堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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漸く終わりました
それではどうぞ


そう言えばネギま単行本の設定資料集を見たんですけど
リョウメンスクナって身長が60mあるんですよねガンダムに出てくるビグ・ザムと同じ大きさだそうです


決着

 火の魔力と闇の魔力を自分の体に取り込み変身したマギ。ぴょんぴょんと跳ねながら、準備体操する。

 

「何でだろうな、この姿になったおかげでテメェに負ける気がしねえぜ。そら掛かって来いよ傭兵さん?」

 

 クイクイとバトルシーンでやるような指を動かして挑発するマギ。マギは完全に自分が勝つと思っているようだ。

 

「……良かろう、その貴様の自信を今度こそへし折ってやろう」

 

 短剣を構えたアーチャーは次の瞬間には消えていた。シネマ村でやっていた高速移動だろう。シネマ村にてのマギだったらアーチャーの気配を追うのでやっとだったろう。しかしマギは目をキョロキョロとさせた後に

 

「!そこだ!!」

 

 マギも姿が消えるほどの高速移動をし、高速で動いていたアーチャーの身動きを止めていた。

 

「なにッ!?」

 

 アーチャーは身動きを封じられたことに驚きを隠せなかったが

 

「残念だけどよ、この姿になった事でお前の動きは全部見えてんだよ!」

 

 マギはアーチャーに容赦のない頭突きを喰らわせた。頭突きを喰らったアーチャーは呻き声を上げながら地面に叩きつけられる。

 

「どうだい?さっきまで自分の方が優勢だったのに形成逆転された気分は?ん?」

 

 マギはケラケラと小ばかにするようにアーチャーを嘲笑った。

 

「貴様、ずいぶんと余裕だな。その力でいい気なってるのではないのか?」

 

 アーチャーはフラフラと頭突きのダメージが残る中ゆっくりと立ち上がった。

 

「いい気なってるさ。さっきまで俺事を嘲笑いやがった奴との立場が逆転するならそりゃいい気になるさ」

 

 ゴキゴキと首を鳴らす余裕そうなマギ。さっきまで苦戦していたのが嘘のようだ

 

「やはり…やはり貴様が生きていてはいけない存在だと言うのが再認識できた!」

 

 そんな事を叫びながらアーチャーは再度マギに突貫した。

 

「分けわからねぇ事言ってんじゃねえよ!」

 

 マギも手刀で応じる。アーチャーの短剣とマギの手刀がぶつかり合うが、マギの体が今や鉄を溶かすほどの灼熱の体である。何合かぶつかり合うが直ぐにアーチャーの剣が溶けてしまう。溶けた剣を捨て新たに剣を具現化させるがそれ結局溶けてしまう。

 

「何というか逆に強くなり過ぎちまって怖いな…これもとに戻るんだろうな…」

 

 マギは強すぎた事に逆に戦慄を覚えた。

 

「さてと遊びは終わりだ。とっととテメェをブッ飛ばして俺はネギ達の所に行きたいしな」

 

 次で決めるとマギは構えた。いいだろうとアーチャーは呟きながら

 

「確かにこれ以上貴様と戦っても無駄に体力と魔力を失うだけだ。なら私も奥の手で貴様を葬り去ってやる…サイファ・ゼーロ・ニ・ヒツ」

 

 呪文の始動キーを唱え始めた。アーチャーも西洋魔術師だったようだ。

 

「我が盟約に従い 炎の精霊よ集え 猛る灼熱の炎よ すべてを焼きつくし 喰らい尽くせ!」

 

 アーチャーが詠唱をすると巨大な竜の形をした炎がとぐろを巻いていた。

 

「豪爆炎!」

 

 魔法が発動し、炎の竜は真っ直ぐマギに向かって行った。

 

「マギさん危ないアル!」

 

「避けろマギさん!」

 

 古菲と真名では炎の竜を止める事が出来ない。マギに避けろと叫ぶがマギは全く動じなかったそれどころか

 

(若しかしたら…な)

 

 何とマギは炎の竜を真正面から受け止めた。更に信じられない事が起こった。炎の竜がマギの腕に飲み込まれ、否吸収されていた(・・・・・・・)

 

「ま…まさかとは思ったけどよ、うまッく行くとはなぁ!」

 

 マギはアーチャーが放った魔法を自ら吸収する事で自分の力にしたのだ。

 

「これで決めてやる!マギウス・ナギナグ・ネギスクウ 我が右腕に集まれ炎の精よ 我の右腕を全てを灰燼へと化す炎神の腕へと変えよ!」

 

 マギの詠唱によりマギの右腕が巨大で燃え盛る炎の腕へと姿を変えた。

 

「覚悟しろよクソ傭兵、今の俺の右腕は全てを燃え尽きさせてしまう炎の腕だ。テメェでも無事では済まねえだろうよ」

 

「くっそ……」

 

 アーチャーはよろめきながらも再度剣を具現化した。ただの剣では今のマギに敵う可能性は零に近いだろう。

 

「マギ・スプリングフィールドぉ!」

 

「行くぜぇ!」

 

 マギの炎の腕とアーチャーの剣がぶつかり合うが、マギの炎の腕によりアーチャーの剣はアッサリと破壊されてしまった。

 

「ばっ馬鹿……な」

 

 アーチャーは自分が負けるというのが信じられないという様子だった。そんなアーチャーを無視してマギは止めに入る。

 

