堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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今回は早く更新できました
というのもインフルエンザで学校を休んだからなんですけどね
まぁそんな事は如何でもいいんで
それではどうぞ


総本山 そこは天国はたまた地獄?

 傷を癒していたネギとアスナはマギ達が此方に向かっていると聞いて、総本山入り口で待ち合わせをしていた。待つ事数十分、マギ達ははやって来たのだが、マギや刹那にこのかとエヴァンジェリンと茶々丸が一緒に居るのは分かる。

 しかしネギ達が驚いたのはマギがフラフラになりながら茶々丸に肩を貸され、何とか歩いている姿と、最近魔法に関わる事になった和美の他に、魔法に関係の無いハルナや夕映までもが一緒に此方に向かって来ているのであった。

 

「お兄ちゃん大丈夫なの?」

 

 ネギはマギに何があったのか尋ねてみると、マギは苦笑いを浮かべながら

 

「俺を付け狙っていた傭兵野郎にボコボコにされてな…いや参ったぜ」

 

 と傭兵、アーチャーに惨敗したのを教えた。ネギはマギが負けた事にオロオロしていたが、命に別状はないと分かるとホッとした。一方アスナは何故和美やハルナや夕映が此処に居るのかを問い詰めると、刹那が言うに自分の荷物に小型のGPSが入っていたために此処が分かったの事だ。

 

「ちょっと朝倉分かってるの?此処まで来たら最悪命が危ないのよ?」

 

 アスナは和美に早々に立ち去るように言ったが、和美は首を横に振りながら

 

「悪いけど、私は一応ネギ先生やマギさんの秘密を守るエージェント兼マネージャーだからね。何処へでも付いていくさね。それに、その2人が危ない目にあうかもしれないのに、一人だけのうのうとしてるつもりはないね」

 

 と言うのが和美の考えだそうだ。ハルナと夕映はと言うと

 

「面白そうだから付いてきた」

 

 というのがハルナで

 

「さっきのマギさんの劇が余りに不自然だったから、その正体を掴むためです」

 

 と夕映の考えだそしてついさっきに魔法について知ったのどかは

 

「マギさんが怪我をしてるなら私がちゃんと手当をしたいです!」

 

 とマギの事を思って付いてくるつもりだ。

 3-Aの大抵は、『面白い事には首を突っ込む。一度決めた事は絶対曲げない』と言うスタンスだ。こうまでなったら意地でも梃子でも動かない。アスナは深い溜息を吐きながら和美とのどかにハルナと夕映を連れて行くことにした。

 総本山の向かう途中の竹林は何も罠や結界も無く、小太郎の姿も無かったために安心して登る事が出来た。道中夕映とハルナがシネマ村の劇でアレはおかしいやらあんなのはCGでは無理だなどと論争を行っていた。そしてマギはと言うと

 

「あぁ血が足りない。怠いな」

 

 先程の戦いで貧血気味で、未だに茶々丸に肩を借りていたのだ。

 

「あッあのマギさん大丈夫ですか?もしよかったらお茶をどうぞ」

 

 のどかが買っておいたフタを開けてないペットボトルのお茶を渡した。マギはサンキューなと言いながらお茶を飲み始める。

 

「ほんとにのどかは気が利くな。ありがとな」

 

「いッいえ此方こそ、どういたしまして…」

 

 マギにお礼を言われ、喜ぶのどか。そんなのどかをエヴァンジェリンはムッとしながらマギとのどかの間に割って入り、マギに血のように赤い薬を渡した。

 

「おいマギ、これを飲め。貧血気味に良く効く薬だ。早く飲んで血を増やせ」

 

「お?おう悪いな。態々エヴァにまで心配させちまって」

 

「しっ心配などしておらん!腑抜けたマギをこれ以上見るのがうんざりなだけだ」

 

 そう言ってエヴァンジェリンはそっぽを向いてしまった。エヴァンジェリンの態度にマギは首を傾げる。

 のどかとエヴァンジェリンが目を合わせる。のどかは何を言っていいか分からずおどおどしていたが、エヴァンジェリンはフンと鼻を鳴らしながら

 

