堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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このかを救出せよ

「キリキリヴァジュラウーンハッタ」

 

 千草の詠唱が終わると、水面の光否魔法陣が更に光だし魔法陣から

 

「む?何や出番かいな?」

 

「ふぅ~最近の人間は化け物づかいが荒いったらありゃしねぇ」

 

「んだんだ」

 

 次々と鬼に狐の仮面をかぶった者、カラスの顔の者に異形の化け物が次々と魔法陣から出て来た。その数は数匹数十匹とドンドンと増えてきており遂にはマギ達を取り囲むほどの化け物の軍隊が現れた。

 

「ちょッちょっとこんなのアリ!?」

 

 アスナは自分達を取り囲む化け物たちを見て慌てふためく。

 

「このか姉さんの魔力を使って手当たり次第に召喚しやがった」

 

「軽く100体以上は居るよこれは…」

 

 ネギは化け物たちをおおよそ数えてそう答えた。ネギの100体と言う言葉にエヴァンジェリンはフンと鼻で笑いながら指の関節をポキポキと鳴らしながら

 

「たった100匹か、この程度私一人でも十分だな」

 

 余裕そうな態度を取っていたが、次の瞬間何か嫌な気配をマギ達は感じ取った。

 

『ぎゃぁぁぁぁ!』

 

 何体かの鬼が新たに出て来た鬼に吹きとばされてしまった。

 

「おッオヤビンあれって!」

 

「あぁ、ワイらを呼び出した人間は余計なモンも呼び出したようやな」

 

 鎧を付けた鬼が慌てながら、他の鬼たちよりも大きくて筋肉質なオヤビンと呼ばれた鬼は気に入らなそうに、吐き捨てるように言った。

 新たに出て来た鬼は、オヤビン鬼よりも大きく、長くて太い尻尾はまるで鬼の金棒の様。そして首には数珠が巻いてあった。

 刹那は新たに出て来た鬼に見覚えがあるのか、ひどく動揺しており瞳がかなり揺れていた。

 

「ゴっゴウエンマだと!?千草め、このかお嬢様の魔力でなんてものを召喚したんだ!」

 

「刹那さん、ゴウエンマってそんなにヤバい鬼なの?」

 

 刹那の動揺ぶりにアスナは、それほど危険な鬼なのかを尋ねる。

 

「ゴウエンマ、ミフチと同じく言葉は喋れませんがかなり知力は高く、他の鬼を従うほどの力を持ち合わせています。しかし力はミフチの何倍あり、おそらくですが私一人で戦ったら勝つ見込みは粗ゼロです」

 

「剣の達人の刹那さんが勝てないってどれくらい強いんですか…」

 

「あれぐらいの肉達磨だったら私一人でも十分だぞ」

 

 ネギは戦慄を覚え、エヴァンジェリンは未だ余裕そうだ。しかし次の瞬間エヴァンジェリンは顔を顰め、鼻を摘まんだ。

 

「なんだこの気持ち悪い匂いは、吐きそうだ」

 

 エヴァンジェリンが言った事に刹那は気を付けてください!とマギ達に言った。

 

「ゴウエンマクラスの鬼になると瘴気を纏っています。人間が瘴気なんてものを長時間吸い続けたら恐らく、いや確実に死にます」

 

「ちょ!それはもっと早く言ってほしいわよ刹那さん!」

 

 アスナは慌てて口を押えた。と言っても押さえただけで瘴気を吸うことは無いとは言い切れない。千草は慌てふためく光景を眺めて愉快そうに笑っていた。

 

「っとこんな所にずっと居たらウチも瘴気にやられてしまうえ。お嬢様を連れて早く祭壇に向かうとしますか」

 

 千草はこのかを連れて祭壇なる場所に向かおうとした。アーチャーは千草嬢と千草を呼び止めて

 

「私は此処に残らせてもらう。マギ・スプリングフィールドを討つ絶好の機会だからね」

 

 そう言いながらアーチャーは又黒と白の短剣を具現化した。全く物好きなもんやなと千草は呟きながら

 

「分かったえ、それじゃあウチは先に行かせてもらいますわー。いくで新入り」

 

 千草の呼びかけに銀髪の少年はこくりと頷いた。そしてこのかを連れて逃げ出す。あぁそれとと何かを思い出したのか又マギ達の方を向きながら

 

「一応まだガキやし、殺さんよーにだけ(・・)は言っておくえ…まぁそっちの大きい鬼はウチでも制御が難しいんや。精々やられんようにきぃつけぇな。ほなさいなら」

 

