堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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開けましておめでとうございます
今年も堕落先生を宜しくお願いします
それではどうぞ


激闘!シネマ村

 小太郎たちをなんとか撃退出来たネギ達一向、ネギの戦闘によるダメージは思っていたほどに大きく、アスナの提案で少しの間ネギを休ませることにした。

 

「…要するにネギ先生とマギさんは凄い魔法使いで、今回の修学旅行で大切な仕事を頼まれたんですね?」

 

「あぁ概ねそんな所だ。悪いな、今まで黙っていてな。一応秘密の事なんだ」

 

 分身マギは今迄黙っていたのどかに謝った。のどかはいいんです。と首を横に振った。

 

「そう言った秘密の事は絶対にばらしちゃいけないと言うのは分かっています。でも…マギさんが魔法使いだなんて、お話の中でしかないと思っていたので、私なんだかドキドキしちゃって」

 

 のどかは顔を赤くしながらそう言った。しかしのどかという一般人に魔法が知られてしまった。ただでさえ危ない目にあっているのに、のどかまで危険な目にあわせるわけにはいかない。

 

「しかし、このアーティファクトは凄いですぜ!使いどころによっては強力な戦力になりますぜ!」

 

「ちょっとカモ!なに何事も無いように本屋ちゃんを危険な目にあわせようとしてんのよ!?」

 

 カモがさも当たり前のようにのどかを戦力に入れようとしており、アスナがツッコむ中、あの~とのどかが恐る恐ると言った形で手を上げながら

 

「私の日記がマギさん達の役に立つのなら、私はマギさん達のお手伝いをしたいです」

 

 のどかが自ら力を貸すとそう言った。アスナはのどかの言った事に仰天し

 

「本屋ちゃん本気?アタシ達の手伝いをするっていう事は、危険なの事なのよ。さっきだって蜘蛛の化け物に本屋ちゃん殺されそうになったじゃない」

 

 アスナの言う通り、のどかは先程ミフチによって死ぬかもしれなかったのである。そんな目にあったのだったらもう関わらない様にするのが普通である。

 しかしのどかは自分の胸の前でギュッと拳を握って

 

「確かに私はさっきは怖い思いをしました。でも私の力がマギさんやネギ先生の役に立つのなら、私はマギさん達を手伝いたいです。それに…私が勇気を出して好きですって言った人が私の知らない間に傷ついているのを、黙って見ていられませんから」

 

 のどかは分身マギ達を真っ直ぐ見ながらそう言い切った。のどかも覚悟をしたのだろう。そんなのどかを見てアスナとカモは

 

(なんか以外、本屋ちゃんもっと怖がりだと思った)

 

(アレですよ姐さん、恋する乙女は強しってやつですよ)

 

「お前ら失礼だろうが」

 

 アスナとカモのひそひそ話を分身マギが聞いていて、失礼だろとツッコむ。

 

「とりあえずだ、のどかは覚悟を決めてこっち側に来るんだって言うなら俺は止めない」

 

「はッはい」

 

 分身マギに見つめられ、のどかは顔を赤らめる。だけどな…と分身マギは

 

「これだけは約束する。お前を危険な目には合わせない。教師として…いや一人の男としてお前を守る」

 

「えッ!?えと…あの…その…よろしくお願いします」

 

 分身マギにお前を守ると言われてしまい、思考回路が停止しそうになったが、お願いしますと一応言い終える事が出来た。

 と分身マギが足元から段々と消え始めた。どうやら時間が来たようである。

 

「時間切れのようだな。ネギ、アスナ後は任せた」

 

 言い終えると分身マギは元の紙に戻ってしまった。

 

「それでは私達も少し休んだら本山へと向かいましょう。幸にここから本山までそう遠くは無いです。とりあえず宮崎さんを本山に連れていきましょう。ここに置いていくわけにはいきませんから」

 

 ちびせつながそう言い終えると先程の分身マギと同じようにザザ…とぶれ始めた。

 

「どうしたの?」

 

「いッいけません!本体の方で何かがあったようで、連絡が途ぎ」

 

 ちびせつなは突然元の紙に戻ってしまった。今一状況が掴めず唖然としているネギとアスナ、カモは急いでちびせつなだった紙を拾い上げて

 

「ちびせつなを使う余裕がなくなったっていう事は、こりゃ刹那の姉さんの方でも何かあったな」

 

 それだけ聞くとネギは何も言わずに杖に跨がり、何処かへ飛んで行こうとした。

 

「ちょ!?兄貴何処行こうとしてるんですか!?」

 

「早くお兄ちゃんの所に行かないと。小太郎君がさっき言っていた事が本当だったらお兄ちゃんを狙っている傭兵がもうお兄ちゃんを襲ってるかもしれない。だから助けに行かないと」

 

「助けに行くって兄貴、さっきの戦いで殆どの魔力と体力を使っちまったじゃないですかい!それなのに今から大兄貴を助けに行くなんて死に行くもんですよ!」

 