「お前には負けぬぞ小娘が」

 

 そう言ってエヴァンジェリンは前を向いてしまった。のどかは言っている意味が分からず一瞬だが立ち止まってしまうが、直ぐに歩き出す。

 大きな門が見え、前を歩いていたハルナがはしゃいでいる。あそこが総本山の入り口だ。ハルナはお先にと言いながら一人で先に突っ走る。そんなハルナをアスナが追いかける。まだ総本山が完全に安全ではないと思っているのだ。まだ罠があるかもしれないとアスナとネギがそう思い込んでおり、総本山は如何出てくるかと入り口に入ると

 

『お帰りなさいませ、このかお嬢様』

 

 何十人もの巫女がこのかを御出迎えしてきたのだった。巫女達はネギ達やこのかに和美やのどかとハルナと夕映を奥へとお連れした。アスナはポカンとしながら刹那にどういう事か聞くと。

 

「ここは関西呪術協会の本山でもあり、このかお嬢様の御実家なのです」

 

「そうなの!?アタシ知らない――「ちなみに俺は知ってたぞ。因みに一番偉いのはこのかの親父さんだってこともな」ってマギさん知ってたならどうして教えてくれなかったの!?」

 

 アスナはマギが如何して教えてくれなかったのか問い詰めると、マギはお前は馬鹿か?と呆れていた。

 

「もし教えていたら単純なお前は真っ先に此処に向かうだろうが。もしもう本山が敵の手に落ちていたらどうするんだ?自らこのかを差し出す羽目になるだろうが」

 

「マギさんの言う通りです。今御実家に向かうのは逆に危険だと思っていたのですが、シネマ村にてその考えが裏目に出てしまった様です。ですが本山に来ればもう安心です。敵も簡単には手を出してこないでしょう」

 

 刹那の言葉に安心に肩の力を抜くアスナ。そして改めてこのかの実家でもある本山を見渡した。するとこのかがアスナの元にやって来た。

 

「アスナどう?ウチのお家おっきくて引いた?」

 

「ううん別に。いいんちょで慣れちゃった」

 

 このかの問いにアスナは気にしてないと答えた。マギ達は巫女達に連れられ長が居る大広間まで連れられた。

 大広間にて、マギ達は広間の真ん中にて正座で(マギとエヴァンジェリンは痺れるのが嫌だからという事で胡坐である)長を待っていた。巫女の一人があと少ししたら長がやってくると伝えてくれた。のどかとハルナや夕映に和美はあんまり訪れない大きな屋敷に内心興奮気味である。このかが小さい頃に此処に住んでいたと皆に説明している。このかが軽い昔話をする事数分、マギ達の目の前の階段からその長が現れた。先程長がこのかの父だと知ったネギやアスナはどんな父親なのかと想像していると、階段を降り終えた長の姿が露わになった。

 

「お待たせしました、マギ先生ネギ先生。エヴァンジェリンにアスナ君。そしてこのかのお友達の皆さん、遠路遥々ご苦労様でした」

 

 ニコリとほほ笑んだ男性は少し痩せこけていて顔色が悪い感じだった。その男性にこのかはお父様!と喜んで胸に飛び込んでいた。彼こそは関西呪術協会の長でこのかの父である近衛詠春である。

 

「しッ渋くて…素敵…!」

 

 オヤジ好きのアスナの発言に、マギとエヴァンジェリンと茶々丸以外は盛大にずっこけた。

 

「ダチの親父さんに欲情すんなよまったく…」

 

 マギは呆れたようなツッコミを入れた。閑話休題

 ネギやマギが此処へ来たのはただ詠春に会うためではない。別の任務があるからだ。ネギは大事にしまっていた学園長の親書を詠春に渡した。詠春は親書の中身を確認し、長い文と一緒に

 

『下を抑えられん様じゃまだまだじゃな婿殿。しっかりせい!』

 