 そう言い残して千草は今度こそこのかを連れて祭壇に向かって行った。そしてジリジリとマギ達に近づいて来る鬼たち。

 

「全く久々に呼ばれたと思ったら、相手はおぼこい坊ちゃんや嬢ちゃんだけかいな。一人だけ活きのいいアンちゃんが居るけど物足りんなぁ」

 

「まぁ悪いが嬢ちゃん達、呼ばれたからには手加減できないのが鬼の性分何でな、精々死なんよう気張れや。まぁあの図体がデカい鬼にやられてもワイらを恨まんといてな」

 

 化け物たちやオヤビンの鬼がマギ達を品定めするようにそう言う。アスナは流石に100匹以上の化け物に囲まれたら、体が恐怖で震えてしまう。

 

「せッ刹那さん、アタシ流石にこの数は…」

 

「明日菜さん落ち着いてください、恐怖は体を鈍らせてしまいます」

 

 震えているアスナに刹那が落ち着くように言った。

 

「ネギ、とりあえず時間が欲しい。障壁を張れるか?」

 

「うん、お兄ちゃん」

 

 ネギはマギに言われた通りに障壁を張る事にした。

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 逆巻け春の嵐 我らに風の加護を 風花旋風 風障壁!」

 

 ネギが詠唱を唱え終えると、マギ達を巨大な竜巻が包み込んだ。竜巻に巻き込まれ何体かの化け物が吹き飛ばされる。

 

「こッこれって!?」

 

「風の障壁です、ですがたった数分しか…」

 

 防げないと言おうとしたその時

 

「グオォォォォォォッ!!」

 

 今迄沈黙を保っていたゴウエンマが雄たけびを上げて、竜巻に突っ込んだ。そして竜巻に自分の拳を叩きつけた。竜巻で自分の拳が切り裂かれているのにお構いなしに連続で拳を叩きつけてくる。ゴウエンマが拳を叩きつけてくるせいで竜巻の勢いがみるみると効力を失くしていくようだ。

 

「やッヤバいですぜ!アンの筋肉達磨が障壁を攻撃してるせいで、今にも障壁が消えちまいそうだ!早く作戦を立てないとヤバいですぜ!」

 

「そッそうね!でもどうすんのよ!?」

 

 カモが早急に作戦を立てようと急かすが、良い作戦が思いつかない。如何すればいいのか分からないと刹那が

 

「やはり二手に分かれる。それしかありません。私がこの鬼たち引き受けます、その間に皆さんはお嬢様を救出してください」

 

 自分一人で100体以上の鬼と戦うと言いだした。ハッキリ言って無謀な事である。

 

「ちょっと刹那さんあんなに多くの鬼と戦うなんて無理よ。それにさっきあのゴウエンナンチャラって奴自分一人じゃ倒せないって言ってたじゃない」

 

 アスナが無謀だと言っても刹那は任せてくださいと笑顔で言いながら

 

「あのような化け物を退治するのが、私の元々の仕事ですから。例えこの身がボロボロになろうとも退治してみせますよ」

 

 刹那は本当に鬼たちを1人で相手するつもりだ。若しかしたら否確実に刹那自身無事では済まない。アスナはそんなビジョンを想像してしまい

 

「だったらアタシも残る!刹那さんを1人なんかに出来ない!」

 

 アスナも残ると言いだした。アスナでは鬼たちを相手にするのは無謀だとネギは言おうとしたが

 

「いや。アスナが残るって言うのもあながち間違いじゃねぇ。アスナのハリセンは恐らくだが魔法を無力化できる道具だ。鬼たちにハリセンが当たりでもしたら」

 

「そうか。簡単に鬼たちを消滅させる事が出来るって寸法ってことっすね!」

 

 マギがアスナのハマノツルギの能力を予想し、カモがマギの答えに便乗して言った。マギはカモの言った事が思っていた事と同じでそうだと頷いた。

 

「おいネギ、アスナに魔力供給を防御面だけに節約すれば何分位もつんだ?」

 

「術式が難しいけど、長い時間で15分まで!」

 

 15分…長いようで短い時間だ。その短い時間で如何するか、マギはカモの方を向いた。

 

「カモ、何かいい考えがあるか?」

 

