堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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今回のはツッコミどころが多数あると思いますが

よかったらどうぞ


奥の手は最後までとっておく

「なッ何で楓さんが此処に居るんですか!?」

 

 ネギは何故こんな所に楓が居るのか不思議で仕方なかった。それはでござるなと楓が説明しようとしたが

 

「私が携帯電話で呼んだんです。ネギ先生」

 

 楓の背中から夕映がひょっこりと顔を出したのであった。

 

「夕映さん!無事だったんですね!?」

 

 ネギは居なくなったと聞いた夕映が無事だったので一安心だった。

 

「話は我らがリーダーとネギ坊主の今の状況で大体理解したでござる。簡単に纏めるとこのか殿が悪い奴らに捕まって、そのこのか殿の魔力で何か凄い物を呼び出すつもり…こんな感じでござるか?」

 

「あっはい、そんな感じです」

 

 楓が言った事にネギは肯定する。成程成程と楓は2、3度頷くと

 

「ならば話は早い。此処は拙者に任せて、ネギ坊主は早くこのか殿の元へ急ぐでござるよ」

 

 楓が小太郎の相手をするつもりのようだ。

 

「楓さん!そんな生徒さんをこれ以上危険な目には…」

 

 ネギも自分の勝手でこれ以上生徒に危険な目にはあっては欲しくなかった。そんなネギに楓はこらこらとネギの頭を軽く小突くと

 

「拙者は大丈夫でござるよ。拙者の心配より今はこのか殿を助ける事が先決でござる」

 

 楓はニコリと微笑しながらそう言った。此処は楓を信じて先に進むしかないようだ。

 

「楓さん…お願いします!」

 

 ネギは小太郎の相手を楓に任せて先に進むことにした。

 

「あっネギ、待たんかい!」

 

 小太郎は自分を無視して先に行こうとするネギを追いかけようとしたが、楓が隠し持っていた苦無を投げて足止めをした。その隙にネギはかなり先まで走り去っていた。小太郎は舌打ちをしながら楓を睨みつける。

 

「よくもやってくれたな糸目のねーちゃん。俺女に暴力振るうのは苦手やけど、少しばかり痛い目にあってもらうで」

 

 小太郎は指を差しながら楓にそう言う。一方の楓は不敵な笑みを浮かべながら。

 

「小太郎とやら、ネギ坊主を好敵手と認めるとは中々良い目をしていると見た。しかし……」

 

 楓の気配が急に変わったのを小太郎は感じ取った。さっきまで飄々とした態度の中に研ぎ澄まされた刃のような、そんな気配だ。

 

「今は自分の主義を捨て、本気で掛かってくるといい。今はまだ拙者の方がネギ坊主よりも遥かに強いと拙者も自負してる」

 

 その楓言いよう、小太郎は楓がかなりの実力者と見た。

 

「糸目のねーちゃん、アンタ何もんや?」

 

 小太郎は改めて楓何者かを尋ねた。楓はかつてネギが山にやって来た時に見せた分身体を出現させる。

 

「甲賀中忍 長瀬楓 参る」

 

 小太郎は楓が自分よりも遥かに強いという事が分かった。しかし小太郎は嬉しかった。自分よりも強い人間がネギ以外に居るという事が。小太郎は嬉しそうに笑いながら

 

「上等や!!」

 

 狗神を召喚した。

 

 

 

 

 

 真名はスナイパーライフルで鬼達を狙撃した。真名が放った弾丸に当たった鬼達は次々と消滅していった。如何やら真名のライフルの弾丸も刹那の刀のように退魔の術式が施されているようだ。

 

「凄いアルな真名の銃、若しかして本物アルか?」

 

「フっまさか、ただのモデルガンだよ」

 

 本当は本物の銃なのだが、古菲にはエアガンだと誤魔化す真名。と今度は真名にカラスの顔の化け物が数体で真名と古菲を囲んだ。

 

「この小娘が!」

 

「だがその鉄砲なら接近戦では役には立たないだろう」

 

「今此処でくたばれ!!」

 

 カラスの化け物たちは真名に手に持っていた刀で一斉に斬りかかった。しかし真名は慌てる素振りを見せず。脚に隠し持っていていた2丁の拳銃を素早く取り出すと、カラス達に向かって撃った。

 ただ撃つだけではない。拳銃で刀を防いだりや弾いたり、至近距離で撃ち刀を折るなどの芸当も見せた。まるで踊っているかのよう。ガンカタ、拳銃を使った格闘術を真名は使用したのだ。

 

「つっ強い……無念なり!」

 

 数体で挑んだのに掠り傷さえつける事も無く倒させてしまい、無念ながら消滅していくカラス達。

 