 学園長のイラスト一緒に詠春への叱りの言葉が載ってあった。それを見て詠春は苦笑いを浮かべる。

 

「分かりました。東西の仲違いには私達も尽力を持って解消すると伝えてください。任務御苦労でしたネギ・スプリングフィールド君」

 

 詠春の言った事でネギは無事に任務を完了できることになった。ネギの周りにハルナや和美などがネギに労いの言葉を送った。

 

「漸く終わったか、漸く肩の荷が下りたぜ」

 

 マギはゴキゴキと肩や首を鳴らしながらそう呟く。エヴァンジェリンは良く言うとマギに呆れながら

 

「よく言うお前は坊やに親書を押し付けていたじゃないか」

 

「しゃあねぇだろ、俺なんかが持ったらボロボロになって渡せるものじゃなくなるって絶対」

 

 とマギとエヴァンジェリンが話しているのを詠春がジッと見ていた。まるで懐かしい人を見ているようなそんな目だった。

 

「如何したんスか詠春さん、俺の顔に何か付いてるんスか?」

 

 マギは詠春にそう訪ねると、詠春はいや申し訳ないとマギにそう言いながら

 

「君が彼にそっくりだったからね、思わず懐かしんでしまったんだよ」

 

 詠春の言う彼と言うのは

 

「俺とクソ親父が似ているって事ですか?」

 

 マギはナギに似ていると言われ、少し不機嫌そうに返した。詠春はナギの事をクソ親父とそう呼んだことに思わず面食らいながらも

 

「あぁ彼と私はある意味腐れ縁だからね、所で如何して私と彼が知り合いだと知っているんだい?」

 

 詠春はマギにそう問い返すと、マギはエヴァンジェリンを親指で指し

 

「エヴァに聞いたんスよ。詠春さんとクソ親父が知り合いだって事をね」

 

「成程。雰囲気も彼に似ているねマギ君は」

 

 さっきから似ていると言われて気に障ったのか西の長でもある詠春にそっぽを向いてしまった。エヴァンジェリンはそんなマギを呆れたように見ており、詠春も乾いた笑い声を上げた。

 

(やれやれ…自分の息子なのに酷い言われ様だなナギ…)

 

 詠春はいま此処に居ない、自分の悪友でもあったナギの事を少しだけ哀れんだのだった

 

 

 

 親書を渡したネギ達一行、今から山を降りたらかなり遅くなるとのこと。そこで詠春はマギ達に歓迎の宴会を開こうとそう提案する。騒ぐことが大好きな3-Aのであるハルナや和美は大賛成。しかし自分達が居なければ他の生徒や先生が心配すると思ったネギやアスナ。すると長はホテルには身代わりを向かわせるとのことで、今日は此処に泊まってもいいとのこと。お言葉に甘えて泊まる事にした。

 すぐさま歓迎の宴が開催される。高級料亭でしか食べられそうにない豪華な食事。綺麗な巫女による舞いなど普通の生活を送ってきた学生のハルナや夕映にのどかなどはどんちゃん騒ぎで大きく盛り上がる。

 エヴァンジェリンはこう言った宴が苦手なのか、独りでにちびちびと酒を飲んでおり、マギもマギで巫女の舞などに興味が無く、目の前にある料理を一品一品ゆっくりと味わって食べていた。ネギは初めての豪華な日本料理や舞いなどで目移りしていた。刹那の元に詠春がやって来た

 

「刹那君」

 

「!こっこれは長!態々わたくし目に声をかけるなど、本来ならわたくし目が長の元へ…」

 

「はは、そう畏まらないでください。この二年、このかの護衛をありがとう。私の個人的な頼みを良くここまで応えてくれましたね。苦労をかけました」

 

「もっ勿体ないお言葉!それにわたくし自らこのかお嬢様の護衛を志願したまで」

 

 刹那の言葉に君は相変わらず固いですね。と詠春は笑う。と次にネギとマギを見た。

 

「如何ですかネギ先生にマギ先生?宴の方は楽しんでますか?」

 

「はっはい!僕達のために態々宴を開いてくれてあッありがとうございます」

 

