンジェリンに言われた通りに刹那は気を抑える。そしてネギはアスナ達に魔力を供給し始める。
「契約執行180秒間 ネギの従者神楽坂明日菜 近衛木乃香 桜咲刹那!」
契約執行をし、アスナ達に魔力が供給される。魔力を供給されるためアスナ達はくすぐったい様な気持ちいい様な変な気分であった。
「よし次はアンチ・マテリアル・シールドを全方位に展開だ。全力でな」
「はい!」
エヴァンジェリンの指示通りにネギは行動する。全方位にシールドを張った。しかしネギの息が荒くなりはじめる。
「次だ。アンチ・マジック・シールドを全力展開」
「はッはい!」
今度は別のシールドを展開するが、ネギの顔からは滝のような汗が流れ出す。
「その状態を3分持ち堪えた後、北の空へ魔法の射手199本を放て。結界を張っているから遠慮せずにやれ」
エヴァンジェリンに言われた通りネギは3分維持したのち、199本の光の魔法の矢を北の空に放った。大量の魔法の矢は北の空でぶつかり合い、このか達はまるで花火みたいで綺麗だと言っていた。
だが放ったネギ本人は一度に大量の魔力を使ったためにスタミナ切れを起こしてしまい、目を回しながら倒れてしまった。
倒れたネギを見てこの程度か…とエヴァンジェリンは溜息を吐いてマギを呼んだ。
「おいマギお前が見本を見せろ。先程坊やのと同じことをしろ。但し魔法の矢は坊やの倍の398本だ」
「了解」
398本は流石に無理があるのではないのかと刹那は思っていたが、マギ本人は大して気にもしていない様子だった。
そんじゃ始めますかとマギは魔力を集中し始める。
「契約執行180秒間 マギの従者 宮崎のどか!」
マギは仮契約をしたのどかに魔力を供給する。魔力を供給されたのどかは体をピクンと反応させていた。
「とそう言えばのどかには契約執行をするのがこれが初めてか。大丈夫か?何処か変な所とか無いか?」
「いえ大丈夫です。それどころかちょっと気持ちいい様な…」
気持ちいいと言ったのが恥ずかしいのか、顔を赤くしてしまうのどか。
大丈夫だと判断したマギは、ネギがやったように、アンチ・マテリアル・シールドとアンチ・マジック・シールドを全力展開をした。
そして3分間状態を維持したのち、マギは空に向かって魔法の矢を放った。
ネギが放った199本の倍の倍の398本の魔法の矢は花火の様ではなく、ただの爆発そのものだった。
魔法を放ってもマギはネギのように目を回さないで普通に立っていた。
「これでいいかエヴァ?」
「あぁ私の思った通りにやってくれる。流石だよマギ」
エヴァンジェリンは自分の思った通りの結果を出してくれたマギに満足そうだった。ただネギに対しては冷ややかな目で
「この程度で気絶とはてんで話にならんな。いくら
エヴァンジェリンの言った事にカモがマーマーと宥めようとした
「まぁそんなに言わないで下さいよエヴァンジェリンの姐さん。兄貴はまだ10歳ですしそれにさっき行った事は修学旅行以上の魔力消費量ですし。行き成り気絶して当然、ましてや並みの術者だったらこれでも十分…」
カモが喋っている途中だが、エヴァンジェリンは黙れと冷たい眼差しでカモを見下ろした。
「黙れ小動物が。この私が並みの術者程度で満足すると思ったか。これ以上ふざけた事を言うと焼いて食うぞ」
余りにも凄味があるエヴァンジェリンの迫力にカモは思わずアスナに抱き着いて震えてしまった。ちびらなかっただけでもいい方であろう。アスナも今のエヴァンジェリンは素直に怖いと思った。
カモの反応にフンと鼻を鳴らすと再度ネギの方を向いた。
「いいか坊や、貴様は運が良かっただけだ。私と戦った時はマギが一緒に居た、修学旅行では間一髪私が間に合った。もう一度言う坊やは運が良かっただけだ。これ以降運で勝つ事なんて無いと思え…坊や一人でも対処できるように鍛え直してやる。覚悟しておけ…今日は坊やを一から鍛え直すからマギはすまないが、一人でトレーニングを続けてくれ」