「ふぇ~真名が強いと言うのは知ってたアルけど、此処まで強いとは知らなかったアルよ。それに私本物のお化けとか見るのは初めてアル」

 

 古菲が真名の強さに感服してると、古菲に向かって来る鬼達。

 

「おっ私を狙うアルか?良いアルよどんどん来るアル!」

 

 迫ってくる鬼達に全く動じない古菲は、呼吸を整え中国拳法の構えをする。鬼の攻撃を防ぐとすかさずカウンターを喰らわせる。

 

「馬蹄崩拳!」

 

 ただのカウンターなはずだが、数体の鬼を巻き込んで吹っ飛んでしまう。

 

「さぁもっと強い奴どんどん来るアル」

 

 古菲はまだまだやる気の様だ。古菲が鬼達の相手をしてる間に真名がマギとアスナの元に近づいた。

 

「おい真名、お前かなり強いが、もしかしてお前も魔法側の人間なのか?」

 

「その質問には後日答えるさ。それよりも神楽坂の調子が良くなさそうだが、如何したんだマギさん?」

 

 真名はアスナの状態を尋ねた。アスナは先程までゴウエンマの瘴気を吸ってしまってしまい体が動かない状態なのだ。

 

「簡単に言えば毒にやれちまったんだ」

 

「ふむそれなら」

 

 と真名は銃を入れていたのだろうギターケースから何やら緑色の液体が入った小瓶を取り出した。

 

「毒消しの薬だ。この薬なら大抵の毒を治す事が出来る。但しかなり即効性が高いからすごく苦い」

 

 マギは真名から薬の入った小瓶を渡された。マギはお礼を言うと早速アスナに飲ませた。薬を飲みほしたアスナはうえ~と下を出しながら

 

「凄い苦い~」

 

 薬の感想を正直に答えた。

 

「良薬口に苦しっていうだろ?そん位我慢しろ」

 

 とマギがアスナにそう言った。するとアスナがアレ?と不思議そうに

 

「さっきまでの気持ち悪さが嘘みたい。それにさっきまでよりも体が軽く感じられる!」

 

「そりゃよかったな。んじゃ後は自分で何とかしろ」

 

 とマギはアスナを起き上がらせた。

 

「あっマギさん」

 

「何だアスナ?」

 

「さっきは助けてアリガト」

 

 マギは頭を掻きながら

 

「大事な生徒を助けるのは当然の事だろ?」

 

「でもお礼は言っておかないとね。それだけ」

 

 それだけ言うとアスナは戦いに戻って行った。さてと…とマギは肩をゴキゴキと鳴らしながら

 

「思ったんだけどさ、何で俺がアスナを介抱してる間に俺を攻撃しなかったんだお前、結構バカなのか?」

 

 マギはアーチャーに何故無防備だった時に攻撃してこなかったのかと尋ねた。

 

「しれた事、無防備の女を攻撃するのは私の流儀に反する。一応その女を介抱する人間も私は攻撃しない。例えお前でもな」

 

「キモッ!変な所で紳士ぶるんじゃねぇよ。まぁ俺もこれ以上テメェとやってると魔力も体力も限界なんだわ」

 

「だったらそろそろ」

 

「決着を」

 

「「着ける!!」」

 

 マギ対アーチャーのファイナルラウンドが勃発した。

 

 

 

 

 

「喰らえや狗神!」

 

 小太郎は楓に向かって狗神を向かわせる。楓は手に持った巨大手裏剣を回し、狗神の攻撃を防いだ。

 

「ふむ中々…ではこれは如何でござるか?」

 

 楓は分身を小太郎に向かわせる。小太郎は楓の分身の蹴りや拳に苦無などの攻撃を避けたり防いだりした。

 

(落ち着け俺、分身の攻撃はフェイクや。痛くも痒くも無いどれが本物か見分ける事さえ出来れば…)

 

 小太郎は分身の攻撃を防いでいる間に楓本人が間合いに入ってる事に気づかなかった。そのまま一撃を許してしまう。

 

「やるなぁ糸目のねーちゃん!ねーちゃんみたいなのが中学生やってるなんてなぁ!」

 

「そういう小太郎こそなかなかでござるな。しかしまだ本気を出していないと見た。本気を出してもいいんでござるよ?」

 

「へッ女に本気なんか、出せるかよ!」

 

 小太郎の攻撃を軽く避ける楓。本気ではなくとも地面を陥没させるほどの威力だ。

 そんな楓と小太郎の攻防を近くの木の幹で夕映が見ていた。

 

(これは夢なのですか…?まるでのどかやハルナが読むような、ジュニア小説の様な事が目の前で起こっているのです。明らかに人間離れした運動能力、楓さんが見せた分身などの常識を覆すような超常現象。そして先程言っていた魔力…つまり魔法。恐らくネギ先生も、そしてマギさんも…)