「こんな美味くて珍しい料理なんて初めてっスから、有りがたく頂いているっスよ」

 

 ネギは長に話し掛けられて緊張しながら何とか答えて、マギはちゃんと食べた物は飲み込んでから答えた。2人も宴を楽しんでいるようで詠春も満足げだ。ところでと詠春は話を変えた。

 

「話を聞きましたが、このかが初めて力を使ったそうですね?」

 

 それを聞かれ、刹那は申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「申し訳ありません。わたくしの力が足りなかったせいでお嬢様を危険な目にあわせてしまう所でした」

 

「そこまで気に病む必要はありません。このかや刹那君が無事だったらそれでいいのです。それで何が起こったのです?」

 

 詠春はこのかに何があったのか経緯を尋ねた。

 

「このかお嬢様が力をお使いになってわたくしの傷を完全に治癒してくれました」

 

 マギはそれを聞いて、シネマ村にてアーチャーに風穴をあけられた脇腹が謎の光を浴びて元に戻ったのだが、あれはこのかの力だったという事が分かった。つまり自分はこのかのおかげで助かったと言う訳だ。

 

「というか何でこのかが力を使えるようになったんスか詠春さん?」

 

 何故行き成りあれほどの力を使えたのか謎なマギ。それはおそらくと詠春と刹那がネギの方を見た。ネギは自分が詠春と刹那に見られて戸惑うと

 

「ネギ君、君との仮契約がこのかの力の発言のきっかけかな?」

 

「ええッ!何でそれを!?」

 

 自分とこのかとアスナ(あとカモが)しか知らない事を何故詠春が知っているのか、狼狽するネギ。そして狼狽するネギの肩をゆっくりとマギが掴んで離さない

 

「なぁネギ、俺そんな話聞いた事が無いんだが、どうしてだ?ん?何時の時だ?」

 

「あのお兄ちゃんとエヴァンジェリンさんが一緒に修学旅行の準備をしている時に僕とアスナさんとこのかさんで服とかを買いものした時に」

 

 何でも修学旅行の準備期間の時にこのかが偶然にアスナのパクティオーのカードを見てしまい、ネギとアスナは必死に誤魔化そうとして最終的にアスナがネギとキスしたらカードが出来ると墓穴を掘り、それを聞いたこのかがネギと仮契約をしようとしたが失敗。カードは出て来たのだがへちゃむくれなスカカードが出て来たそうだ。

 

(だからこのかの奴、時々パクティオーカードを羨ましそうに眺めてたのか)

 

 このかが時々カードをそんな目で見ていた理由が分かった。そしてこのかが仮契約をしそうになった原因も。マギがチラッと見るとカモがそそくさと宴会場を抜け出そうとしているのが見えて、マギはすかさずカモをふん捕まえた。

 

「お前なぁ、このかだけには絶対に魔法はばらしちゃいけねぇって。あれほどジーさんが忠告してたのに何平気でバレル事をやろうとしてるんだテメェは…」

 

「スッスイマセン大兄貴!その件に関してはつい出来心で!!」

 

 マギがカモを床にグリグリと押し付けていた。傍から見れば動物虐待のように見えるが、今回はカモに非がある為にネギは弁解できなかった。もし弁解したらネギにも制裁が来そうだったからだ。

 

「スイマセン詠春さん。ネギとこの馬鹿カモが余計な事をしてしまって」

 

「ごめんなさい長さん」

 

 マギとネギが詠春に頭を下げて謝った。詠春はハハいいですよ、と気にしていない様子だった。

 

「このかには普通の女の子の生活をしてもらいたいと思っていましたが、いずれにせよこうなる日が来たのかもしれません。刹那君このかには君の口から伝えてくれませんか?」

 

「はい、長の御命令と在れば」

 

 刹那は詠春に頼まれ、静かに頭を下げた。マギ達の空気が少ししみったれた空気になりそうだったがマギの背中に何かが伸し掛かってきた。

 

「えへへへ~マギさ~ん」

 

「のっのどか?」

 