「了解…んじゃのどか、あっちの方でお前に軽く魔法についてレクチャーするからついて来い」
「はッはい!」
のどかはマギに連れられて魔法について軽くレクチャーしてもらう事にした。
マギがのどかに軽い魔法についてのレクチャーをする事2時間、マギとのどかがネギ達の元へ戻ると其処にはアスナの姿が無く、代わりに落ち込んでいるネギの姿があった。
何があったのか近くに居たこのかと刹那に事情を聞いてみてみると、このかは苦笑い刹那は何と説明すればいいかオロオロとしていたが、簡潔に説明してくれた。刹那の説明を聞いたマギは
「…はぁ?ネギとアスナが喧嘩したって?」
刹那にさらに詳しく喧嘩の状況を話してもらうと
ネギがエヴァンジェリンにドラゴンを倒すにはどれぐらい修業を積めばいいのか尋ねて、アスナが夕映にどういう意味かを尋ねると夕映は昨日の図書館島についての事をアスナに話した。
一部始終を聞いたアスナは不貞腐れながら何故自分を連れて行かなかったのかネギに尋ねた。するとネギはアスナに危険だと思い連れてかなかった。それどころかネギは此処からは本当に危ないからアスナにはもう関わってこないで欲しいとアスナに言ってしまった。
この発言に流石にカチンと頭に来てしまったアスナは自分がネギのためを思って刹那の所で剣術を教えて貰ったのをネギはそんな事を頼んでいないと返した。
この後からは子供の喧嘩のようにアンタは何もわかっていないやら、アスナさんの分からず屋など子供の喧嘩のように言い合った。
終いにはネギがアスナの事をクマパンやらパイ〇ンと気にしてる事を口走ってしまい、アスナの堪忍袋の緒が切れてしまった。
アスナはハマノツルギを出してネギを障壁ごと殴り飛ばしてしまった。
流石にやり過ぎてしまったと思ったアスナだが、ネギに謝る事もせずにそのまま走り去ってしまった。そして今に至ると言う訳である。
一通り話を聞いてマギが出した結論は
「そりゃネギが悪いな」
即答でネギが悪いと答えた。
「ちょ大兄貴!?即答は流石にそりゃあ…」
カモが言い過ぎじゃあと言おうとするが、何言ってるんだよとマギが呆れたような顔をしながら
「だってそうだろ?成り行きで仕方なくアスナと契約したけどよ。たった1か月位だが困難を乗り越えた最初のパートナーじゃねぇか。それなのにエヴァに修業をつけてもらう事になったからって、もう関わって来ないでほしいなんてさぁ、そりゃアスナだってキレるわ。俺がアスナだったら半殺しのレベルだね」
「半ごろッ!?」
マギが半殺しと言った事にネギは顔を蒼白にしてしまった。
「そりゃあネギの言いたい事は分かるさ。此処からは更に厳しくなる、生半可な気持ちじゃいずれ躓いちまうってな。だったらここで俺らとは手を引いて元の学生生活に戻ってほしい…そう言いたかったんだろ?」
「う…うん」
マギにネギ自身が言いたい事を言ってもらい、ネギは頷く。でもなぁとマギは頭を掻きながら
「もう少し言葉を選べよ。流石にアスナも傷ついただろうし」
「うん、ゴメンナサイ」
「俺に謝ってどうするんだよ。ちゃんとアスナに謝れよ。お前の最初のパートナーなんだからな」
マギの説教が終わったタイミングを見計らったのか、エヴァンジェリンがマギ達の元へやって来た。
「坊やに近衛木乃香は私の家へ来い。色々と話しておかないといけない事がある」
エヴァンジェリンは自分の家へ来るように言った。
時間が時間という事でのどかと夕映に古菲を寮へと帰らせて、マギやネギ達はエヴァンジェリンの家へと向かった。