 

「まぁ今のところは私の出る幕はなさそうですね」

 

 夕映は傍観を決め込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「急いでくだせえ兄貴!さっきの狗族のガキに足止めされちまったせいで思わぬタイムロスでさ!」

 

「分かってるよカモ君!少し黙ってて!!」

 

 ネギはこのかの元へと足を速める。林を抜けると巨大な池に辿り着いた。見ればこのかの姿も見える。

 

「見えた!このか姉さんの姿ですぜ!といっても如何するんですか?あの銀髪のガキはハッキリ言えば兄貴よりも強い。ただ闇雲に突っ込んでも返り討ちにあうだけですぜ!」

 

「大丈夫!あの少年を出し抜く策を今考えたから!」

 

「ほんとですかい兄貴!?」

 

「上手くいくかどうか分からないけど、練習中の遅延呪文を使ってみる!」

 

 杖に跨り一気に行くネギ。一方の千草はまだ召喚の儀式の真っ最中だった。

 

「まだですか?」

 

 銀髪の少年が尋ねるが、まだやから少し黙ってろ!と怒鳴られてしまう。と銀髪の少年が気配を感じ取って池の方を向いた。

 

「彼が来たみたいだよ」

 

「何やて!?」

 

 千草も池の方を見ると杖に乗ったネギがかなりのスピードで此方に向かっているのが見えた。

 

「クソ!さっきのガキか!しつこいで!」

 

「貴女は儀式を続けて。彼の相手は僕がする。ルビカンテ行って」

 

 ルビカンテと呼ばれたのは顔に札を張った鬼のような化け物だった。ルビカンテはこくりと頷くと翼を広げてネギに向かってきた。

 

「きやがった、兄貴構わず突撃でさ!」

 

「うん!契約執行1秒間 ネギ・スプリングフィールド 最大加速!!」

 

 ネギは自身に魔力を供給し、更に加速した。そしてそのまま突っ込んでルビカンテを貫いてしまった。ネギはスピードを緩めることなくこのかの元へ向かう。

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 吹け一陣の風 風花 風塵乱舞!!」

 

 ネギはの放った魔法は池の水をまきこんで霧状にした。水煙にまぎれて近づくつもりなのだろう。無駄な事をと銀髪の少年は呟いた。

 

「契約執行追加3秒 ネギ・スプリングフィールド!」

 

 ネギは更に自身に魔力を供給する。銀髪の少年はネギが何処からか来るのか気配で察知し手を前にかざす。しかし銀髪の少年が手をかざした所から現れたのはネギの杖だけ。

 銀髪の少年がネギの気配を次に察知したのは自分の真後ろ、灯篭に足をかけていたネギ。ネギは灯篭を思い切り蹴る。

 

「うわぁぁぁッ!!」

 

 ネギは気合と一緒に少年に向かって拳を放った。しかしネギの拳は少年の見えない障壁によって止められてしまった。

 

「結局はこの程度か…」

 

 少年は無表情だが、どこか失望の色を見せていた。

 

「ウソだろ!?兄貴の魔力で強化されたパンチを一歩も動かず障壁だけで!」

 

 カモが驚いている間に少年はネギの腕を掴み、身動きを封じる。

 

「実力差が離れているのは自分でも理解しているのに、敢えて接近戦に持ち込むとは…サウザントマスターの子供と聞いたけど結局はただの子供か。期待外れだね」

 

 このまま止めを刺してしまおう…と少年はネギに手をかざした。だがネギは慌てたり諦めた顔をしていなかった。むしろイタズラが成功して大喜びの顔だった。

 

「へへへ。引っ掛かったね」

 

 そう接近戦は少年に近づくための作戦、本命は

 

「解放 魔法の射手 戒めの風矢!!」

 

 少年の動きを封じ込める事。少年の体に拘束魔法が縛り上げる。

 

「そうか……これは遅延呪文」

 

 少年はそう理解し、カモがその通り!と叫びながら中指を上げた。

 

「水煙の中で魔法の射手をあらかじめ詠唱してたんだ!おまけに零距離の魔法発動ならどんなに強力な魔法障壁でも効果は最小になるって寸法だ!どんなもんじゃわれぇ!」

 

 ネギは落ちている自分の杖を拾い上げる。完全に形成は逆転したのだった。

 

「まさかこんな短期間で此処までの成長をなせるなんてね。認識を改めなくちゃいけない、ネギ・スプリングフィールド」

 

 少年は拘束されているのに偉く冷静だった。

 

「へっ動けない奴はそこで吠えてろってんだ!兄貴今の内にこのか姉さんを!」

 

「うん!」

 