「右腕全力解放! 炎神の豪爆炎拳!!」

 

 マギの炎の拳によって放たれた正拳突きが、アーチャーの体に抉るように入った。

 

「ぐっグホォッ!?」

 

 アーチャーは呻き声を上げながら血反吐を吐き散らした。

 

「このまま……吹っ飛びやがれぇッ!」

 

 その叫びと一緒にマギは拳を振り抜きアーチャーを文字通り吹っ飛ばした。殴り飛ばされたアーチャーはノーバウンドでスピードを緩めることなく、雑木林に轟音を立てながら突っ込んだ。

 アーチャーが吹っ飛ばされ、雑木林は土煙が舞い上がってアーチャーの姿は分からないが、恐らくは無事ではないのだろう。

 

「へっ今まで馬鹿にしたお返しだ。ざまぁみやがれ」

 

 構えを解いたマギは吹っ飛ばされたアーチャーに向かってそう呟くが、次の瞬間には顔に汗をにじませて膝から崩れ落ちると

 

「げっげぼぉ!!」

 

 先程よりも大量の血の混じったと云うよりも血だけを吐き出した。実際変身してパワーアップに成功したマギではあったが、体の中では色々と凄い事になっていた。

 常人以上の力を出すために臓器などに無理をさせ過ぎてしまったのだ。そのせいで内臓はボロボロである。

 つまりはやせ我慢をしていたのだマギは。一瞬でも気を抜いたら意識を持ってかれそうになったからだ。アーチャーを倒したことにより、遂に限界を突破したのだ。

 

「マギさん!」

 

「マギさん大丈夫アルか!?」

 

 真名と古菲がマギの元へ駆け付ける。2人から見てもマギがボロボロだと云うのが目に見えて分かる。

 

「おっお前ら、何か勘違いしてるかもしれねえがこれは今日の夜に飲んだトマトジューッゲホォッ!」

 

 マギは真名と古菲に誤魔化そうとしたが、又血を大量に吐き出した。これ以上血が無くなると最悪死に至るほどの血の量だ。

 

「ちょ、こんな時に笑えない冗談はやめるヨロシ!」

 

「流石にこれ以上の出血は死ぬぞマギさん」

 

 笑えないギャグを言って誤魔化そうとしたマギだが、逆に怒られる始末。しかしマギは口元の血を腕で拭うと心配すんなと笑いながら立ち上がると

 

「んな簡単にくたばるつもりはねぇよ。それでまだ残ってる鬼共に眼鏡二刀流はまだやるのか?」

 

 マギがオヤビンの鬼達や月詠にまだヤルのか尋ねるが、いやもうええわとオヤビン鬼がそう言った。

 

「何かもうそんな空気じゃなくなってもうたわ。不完全燃焼って感じやけどしょうがないやな。それにもう時間の様やし」

 

 とオヤビン鬼達が足からどんどんと消えて行ったのだ。時間切れなのだろう。

 

「ええ戦いっぷりやったなアンちゃん。今度はワイとやろうやないか」

 

「冗談。こんなキツイ事、当分こりごりだっつーの」

 

 さっさと消えろと言いたそうにシッシッと追い払う仕草をするマギ。可愛げのねぇアンちゃんやなとオヤビン鬼は笑いながらそう言った。

 

「そう言えばまだアンちゃんの名を聞いては無かったなぁ。アンちゃん名はなんちゅうんや?」

 

「マギ、マギ・スプリングフィールドだ。別に覚えて無くてもいいぞ」

 

 オヤビン鬼はマギの名を聞いていい名やなとそう言ってサムズアップしながら

 

「じゃあなマギのアンちゃん。今度会った時は一緒に酒でも飲もうや」

 

 それだけ言うとオヤビン鬼や他の鬼や狐面とカラスなども消えてしまった。消えてしまった後でマギは

 

「タバコは吸うんだけど、酒はちょっと苦手なんだよな……」

 

 と呟いた。敵側で残ったは月詠一人だけ

 

「んでお前はまだやるのか?」

 

 と尋ねるといいえーと首を横に振った。

 

「ウチも退散させてもらいますー。まだセンパイとちゃんと死合ってもらってないのに死ぬなんてまっぴらですからー」

 

 と言い残し、月詠も一目散に逃げて行った。古菲と真名は深追いする事は無かった。それよりも心配なのはマギの方だ。

 

「マギさん本当に体は大丈夫アルか?」

 

 古菲は心配そうにもう一度マギに大丈夫なのか尋ねるがマギは大丈夫の一言

 

「今は俺の事よりもネギの方が心配だ。俺はネギ達の元へ行くからお前達も後から来い」

 

 そう言ってマギは黒き翼を(変身したせいか翼も何時もの黒の翼ではなく炎の赤い翼となっていた)展開しネギ達の元へ飛んで行った。

 ポツンと取り残された古菲と真名、古菲がポツリと

 

「大きい鬼達と戦ったり、マギさんが変身したり空飛んでったり。私は夢でも見ていたアルか?」

 

「ふっ残念だが此れは現実さ古菲。世の中には摩訶不思議な事があっても可笑しくは無いんだ。さて、私達もネギ先生の所へ向かうとするか」

 

 古菲と真名も走りながらネギ達の元へと急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マギとアーチャーとの戦いに決着がついた少し前の時間、ネギとアスナと刹那の方でも決着がつきそうだった。