 カモの説得を聞いてもネギはマギを助けに行くつもりだ。とその時

 

「いい加減にしなさいこの馬鹿!!」

 

 アスナが今までにない大声で叫んだ。ネギはアスナの大声を聞いて固まってしまった。アスナも自分の大声にハッとして、固まっているネギを見てゴメンと謝った後にネギの肩を掴んで

 

「いいネギ?アンタがマギさんが心配なのは分かるわ。けどねアンタはさっきの戦いでボロボロじゃない。そんなアンタがマギさんを助けようとしても足手まといになっちゃうわよ」

 

 此処まで言ってもネギはまだ納得できない様子だ。アスナは溜息を吐きながらネギの頭に手を乗せた。

 

「ねぇネギ、アンタがマギさんを大切に思っている事はアタシも分かってるつもりよ。だったらマギさんの事を信じてあげなさい。アンタは誰かを頼るのもそうだけど、誰かを信じる事も大切よ。大丈夫よマギさんはアンタより何倍もアタシなんかよりも何百倍も強いんだから、だから何も心配はないわよ」

 

 アスナの言った事に漸く納得したのか、ネギは杖から降りてそのまま倒れてしまった。アスナとカモがネギに近づくと、どうやら気絶したようだ。

 

(まったくもぉ、こんなにボロボロになっても無茶しようとするんだから…ネギは本当にマギさんが大好きなのね)

 

 アスナは気絶してしまったネギの頭を自分の膝に乗せて膝枕をしてあげた。

 

「姐さん、さっきは大兄貴は何も心配ないって仰ってましたが、本当に大丈夫なんですかい?」

 

 カモが本当に大丈夫なのかと尋ねるとアスナはさっきとは違う弱々しい表情になった。

 

「ごめんカモ。アタシネギにあんな偉そうな事言ったけど、本当はマギさんが心配」

 

 アスナはそう言いながら頭を押さえた。最近起こるようになった変な頭痛である。アスナはこの変な頭痛が起こった事に不吉な事が起こるのではないかと気が気ではないアスナであった。

 

 

 

 

 場所は変わりマギの本体は刹那とこのかにエヴァンジェリンに茶々丸、そして少し距離が離れてる夕映とハルナが走っていた。

 

「せッせっちゃん何処行くん?速いよー」

 

「すいませんこのかお嬢様、もうしばらくの辛抱です」

 

 このかは刹那に手を引っ張られる形で走っていた。もともと運動が得意ではないこのかは刹那の走るスピードに引っ張られる形で辛そうだった。主であるこのかに無理をさせてしまい、申し訳ないように謝る刹那。夕映とハルナは行き成り走り出したことに文句を垂れながらも何とか付いて来ている形である。

 と刹那とこのかに向かって何か光るものが飛んできた。刹那はこのかに気づかれない様に光る物を全て捕らえた。それは杭の様な手裏剣だった。関西の過激派が白昼堂々とこのかに襲い掛かってきたのだ。

 

「おい刹那どうするよ?このかを狙っている奴がこんな真昼間に襲ってくるなんてヤバくないか?」

 

「そうですね、とりあえずは何処か賑やかな場所に入って人混みの中に紛れば襲ってくる可能性は薄いでしょう」

 

 マギと刹那はとりあえずは何処か賑やかな場所で敵をやり過ごす事にした。

 

「ところでエヴァは俺達と一緒に来るのか?せっかくの修学旅行が台無しになっちまうぞ?」

 

 マギはそうエヴァンジェリンに尋ねた。エヴァンジェリンは今回の事には首を突っ込まないと自分でそう言っていた。しかしエヴァンジェリンはマギと一緒に走っている。エヴァンジェリンはフンと鼻で笑いながら

 

「ここまで来たら仕方ないが一緒に居てやるさ、このままだと修学旅行が中止なってしまったらたまらんからな…そッそれにマギが傷つくのは嫌だからな…」

 

「私はマスターと一緒でマギ先生と一緒に居ます」

 

 エヴァンジェリンと茶々丸はそうマギに言った。マギはエヴァンジェリンにありがとうなと笑いながらエヴァンジェリンの頭を撫でてあげた。エヴァンジェリンは顔を赤くしながらも嬉しそうに微笑んだ。

 とマギ達の目の前に大きなテーマパークのような物が見えてきた。

 

「あれ此処ってシネマ村じゃん!なんだ桜咲さんシネマ村に来たかったんだ」

 

 ハルナが言ったシネマ村はかなり大きな施設で人が多そうだ。さっき言っていた賑やかな場所としてはうってつけだ。マギと刹那は頷きあうと

 

「すみません綾瀬さん早乙女さん、私このかさんと二人きりになりたいのでここで別れましょう!」

 