 ネギは今の内にこのかを助け出そうとした。だがしかし

 

「このかさんが居ない!?」

 

 先程まで祭壇に寝かされていたこのかの姿が何処にも無かった。不意にカモは上を見上げてあんぐりと口を開けた。

 

「あっ兄貴アレ!」

 

 カモが指を差したそこにあったのは…

 

 

 

 

 

 ネギがこのかを助け出そうとした同じ時間に小太郎は楓によって拘束されていた。

 

「ふむ、結局本気を出さなかったでござるな小太郎。これでは勝った気がしないでござる」

 

「いでで、いや言い訳はせえへん。強かったで糸目のねーちゃん」

 

 小太郎は潔く負けを認めた。漸く終わったと思い、夕映は楓の元へ駆け付けようとした。その時だ

 

「!楓さん、アレを見て下さいです!」

 

 夕映はネギが居る祭壇の方を指差した。楓も祭壇の方を見ると其処から何本もの腕を生やした巨大な何かが現れていた。

 

 

 

 

 

 楓たちが見ていたのはマギ達からも見えていた。

 

「ちょっと刹那さん何あれ!?」

 

「なッなんだあれは!?」

 

 アスナと刹那は現れた巨大な何かに驚愕する。

 

「おいおいおい、なんだよアレ。シャレになってねえぞ」

 

 マギは余りにも巨大すぎるそれにむしろ笑いが来そうになった。

 

「ふむ、あれが千草嬢の呼び出したかった物か。いや私が想像してたよりも何倍も大きいのだな」

 

 アーチャーも現れた物が自分の想像してたものよりも大きかった様でそう呟きを零した。

 

 

 

「ふふふ、此処までよう頑張りましたなぁ。けど残念、儀式はたった今終わりましたえ」

 

 現れた鬼は四本の腕に前と後ろ両面に顔があると言う。まるで鬼の神、鬼神と言った方が良いのだろう。

 

「でででデカすぎだろ!何なんだコイツは!?」

 

 カモは余りにも巨大すぎて開いた口が塞がらない。千草はこのかと一緒に巨大な鬼神の肩に乗っていた。

 

「コイツの名は『リョウメンスクナノカミ』千六百年前に討ち倒されたと言う伝説の飛騨の大鬼神や。このかお嬢様のおかげで呼び出しは大成功や…と言っても大きすぎやろ。伝承よりもでっかくてビビったわ」

 

 呼び出した千草さえもビビったリョウメンスクナノカミ、呼び出されたこの大鬼神、倒すのは無理なのではないか…否ネギはまだ諦めていなかった。

 

「今はまだ完全に呼び出されていない。だったら今此処で完全に出ちゃう前にやっつける! ラス・テル・マ・スキル・マギステル!」

 

 ネギは鬼神を倒すために呪文を詠唱し始める。詠唱をしているネギをカモが必死に止めようとする。

 

「まッ待ってくだせえ兄貴!今の今迄兄貴は魔法を使いまくってるんですよ!?あんなバケモン倒すために魔法をこれ以上使っちまったら兄貴が倒れてしまいます!」

 

 カモの必死の呼びかけにネギは聞く耳を持たなかった。更に詠唱を続けるネギ。

 

「来れ雷精風の精! 雷を纏いて吹きすさべ南洋の嵐」

 

 ネギは雷の暴風をもう一度使用するつもりだ。千草もネギの周りにあふれ出る魔力に驚きを隠せなかった。

 

「雷の暴風!!」

 

 ネギの放った雷の暴風は真っ直ぐ鬼神に向かって行き直撃した。しかし…当たりはしたものの掠り傷一つも付いていなかった。ほぼ空っぽの魔力で放った雷の暴風は何時もの半分以下の威力しかなったのだ。

 

「アハハ!それの程度なのかえ坊や?痛くも痒くもないわ!サウザントマスターの息子と言ってもただのガキやったなぁ!」

 

 千草は高笑いをしながら夜空に手を伸ばした。

 

「このかお嬢様の力でこの鬼神はウチの思いのままや!この力があれば東に巣食う西洋魔術師に!皆の(・・)恨みを晴らす事が出来る!」

 

 千草の五月蝿すぎるほどの高笑いが池に響いた。ネギは何も言い返せず、何も出来なかった。呼吸が荒く、もう一歩も動けない状態だった。

 

「こっこのかさん……!」

 

 ネギはこのかに向かって手を伸ばそうとしたが、体のバランスを崩して膝から崩れ落ちてしまった。さらに最悪な事に

 

「善戦はしたようだけど…此処までの様だね」

 

 いつの間にか拘束魔法を破った少年が1歩づつネギに近づいてきた。魔力を使い果たしたネギには成す術も無かった。まさに絶体絶命だ。

 

(く…くそ!此処までなのかよ!)