「現状あの銀髪のガキと無理に戦う必要はないでさ。だったらスピード勝負、相手はこのか姉さんを手に入れて余裕ぶっこいてるはずでさ。だったら姐さんと刹那の姉さんが鬼を引き付けている間に兄貴がこのか姉さんを奪取!恐らくだが、あの眼鏡の姉ちゃんはこのか姉さんの魔力でもっと強い何かを召喚するはず!このか姉さんを奪取したらみんなで一斉にボコれば何とかなります!」

 

 カモの考えた作戦は的を射ている……射ているのだが

 

「ハッキリ言うと穴だらけな作戦ですよねそれ、大丈夫なんでしょうか?」

 

「刹那の姉さんの言う通り分の悪い賭けでさ。だけど他に代案があるなら聞くが」

 

 刹那の言う通り穴があり過ぎて心配だ。しかし現状これが一番有効な策である。

 

「そう言えば大兄貴はさっきから作戦に参加してませんが如何するんでさ?」

 

「俺はあのアーチャー(クソ傭兵)がまだ俺を狙ってるからな。アイツを今此処でブッ飛ばさねえとな」

 

 だからとマギはネギの方を見ながら

 

「だからこのかはお前が助けるんだネギ、お前がこのかを助けたら俺もすぐさま駆け付けるからな」

 

「うん!」

 

 マギに頼まれ、ネギは力強く頷く。

 

「よっしゃ!作戦も決まったしついでにパクティオーも済ませちまうか刹那の姉さん!」

 

「わッ私がですが!?」

 

 カモに行き成りパクティオーするように言われて狼狽える刹那。キスをするのだ動揺するだろう。

 

「刹那の姉さんと兄貴の相性は抜群!それに姉さんの気と兄貴の魔力が合わされば怖い物なしでさ!」

 

 カモは刹那に仮契約をするように急かす。さらにゴウエンマが障壁を攻撃し続け、今にも障壁が消滅しそうだった。

 

「時間がねえ!さっさと決めてくれ姉さん!」

 

「……分かりました、ネギ先生お願いします」

 

 刹那も仮契約をしてくれるようだ。カモはすぐさま仮契約の魔方陣を書いた。

 

「ではネギ先生、行きます」

 

「はッはい!」

 

 そしてネギと刹那がキスをして仮契約が完了した。カモが出て来たカードをキャッチする。これで準備完了だ。段々と障壁が消えていく。

 

「おいネギ」

 

「何お兄ちゃん?」

 

 マギとネギが向かい合う。

 

「お前ひとりに任せるっつうのは無責任かもしれねぇが、このかを頼む」

 

「うん、僕に任せてよお兄ちゃん」

 

 そして障壁が完全になくなった。

 

「おお、やっと竜巻が無くなったようやな。待ちくたびれたで」

 

 オヤビン鬼は待ちくたびれたのかそう零した。ゴウエンマも今度こそマギ達を叩き潰そうとしたが、障壁が晴れるとそこには前方に手をかざしたネギの姿が

 

「雷の暴風!!」

 

 ネギが放った魔法は魔法通り雷が暴風となり、化け物たちやゴウエンマを吹き飛ばした。

 

「ぐぉ!あの坊ちゃん西洋魔術師かいな!?」

 

 オヤビン鬼は雷の暴風に吹きとばされない様に足を踏ん張った。

 

「よしネギ鬼どもは怯んでる、今がチャンスだ!」

 

「うん!」

 

 ネギはマギに言われ、すぐさま杖に跨る。ネギは飛ぼうとしたがおいネギとマギに呼び止められる。

 

「頼んだぞ」

 

「うん!僕に任せて」

 

 そしてネギとマギが互いに頷きあい、ネギは空へと飛び立った。

 

「オヤビン、一人逃しちまったぜ!」

 

「さっきので20体は喰われてもうた。全く西洋魔術師はわびさびっつうもんが無くてアカンな」

 

 尤も…とオヤビン鬼は雷の暴風をもろに喰らってのた打ち回ってるゴウエンマを見てざまぁみさらせとほくそ笑んだ。

 オヤビン鬼や他の鬼と化け物とゴウエンマの様な鬼には決定的な違いがある。それはオヤビン鬼達は戦いを『楽しむ』のが好きであり、ゴウエンマの様な鬼の種は相手を『殺す』事を目的とするのだ。更にゴウエンマの様な種は人間の魂を餌としている。強い人間の魂を食えば食うほど強くなるのだ。オヤビン鬼は魂を食うために人間を殺す別の種の鬼達を毛嫌いしてるのだ。

 

「まぁええ、まだワイらが相手する嬢ちゃんたちがいるんやし」

 

 とオヤビン鬼はマギ達の方を見た。

 