 そう言いながら刹那はこのかを抱き上げて、シネマ村の高い壁を驚異的なジャンプ力で飛び越えてしまった。刹那のジャンプを夕映とハルナはポカンとしながら見ていると

 

「悪い、夕映にハルナ俺達も野暮用でな先に行くわ」

 

「お先にな小娘共」

 

「すみません綾瀬さん早乙女さん」

 

 マギにエヴァンジェリンに茶々丸も先程の刹那と同じようにシネマ村の壁をジャンプで飛び越えてしまった。刹那に続いて超人的なジャンプを見た夕映とハルナはポカンと呆然としていたが

 

「金払って入れです」

 

 夕映のあたりまえなツッコミを入れた。とりあえず夕映とハルナは普通にお金を払ってシネマ村に入って行った。

 

 

 

 

「ふむシネマ村か…マギ・スプリングフィールドも愚かな男だ。貴様に安息の地がない事を骨の髄まで分からせてやろう」

 

 

 

 

 シネマ村の中はかなりの旅行者が居た。中には学生の姿もちらほらと見える。これだけ人が居るなら襲ってはこないだろう…一先ず安心する刹那。

 

(さて、これからどうするか…)

 

 刹那はこれからどう動くか考える。

 

「せっちゃんせっちゃ~ん」

 

 とこのかの声が聞こえ、お嬢様と刹那は顔を上げると刹那は思わず絶句して固まってしまった。このかは何時もの学生服ではなく江戸時代の姫が着るような着物を着ていたのだった。

 

「おッ嬢様その恰好は?」

 

 如何したのですかと尋ねるとこのかはこれなーと着物の袖を上げながら

 

「そこの更衣所で着物を貸してくれたんやえ。どうせっちゃん似合う?」

 

 このかは着物でくるくると回りながらどうかと刹那に尋ねた。このかの着物姿に見惚れていた刹那はハッとしながら

 

「と…とてもお似合いですこのかお嬢様」

 

 自分の思った事を素直に言った。刹那に似合っていると言われて嬉しいのか大はしゃぎするこのか。刹那は高ぶる気持ちを如何にか抑えようとしていると

 

「おいこのか、あんまりはしゃいでいると折角の着物が汚れちまうぞ」

 

 マギの声が聞こえて振り返ると其処にはこのかと同じ様に着替えていたマギとエヴァンジェリンの姿があった。

 

「しかしこのかは着物が似合うな。やっぱこのかみたいな奴を大和撫子って言うのか?」

 

 マギは江戸幕府後の新政府の軍服を着ており

 

「おいマギ、さっきは私に着物が似合うとそう言ったのに浮気をするのか?」

 

 このかと同じような着物を着たエヴァンジェリンが不満そうな顔をして

 

「大丈夫ですよマスター。マギ先生はマスターの着物の方が似合っているとそう思っていますよ」

 

 自身が人間の服は着れないという事で、制服のままの茶々丸であった。

 

「マギ先生、如何してそんな格好をしてるんですか?」

 

 刹那は軍服を着ているマギに尋ねる。

 

「こんな所に来たんだからやっぱ着た方が良いかと思ったんだよ。お前も折角だから着とけ着とけ」

 

「そーそーマギさんの言う通りやえーせっかくだからせっちゃんも着替えよ!うちが選んであげる」

 

 このかに連れられ、刹那も更衣所で着替える事になった。着替える事数分後

 

「何故私は男物の扮装なのですか?」

 

 刹那が着替えたのは新選組の恰好であった。女性である刹那だが、意外と似合っており護衛の刀のせいでより一層似合う形が増していた。

 

「せっちゃんこっちこっち色々と売ってあるえー」

 

 このかに手招きされて刹那は土産のコーナーを見ていた。何かお土産でも買っておこうかと考えていると、このかが甘食を丸々1つ口に頬張って変顔をしており、思わず刹那は吹き出してしまった。

 

「よかった、せっちゃんやっと笑ってくれた」

 

 このかは笑ってくれた刹那を見て嬉しそうだ。と他の学校の修学旅行生が刹那とこのかを見て写真を撮っていいかと尋ねられて、刹那とこのかは色々なポーズをとりながら写真を撮られていた。

 

「一応大丈夫かな…」

 

 近くの場所で刹那とこのかを見ていたマギはそう呟いた。

 

「何だ、お前近衛木乃香に何か言ったのか?」

 

 エヴァンジェリンに尋ねられ、まぁなと肯定する

 

「刹那の奴、変に肩に力入れてるからなあそこまで張っちまってたら危ないと思ったからな、このかに何かアホな事でもやって笑わせてやれって言ったんだよ」

 

「ほう意外と気を回すのだなお前も」

 

「一応は教師だからな、生徒の事もちゃんと考えてやらないとな」

 

 メンドイけどなと頭を掻きながらそう言った。ああそう言えばとマギはエヴァンジェリンの方を向きながら

 

「改めて思ったが、着物似合うなエヴァ。綺麗だしまるで本当のお姫様みたいだ」

 