「ネギくんにせっちゃ~んもっとくっついて~な~」

 

「このかさん!?」

 

「おおおおお嬢様!?如何なさったのですか!?」

 

 ネギと刹那の方でもこのかが一緒にくっつこうとしていた。のどかとこのかどちらも変に上機嫌だった。

 

「ネギにマギさん!何かこのかと本屋ちゃん変なジュース飲んじゃってそしたらおかしくなっちゃたのよ!」

 

 変なジュース?何となく嫌な予感と何故のどかとこのかがこんな調子になったのか察したマギ、そしたらこのかがマギにそのジュースなる飲み物を勧めてきた。

 

「変な味だけどおいしいえ~マギさんもどうぞ~」

 

 このかに勧められて、マギはコップを受け取る。まず匂いを嗅いでみるそして一口

 

「…やっぱ酒だコレ」

 

「お酒!?」

 

 のどかとこのかが可笑しいのは酒に酔っていたからだ。

 

「如何やら間違ってお酒を出してしまった様ですね…」

 

「…やれやれだぜ」

 

 見ればアスナと酒を飲みなれているエヴァンジェリン以外の和美にハルナに夕映も酒を飲んでおり、しかも最悪な事に悪酔い状態だった。

 

「マギさ~んえへへえへへへ」

 

「マギさん!先程のシネマ村の劇で私達に何か秘密にしてる事があるですね!?」

 

「おいのどかそんなにくっ付くな!それと夕映、お前は少し落ち着け!お前は酔うと絡み上戸なのか!?」

 

 のどかが押し倒してきて、夕映は詰め寄ってくる。その光景をハルナがいけいけのどかもっと押し倒せ!と野次を飛ばす。一方のこのかの方も

 

「あはは~せっちゃんからええ匂いがするえ~」

 

「おおおお嬢様!?」

 

 さっきよりもぎゅうっと抱きしめられ、かなり狼狽する刹那。

 

「全くマギの奴!あんな小娘じゃなくて私に構え馬鹿者が!」

 

「あ…あのマスターそんなにお酒を飲んだら体に悪いですよ」

 

「これが飲んだうちに入るかボケロボ!」

 

 と言っているエヴァンジェリンの周りには酒瓶がゴロゴロと転がっていた。エヴァンジェリンもマギに構ってもらいたくてやけ酒をしていた。

 

「何かもう…やれやれだぜ」

 

 マギの言う通り、やれやれ状況の混沌とした宴会へと早変わりしたのであった。

 

 

 

 宴会も一応問題なく終えることになり、マギとネギは一緒に風呂に入る事になったすると

 

「おや、マギ先生にネギ先生」

 

 詠春もお風呂に居たのだった。

 

「如何ですか一緒にお風呂でも」

 

 詠春に誘われ、断る理由も無く裸の付き合いをすることになった。服を脱ぎ始めると詠春にはかなりの古傷があった。

 

「凄い古傷っスね詠春さん、一体何をしたんスか?」

 

「はは、この傷は若い頃の時でね。若い時にはかなり無謀な事をしていたものです」

 

 古傷の事はそう答える詠春

 

「それにしてもお二人とも若いのに先生とは凄いものですね、このかの事はよろしくお願いしますね」

 

「はい、任せてください」

 

「一応俺達新人だけど、何とか頑張ってみるッスよ」

 

 そう和気藹々としゃべりながらマギ達は風呂に浸かった。ふぅぅと自然に声が出てしまう。すると詠春が申し訳なさそうな表情となる。

 

「この度は私の者が皆様にご迷惑をかけてしまいました」

 

「いッいえ、魔法に関係の無い生徒には何も問題は無かったので大丈夫かと」

 

 ネギの言った事に詠春は再度申し訳ありませんでした。と頭を下げた。

 

「昔から西洋魔術師を快く思わない人は少なくは無いんです。ですが今回行動に移った人間が少数で助かりました。明日には関西の選りすぐりの部下が戻ってきます。直ぐに奴らをひっ捕らえますよ」

 