 ネギとアスナが対峙しているのは銀髪の少年。ハッキリ言って満身創痍のネギと戦闘経験の少ないアスナでは勝つ見込みはあまりなさそうだ。

 

「それでどうすんのネギ?」

 

 ハマノツルギを構えながら、これから如何するのかとネギに尋ねるアスナ。そうですね…と少し考えた後笑いながら

 

「正直言って自分で考えられる策は全部使ってしまいました。後はエヴァンジェリンさんが来るまでの時間稼ぎ…何も考えずに当たって砕けろって感じです」

 

 ネギの答えを聞いてアスナは何よそれ、と呆れていたが次には笑いながら

 

「けど何も考えずに当たって砕けろなんてアタシらしくていいじゃない。こうなったらとことんやってやろうじゃない!」

 

「行きましょうアスナさん!」

 

「オッケー!!」

 

 まだヤル気のあるネギとアスナを見て銀髪の少年は呆れたような溜息を吐きながら

 

「まだやるのかい?無駄な事だと云うのに…」

 

 実に無意味だと無表情なのにそう言ってるように感じ取れた。

 

「うっさいわね、何でもかんでも自分の物差しで測ってるんじゃないわよ!ネギ!」

 

「はい!契約執行20秒間 ネギの従者 神楽坂明日菜!」

 

 ネギはなけなしの魔力をアスナに供給する。ネギから魔力を貰ったアスナは銀髪の少年に突撃する。

 

「やぁぁぁッ!」

 

 アスナは気合と一緒にハマノツルギを振り下ろすが、少年はアスナが振り下ろす前に突如消えた。

 

「え?きっ消えた!?」

 

 少年が行き成り目の前で消えた事に驚き、何処に行ったのか辺りを見渡す。そんなアスナの真上に足を振り上げた少年の姿が

 

「姐さん上だ!」

 

 カモが叫んだが一足遅く、少年の空中回し蹴りがアスナの腹に直撃したのだ。そのまま祭壇の木の床に叩きつけられるアスナ。

 

「アスナさん!」

 

 ネギが叩きつけられたアスナの元に駆け付けようとしたが、ネギの真後ろに少年が回り込んでいた。

 

「いっ何時の間に!?」

 

 ネギはガードをしようとしたが、少年の重い一撃がネギを吹き飛ばした。吹き飛ばされたネギはアスナまでも巻き込みアスナと一緒にそのまま一緒に叩きつけられた。

 

「つッ強ぇ!あのガキ、魔法も半端なく強いが近接戦も兄貴や姐さんの数倍の強さだ!」

 

 カモはこの少年に対して今のネギとアスナの実力じゃ歯が立たないという事を理解した。ネギとアスナが倒れて怯んでいる隙に少年は再度ネギ達に接近し連続攻撃を食らわしてくる。

 ネギとアスナは反撃できずに少年の攻撃を防ぐので精一杯である。更に少年の肘打ちによってまたもや吹っ飛ばされてしまう。

 

「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト 小さき王 八つ足の蜥蜴 邪眼の主よ」

 

 少年は動けないネギとアスナに止めを刺そうと魔法を詠唱した。

 

「ヤバい!この魔法詠唱はさっきと同じ石化の魔法!それにさっきよりも強力な奴だ!兄貴迎撃を!」

 

「うッうん! ラス・テル・マ・スキ…あぐ!」

 

 ネギは迎撃するために魔法を詠唱しようとしたが、ネギは膝をついてしまった。やはりほとんど魔力が無いのに無理をさせてしまったのか。

 

「その光我が手に宿し 災いなる眼差しで射よ」

 

 少年の指先に魔力の光が集中していった。

 

「くそ間に合わねぇ!もう駄目だ!」

 

 カモはもうお終いだと叫んだ。

 

「ネギ!」

 

 アスナはネギを守ろうとネギを抱きしめて自分が盾代わりとなる。

 

「石化の邪眼!」

 

 少年の石化のビーム状の魔法がアスナに直撃した。

 

「アスナさん!?」

 

 ネギは身代わりになって魔法を受けたアスナに向かって叫んだ。自分の様に石化しまうのかと思っていたが、石化の魔法はアスナに直撃しないで、障壁ではない別の力がアスナを石化の魔法から防いだのだ。

 しかし力が強くなかったのか上の服がどんどん石になってしまいボロボロと崩れ落ちて行った。

 

「あっアスナさん?」

 

「大丈夫よネギ心配しないで」

 

 ネギの心配そうな目にアスナは軽くウィンクをして、自分は大丈夫だと伝えた。

 少年はアスナが魔法を防いだのを観察しながら

 

「いまの力、やはり魔力完全無効化能力?…なら先に君を潰しておこうカグラザカアスナ」

 

 少年はターゲットをネギからアスナへと変更した。もうネギの魔力供給は無くなっている。少年の攻撃をモロに喰らったらアスナは最悪死ぬかもしれない。

 少年の拳がアスナに直撃しようとした次の瞬間

 

 

 ガシッ!