 不意にマギに綺麗だと言われて思わず顔を赤くしてしまうエヴァンジェリン。

 

「とッ当然だ!この私なんだから何を着ても似合ってしまうんだからな」

 

 と顔を赤くしながらも当然だと主張するかのように胸を張った。そんなエヴァンジェリンをマギと茶々丸は微笑ましそうに見ていた。すると

 

「あッあの!よろしければ写真を撮っても宜しいですか?」

 

 と先程刹那とこのかを撮っていた学生が今度はマギとエヴァンジェリンに写真を撮っていいか尋ねてきた。外国人でもあるマギとエヴァンジェリンが着物と軍服を着ているのは珍しいので写真に収めておきたいのだろう。

 

「まぁこういうのも旅の醍醐味って奴かな。エヴァ仕方な撮られてやろうぜ?」

 

「私は好き好んで写真を撮られるのは趣味じゃないんだがな。まぁ仕方ない撮られてやるか」

 

 結構乗り気なマギと嫌嫌そうなエヴァンジェリンは学生達に写真を撮られて(ちゃっかり茶々丸が撮影モードで写真を撮っていた)いた。

 

 

 

 

 

 刹那とこのか、マギにエヴァンジェリンに茶々丸がシネマ村を色々と回っていると何処からか馬が走っている音が聞こえてきて、マギ達の目の前に馬車が現れた。

 

「お前は!?」

 

 刹那は馬車に乗っている人物に驚きを隠せなかった。何故なら馬車に乗っていたのは刹那と互角の戦いを見せた少女の月詠だったからである。

 

「どうも~神鳴りゅ…じゃなかったです。お金持ちの貴婦人でございます~そこな剣士はん、今日こそ借金のカタにお姫様をもらい受けに来ましたえ~」

 

 月詠はクスと笑いながら刹那にそう言った。刹那は最初は動揺したが、このシネマ村ではお客を巻き込んで突然お芝居が始まる事があるという事を思い出し、劇に見せかけ衆人環視の中堂々とこのかを連れ去ろうと言う訳だろう。

 そうだと分かった刹那はキッと月詠を睨みつけながら

 

「そうはさせん、このかお嬢様はこの私が守る!」

 

 刹那の宣言に周りの客は拍手や口笛などをした

 

「せっちゃん恰好ええよー!」

 

 このかも刹那の守ると言う言葉に喜びながら、刹那の背中に抱き着いた。抱き着かれた刹那は慌てふためく。そんな光景を見た月詠はしかたありまへんな~と言いながら自分が着けていた手袋を刹那に投げ渡した。中世の決闘の合図である。

 

「このかお嬢様をかけて決闘を申し込ませて頂きます。30分後場所はシネマ村正門横の日本橋にて。ご迷惑だと思いますけどウチ、手合せして頂きたいんです。逃げたらあきまへんでー刹那センパイ」

 

 刹那センパイの所を狂気を孕んだ笑みを浮かべた。このかは月詠の笑みを見顔から血の気が引いていくのを感じ、刹那の背に隠れた。

 

「ほな、助けを呼んでもかまいまへんで~」

 

 そう言い終えて、月詠は又馬車に乗って去って行った。他の観光客は30分後に劇があると思い込んで、日本橋に向かって行った。そしてマギとエヴァンジェリンは先程までの会話を聞いてどう思ったかを話し合っていた。

 

「エヴァから見てあの月詠はどう思う?」

 

「どう思うも何も月詠と言う小娘は人を斬って快感を得ようとする狂った奴だ。何ともまぁ桜咲刹那も面倒な相手に付け狙われた物だ。其処には同情するよ」

 

 とそう述べた。刹那は仕方ないが、敢えて月詠の罠に乗る事にした。このかは未だに刹那の背に隠れて震えていた。とそんな刹那とこのかの元へ

 

「ちょっと桜咲さんどういう事よ~!!」

 

 先程別れたハルナと夕映の他に和美たち3班が刹那とこのかを取り囲んだ。3班もシネマ村に来ていたようだ。

 

「もう何でこんな重要な事を言ってくれなかったの~!?それで2人は何時から付き合ってるの?」

 

「いやいやうんうん、お姉さんは応援するよ…記事にはしないから安心していいさね」

 

 如何やらハルナ達はこのかと刹那が付き合っているのだと勘違いしているようだ。というかハルナ達は今迄マギ達の事をばれない様に覗いていたようだ。面倒な展開になってきたな…とマギは溜息を吐いていると

 

「まッマギさん…」

 

 と千雨がマギを呼んだ。マギは振り返ると大正時代の女学生の制服に着替えている千雨が居た。

 

「千雨か、お前も着替えたんだな。お前らしくて似合ってるぞ」

 

 マギは自分が思った事を素直に伝えた。千雨は似合っていると言われると思っておらず、顔を赤くしながらありがとうと言った。

 