「落ち着いて戦えば大丈夫です明日菜さん。見た目は恐ろしいですがさほど大した敵ではありませんし、私の剣と明日菜さんのハリセンは鬼達と互角以上に戦えます」

 

「それに俺やエヴァたちが居るんだ。大船に乗ったつもりでいろって」

 

「私が助けるのは気紛れだからな、神楽坂明日菜。私はお前に蹴り飛ばされたのをまだ気にしてるんだからな」

 

「もうとっくに許してるのに……マスターはツンが強すぎですね」

 

「だれがツンだ誰が!ネジを巻くぞボケロボ!!」

 

「おいエヴァ、これから鬼合戦だと言うのに、気が抜けすぎじゃねえか?」

 

 とエヴァンジェリンとマギがワイワイと騒いでいるのを見てアスナは苦笑いを浮かべた後にフッと笑いながら

 

「何だかさっきまで怖がってたアタシがバカみたい…」

 

 そしてブンッ!とハリセンを一振りした後に中段で構えながら。

 

「上等よ、此処まで来たらやってやろうじゃない!!」

 

 アスナもやる気になったようだ。

 

「ほほぉ、ずいぶんと勇ましい嬢ちゃんや達やアンちゃんが残った様やな。こりゃ戦うのか楽しみになってきたなぁ……!」

 

 オヤビン鬼も自分の血が滾っているのを感じた。

 

「行きますよ明日菜さん!」

 

「やってやるわよ刹那さん!!」

 

「鬼との大ゲンカだ、暴れてやろうぜ」

 

 マギ達は鬼の軍団に突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方の鬼の軍団を無事脱出出来たネギ、このかを連れて行った千草を追いかけていた。

 

「お兄ちゃんやアスナさん大丈夫かな…」

 

 ネギは鬼の軍団に残してきたマギやアスナを心配していた。大丈夫ですよ兄貴!とネギと一緒に付いてきたカモはネギにそう言い聞かせる。

 

「大兄貴や姐さんがそう簡単にやられたりしませんて、それにあのエヴァンジェリンが居るんですぜ、逆に鬼達が可哀そうになってしまいますよ」

 

「うん…」

 

 カモの言った事にネギは空返事で応えたが

 

(いや、お兄ちゃんが居るんだ絶対に大丈夫!それにお兄ちゃんにこのかさんを頼むって言われたんだ、今は一刻も早くこのかさんを助け出す事だけを考えておこう)

 

 ブンブンと顔を振って不安な考えをかき消していた。とその時

 

「!兄貴下から!!」

 

「え?」

 

 カモが下から何かが来ると教えてきたがもう遅く、何かがネギの杖に直撃しネギは杖から放り出された。

 

「いッ今のは狗神!」

 

 今の攻撃は若しかしてとネギは今自分に攻撃してきた人物を分析したが、今はそんな事をしてる暇はない

 

「くッ 風よ!杖よ!!」

 

 風で自分の落下速度を遅くさせ、遠くに放り出された杖を自分の所へ引き寄せ、何とか怪我も無く着地出来た。そして自分を攻撃してきたのは誰なのかと辺りを見渡した。

 

「ようネギ、嬉しいでこんなに早くも再戦が出来るなんてなぁ。残念やがここは通行止めや!」

 

「コタロー君!」

 

 やはりネギを攻撃してきたのは小太郎だった。

 

 

 

 

 

 このかを連れていった千草は祭壇とたどり着いた。

 祭壇は大きな池にあり、祭壇の奥の方には巨大な岩が置いてあり、岩にはしめ縄が巻かれていた。まるでなにかを封印してるようだった。

 祭壇にこのかを置き、千草は此処は何なのかを説明し始める。

 

「この祭壇にはな、昔悪さをしていた大きな鬼を今の長とサウザントマスターが封印したんやえ。その大鬼を今から復活させると言うことや。本当ならウチの力じゃ制御出来んけど、このかお嬢様の力で制御可能という事や」

 

 説明を聞いていた銀髪の少年は何も言わず無表情だった。まるでさほど興味が無いように。千草は興が冷めたが今は大鬼を復活させることが最優先である。千草は恐怖で顔が青ざめているこのかに近づきニヤリと笑いながら

 

「ご無礼をお許しくださいお嬢様、せやけどお嬢様が無駄な抵抗をしなければ痛い事なんかありまへんから」

 

 優しい声でこのかに言い聞かせてはいるが、目が笑っていない。

 