 

 

 ネギが少年の腕を掴んで少年の動きを封じた。少年はネギの拘束を解こうとしたが、ビクともしない。ネギは呼吸をしながらも

 

「あっアスナさんに手を出すな!アスナさん!!」

 

 大丈夫よとアスナはハマノツルギを構えて動けない少年へ突っ込んだ。もう上の服が砕け散って裸になってしまっているが今はそんな事を気にしてる暇は無い。

 

「女の子を裸にするようなイタズラなガキはお仕置きよ!」

 

 ハマノツルギを少年の頭に叩きつける。スパンと云う良い音と同時に少年を守っていた障壁も砕け散った。

 

「兄貴今ですぜ!」

 

 カモの合図でネギは今残っている魔力全てを石になっている腕に集中した。

 

「うぉぉぉぉッ!」

 

 ネギは叫びながら少年の頬を思い切りぶん殴ったのだ。

 

 

 

 

 

 一方の刹那も決着が着きそうだった。

 

「天ヶ崎千草、お嬢様を返してもらう!」

 

 刹那はスピードを緩めることなくこのかの元へ羽を羽ばたかせる。

 

「お前は!こんなに近くじゃスクナの力を使えん!」

 

 千草は猿と熊の着ぐるみを召喚して刹那を迎撃させようとしたが、間に合わず!

 

「はぁッ!!」

 

 刹那は鬼達を斬り伏せて、このかを千草の元から救い出した。

 

「お嬢様、お嬢様!御無事ですか!?」

 

 刹那はこのかの口を塞いでいる札をはがし、無事かどうかを聞いた。

 

「う…う~ん、あれせっちゃん?」

 

 このかがゆっくりと目を覚ました。如何やらどこも怪我も無く無事の様だ。

 

「お嬢様…!よかった…」

 

 刹那はこのかが無事だと分かり、安堵の息を吐いた。このかはへにゃりと笑いながら

 

「せっちゃんやっぱり助けに来てくれたんやね…うち信じてたえー」

 

 そう言いながらこのかは刹那の白い羽を見て

 

「せっちゃんその羽は?」

 

「こッこれはその…!」

 

 自分の秘密だった羽を見られてどう言い訳しようか迷っていると

 

「綺麗やねせっちゃんの羽、まるで天使みたいや」

 

 このかは刹那の羽を綺麗だと言ってくれた。自分の羽を綺麗だと言ってくれた。刹那は先程のアスナの言っていた事を思い出した。

 

 ―あの子が刹那さんの事をそんな簡単に嫌いになるわけないじゃない―

 

(あぁ…私はなんて愚か者なんだ…!)

 

 お嬢様を守ると言っていながら自分はこのかの事を信じていなかった。刹那は泣きながらこのかの事を強く抱きしめた。

 せっちゃん?と行き成り抱きしめられて顔を赤くしながら刹那を見るこのか。刹那は嗚咽しながらも

 

「ごめんねこのちゃん!それと……ありがとう」

 

 今迄このか事を信じていなかった謝罪の言葉と、自分の本来の姿を見せても嫌いならないでくれた感謝の言葉を言った。このかは何も言わず黙って刹那の頭を撫でてあげた。

 

 夜空を飛んでいる刹那とこのか。漸く仲直りが出来たようだ。

 

 

 

 

 

 銀髪の少年にありったけの力を込めて殴ったネギ。少年は殴られたままピクリとも動かなかった。

 

「やっやったの?」

 

 アスナは恐る恐る尋ねたが、ネギ自身もよく分からない。

 手ごたえはあった、なのに何も反応を見せないと云うのは逆に不気味だ。

 

「……顔に拳を入れられたのは初めてだよ。ネギ・スプリングフィールド」

 

 振り返った少年の眼はギラリと光っており殺意まで孕んでいた。

 少年はネギに殴り掛かってきた。今のネギに防ぐほどの体力と魔力は残っていない。

 此処までかと思っていたその時、ネギの影から手が出てきて少年の腕を掴んだ。ズズズと体が出て来始めた。ネギの影から出て来たのは

 

「坊やが世話になったようだな若造」

 

 エヴァンジェリンがネギの影から現れて少年を吹き飛ばした。

 

「エヴァンジェリンさんどうやって此処へ!?」

 

 ネギは行き成り自分の影からエヴァンジェリンが現れた事に驚きを隠せなかったがエヴァンジェリンは

 

「今はそんな事どうでもいいだろう?それにしてもよく頑張ったな坊や。後は私に任せろ…茶々丸」

 

「はいマスター」

 

 エヴァンジェリンの合図で茶々丸は何処から取り出したのか対戦車ライフルをリョウメンスクナノカミに向けて構えた。

 

「マスター結界弾セットアップできました」

 

「やれ」

 

「了解です」

 

 エヴァンジェリンの命令で茶々丸はライフルの引き鉄を引いた。結界弾なる弾がリョウメンスクナノカミに直撃すると簡易的な結界がリョウメンスクナノカミの身動きを封じた。

 

「うぎゃぁぁスクナが!?」

 

 動きを封じられ千草は悲鳴を上げるしか出来なかった。

 あの巨大なリョウメンスクナノカミの身動きを封じた事にネギとアスナにカモはポカンとするしか出来なかった。

 

「この位の結界では10秒ほどしか持ちません。お急ぎを」

 

「ご苦労茶々丸。さて坊や?」

 

 エヴァンジェリンは魔力の蝙蝠を集めて作った黒いマントを羽織りながらネギの方を向いた。

 ネギは、はッハイ!と思わず姿勢を正してしまう。

 