「ってそうじゃない!マギさん聞きたい事があるんだけど」

 

「聞きたい事?なんだ?」

 

 マギは千雨が何を聞きたいのか首を傾げる。千雨は数秒だけマギと目を合わせていなかったが、マギと目を合わせると

 

「マギさんとエヴァンジェリンって仲が良いよな?若しかして付き合って…たり?」

 

 如何やら千雨は先程のマギとエヴァンジェリンが一緒に写真を撮られている所を目撃しており、それが仲良さそうに見えたようだ。付き合っているのか聞かれエヴァンジェリンは動揺する

 

「べッ別に私とマギは付き合ってなど…!」

 

「そうだぞ。幾ら歳が歳が近いからって(ホントは何百歳も離れているけどな)学生と教師が付き合うのはマズイ『グニィ』っイテ!何で足を踏むんだよエヴァ!?」

 

「フン!バランスを崩してたまたまお前の足を踏んでしまっただけだ…もうちょっと言い方があるだろうが馬鹿者が…」

 

 先程まで動揺していたエヴァンジェリンだが、今度は不機嫌になりながらマギの足をたまたまと言いながらも思いきり踏みつけたのだった。

 

(なんだ、マギさんとエヴァンジェリン付き合ってるわけじゃないんだ…良かった)

 

 千雨はマギとエヴァンジェリンが付き合ってないと分かるとホッと一安心したようだ。そんな千雨をエヴァンジェリンは見ていた。

 

(長谷川千雨、若しかしなくともマギの事を…まったく無自覚とは一番達が悪いな)

 

 エヴァンジェリンは呆れた視線でマギの事を見ていた。マギはエヴァンジェリンが何故自分の事を冷めた目で見ているのが分からなかった。

 

「よ~し決めた!私達は桜咲さんとこのかの恋を応援するよ!淑女達出陣だ!!」

 

 ハルナ達は刹那達に着いていくことに決めた様だ。マギは呆れ半分で和美の腕を引っ張って

 

「おい和美、分かってるのか?さっきの女は一般人じゃない、俺達側の人間だ。最近俺達側の事を知ったお前や無関係な奴らが一緒だと危険に巻き込まれるかもしれないぞ」

 

 マギの忠告に和美は

 

「大丈夫だよマギさん、さすがにマギさん達の助太刀なんか出来ないからね、せめてもこのかが危険な目にあわない様に一緒に居てあげるだけさね」

 

「ならいいんだが、だけどもこれだけは言っておく…俺や刹那に何かあったらお前がこのかや他の奴らを連れて直ぐに逃げろ。お前がこの中で行動力もあるし頭もキレる」

 

「了解さね、余計なお世話かもしれないけどマギさん怪我しないでね」

 

 マギの忠告も聞いてハルナ達は刹那達と一緒に日本橋に向かう事にした。その時

 

「刹那さん、お兄ちゃん、大丈夫!?」

 

 刹那とマギの目の前で光る何かが飛んできた光る物が拡散すると其処にはちびせつなサイズのネギとそのネギの頭にカモが乗っていた。

 

「ネギ先生どうやって此処へ!?」

 

「何でお前そんなに小さいんだ?」

 

 マギは何故ネギがそんなちびせつなと同じ大きさなのか尋ねると、ちびせつなの紙型を使って刹那達の気の跡を辿って此処に辿り着いたという事である。カモは何があったのか刹那に尋ねようとしたが目的地の日本橋に到着した。

 日本橋には先程までの出来事を目撃して劇を見ようとしている人や、シネマ村の中で口コミが広がって大勢の観光客であふれていた。さらにもう月詠が居て、太刀と短刀を構えていた。

 

「フフフフ、約束の時間通りでしかもぎょーさんお友達を連れてきてくれておおきに〜、楽しくなりそうやな~ほな始めましょうか刹那センパイ…このか様とセンパイ、どちらもウチの物にしてみせますえ」

 

 月詠は笑顔のままそう言った。先程の狂気の笑み程ではなかったが、このかは背筋が凍りそうになるほど震えていた。このかは刹那の羽織をギュッと掴みながら

 

「せっちゃん、あの人なんかこわい。気を付けてな」

 

「…大丈夫ですよ」

 

 刹那の大丈夫との言葉にこのかはえ?と刹那の顔を見た。刹那はニッコリと笑いながら

 

「どんな事があっても私は、このかお嬢様をお守りします。だから安心てください」

 

「せっちゃん…!」

 

 このかは刹那に後ろから抱き着こうとしたが、周りの観光客の拍手喝采となった。3班の千鶴や夏美は刹那のこのかを守ると言う言葉に感動し、あやかは大粒の涙を流すほどだった。

 

「桜咲さん!私感動しましたわ。お二人の愛、全力でご協力いたしますわ!!」

 

 刹那の手を握りながらのこの言い様、刹那は軽く引いていた。色々と勘違いしているようだった。そして刹那と月詠の対決が始まるかと思ったが

 