 

 カモはもう何も出来ずにここで終わるのかと諦めかけていたが、カモは本山にてこのかを追っている道中に、マギがカモに言った事を思い出していた。

 

 ―カモお前はネギと一緒に居てくれ。お前はこんな中で作戦を考えるのは恐らく1番だ。もしもネギがピンチに陥ったら、お前の力でネギを助けてやってくれ。頼んだぞ―

 

(そうだ!俺は大兄貴から兄貴の事を任されたんだ。何かないか!?このピンチを打開できる何かは!)

 

 カモは瞬時に策を考え始め、ある一つの策を思いついた。それはパクティオーカードのまだ使っていない機能がカギを握っているのだ。

 

 

 

 

 

 マギ達の方からもリョウメンスクノカミの姿が完全に見え始めてきた。

 

「ネギの奴、若しかしなくても失敗しちゃったの!?」

 

「分かりません、でも助けに行かなければ!」

 

 アスナと刹那はネギ元に行きたかったが、鬼達が邪魔をして思う様に動けなかった。

 

「センパイ何処に行くんですか~?」

 

 月詠は刹那を逃すつもりなど毛頭も無く、刹那に迫ろうとしたが、真名が放った弾丸が行く手を阻む。

 

「行け刹那、神楽坂!ネギ先生の元へ!」

 

「此処は私達に任せるアル!」

 

 この場は真名と古菲が引き受けるようだ。

 

「もぉ~ウチの邪魔をせんといてくれますぅ?それに神鳴流に銃は効きまへんえ?」

 

「知ってるよ、お前を倒すんじゃない。足止めするだけさ」

 

 月詠の二刀流に対して真名は二丁拳銃で応じる。刹那は真名の実力を知っている。此処は任せても大丈夫だろう。

 

「すまない真名、此処は任せた!行きましょう明日菜さん」

 

「うッうん!マギさんにエヴァちゃん、茶々丸さんは!?」

 

 アスナはマギ達は大丈夫か尋ねるが

 

「俺は行けそうにない!だからお前らだけで行ってくれ!ネギを頼んだ」

 

 マギはやはりアーチャーの相手でネギの所には行けそうになかった。エヴァンジェリンは鬼達をあらかた倒したようで、マギの援護に徹している。茶々丸もそうだ。

 やはりネギの元へ行けるのはアスナと刹那だけの様だ。全速力で走る2人、しかし走っただけで間に合うのは到底無理だ。しかし走らなければネギの元へはいけない。とその時

 

『姐さんに刹那の姉さん、そっちは大丈夫か!?』

 

 行き成りカモの声が直接頭の中から聞こえてきた。アスナは頭にコピーのカードを当てながら

 

「如何したのよカモ!?」

 

『力を貸して下せえ!こっちはかなりピンチでさ!』

 

「今そっちに向かってるわよ!でも間に合いそうにない!」

 

『分かってます!今から姐さんたちを呼ぶんで!』

 

「呼ぶ!?」

 

 カモが言った呼ぶと言う意味は何なのだろうか?

 

 

 

 

 

「殺しはしないよ。けど自ら向かって来たということは、それ相応のリスクを負う覚悟があるということ…見れば体力も魔力も限界のようだね。よく頑張ったよネギ君」

 

 少年はネギに止めを刺そうとする。

 

「兄貴今ですぜ!姐さんたちを」

 

「うん」

 

 ネギはカモの合図でパクティオーカードを投げる。

 

「召喚! ネギの従者 神楽坂明日菜 桜咲刹那!」

 

 ネギが呪文を唱えると、魔方陣が展開されそこからアスナと刹那が現れた。

 

「うわ、カモの言った通り本当に直ぐに来れた!」

 

 パクティオーカードの使った事の無かった機能、それは遠くに居る従者を自分の元へ来させると言う機能である。

 

「ネギ!もうアンタボロボロじゃない!」

 

「すみませんアスナさん刹那さん、僕、このかさんを…」

 

「何も言わなくてもいいわよネギ!後はアタシ達が何とかするから!」

 

 そう言ってアスナは鬼神に向き合う。がすぐさま滝のような汗を流しながら

 

「ネギにああいったけど、これ何とかなるのかなぁ…」

 

「何とかなるんじゃなくて、何とかするんですよ姐さん!」

 

 新たにアスナと刹那が現れても少年は全く動じず

 

「…それで如何にかなると思ったの?だとしたら無駄な足掻きだよ。ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト 小さき王 八つ足の蜘蛛 邪眼の主よ」

 

 カモは少年の詠唱を聞いて慌てだす。

 