「こう言った大規模な戦闘での魔法使いの役目は、強力な砲台になる事、つまりは火力が全てだ。今から私の最強で最高の魔法を見せてやる!いいな見てろよ、絶対見るんだぞ!」

 

 念を押すほどだから見てほしいのだろう。エヴァンジェリンはリク・ラク・ラ・ラック・ライラックと詠唱を始めた。

 

「契約に従い我に従え氷の女王 来たれとこしえのやみ! えいえんのひょうが!!」

 

 エヴァンジェリンの魔法によって池の水が凍りついてしまい、リョウメンスクナノカミの体まで凍り始めた。何とか逃げようとして千草を振り落してしまう。

 

「なっなんやと!?次々に強力な魔法を!お前は何もんや!?」

 

 如何やら千草はエヴァンジェリンの存在を知ら無いようだ。クククと悪そうな笑みを浮かべるエヴァンジェリン。

 

「相手が悪かったな女、ほぼ絶対零度150フィート四方広範囲の完全凍結殲滅呪文だ。このデカブツでも防ぐすべはないぞ。そして私の事を知らないとは、ならば教えてやろう!我が名は吸血鬼『闇の福音』エヴァンジェリン!最強無敵の悪の魔法使いだ!貴様の敗因はただ一つ…この私の存在を知らなかった事だ!フフフハハハハ!!」

 

 エヴァンジェリンの口上を聞いていたネギ達はと言うと

 

「エヴァンジェリンさん張り切ってますね」

 

「そうね。アタシ達あんなのと戦ったのね……マジの戦いだったら死んでたわね」

 

「ノリノリだな」

 

 其れしか言えなかった。エヴァンジェリンの攻撃はまだ終わらず

 

「全ての命ある者に等しき死を 其れは安らぎ也」

 

 リョウメンスクナノカミは完全に凍りついてしまい、巨大な氷の像へと成り果てたそして

 

「おわるせかい……砕けよ」

 

 エヴァンジェリンが指を鳴らすと同時に、氷像と化したリョウメンスクナノカミは轟音を立てながら崩れ落ちた。

 

「くくく。ハハハハ!バカめ、伝説の鬼神か知らぬが私の敵ではないわ!」

 

 ご満悦でエヴァンジェリンはネギ達の元へ降りてきた。

 

「如何だ坊やこの私の力しっかり目に焼けつけたか?」

 

「はっはい、凄かったです」

 

 素直に凄いと言ったのでエヴァンジェリン自身も満足の様だ。

 

「それよりもどうやってエヴァちゃんが来たの?ネギの影から出て来た時にはビックリしたけど」

 

 アスナの疑問にあぁそれはなとエヴァンジェリンは説明を始める。

 

「前に坊やの血を少しだけ飲んだ事があっただろう?そのおかげで私と坊やに生体的リンクが出来たんだ。と言っても私の一方的な物だけどな。そのリンクを使って私は坊やの影までの転移魔法を使ったと言う訳だ」

 

 と説明を終えた。さて坊やとエヴァンジェリンは行き成り真剣な顔になって

 

「今回の戦いで勝てたのはハッキリ言えば私のおかげだ。次このようなピンチになっても私の力を期待できない事があるかもしれない。強い奴に頼る事は卑怯じゃない。しかし自分の力だけで解決すると云う事も肝に銘じておけ」

 

「はっはい」

 

 ネギの返事が辛そうに聞こえ、エヴァンジェリンはネギに大丈夫かと聞く。エヴァンジェリンは気づいていなかった。先程吹き飛ばした少年が音も無く忍び寄ってきたことに

 

「エヴァンジェリンさん危ない!」

 

 ネギはエヴァンジェリンを抱き着き自分が盾になろうとした。

 

「おッおい坊や何をするんだ!?私にはマギが…」

 

 エヴァンジェリンは顔を赤くして動揺していたが、少年が冷たい目で自分達を見ていた事に気づいた。

 

「障壁突破 石の槍」

 

 少年は石の槍を出現させ、ネギとエヴァンジェリンを貫こうとした。

 

「ばか退け!」

 

 エヴァンジェリンはネギを突き飛ばそうとしたが間に合わなかった。このまま2人とも貫かれるのかと思ったが、突如行き成り横から誰かが現れ石の槍を破壊した。

 

「おっお前は!?」

 

 エヴァンジェリンは現れた人物に驚きを隠せなかった。

 

「おい、何人の弟と生徒にそんなぶっといモンをぶっ刺そうとしてんだおい」

 

 変身していたマギが石の槍を炎の腕で炭化させて、少年を殴り飛ばしていた。しかし殴り飛ばした少年は水となって崩れ落ちていた。如何やら水で作った分身の様だ。

 

「……マギ・スプリングフィールドが此処に居るという事は、彼は負けたという事だね。真祖の吸血鬼も居るという事で此方が圧倒的に不利だ。このまま退散させてもらうよ」

 

 あぁそれとと少年は何かを言い残したようで

 

「僕の名はフェイト・アーウェルンクス…ネギ君に言って置いてくれ。君とまた会うのを楽しみにしていると」

 

 捨て台詞を残して少年…フェイトの水の分身は消えた。敵は完全に居なくなったことで一応はマギ達の勝利という事なんだが

 

「まっマギさんなのよね?何なのよその姿!?」

 

 アスナはマギの変身した姿に驚きを隠せなかった。体が真っ黒で髪も長くなっていたら誰でも驚く。エヴァンジェリンはマギの変身した姿を見て信じられないと云う顔をしながら

 