「ちょっと待った。刹那がカッコイイ事を言っていたが、お前の相手は俺がするぜ」

 

 マギが割って入ってきた。マギの横槍に周りの観光客はブーイングや引っ込めなどの野次を飛ばしてきた。マギはそんな野次を無視して

 

「刹那は俺の生徒だからな。生徒に怪我させるわけにはいかねえんだよ」

 

 マギの言った事に月詠は不満そう…否残念そうな表情になっていた。

 

「はぁ~お兄さんとはウチも戦いたかったんやけど、お兄さんにはウチの用心棒が予約を入れていてな~お兄さんの相手は出来そうにないんや。という事で出てきてや~用心棒さ~ん」

 

 月詠が用心棒なる者を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「…やれやれ、漸くお呼びが月詠嬢。聊か待ちくたびれたぞ」

 

 マギ達の頭上から男の声が聞こえてきて、マギ達は上を見上げると誰かが落ちてきて月詠の横に着地した。着地した者の恰好は現代の服とはかけ離れていた。体には黒い甲冑と黒きズボンを着ており、さらに血のような真っ赤なマントを羽織っており、顔はバイザーで隠れていて表情が分からなかった。

 だがマギは瞬時に分かった。この男が自分しか狙っていなかった傭兵だと

 

「テメェだな、俺しか狙わなかった傭兵って言うのは」

 

 マギは傭兵に尋ねる。尋ねられた傭兵はフッと笑いながら

 

「ほう如何して私が君を狙った傭兵だと分かったのかね?」

 

 傭兵の口調はマギを挑発しているのが丸わかりだった。だがマギはあえてその挑発に乗る事にした。

 

「簡単だ。あの時の変な矢に纏っていた魔力とお前の魔力が一緒だったからだ」

 

 それだけ言うと傭兵はわざとらしい大きな拍手をした。

 

「成程、素晴らしいな。君もそれ位の事は一応できるという事か」

 

 それ位を強調しながら言う傭兵。傭兵の言い方には侮蔑を感じ取れた。

 

「そんな事は如何でもいい。テメェの名前はなんていうんだおい」

 

「君に名乗る名など持っていないよ。だがそうだな…どうしても呼びたいならアーチャー(弓兵)とでも呼んでくれ」

 

「アーチャー、弓兵ね…随分とシンプルなコードネームだな。で、そのアーチャーが俺を狙うのは何で何だ?」

 

 マギは傭兵、アーチャーが自分を狙う目的を尋ねた。するとアーチャーからマギに対する見下した雰囲気が消えうせ、他の気配が出て来た。その気配は…殺気。

 

「目的?目的ならただ一つ、貴様の抹殺だ。マギ・スプリングフィールド」

 

 そう言いながら、アーチャーは両腕から白と黒の対になる2本の短剣を出現させ、白い短剣の切っ先をマギに向けた。如何やらアーチャーの魔法はああやって武器を具現化させる魔法なのだろうとマギは読んだ。周りの観光客に魔法の事を知らない麻帆良の生徒達はアーチャーが何もない空間から行き成り剣を出した事に吃驚したのではなく、アーチャーが言ったマギの抹殺という言葉にざわついていた。

 当のマギは頭を掻きながら

 

「何でお前が俺を抹殺しようとしてるんだ?俺、お前みたいなインパクト抜群な人間を一度見たら忘れないと思うんだけどな…もしかして人違いなんじゃないか?」

 

 マギ自身アーチャーの様な格好しているヤツを見たら忘れないはずだと言い切った。しかしアーチャーは聞く耳を持っていなかった。

 

「自分の胸に聞いてみるのだな…尤も今更後悔しても遅いのだがな」

 

 アーチャーはヤル気マンマンの様だ。そんなアーチャーを見てマギはやれやれだぜ…と溜息を吐きながら

 

「勘違いされたまま殺されるつもりはこっちも無いからな、俺も秘密兵器を使ってみるとするか」

 

 マギは担いでいたギターケースを開けて中から何かを取り出した。それはネギが使ってる大きな杖とそっくりな物だ。少し違うのは、杖の中から刃が出てきた。仕込み杖である。

 

「この仕込み杖は特注品でな、俺が魔力を注げば力を増すと言う優れものだぜ」

 

「そうか…だったらこちらも最初から本気を出させてもらう」

 

 そう言ったアーチャーから膨大な魔力と気が溢れだして…一瞬でアーチャーの姿が消えた。

 

「ッ!」

 

 マギは一瞬で消えたアーチャーに動揺を隠せなかったが、背後に強い殺気を感じ取り、瞬時に後ろに振り返り仕込み杖を振り下ろした。

 

 

 

 ガキィィィィンッ!!