「ほな始めますえ…少しばかり気持ちいいかもなぁ」

 

 千草はこのかの魔力で封印された大鬼を復活させる呪文を唱え始めた。

 

 

 

 

 

 一方の鬼と戦っているマギ達であるが、100体以上の鬼の軍隊に苦戦しているどころか今のところは善戦していた。というのもおもにアスナと刹那なのだが。

 

「うりゃ!」

 

 アスナはハマノツルギを鬼に向かって振るう。ハマノツルギが当たった鬼は消滅していく。

 

「これで10匹目!どんどん行くわよ!」

 

 アスナは向かって来る鬼や他の化け物たちをハリセンで千切っては投げ、千切っては投げと蹴散らしてきた。

 

「このガキャア!」

 

「舐めくさりやがって!!」

 

 1人が駄目なら一斉にとアスナに襲いかかる。しかしそんな大勢鬼の前に刹那が立ちふさがる。

 

「神鳴流奥義 百烈桜華斬!」

 

 刹那の目にも止まらぬ斬撃によって、鬼達は蹴散らされた。

 

「ありがとう刹那さん!」

 

「油断しないで、私が右を明日菜さんが左を」

 

「オッケー!」

 

「「やぁぁぁぁぁッ!!」」

 

 絶妙なコンビネーションで鬼達を次々と消していく光景まさに無双。

 

「何というか私達、要らないんじゃないのか?」

 

 エヴァンジェリンが鬼達を断罪の剣で斬り伏せたり、こおる大地で吹き飛ばしたりしながらそう呟いた。

 

「そう言うなよ、アスナのハリセンは鬼達を簡単に消せるアイテム。刹那の刀は元々退魔の術式が組み込まれてんだろ。俺達にはそんな物無いし、地道にやってこうぜ」

 

 そう言ったマギも仕込み杖や燃え盛る流星や悪魔の槍で鬼達を蹴散らして行った。地道にと言っているが結構な速さで鬼達を倒している。マギ達によって鬼の残りが半分ほどになってしまった。

 

「オヤビン、あんなにいた鬼どもがもう半分ぐらいですぜ。天敵の神鳴流はともかく、一発でも入ったらやられちまうハリセンを持ったあの嬢ちゃんが面倒ですぜ」

 

「ガアッハッハッ!お前じゃ文字通り太刀打ちできないってやつやな。太刀だけに!」

 

「オヤビン、上手い事を言ってるつもりっすけど全然上手くないですから!」

 

 子分の鬼に突っ込まれ、いやぁすまんのう、と豪快に笑った。ところで、とオヤビン鬼がアスナをジーッと見ながら

 

「最近のお嬢ちゃんは、すかぁとやっけ?その下に下着を着けないのが流行りなんかいな?いやぁ最近の流行っつうもんはよぉ分からんなぁ」

 

 オヤビン鬼がアスナをそう言ってアスナは思わずスカートを強く押さえた。

 

(しッしまったぁ~!さっき大慌てで着替えてたから、パンツをはいてくるのを忘れてたぁ!そう言えばさっきからアタシが倒してた鬼やら化け物がいやらしい目でアタシを見てたのって、アタシがノーパンだったから?というかそれ以前に鬼にノーパン見られちゃった)

 

 ノーパンを見られた羞恥で思考が停止してしまったアスナ。

 

「お、動きが遅うなったで。今のうちにひっ捕らえや」

 

 アスナの動きが鈍くなったのを見計らい、オヤビン鬼がアスナを捕まえるように言った。

 

「なんでアタシって何時もこんな役なのよ~!」

 

 鬼達に追いかけまわされながらもアスナは大声で叫んだ。

 

「ったく何やってるんだか……」

 

 マギは鬼達に追いかけまわされているアスナを見て呆れた溜息を吐いた。もうあらかた鬼は倒したし助太刀するか…とアスナの所に向かおうとしたが、マギの後ろに短剣を振り下ろそうとしているアーチャーの姿が

 

「まぁ物事は自分の思った通りにはかねえもんだよな!」

 

 振り向きながら仕込み杖をアーチャーの短剣に叩きつける。鍔迫り合いで火花が飛ぶ。

 

「わりーな、鬼達の方がインパクトがあってテメェの事なんてすっかり忘れちまってな」

 

「成程な貴様のそのお気楽な頭では、私に惨敗した記憶も消えているんだろうな」

 

 あぁそうだなと互いの武器をぶつけ合いながら喋るマギとアーチャー。

 