「こッコイツは西洋魔法の呪文始動キー!?あのガキ西洋魔術師だったのか!しかもこの魔法はヤバい姐さん急いで奴の詠唱を止めてくれ!」

 

「え?え?如何いう事!?」

 

「駄目です間に合いません!」

 

 カモがアスナに少年の詠唱を止めるように叫んだがもう間に合わなかった。

 

「時を奪う 毒の吐息を 石の息吹!」

 

 少年が放った魔法は本山にて詠春を石にしてしまった石化の魔法だ。石化の魔法の煙が祭壇を包み込む。

 

「……しまった。威力があり過ぎた」

 

 少年も自分が思っていた以上の威力だったようだ。これならあの3人と1匹は確実に石になっただろうとそう思った。だが実際は

 

「なッ何とか逃げれました。敵はまだ気づいていない様です」

 

 間一髪の所で石化の魔法から逃れる事に成功したネギたち。

 

「まっまさに危機一髪って感じね。おかげで寿命が縮んだわよ。ネギアンタは無事?」

 

「はっはい、大丈夫です」

 

 ネギは大丈夫だと言ったが、呼吸は荒く体はボロボロであった。

 

「ちょっとネギ、大丈夫ってアンタボロボロじゃない!…!ネギその手!」

 

 アスナはネギの手が少しづつ石に変わっていくのを見た。

 

「大丈夫ですよ、少し掠っただけです」

 

 ネギはアスナと刹那を心配させないように笑いながら大丈夫だと言い切った。しかし掠っただけなのに石になるスピードが速い。このままではネギが石になってしまうのは時間の問題だ。

 

(…此処まで来たらもう…仕方がない…か)

 

 刹那はある覚悟を決めた。それはネギとアスナに本当の自分(・・・・・)の姿を見せるという事…

 

「ネギ先生と明日菜さんは今すぐ逃げてください。お嬢様は私が救い出します」

 

「ちょっちょっと待ってよ刹那さん!このかを助け出すってこのかはあの大きな鬼の肩に居るのよ!?ネギみたいに杖で空を飛ばなきゃ無理よ!」

 

 そう普通の人間が空を飛んでこのかの元に行くと言うのは到底無理だ。だが刹那は大丈夫ですよと無理して笑いながら

 

「私、杖など無くても飛べるんです。だって……私は普通の人間じゃないから」

 

「え?如何いう意味ですか刹那さん」

 

 ネギは刹那が言った普通の人間ではないと言う意味が今一分からなかった。

 

「先生明日菜さん、私お嬢様にでさえも秘密にしていた事があるんです。お二人には私の秘密を教えます…ですが、この姿を見せてしまえば私は皆さんにお別れをしなくちゃいけません。でも今なら貴方達になら」

 

 と刹那がグッと力を込めた次の瞬間バサァ…!と刹那の背中に白く大きな羽が生えた。マギの黒き翼のような魔力で出来た羽ではなく、本物の羽である。

 

「これが私の本当の姿。あの鬼達と同じ化け物です」

 

 刹那は悲しそうな笑みを浮かべていた。

 

「でも誤解しないでください!お嬢様を守りたいと言う気持ちに嘘偽りは有りません…ただ私のこの醜い姿をお嬢様に見られるのが怖かった…宮崎さんの様に自分の気持ちを打ち明ける事の出来ない弱い女なんです!」

 

 刹那は今迄自分がため込んでいた気持ちを今此処で吐き捨てるかのように叫んだ。刹那の叫びは悲痛な叫びなのかもしれない。しかし…

 

「ふぅ~んへぇ~」

 

 アスナは刹那の言っていた事をちゃんと聞かずに刹那の羽が本物なのかペタペタと触っていた。

 

「あッあの、明日菜さん?」

 

 刹那はアスナがやっていることが理解できなかった。そして触り終えたアスナは黙って刹那の背中を思い切り叩いた。パァンッ!という良い音が刹那の背中から響いた。

 刹那は軽く悲鳴を上げながら何するんですか!?と涙目でアスナに問い詰めると

 

「何が醜いよ刹那さん、背中から翼が生えて来るなんてカッコイイじゃない」

 

 と笑いながら刹那にそう言った。それにねと話を続けるアスナ

 

「私もこのかの親友やってるけどね、あの子が刹那さんの事をそんな簡単に嫌いになるわけないじゃない。このかと刹那さんは小さい頃からの幼馴染なんでしょ?ならもっとこのかの事を信じてあげなさいよ。刹那さんはまじめ過ぎなのよ。全くバカなんだからアタシは刹那さんの友達なんだから刹那さんを信じるわよ」

 

「そうですよ刹那さん。僕だって刹那さんの翼醜いと思わないし、寧ろカッコイイと思います!それに此処に居ないお兄ちゃんだって『翼が生えてても刹那は俺の大切な生徒の1人だ』って言ってくれるはずですよ」