(マギの奴あの魔法(・・・・)を何処で知ったんだ?あの魔法は普通の魔法使いじゃ知る者なんて居ない。知ってるとしたらナギやアイツラぐらいしかいないのに)

 

「おっお兄ちゃん、よかった。来てっくれたんだね……」

 

 ネギはマギが来てくれたことに安堵したのか、しかし荒い呼吸で倒れてしまった。

 

「おっおいネギ!」

 

「ネギ如何したの!?」

 

「兄貴!」

 

「坊や!!」

 

 マギ達は倒れたネギの元に駆け付ける。

 

「ネギ君!」

 

「ネギ先生!」

 

 先程降りてきたこのかと刹那もネギの元に駆け付ける。

 

「マギさん如何したんその恰好!?」

 

 このかもマギの代わり様に驚いていた。

 

「俺の事よりもネギを!」

 

 とこのかに向かって叫んだ。さらに楓に小太郎と夕映も駆け付けた。3人はネギよりも変身していたマギを見て驚いたが、俺の事よりもネギの方だとマギに突っ込まれてしまう。遅れて古菲と真名も到着した。

 茶々丸はネギの体を見て一言言った。深刻な状態だと

 

「ネギ先生の魔法抵抗能力が強すぎるために石化の進行速度がきわめて遅いのです。このままでは首部分まで石化しただけで、肺が圧迫されて窒息死の可能性が」

 

「そっそんな!何とかならないのエヴァちゃん!」

 

 アスナはエヴァンジェリンに何とかしてもらおうと思ったが、オロオロとした後にすまんと謝られ

 

「私は治癒魔術が苦手で何も出来ないんだ」

 

「そんな。このままネギが苦しんでいるのをただ眺めるしか出来ないの!?」

 

 アスナの悲痛な叫びを聞いて、このかと刹那が頷きあってアスナ…とこのかがアスナに近寄り

 

「なぁアスナ、ネギ君とウチキスしてもええ?」

 

 と言いだした。

 

「ちょこのか!こんな時に何言ってるのよ!?」

 

 アスナはこのかが場違いな事を言っていると勘違いして思わず怒鳴ってしまった。違うんよアスナとこのかは誤解を解こうとする。

 

「アスナとネギ君がやったパクテオーって奴ならネギ君を助けられると思うから…アスナそれに皆、ウチせっちゃんから色々と聞きました。助けてくれてありがとう」

 

 このかはそう言ってマギ達のお礼を言った。

 

「クラスの皆やマギさんが助けてもらって、ウチにはこれ位しか出来ひんけど」

 

 このかの言った事に確かにとマギはそう呟いた。

 

「あのクソ傭兵も言ってたが、このかの力だったら石化した奴らを助ける事が出来ると言っていた。それにパクティオーカードは潜在能力を引き出す効果がある。そうだよなカモ?」

 

「そうでさ大兄貴、だったらこのかの姉さんの力に賭けるしか」

 

 このかがネギと仮契約をすることに決定した。このかはネギと口を近づけ

 

「ネギ君…」

 

 軽いキスをした。ネギとこのかの間で仮契約が結ばれ、眩い光が祭壇を包み込んだ。

 

「ん…あれ?此処は…」

 

 目が覚めたネギに映ったのは、皆が心配そうに自分を見ているのと、巫女服で身を包んだこのかの姿があった。

 

「このかさん、無事だったんですね」

 

 ネギが何ともなく無事だと分かり喜び合うアスナ達。

 

「さて、これで一件落着だな」

 

 マギもこれで漸く終わったかと安堵していたその時

 

 

 

 ズキリ…

 

 

 

「ん?」

 

 何か体に変な痛みを感じたと思った次の瞬間

 

 

 

 ズキリズキリズキリズキズキズキズキズキズキ!ブシュウウウウウウウウッ!!!

 

 

 

「なんじゃこりゃぁぁぁッ!?体中がイテェ!!」

 

 マギの体中が悲鳴を上げ始めて、体の至る所から血が噴水のように吹き出した。

 ネギ達はマギが血を吹き出しながらのた打ち回っているのを見てギョッと目を見開いた

 

「マギ!?」

 

「お兄ちゃん!!」

 

 エヴァンジェリンとネギはマギが血を垂れ流しながらのた打ち回るのを見て駆け付けようとしたが、マギから近づくな!と叫ばれた。

 

「やっやっぱ魔力を取り込むなんて無茶過ぎた様だな…もッもう限界だだ……だわばら!!」

 

 何を言っているのか分からない叫び声を上げながら大爆発を起した。爆発が晴れると元のマギの姿に戻ってはいたが、白目をむいてぐったりと気絶をしていた。

 

「お兄ちゃんしっかりして!」

 

「……危険な状態です。このまま出血が止まらないと失血死の可能性が…」

 

 茶々丸がマギを診察し、そのような結果になった。マギが死ぬかもしれないと聞いてエヴァンジェリンは顔を蒼白にしながらマギの体を揺らし必死に呼びかけた。

 

「おっおいマギ死ぬな!死んだら私は許さないぞ!一緒に京都を回るって約束したじゃないか!おい近衛木乃香!早くマギを治せ!!」

 

「はっはい!」

 

 エヴァンジェリンの叫びにこのかはビクつきながらもこのかのアーティファクトでマギの傷を治し止血をした。

 

 だが血は止めたが失った血を戻す事は出来ない。

 

「茶々丸、例の薬を!」

 

「はいマスター此処に」

 

 エヴァンジェリンが言った例の薬とは本山に登る時にマギに飲ませた血を増やすあの血のような丸薬である。この丸薬は魔法薬であり、飲めばすぐさま血が増えると云う万能薬なのである。

 エヴァンジェリンは茶々丸から丸薬と水が入った水筒を引っ手繰るように取って、丸薬を何薬か口に入れ水を口にふくむと

 

(マギ、死ぬな!)