「俺、自分の都合が悪い事やめんどい事、嫌な事は直ぐに忘れるタイプだから、テメェに負けた記憶なんて綺麗さっぱり忘れちまったよ!!」

 

 マギはアーチャーの短剣を叩き折った。だからよぉとマギは仕込み杖をアーチャーに向けながら

 

「今度はテメェに惨めな負けをプレゼントしてやるぜ」

 

 マギの挑発にアーチャーは動じず、よかろうと言いながら魔力を集中して行った。

 

「ならば貴様のそのお気楽な頭に、忘れる事も出来ないほどの敗北を刻んでやろう。トレース・オン」

 

 アーチャーは今度は短剣ではなく、西洋の長剣を具現化した。長剣は神々しい光を放っていた。

 

「傭兵風情が随分派手な武器を使うんだな」

 

「ぬかせ。その軽口が叩けるのは今の内だ」

 

 

 

 

 

 

 

 場所はまた変わり、ネギは小太郎に足止めを喰らっていた。小太郎の攻撃を辛うじてかわすネギ。

 

「如何したんやネギ、何であの時みたいにマジで戦おうとせえへんのや!?」

 

 小太郎の連続攻撃を躱したり杖で防いだりと防戦一方だ。それもそのはずネギはこのか救出という大切な役目があるのだ。小太郎との戦いで無駄な魔力を消費するわけにはいかないのだ。

 

「コタロー君、そこを退いてほしい!小太郎君の先に僕達の大事な生徒のこのかさんが捕まってるんだ!早く助けないと!」

 

 ネギの必死な説得にも小太郎は興味なさそうに鼻を鳴らす。

 

「んな事に興味は無いんや。俺はな俺の周りには強い奴がいいひんかった。俺の周りには雑魚ばっかりやった。千草姉ちゃんの誘いも最初は嫌々だった。けどな今の俺は千草の姉ちゃんの誘いに乗って良かったと思っとる。お前のおかげや!」

 

 ネギを指差す小太郎。

 

「ネギ、お前に会えたんやからな!嬉しいで。俺と対等、否それ以上の奴に出会った事が何よりも嬉しいんや!今此処でお前を逃がすわけないやろ!」

 

 小太郎はネギを逃すつもりは毛頭も無いようだ。その時だ夜空に巨大な光の柱が上がった。

 

「なッ何あれ!?」

 

「この魔力のかんじ、このか姉さんの魔力だ!あの眼鏡女このか姉さんの魔力でもっと強力な何かを召喚するつもりだ!急いでくだせえ兄貴!」

 

「急ぐって言っても…!」

 

 ネギの目の前には小太郎が居る。小太郎を倒さなければ先には進めない。しかし…

 

「コタロー君の相手をしてたら時間が」

 

 タイムリミットは刻々と迫っている。

 

 

 

 

 

 

 

 アスナと刹那は苦戦を強いられていた。鬼達を半分以上を倒したのは良かったのだが、残りの鬼達は今迄みたいに簡単に倒せるほど弱くは無かった。それどころか強さは恐らく人間で言う武将クラス。そんな相手に武術の心得がないアスナは苦戦を強いられることになる。さらに

 

「グォォォォォォッ!!」

 

「ちょっとアタシばっか攻撃するなんてズルくない!?」

 

 ゴウエンマがアスナにばっか攻撃をしてくる。大木の様な腕や足の攻撃を紙一重に躱す。

 

「このしつこいのよ!!」

 

 アスナはゴウエンマの腕にハマノツルギを叩きつける。しかしミフチと同じように消滅したと思ったらすぐに再生させられてしまう。

 

「もぉ!斬っても斬っても直ぐに元に戻っちゃう!何とかならないの!?」

 

 段々やになってくるアスナ。とアスナ達も夜空に巨大な光の柱が上がったのを見た。

 

「なッなにあれ!?」

 

「あれはお嬢様の魔力!もう時間がない!っ!明日菜さん危ない!!」

 

「え?」

 

 一瞬だが気を緩めてしまい、刹那の声でハッとするが目の前にはゴウエンマの金棒のような尻尾が迫っていた。防御しようとしたが間に合わず、尻尾はアスナの体に直撃した。

 

「きゃぁぁぁッ!?」

 

 尻尾が直撃したアスナは悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、岩にぶつかった。

 

「明日菜さん大丈夫ですか!?」

 

 岩にぶつかったアスナの安否を確かめる刹那。アスナはゆっくりと起きながらアハハと乾いた笑みを浮かべながら

 