 詠春がそう言うならこれで大丈夫だろう。ネギは安心するがマギは聞きたい事があった。

 

「なあ詠春さん、あの着ぐるみメガネ女は何で西洋魔術師を恨んでいるんスか?それにこのかを手に入れようとする理由は何なんスか?」

 

「着ぐるみ…天ヶ崎千草の事ですか、彼女には西洋魔術師を恨んでいまして、いや彼女の生い立ちを知ってる私としては一方的に彼女を断罪すればいいとは思えないのです」

 

「成程。でこのかを狙った理由は何なんスか?」

 

 理由…それを呟いて詠春は天井を見上げた。

 

「このかを狙う理由は、このか自身強力な魔力を持っているのです。その魔力の量は下手をしたら私や、君たちの父親でもあるサウザントマスターを凌ぐほどに」

 

「ええッ!このかさんがですか?」

 

「クソ親父を下手したら凌ぐほどの魔力ってどんだけだよ」

 

 このかの秘密を知ってマギは驚きを隠せなかった。

 

「このかの力を手に入れれば西を乗っ取り、東の魔術師を打倒せると考えたのでしょう。しかし彼女にはそんな事をしてほしくない。争いでは生まれるのは延々と続く怒りや悲しみだけです」

 

「だから詠春さんはこのかを危険な事に合わせないために、麻帆良に行かせたと言う訳ッスか」

 

 危険が無い麻帆良ですごす方が良いと言うのが詠春の考えなのだろう。賢明な判断だ。

 

「しかし、それも時間の問題です。このかにもいずれ魔法を知る事になってしまう。ネギ先生マギ先生、もしこのかが魔法に関わる事になったらその時はよろしくお願いします」

 

「大丈夫だぜ詠春さんこのかは俺達の大事な生徒だ。命に代えて守るッスよ」

 

「頑張ります」

 

 マギとネギはこのかを守ると約束した。詠春はよろしくお願いしますと微笑みながら言った。

 

「やはり彼とは性格が反対だが根は一緒という事ですね」

 

 彼と言うのはおそらくしなくてもナギの事だろう。ネギはもっと詳しく詠春から話を聞こうとしたが脱衣所が急に騒がしくなった。声からしてこのか達だ。案内を間違えたようだ。詠春は裏口から脱出しようと裏口向かって駆け出した。

 

「あぁ、何かこの後のオチが見えてきた」

 

 マギは今迄の経験でこう言ったお風呂でのトラブルでの落ちは大体読むことが出来た。ネギはお風呂の段差で転んでしまい、お風呂に置いてあった岩に突っ込んでしまった。

 

「うわぁッ!」

 

「キャッ!?」

 

 ネギと何故かアスナの悲鳴が聞こえて、岩の後ろにアスナと刹那が一緒に居て、ネギはアスナの胸を掴むと言う大胆な事をしてしまった。ネギとアスナが思考を停止している間にこのか達がお風呂の中に入ってきてしまった。そしてねぎとアスナの光景を目にしてしまう。

 

「…もう勘弁してくれよ」

 

 マギの呟きはアスナ達の悲鳴でかき消されてしまった。大浴場は先程の宴会以上の大騒ぎとなってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 総本山が見渡せるほど大きな木の枝に千草と、無表情な銀髪の少年それとバイザーを付けていて表情が掴めないアーチャーが居た。千草は苛立ち気に腕を組んでおり、気が立っていた。

 

「見ろ新入り!お前が追わんでええと放っておいたせいで易々と本山に入られてしもうた挙句に、親書も渡ってしもうた!この責任どう落とし前つけるんやえ!?」

 

 千草は興奮のあまり唾を飛び散らすほどだ。しかし銀髪の少年は表情一つ崩すことなく

 

「大丈夫ですよ。僕に任せといてください」

 

 それだけ言うと、枝から飛び降りてしまった。少年のあっさりしすぎた態度に呆気にとられてしまった千草だが今度は傭兵の方を見た。

 