 

 

 

 マギが仕込み杖を振り下ろした先には、アーチャーが短剣を振り下ろしていた。マギの仕込み杖とアーチャーの短剣が鍔迫り合いをした。

 行き成り背後を取った。本気でマギを殺すつもりだ。

 

(たくよこっちはテメェの事なんてまるっきり知らないって言うのによぉ…)

 

「そう簡単にやられてたまるかってんだ!」

 

 叫びながらマギはアーチャーの黒と白の短剣を弾き返した。アーチャーは一瞬で後退するが、マギはそれを逃すつもりなどなく、咸卦法を発動させ、仕込み杖に魔力と気を流し込みこちらも一瞬で間合いを詰めた。

 互いの武器がぶつかり合い火花が飛び散る。マギがアーチャーの足を狙おうとするが防がれ。アーチャーもマギの胸を斬り裂こうとするが、その剣を弾き飛ばす。そして何十合か斬り合ってマギは有る事に気づいた。

 

(このアーチャーって奴、剣筋がてんでバラバラだ。我流みたいだが、戦い慣れてやがる。剣術の無さを実戦経験で補っている感じだ。本当にコイツは何者なんだ?)

 

 マギも剣術はまるで素人だ。しかしアーチャーの方も自分が見る限り我流である。だがそれでもアーチャーの方が剣術ではマギより上であるようだ。

 

「戦いの中で考え事とはずいぶんと余裕だな。だがその余裕何時まで持つかな?」

 

「テメェも戦っている相手に話かけて来るなんて俺も舐められたもんだ。その余裕ぶっている態度、俺が崩してやるよ」

 

 そしてまた更に斬り合うマギとアーチャー。観光客はマギとアーチャーの斬り合いに大興奮の様子だ。

 

「マギ先生!」

 

「よそ見してる時間がありますかセンパイ?」

 

 刹那がマギの方を見ていると月詠が突貫してきた。刹那は自分の得物で月詠の攻撃を防ぐ。月詠はうっとりとした笑みを浮かべており

 

「はぁ~~センパイとの剣と剣とのぶつかり合い。これだけでウチは快感ですわ~」

 

「戦闘狂か。ついて行けん!」

 

 そして刹那と月詠の戦いも始まったのだ。戦いの場面をマギとアーチャーに戻すが、マギとアーチャーは橋ではなく今度は屋根の上で互いに斬り合っていた。観光客はマギとアーチャーの戦いをハリウッド映画のアクションシーンを見ているのではないかと思う始末である。マギとアーチャーは本当の殺し合いをしているのだが。とアーチャーの白の短剣に罅が入り始めた。

 

「どらッ!」

 

 マギが気合と一緒に剣を振りぬくと、白の短剣が砕け散った。これでアーチャーの方が不利になったと考えたマギはこのまま攻め続けた。と今度は黒の短剣が刀身から砕け散る。アーチャーは柄だけになった短剣を投げ捨てる。

 

「これで終いだ!」

 

 マギはそう叫びながら仕込み杖を振り下ろした。これでアーチャーは終わりだと思われた。しかし

 

「―――」

 

 アーチャーは何か呪文を呟くと瞬時に、先程と同じ白と黒の短剣が傷一つも無く又具現化され、マギの攻撃を防いだ。

 

「んなッ!?」

 

 マギは今の攻撃で決着がつくと思っており、アーチャーが瞬時に剣を具現化させたことに驚きを隠せなかった。アーチャーは不敵に笑いながら

 

「生憎、貴様の腑抜けた攻撃でくたばるほど私自身弱くないつもりだ」

 

「たく、面倒な魔法を使うんだなテメェは。だったら剣を新しく出しても直ぐにぶっ壊してやるよ」

 

 しかしマギがアーチャーの剣を叩き折ったり、砕いたりしてもアーチャーは直ぐに剣を具現化させる。

 

「はぁっはぁったくよぉ、あと何回テメェの武器をぶっ壊せばいいんだよおい…」

 

 マギはアーチャーの剣を破壊し続けて体力を消費し、肩で荒い呼吸をしていた。対するアーチャーはバイザーでこそ表情は見えないが、未だに余裕そうだ。

 

「如何した?さっきまでの威勢の良さが嘘の様だぞ。やはり貴様のその強さは見かけ倒しという事か」

 

 アーチャーは見下した態度でそう言う。対するマギはへッ冗談とアーチャーに負けじと不敵な笑みを浮かべて

 

「お楽しみは此れからだっつうの。俺の本気でテメェの度肝を抜いてやるぜ」

 

 そう言い終え、マギは息を整えると、マギウス・ナギナグ・ネギスクウと詠唱を始めた。接近戦では此方が不利である。だったら魔法をアーチャーにぶつけると言う戦い方に変更する。

 

「堕天使の翼よ!罪深き我の背中に汝の翼を与えたまえ! 黒き翼!」

 