エヴァンジェリンの自宅に到着したが、なんやかんやでネギは此れで二回目、このかと刹那はエヴァンジェリンの家に来たのは初めてである。
「なんやお洒落な家やな~」
このかがエヴァンジェリンの家の中を見渡して感想を述べていた。
そしてネギとこのかを2階に連れて行くと、エヴァンジェリンは伊達眼鏡を掛けると何処から持ってきたのか移動式の黒板を出して、黒板に何か書きはじめた。
黒板にはネギとこのかのイラストが描かれていたが、体は風船のように膨らんでおり中に魔力と書かれている液体がチャポチャポと揺れていた。
「この絵の通りだが、お前達の魔力容量は強大だ。これはトレーニング次第で如何にかなるというものじゃない。言わば天賦の才、ありがたく思え」
しかしとエヴァンジェリンは黒板にチョークを走らせる。
「今のお前達の状態はただのデカイタンクだ。それでは意味が無い…それで使いこなすためにはそれを扱うための精神力の強化、あるいは術の効率化が必要となっていく」
どちらも修業が必要だな。とエヴァンジェリンはここは重要と言わんばかりに精神力の強化と術の効率化を書いて線を引いていた。
「ちなみに魔力を扱うには主に精神力を必要として、気を扱うには体力勝負みたいな所があるんだが、坊やはどっちも今一つだな」
エヴァンジェリンはネギを見てそう言った。ネギはとりあえずアスナの事は心の片隅に置いといて、エヴァンジェリンの話を聞いていた。
「エヴァンジェリン、マギ先生の魔力の感じが少し変わっているように感じたのは、エヴァンジェリンの元で修業をしたからか?」
刹那はエヴァンジェリンにマギについてそう訪ねたがそうだなと頷いたエヴァンジェリン。
「マギも私が修業をつける前までは坊やよりもほんの少し良かっただけだ。まぁ私の修業のおかげでかなりましにはなったがな」
「あぁあの修業は確かにきつかったぜ」
マギは今迄の修業を思い出していた。砂漠に雪山と今ではいい思い出である。
あぁそういえばと、エヴァンジェリンは何かを思い出したようでこのかの方を向いて
「貴様の父詠春から伝言を預かっている。真実を知った以上このか自身が望むのなら、魔法について色々と教えてやってほしい。とのことだ」
面倒な話だがな…とエヴァンジェリンは呟いていた。エヴァンジェリンの話はまだ続くようだ。
「お前のその力があれば、偉大なる魔法使いになる事も可能だろう。お前の力は将来世の役に立つかもしれん。考えておくといい…さて次は坊やだな」
「はッはい!」
ネギは思わず姿勢を正してしまう。
「これからの修業の方向性を決めるために、坊やには自分の戦闘スタイルを決めてもらおう」
「戦闘スタイル…ですか?」
「そうだ。修学旅行での戦いからお前の進むべき道は2つ考えられる。2者択一に簡単に言うと魔法使いと魔法剣士だな」
魔法使いは前衛を従者に任せて、自分は後方から強力な術を発動するという安定したスタイル。
魔法剣士は魔力を付与した肉体で自らも前に出て従者と一緒に戦う。速さを重視した術を使う変幻自在のスタイルである。
「何か名前だけ聞いたらゲームみたいだな」
カモが名前を聞いてそう思った。
「修業のための一応の分類だ。ただ私としてはお利口な坊やだったら魔法使いがピッタリな戦闘スタイルだがな」
お勧めするぞとネギにそう言うが、ネギはエヴァンジェリンの声が聞こえていないのかずっと考えており
「エヴァンジェリンさん、父さんはどっちの戦闘スタイルだったんでしょうか?」
ネギの疑問に言うと思ったよとエヴァンジェリンは呆れたような笑みを浮かべながら
「アイツの…ナギの戦闘スタイルは魔法剣士。それも従者を必要としない程の強力な程な」
それを聞いてまたネギはまた黙り込んでしまった。
「やはりと言った顔だな。まぁゆっくり考えればいい」
「はッはい!あ…そう言えばお兄ちゃんはどっちの戦闘スタイルなの?」