「傭兵、アンタもそうや。アンタの力だったらマギ・スプリングフィールドを楽に仕留められたはず。なのに何でシネマ村で仕留めなかったんや」

 

「申し訳ない千草嬢。あの時のこのか嬢の力の発動に戸惑ってしまった。しかし今此処でマギ・スプリングフィールドを必ず仕留めてみせよう」

 

 今此処にマギ達が知らないうちにまたもや千草たちが動こうとしていた。

 

 

 

 

 

「ふぃ~」

 

 マギはタバコを吸って良さそうな場所を探して、良さそうな場所を見つけたので携帯灰皿を持って何時ものようにタバコを口に咥えて火を付けて紫煙を吸って口から吐き出した。

 

「おやマギ先生」

 

 と詠春がマギに近づいてきた。マギは如何したんスか?と尋ねると君と一緒ですよと詠春の手にはタバコの箱が握られた。如何やら目的は一緒の様だ。

 

「このかには止められているんですけどね、やはりこう言った長を務めていると心身ともに疲れてしまうものですよ」

 

 そう言って詠春もタバコを吸い始める。マギは他の人とタバコを吸うのが初めてだったなと思った。

 

「お互い苦労していますね」

 

「詠春さん程じゃないッスよ俺は、それに面倒な事になればネギとかに押し付けちまえばいいんで」

 

「それじゃあネギ先生が可哀そうじゃないかい?」

 

「冗談っスよ」

 

 ハハハとマギと詠春は笑いあう。しかし詠春は直ぐに沈んだ顔になる。如何したんスかとマギは詠春に尋ねる。

 

「いや先程はああは言いましたが、このかに危険な目にあわせると言うのは父親としてはやはり納得が出来なくて。このかに危険な目にあわせたくなかったから麻帆良に行かせたのに、なのに此処に戻ってきてた時にこのかが狙われ危険な目にあおうとした。私は父親としてこのかを守れなかったことに自分自身に怒りを覚えています!」

 

 詠春は感情を露わにして思わず、タバコを握り潰してしまった。そしてハッとする。今此処には自分だけではなくマギも居るという事を忘れていた。

 

「すみませんマギ先生。みっともない姿を見せてしまって」

 

「大丈夫っスよ。ただ…そうやって親に心配されるこのかを羨ましいと思ってしまいました」

 

「マギ先生」

 

 マギは黙ってタバコを吸い続ける。

 

「俺やネギは、今は何処に居るか分からないクソ親父のせいで自分の事は自分で決めるって生き方をしてきました。自分のレールは自分で敷いて自分で進んでいました。だけどこのかには詠春さんが敷いていたレールがあります。だけどこのかはいつかは親のレールを無視して自分のレールを敷くかもしれない。それが自分にとって吉と出るか凶と出るか分からない。生意気言うかもしれませんが、もしこのかが自分で決めた道なら敢えて見守るって言うのも一つの親がしてやれる事じゃないんスか」

 

 マギの言った事を詠春は考える。マギは今迄生きていた中で親の力を使えなく、自分で考え行動してきていた。それに後悔もあったかもしれない。でもマギは自分のレールを曲げることなく突き進んだのだ。

 ならもしこのかが自分の決めた道を進もうとしたのなら自分は止めずに見守り、支えてあげればいいのだ。例えそれが険しい道だとしても

 

「強いのですね、マギ先生」

 

「強くないッスよ、強がってるだけッス。今でもこの先不安だらけですよ」

 

 また笑いあうマギと詠春。そして又懐かしむような表情となる。

 

「マギ先生、君と話しているとナギの事をつい懐かしく感じてしまう。まるで君はナギと瓜二つだ」

 

「俺とクソ親父が瓜二つって、詠春さんから見てクソ親父ってどんな感じだったんスか?…詠春さん?」

 

 マギが詠春を見てみると詠春は辺りを忙しなく見ていた。如何したんすかと改めて尋ねる。

 

「妙です、静かすぎる…まだ消灯の時間としては早すぎます」

 

 マギも自分の時計で確認する。現在の時刻は午後の8時半を過ぎた頃だ。確かにまだ寝るにしては早すぎる。

 