 

「ネギ先生…明日菜さん…私の事を…」

 

 刹那はネギとアスナが自分の醜いと思っていた翼を見せても自分の事を友と言ってくれた自分を大切な存在だと言ってくれたそれだけで涙が溢れそうになった。

 

「行って刹那さん、此処はアタシとネギで何とかやるから。行くわよネギ!」

 

「ハイ!」

 

 自分の背中を押してくれたことに、刹那は一粒だけ涙を零した。泣くのはよそう、泣くならお嬢様を助け出してからだと刹那は目元をぬぐいながらも大きく羽ばたいた。

 

「ネギ先生…このちゃんのために頑張ってくれてありがとうございます」

 

 それだけ言って刹那はこのかの元へ羽ばたいた。

 

「無事だったんだね…だけども行かせないよ」

 

 少年は空を飛んでいる刹那に向けて詠唱を始めようとしたが、ネギの魔法の矢がそれを妨害した。

 

「ネギ、手は大丈夫なの?」

 

「はい。今のところは」

 

 と言っても石化がもう肘まで侵食していた。早く目の前の少年を如何にかしないとネギまでも石になってしまう。

 

「此処からどうしようカモ君」

 

「そうですね、もう策という策は使い果たしましたし、ここからどうしますか……」

 

 もう策が思いつかなかった。本当に此処から如何するのか途方に暮れていたその時

 

『坊や、おい坊や聞こえるか?』

 

 行き成りエヴァンジェリンの声が頭の中で響きだした。

 

「エヴァンジェリンさん!?何でエヴァンジェリンさんの声が行き成り!?」

 

『そんな事は今は如何でもいい。今そちらに向かっている。あと一分…いや一分半だけ持ち堪えてみろ。私が全て終わらせてやる』

 

 如何やらエヴァンジェリンが此処に来てくれると言うのだ。エヴァンジェリンが来てくれるならまさに百人力だしかし気になる点が一つ

 

「エヴァンジェリンさん、お兄ちゃんは如何したんですか?エヴァンジェリンさんはお兄ちゃんと一緒に居るはずじゃ?」

 

 ネギの疑問ににあぁその事だがとエヴァンジェリンは口を濁しながら

 

『マギは私に先に行けと言っていた。あの傭兵との戦いがまだあると言うのもそうだが、なんでも奥の手(・・・)を使うから危ないと…』

 

 

 

 

 

 時は数分程遡る。マギ達は鬼をあらかた倒し、残りはオヤビン鬼と子分の鬼それと狐のお面を付けた女にカラスとその他数名といった所だ。ゴウエンマは暴れるだけ暴れているようなものだった。

 マギは未だ何も動きを見せないリョウメンスクナノカミにマギ何処か嫌な感じがしてならない。

 

「おいエヴァ、お前茶々丸と一緒にネギの所に行ってくれないか?何か嫌な感じがしてならない」

 

「いいが大丈夫なのか?あの傭兵に一人だけで勝てるのか?」

 

 エヴァンジェリンはシネマ村でマギがボロボロになって負けてしまったのを見て本当に一人で大丈夫なのかと不安だったが、マギはサムズアップをしながら

 

「あのクソ傭兵なんか俺一人で大丈夫だ…実はなお前に内緒だったんだが奥の手を用意してんだ。だから心配しないで早く行け」

 

「……信じていいのか?」

 

「だから大丈夫だっての。お前意外と心配性なのな」

 

 マギがおどけながらそう言うのを見ながらエヴァンジェリンは

 

「そんな態度を見せるのなら大丈夫なんだろうな、行くぞ茶々丸」

 

「はいマスター」

 

 エヴァンジェリンはマギを信じてネギの方へ向かう事にした。

 

「死ぬなよ…マギ」

 

 それだけ言ってネギの元へ行ったエヴァンジェリン。

 

「良いのか彼女を向かわせても?闇の福音となら私を倒せたかもしれないのに」

 

 アーチャーの言った事にハン!と鼻で笑うマギ

 

「言ったろ、俺には奥の手があるって。その奥の手でテメェをブッ飛ばしてやる」

 

「それは楽しみだな。だったらその奥の手とやらを見せてもらおうか」

 

 あぁ見せてやるよとマギはアーチャーの誘いに敢えて乗った。そして息を吸うと

 

「真名!古菲!そしてその他の鬼共!!怪我したくなかったり死にたくない奴は俺に近づくな!!」

 

 それだけ言うとマギは深く深呼吸をし

 

「…!ハァァァァァ!!」

 

 全神経を自分の腕に集中する。マギの手の平に火の魔力と闇の魔力が集まり始めた。

 