マギは俺か?と聞かれた。
「魔法剣士だな。やっぱ自分で戦う方が安心できるな」
自分は魔法剣士だと答えた。だからって自分も魔法剣士なんて簡単に決めるんじゃねぇぞとマギが一応釘をさしておいた。
「まぁさっきも言ったがじっくり考えろ。それと木乃香、私から詳しい話があるから下に来い」
「うん、了解やエヴァちゃん」
このかはエヴァンジェリンに呼ばれて一緒に下へ向かった
マギ達特にネギはやる事が無くなったので古菲に教わった中国拳法をおさらいしていた。
一通り拳法を流し終えるとふぅ~と息を吐いた。
「でも拳法だけじゃドラゴン相手に勝てないな…魔法使いと魔法剣士か。アスナさんはどっちがいいと思います?」
ネギは何時ものようにアスナに聞こうとしたが、其処には何時ものようにアスナの姿は無かった。
ネギはそうだったと目に見えて落ち込み始めた。
「そうだった僕、アスナさんと喧嘩しちゃったんだ…」
部屋の隅でいじけだしたネギ。
「兄貴立ち直りが早いと思っていたら」
「忘れてただけみたいですね」
「いや忘れちゃいけねぇだろ」
マギはツッコミを入れていた。
エヴァンジェリンの話を聞いていた時はアスナの事を考えていたが、自分の戦闘スタイルを如何するか考えている時にアスナの事を忘れてしまっていたようである。
この一つの事で他の事を忘れちまうスタイル如何にかしないとなとマギはそう思っていた。
「皆様紅茶をお持ちいたしました」
茶々丸が頭にチャチャゼロを乗せて紅茶を持ってやって来た。紅茶を一つずつマギ達に配る。
「ネギ先生如何したんですか?」
「まッ自分の行いに反省してるって所かな」
ネギが隅っこで落ち込んでいるのを茶々丸が見て何があったのか尋ねて、マギが反省と紅茶を飲んでそう答えた。
「お兄ちゃんどうしよう…アスナさん僕の事嫌いになっちゃったかな?」
涙目のネギがマギに自分が如何すればいいのか聞いてみた。そんなの分かりきってるだろとマギは呆れた様子で
「お前が謝れよ。今回の件はお前が殆ど悪いんだし」
マギに謝れと言われそうだよね…と自覚するネギ
そんなネギに大丈夫ですよと刹那がネギの肩に手を置きながら
「明日菜さんだってもう許してるはずです。ネギ先生が心から謝れば明日菜さんも許してくれるはずです」
「ネギ先生頑張ってください」
刹那と茶々丸が応援する。
「マァコウ云ウ時ハ謝ッタモン勝チダゼ」
ソレカヤッチマエとチャチャゼロが言っていややるのは不味いだろうとマギがツッコむ。
幾段か何時もの様子に戻ったネギがそうですねと呟いて
「僕が謝らなければいけませんよね。悪口を言った事も」
とさっそくアスナに電話をと携帯電話をかけてみてもつながらなかった。電話に出られない状況なのかと思っていると、カモがカードで話してみてはと提案した。
「それじゃあ僕外に行ってきます」
そう言い残してネギは外へと出て行った。これでネギとアスナは仲直りをするだろうと思ったマギ達。
ネギが外へ出た数分後
「イヤァァァァァァァァァッ!!」
アスナの悲鳴が聞こえ、マギ達が2階から外の様子を見てみた。
外の様子は素っ裸にタオルを持ったアスナと地面に沈められていたネギ、そして何故かいて苦笑いを浮かべているタカミチ。
どうやらアスナが携帯に出なかったのは如何やらシャワー中の様で、ネギは何ともタイミングが悪い時にアスナを召喚してしまった様だ。
さらにアスナの憧れのタカミチに自分の裸を見られたことに羞恥と自分の状況を確かめずに勝手に召喚したネギに対する怒りでアスナは割と容赦なしにネギを沈めたようだ。
またもやネギが悪い状況を生み出してしまった。
「やれやれだぜ…これで一層仲が悪くなりそうだぜ」
マギの呟き通りでネギとアスナの溝が深くなりそうであった。