「こういう事は偶にあるって事は?」

 

「ありません。いや…まさかこれは…」

 

 此れは余りにも穏やかな状況ではないという事だ。マギもタバコを直ぐに消して、辺りを警戒する。もう一度言うが不気味な程静かすぎるのだ

 

 

 

 

「流石は歴戦の戦士でもある近衛詠春、しかし気づくのが一足遅かったようだね」

 

 マギと詠春の後ろの方から聞いた事も無い声が聞こえ、バッと後ろを振り返った。其処には先程千草と一緒に居た銀髪の無表情の少年だった。

 

「ネギと同じくらいの子供…?」

 

 マギは何故こんな所にネギと同じ位の子供が居るのか分からなかったが油断はしなかった。子供から途轍もない魔力を感じるからだ。詠春は詠春で目の前の子どもを信じられないと言った様子で目を見開かせ、顔には汗が滲んでいた。

 

「きっ貴様は!まさか…!」

 

「詠春さん、奴の事を知ってるんスか?」

 

 マギの質問に詠春は答える様子は無かった。と銀髪の少年は勝手に話し始めた。

 

「君達は静かすぎると感じたかもしれないけど、此処に居た殆どの人は無力化させてもらったから。あぁ心配しなくてもいい別に命までは取ってはいない。ただ動けなくしただけだ」

 

 この静かすぎる状況はこの少年がやったの事、ネギと同じくらいの少年がそんな事を出来た事に信じられないマギ、そして…と銀髪の少年は詠春の方を見て

 

「近衛詠春、君も前戦からは引いた身ではあるが厄介なのは変わりない。だからここで大人しくしてもらおう…ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト 小さき王 八つ足の蜘蛛 邪眼の主よ」

 

「呪文の始動キー!?コイツ西洋魔術師だったのか!」

 

「!いけませんこの魔法は…マギ君すまない!!」

 

 詠春はマギに謝ると容赦のない蹴りで蹴り飛ばし、マギは床に叩きつけれた。

 

「ガッ!詠春さん何を!?」

 

 マギは行き成り蹴り飛ばされた意味が分からなかった。しかしその時

 

「時を奪う 毒の吐息を 石の息吹!」

 

 銀髪の少年の詠唱が終わり、詠春を白い煙が包み込んだ。白い煙が数秒で晴れると其処には銀髪の少年の姿は何処にも居なかった。

 

「詠春さんさっきの子供は何処にっ詠春さんそれは!」

 

 マギは詠春を見て固まってしまった。詠春の足が徐々に石のように否石になっていった。

 

「詠春さん足が!」

 

「レジストをしたのですが、間に合わなかったようですック!」

 

 詠春は脂汗を滲ませ悔しそうに歯を食いしばった。

 

「長!」

 

「長さん!」

 

 刹那とネギが走ってきた。ネギと刹那は一応無事だったようだ。

 

「!長、その足は一体!?」

 

「何があったのお兄ちゃん!?」

 

 刹那とネギはいったい何があったのか状況を知ろうとマギに状況を尋ねた。

 

「ネギ位の銀髪の少年が行き成り現れて、それで魔法を使って詠春さんがこうなっちまったんだよ」

 

「マギ君の言う通りです、平和な時間で腑抜けてしまった私が不甲斐ないばかりに、敵は本山の結界を易々と突破したようです。恐らくは本山の者達は全滅、私もあと少しで動けなくなってしまうでしょう」

 

 詠春の体はもう胸までが石へと変わっていた。

 

「マギ君ネギ君そして刹那君、君達に頼むのは私が不甲斐ないせい、ですがこのかをたのみ…ま…す」

 

 それを言い終えると、詠春は完全に石になってしまった。長である詠春がやられてしまった事で、この本山で動けるのが自分達だけある。そしてこのかが危ないという事も…

 安全だと思っていた本山が戦場に変わった瞬間であった。

 

 




今日は特に書く事も無いんで
次回もお楽しみという事でそれでは

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