「だっ大丈夫。ネギの魔力が守ってくれてる―――」

 

 からと言おうとしたが、アスナの真上に跳び上がったゴウエンマの姿が

 

「あ……これヤバいんじゃ」

 

 言い終える前にゴウエンマがアスナに腕を振り下ろした。アスナの周りにあった岩が攻撃の余波で砕け散った。

 

「アスナ!」

 

「明日菜さん!!」

 

 マギと刹那はアスナに向かって叫んだ。岩が砕けた煙で姿が確認できない。まさか岩もろとも砕けてしまったのではとマギと刹那は駆け付けようとしたが、マギには長剣、刹那には大きな鉄棒が立ちはだかる。

 

「貴様の相手は私だ」

 

「ワイが相手や神鳴流の嬢ちゃん」

 

 アーチャーとオヤビン鬼が邪魔してしまい、アスナを助け出せる状況じゃなくなってしまった。煙が晴れるとゴウエンマの手の中にアスナの姿が。

 ぐったりとしているが、気を失っているだけだ。

 

「グルル…グォ」

 

 ゴウエンマが手に力を入れ始めた。そうすればどうなるかは一目瞭然であろう。

 

「グっググ…アァァァァ!」

 

 気を失っていたアスナは、自身が強く締め付けられる痛みで悲鳴を上げた。

 

「明日菜さん!!」

 

「あのクソ肉達磨!アスナをじわじわとなぶり殺すつもりか!?」

 

 ゴウエンマは人間を殺し魂を食う事を生きがいとする種、今まさにアスナが食われようとしていた。

 

「マズイ、あそこまで近かったら瘴気を吸い続けてしまう。早く助け出さないと!」

 

「助け出さないとって言っても傭兵野郎を俺は如何にかしねぇと!エヴァに茶々丸何とかならないか!?」

 

 マギはエヴァンジェリンと茶々丸にアスナを助けるように頼んだが

 

「助けてやりたいのはやまやまだが、少し手が離せない状況だ。お前達で何とかしてくれ!」

 

「私も同じ状況です。申し訳ありませんマギ先生」

 

 エヴァンジェリンと茶々丸も鬼達の相手をしていて、アスナを助けられる状況ではなかった。さらに

 

「やっと見つけましたえ刹那センパイ。漸く決着がつきそうですわ~」

 

「月詠、貴様!」

 

 シネマ村以降姿を消していた月詠がまた現れたのだ。マギはアーチャーの相手をし、刹那達も動けない状況さらに最悪な事に握りつぶされそうなアスナ。つまり…

 

「ヤバい状況じゃねぇか……」

 

 今はかなり最悪なパターンとなってしまっていた。しかしマギ達の近くの茂みでスナイパーライフルが様子を窺っていたのだった。

 

 

 

 

 

 ネギと小太郎の戦い、時間は刻々と迫っておりそれがネギを更に焦らせる。

 

「兄貴、アイツに構ってたら時間が無いですよ!」

 

「分かってる、分かってるよ!けど……」

 

 ネギも分かってはいるのだが、小太郎が邪魔をしており先には進めそうにない。それが余計にネギを焦らせる。

 

「コタロー君!今はそこを退いてほしい、僕はこのかさんを助けなきゃいけないんだ!その後に君の相手をしてあげるから!」

 

 ネギの必死な説得にもお断りや!とネギの説得に聞き耳を持たない小太郎。

 

「俺には分かるでネギ、お前は事が終わったら本気を出さないタイプや。俺は本気のお前と戦いたいんや!此処を通りたいんやろ?だったら俺を倒してから行けや!全力で倒せばまだ間に合うかもしれないで!如何したネギお前は男やろ!?」

 

 小太郎は断固として譲るつもりは無いようだ。頭脳派のネギと脳筋の小太郎じゃ考えが違うようだ。違うよ小太郎君、ネギは首を横に振りながら

 

「僕は一人の男である前に一人の先生なんだ。自分の事よりも生徒であるこのかさんを助ける事が、僕にとって今やらなきゃいけない事なんだ!!」

 

 ネギにも譲れない物がある。ネギの考えに何処か気に入らない所が有ったのか、小太郎は体を震わせながら

 

「戦いの場でなぁ……女の名前を読んでる奴ぁ、弱いって相場が決まってんねん!見損なったでネギィ!!」

 

 小太郎はキレながらネギに突っ込んできた。先程とはちがく、本気でネギを潰しにかかりに来た。

 

「コタロー君……もうやるしかないのか!」

 