「ほうあの闇の業火とやらをまた放つのか?無駄だ、貴様の魔法は私には効かないぞ。それが奥の手と言うなら全くの御笑い種だな」

 

 アーチャーの言った事に何勘違いしてんだお前は…とマギは馬鹿にするかのように笑いながら

 

「奥の手って言うのはこれからだ。この魔力をっウォォォォォォッ!!」

 

 マギは叫びながら拳に力を入れながら

 

「とり込むッ!!」

 

 魔力の塊を握りつぶした(・・・・・・)。アーチャーはマギが行った行動に

 

「きっ貴様!何をやっているんだ!?貴様自分がやった事が何なのか知らないのか!?」

 

 初めて動揺を見せた。

 

「如何した何ビビってんだお前?待ってろよこの新必殺技でテメェをッ!!?」

 

 マギは魔力が体中に廻ってくることに違和感を覚えそして…

 

「ぐぐぐ…グアァァァァァッ!!」

 

 想像を絶するような激痛が体中を巡り、マギは思わずのた打ち回った。

 体中の血がまるでぐつぐつと沸騰しているような感じがした。心臓が早鐘を打ち、今にも破裂しそうだった。

 

「げッげほぉッ!!」

 

 さらには血が混じった吐瀉物を吐き出し始めた。それでも激痛は収まらず、マギが絶叫しながらのたうちまわり続ける。

 

「ちょマギさん大丈夫アルか!?」

 

「マギさん…!」

 

 古菲と真名はマギを助け出そうとしたが、マギに近づくなと言われており近づいていいのか分からなかった。終いには

 

「ぐぎぎ……がぁぁぁぁぁッ!!?」

 

 突如謎の炎がマギの上半身を包み込んだ。マギの上半身の衣服が燃え尽きていく。このままではマギの体は炭化してしまうだろう

 

「この死に急ぎ野郎が!そんなに死にたいなら今此処で殺してやる!」

 

 口調が荒くなったアーチャーが長剣を持って、未だに炎に包まれているマギに接近して長剣を振り下ろそうとしたその時

 

 

 

 ガシッ!

 

 

 

 炎に包まれていたマギがアーチャーの長剣を掴んだ。

 

「な…に…」

 

 アーチャーは信じられないと言った声を出した。そして長剣を掴んでいたマギはと言うと

 

「あっあぶねー死ぬかと思ったわ。突然痛くなるわ、炎が出てくるはビックリしたし」

 

 マギを包んでいた炎が消えるとマギの姿が一変していた。元々赤かった髪の色がまるで紅蓮の炎の様に赤くなっており、髪が地面に着きそうなほど伸びていた。さらに肌も真っ黒になっておりまるで漆黒の闇の様だ。

 

「ちょ!マギさんすっごく変身してるアルよ!」

 

「え…?うぉぉぉ!何じゃこりゃ!?」

 

 古菲に言われてマギは自分の体の色や髪の毛を見て吃驚仰天していた。

 

「ばっ馬鹿な、信じられん」

 

 アーチャーはマギの変身を見て信じられないと言った様子だった。さらに信じられない事にマギが掴んでいた長剣がマギが掴んでいる所から解け始めていたのだ。

 

(なッこの男、剣を溶かすほどの高熱を発しているのか!?)

 

 アーチャーは使えなくなった長剣を手放すと何時もの黒と白の短剣を具現化した。

 

「しかし、この奥の手が上手くいくとは思わなかったぜ。それに変身したおかげが体中から力がみなぎって来るぜ」

 

 マギはそう言いながら拳を開いたり閉じたりしていた。これは燃えたら困ると、仕込み杖は遠くに放り投げた。

 

「んじゃ始めよう…」

 

 ぜと言おうとしたが、ゴウエンマが雄たけびを上げながらマギに向かってきた。のた打ち回ったり血反吐を吐いているの見てもう弱っているのと勘違いしたのだろう。殺すのなら今だと思ったのだろう。

 

 マギはやれやれだぜ…と呟きながら

 

「せっかくセリフを決めようとしたのに…邪魔すんじゃねぇッ!!」

 

 マギはゴウエンマに向かって巨大な炎の魔力の波動を放った。

 

「ぐッグォォォォォォ…!」

 

 ゴウエンマは炎の波動をもろに直撃し、断末魔を上げながら塵となって消滅した。あれほど大暴れしていたゴウエンマを一撃で消滅させてしまった事に呆然とする真名たち。

 

「ふう…やっぱ思ってた以上に強いけど使い勝手が難しいな。こういうのって時間制限がありそうだし…さっさと始めようぜクソ傭兵。ファイナルラウンドをさ」

 

 構えながらマギは不敵な笑みを浮かべていたのだった。

 

 

 

 

 

 


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