 

 口移しで丸薬をマギに飲ませた。マギは丸薬を辛うじて飲んでくれた。

 マギが丸薬を飲み込んで数分経つと、マギの指がピクリと動き

 

「あれ…俺何してたんだっけ?」

 

 マギがゆっくりと起き上がりながら頭を掻き、辺りを見渡した。

 

「マギ!」

 

「お兄ちゃん!」

 

 エヴァンジェリンとネギが泣きながらマギに抱き着いた。

 

「なッなんだよネギにエヴァ!?今俺体中がスゲー痛いんだからくっ付くなって!」

 

 マギはくっ付いているネギとエヴァンジェリンを引き剥がそうとする。アスナ達はマギが何時も通りだと分かると漸く本当に安堵できた。

 こうしてこのかの救出作戦は成功で終わったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 本山にて石になってしまったのどかや詠春達をこのかのアーティファクトで元に戻している間、事の発端を起した千草はと云うと

 

「くそッ!まさかあんなバケモンが出て来るとは…しゃあない一度逃げて仕切り直しや!」

 

 リョウメンスクナノカミが倒されたときにちゃっかり逃げ出していたのだ。フェイトの姿も見えず一人で逃げる千草。

 

 まだ西洋魔術師への復讐を諦めておらず別の計画で今度こそと意気込んでいると…

 

 ―オ前悪人ダナ?-

 

 何処からか声が聞こえた。

 

「だッ誰や!?」

 

 千草の問いに声の主は答えずに

 

 ―自分ノ目的、欲望ヤ理想ノタメニ他人ノ犠牲モ躊躇ワナイ。ソレガ悪人―

 

 声の主は千草の足元から後ろから木々の間から声が聞こえてきて何処に居るのか分からない。それがかえって恐怖を煽る。

 

 ―ダガ自分ノ理想ニ誇リヲ持ツ悪ナラバ、何時ノ日カ同ジ悪ニ滅ボサレル事ヲ覚悟スルモノダ。貴様ニソノ覚悟ハ有ルノカ?―

 

 千草の足元に投げナイフが数本刺さった。恐る恐る上を見上げる千草が見た物は

 

「ソノ覚悟ガネェンナラ…テメェハ、タダノ馬鹿者カ三流以下ノ腰抜ケノ小悪党ダ」

 

 エヴァンジェリンの人形で茶々丸の姉であるチャチャゼロが自分よりも何倍も大きい剣を持ちながらケケケと笑っていた。

 

「ひっヒィィィィィツ!」

 

 千草はチャチャゼロの姿を見て腰が抜けてしまった。何とか逃げようとするが腰が抜けてるせいか上手く動けない。ケケケと笑いながら近づいて来るチャチャゼロ

 

「だっ誰か助け」

 

 千草は自分と目の前のチャチャゼロしかいないのに助けを求めた。

 

「自分ガ殺サレルト思ッタラ命乞イカヨ…誇リモネェ悪党ハ地ベタデモ這イ蹲ッテ死ニヤガレ」

 

 チャチャゼロは千草に剣を振り下ろした。剣は千草を貫くかと思いきや

 

 

 

 ギャンツ!!

 

 

 

 チャチャゼロの剣と何かぶつかった音が聞こえた。千草は閉じていた目を恐る恐る開くと

 

「すまない千草嬢、遅くなった」

 

 ボロボロのアーチャーがチャチャゼロの剣を具現化させた剣で防いでいた。

 

「傭兵無事だったんやな!けどボロボロやないか…」

 

 千草はアーチャーがボロボロなのを如何したのかと尋ねるとアーチャーはフッと笑いながら

 

「格下だと思っていたマギ・スプリングフィールドにしてやられたのさ。又一から出直しさ。それで如何するんだ千草嬢?君は此処で無残な最期を遂げるかい?」

 

 アーチャーの問いに何を馬鹿なと千草は呟きながら

 

「こんな所で死ぬなんてまっぴらや!今は惨めに逃げてもいい、けど近いうちに西洋魔術師達に復讐してやるんや!」

 

 千草の答えにアーチャーは笑いながら

 

「了解だ千草嬢。いや今からマスターと呼ばせてもらうが、私は君の僕になろう。君の復讐と私のマギ・スプリングフィールドの抹殺を共に成功させようじゃないか」

 

 そう言ってアーチャーは千草を横抱きしてあげた。抱き上げられて顔を赤くする千草。

 

「そういう事だ闇の福音の人形よ、私とマスターは失礼させてもらう」

 

 アーチャーは飛び跳ねてチャチャゼロから逃れ、すぐさま見えなくなるほど遠くまで逃亡をしてしまった。

 

「逃ゲヤガッタ…ケドアノアーチャーッテ言ウ傭兵、殺シ合ッタラ面白ソウダナ。ケケケ」

 