 ネギもここまで来たらもう戦うしかないのかと仕方なく拳を構えた。

 

「兄貴!何やってるんですか!?そんな事してるよりも早くこのか姉さんを」

 

「分かってるよカモ君!でもここまで来たらもう」

 

 それだけ言ってネギも小太郎に突っ込んでいった。

 

「あぁここまで来たのに!もう誰でもいいから助けに来てくれい!!」

 

 カモは天向かってそう叫んだ。カモが叫んでも誰も助けには来てくれないとカモ自身も思った。しかし

 

「いやネギ坊主、自分の事よりも他の者を助けると言うのは聊か臭い台詞ではござるが、中々よかったでござるよ」

 

 助けが来てくれた。ネギと小太郎を遮るかの様に巨大な手裏剣が地面に刺さった。

 

「なッなんや行き成り!?」

 

 小太郎は行き成り現れた手裏剣に驚きを隠せなかったが、驚いている小太郎の目の前に何者かが現れ、小太郎の胸に掌底を食らわせて近くの木に叩きつけた。

 

「ぐほッゴホ!今のは残像と分身攻撃!?いったいどこの誰や!」

 

 小太郎は自分を攻撃したのは誰だと辺りを見渡す。ネギも先程の巨大な手裏剣にござる口調、さらにネギの事をネギ坊主と呼んでいた。若しかしなくても自分の知ってる人だ。ネギも何処に居るのかと探してみると

 

「上でござるよ。ネギ坊主」

 

 真上から声が聞こえ、見上げてみると

 

「助太刀にきたでござるよ」

 

「楓さん!」

 

 自分の生徒である長瀬楓が助太刀に来た。

 

 

 

 

 

「あぁっぐッググ……ウアァァ」

 

 ゴウエンマに捕まり、徐々に握り潰されそうになっているアスナだが、それも限界に近づいてきた。

 

「おいアスナ!気を失うな!正気を保てってかおいクソ傭兵!いい加減くたばれよ、アスナを助けられねぇじゃねえか!」

 

「そんな事私の知った事ではないな。だったら私をさっさと倒す事だな」

 

「お前そればっかだな!同じことをネチネチと!」

 

 マギはアーチャーが邪魔してきてるせいで助け出せる事が出来ず、アスナに正気を保つように呼びかけるので精一杯であった。それでもアスナが無事なのは、ネギの魔力によって守られているからだ。

 しかしその魔力がなくなればアスナは、ゴウエンマにいとも簡単に握りつぶされてしまうのだ。さらにアスナを守っている魔力だが、アスナが意識を失ってしまうと自動的に魔力が失ってしまう。だからマギはアスナに気を失うなと呼びかけていたのだ。

 だがそれも限界に近い。ゴウエンマの瘴気を間近で吸い続けたのだ。段々と意識が朦朧としてきた。

 

(やばっ何か体が動かなくなってきたし。すごく気持ち悪い。アタシここで死ぬのかな?)

 

「ごめんネギ、アタシ此処までみたい…」

 

 アスナはもう駄目だと思った。ゴウエンマも止めとばかりに手に力を入れ始めた。とその時一発の銃声が響き渡ったと思ったら

 

「グォォォォッ!?」

 

 ゴウエンマは片目を押さえながら、悶えた。悶えているためにゴウエンマの手からアスナが空へと放された。

 

「アスナ!」

 

 マギはアーチャーの隙をついてアスナに駆け付け、地面に叩きつけられる前に何とかキャッチできた。

 

「おいアスナ、大丈夫か?」

 

「ゲホゴホゲホッ!だっ大丈夫。アイツに離れたおかげか捕まってた時よりも幾分か気分はいいわ」

 

 如何やら一応は大丈夫の様だ。アスナが大丈夫だと分かると一安心のマギ。しかし今の銃声は何なのかと思っていると。

 

「なんだ、随分と苦戦してるようじゃないか刹那」

 

 新たに現れた人物に驚く刹那とアスナ。新たに現れたのは自分達のクラスメイトでもあり、褐色の肌が目立つ

 

「この助っ人料は高くつくよ」

 

「アイヤー。あのでっかい鬼達は本物アルか?随分と強そうアルねー」

 

 スナイパーライフルを持っていた龍宮真名と場違いに興奮している古菲の姿が

ネギの所には楓、マギ達の所には真名と古菲。ある意味強力な助っ人が登場したのだった。




ぶっちゃけ、中学生で銃器を扱える生徒が居たらドン引きである。
まぁ…漫画だからね

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