 チャチャゼロは今度会ったら殺し合ってみたいなとそんな物騒な事を思っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いが終わった早朝。少しでも休もうとしていたネギやマギであったが、逆に休めずに本山の周りを動いていた。

 

「お兄ちゃん、そんなに動いて大丈夫なの?」

 

 ネギはあれほどの大爆発を起したマギが普通に動いているのを見て心配そうに見ていたが、マギ本人は腕を回しながら

 

「別に大丈夫なのに、お前は心配しすぎなんだよ」

 

 マギは呆れたように言った。でも!とネギは心配だと言おうとしたが、マギとネギは身支度を整え何処かへ行こうとしている刹那の姿を見た。

 

「刹那さん、何処へ行くんですか?」

 

 ネギの声にビクッ!とする刹那。振り返った刹那は悲しそうな笑みを浮かべながら

 

「私の一族の掟で、あの姿を見られた以上私はこのかお嬢様の元から離れなければいけないのです」

 

 刹那はあの羽を見られたことで掟で去らなけばいけないのだ。

 

「そッそんな!それじゃあこのかさんは如何するんですか!?」

 

 ネギは納得できないで刹那に行かないでと説得しようとした。しかし刹那は首を横に振りながら

 

「このかお嬢様だったらネギ先生が付いていれば大丈夫です。お嬢様をお願いします」

 

 それではと刹那は立ち去ろうとする。ネギは刹那に行かないでと呼び止めようとしたが、マギに手で制止られた。おい刹那とマギが呼び止める。

 

「こんな形でこのかの元に去るなんて悔いはないのか?」

 

 マギの問いに当然ですと答えた刹那。

 

「お嬢様を守るという役目を果たし、神鳴流に拾われた私を育ててくれた近衛家への御恩も返す事が出来ました。なので悔いなんて有りませんよ」

 

 ええありませんとも刹那は言い切った。そんな刹那にそうかよとマギは呟きながらポケットからタバコを出して吸い始めた。

 

「なら何で、お前は今泣いているんだ?」

 

 刹那は泣いていた。悔いが無いなんて嘘だ。本当はこのかと離れたくない。

 

「お前は真面目すぎるんだよ。本当の気持ちをぶちまけちまえよ」

 

「私だって…ウチかてお嬢様と!このちゃんと離れとうない!このちゃんと一緒に居たいんや!」

 

 刹那の本当の気持ちの聞いてフッと笑うマギ。

 

「ちゃんとテメェの気持ちを言えたじゃねえか…だってさこのか」

 

 え?と刹那は今マギが言ったこのかという言葉に固まった。マギは自分の後ろの襖を開けると、其処にはこのかの姿が

 

「……何時から気づいてたんマギさん?」

 

「結構前から。でもお前も刹那の本当の気持ちを聞けて良かったんじゃねぇか?」

 

 マギの言った事にこのかはウンと頷いて刹那に近づいた。刹那は何と言っていいのか分からなかったが、このかが刹那に抱き着いた。

 

「おっお嬢様!?」

 

 このかに抱き着かれて動揺する刹那だが、このかよかった…と言う呟きを聞いて固まってしまう。

 

「よかった…せっちゃんが何処にも行かんで。せっちゃん、もう何処にも行かんといて…ウチと一緒に居てくれる?」

 

 このかの一緒に居てほしいという願いに刹那は

 

「喜んで…お嬢様!」

 

 涙を流すが笑いながら答えた刹那。仲直りも出来て本当の意味でこのかと刹那は昔のような親友に戻ったのだった。

 一応は一件落着だな…とマギはタバコの煙を吹きながらそう思った。

 

「全く強引な男だなお前は…」

 

 エヴァンジェリンは呆れたような顔をしながら現れた。おうエヴァとマギは言う。

 

「お前はいわば、アイツに一族の掟を破れと言っているようなものだぞ」

 

 エヴァンジェリンの言った事にマギは馬鹿だなお前と言いながら

 

「エヴァ、この言葉を知ってるか?『ルールって言うのは破る為にある』ってやつさ」

 

「全く…お前らしいよその言葉は」

 

 だろ?と笑いあうマギとエヴァンジェリンと

 

「ネギ~!マギさ~ん!大変よ!!」

 

 と大慌てのアスナが走ってきた。

 

「どッ如何したんですかアスナさん!?」

 

 アスナの慌てぶりに一大事なのかと慌てるネギ。如何したもこうしたもないわよ!とアスナ

 

「旅館に飛ばしたアタシ達の身代わりが大暴れしてるみたいなの!」

 

「ええ!?」

 

 もし身代わりと分かってしまったら一大事だ。一刻も早く旅館に戻らないと

 

「んじゃテメェらさっさと荷物纏めてホテルに急ぐぞ!」

 

 マギの号令で急いで荷物を纏めてホテルに戻る事にした。

 

「お嬢様、私達も急ぎましょう」

 

「もぉこのちゃんって呼んでもええのに、でも…早く行こせっちゃん」

 

 このかと刹那は笑いながら手を繋いでホテルに戻るのだった。

 

 

 

 

 

 




今回は何時もより長くなりました。
とここで原作とは違う点は千草さんが今後も登場するという事です
敵キャラでは千草さん好きなんですよね…着崩した和服がなんとも
修学旅行は恐らく後1~2話で終わる予定です

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