 マギの背中から黒い翼が現れ、マギは空高く羽ばたいた。今度はマギが空を飛んだことに観光客は大興奮。夕映やハルナ達と言った魔法を知らない生徒達はポカンとしていた。

 マギも本当は魔法がバレルかもしれないと危惧していたが、もうそんな事を考えている暇は無かった。圧倒的に自分が不利だったからである。全力を出さないとやられてしまう。

 空に飛んだマギを見上げるアーチャー。彼は心底呆れたような溜息を吐いた。その溜息はマギを心底バカにしているような溜息だった。

 

「愚かな…私が弓兵だという事を忘れたか、貴様は罠にかかった獲物同然だ」

 

 アーチャーは白と黒の短剣を投げ捨てると、今度は漆黒の弓を出現させた。それは前にマギをビルから狙い撃った弓であった。アーチャーは矢を出現させると、弓を引き絞り矢を放った。放たれた矢は真っ直ぐマギに向かって行くが、マギは仕込み杖を振るって矢を破壊する。

 

「マギウス・ナギナグ・ネギスクウ 闇の精霊12柱 魔法の射手 連弾・闇の12矢!」

 

 今度はマギが闇の魔法の矢を放つ、12本の魔法の矢がアーチャーに迫って来るがアーチャーは別に慌てるそぶりは見せずに又矢を引き絞り放つ、しかし今度は矢は1本だけではなく、矢は拡散しマギの放った倍の数の24本の矢となった。12本の魔法の矢とアーチャーが放った24本の矢の半分が相殺されるが、残りの12本の矢がマギに迫る。マギは12本の矢を叩き落とすが、肩や太腿に頬を掠めてしまいそこから血が流れる。

 

「如何したこの程度が?欠伸が出そうだ」

 

 そう言いながらアーチャーは欠伸をする素振りを見せる。明らかな挑発行為にマギはキレそうになるが抑えた。怒ればアーチャーの思う壺だ。

 

「マギウス・ナギナグ・ネギスクウ 黒曜の輝き快速の槍となり敵を討つ! 悪魔の槍!」

 

 今度は悪魔の槍を発動させて、アーチャーに向かって発射させる。漆黒の槍は魔法の矢よりも強力だ。今度こそ決まったと思ったマギ、しかしアーチャーは何かを唱えながら腕を前にかざす。かざした腕から7枚の花弁が展開されて、マギが放ったデモンズ・ランスを完全に防いでしまった。

 

「うそ…だろ?俺の攻撃が全然効かないだと?」

 

 攻撃が完全に防がれ呆然とするマギ。そんなマギにアーチャーは当然だと言いながら

 

「先程も言っただろう?貴様の腑抜けた攻撃でくたばるほど私自身弱くないとな…それよりも避けなくて大丈夫か?」

 

 マギはアーチャーが最後に言った言葉の意味が分からなかったが、自身の右腕が激痛を感じた。何事かと思ったら見ると先程アーチャーが投げ捨てた白と黒の短剣がブーメランのように回転しながらマギの腕を斬りつけて来た。アーチャーがただ短剣を投げ捨てたのではなく、ブーメランのようにしてマギを狙うためである。マギは又もやって来た短剣を仕込み杖で叩き折った。

 マギは戦いがアーチャーの流れになっている事と、アーチャーが完全に遊んでいると分かると完全に堪忍袋の緒が切れた

 

(クソが!だったら俺の今使える最大の魔法をアイツにぶつけてやる!)

 

「マギウス・ナギナグ・ネギスクウ! 来たれ炎精闇の精! 闇よ渦巻け 燃え尽くせ地獄の炎!」

 

 マギはエヴァンジェリンの時に使用した闇の業火を使うつもりだ。闇と炎の魔力がマギの腕の中で渦巻く。大技を放とうとしているマギを見て

 

「…なるほど貴様の実力はそれほどか、マギ・スプリングフィールド。失望したよ。ならこのまま終わらせてやろう……トレース オン」

 

 最後に言った事が武器を具現化させる詠唱なのか、剣が具現化された。具現化された剣はまるで一角獣の角の様な剣だった。そして角のような剣をアーチャーはまるで矢のように形状を変化させ、剣の弓となってしまった。そしてその矢をマギに狙いを定める。

 

「I am the bone of my sword」

 

 アーチャーは弓を構えながら詠唱を始める。剣の矢にアーチャー自身の魔力が送り込まれる。そしてマギとアーチャーの恐らくだが強力な攻撃が同時に放たれる。

 

「闇の業火!!」

 

偽・螺旋剣(カラドボルグII)

 

 闇の業火と偽・螺旋剣がぶつかり合う。力が拮抗しあうと思われたが、アーチャーが放った偽・螺旋剣があっさりと闇の業火を消滅させてしまう。偽・螺旋剣は威力を弱める事も無く真っ直ぐマギに向かって来る。

 

「な…ん…だと…!」

 

 自分の魔法がこうも容易く負けると思わなかったマギは思わず呆然としてしまったが、迫ってくる偽・螺旋剣を仕込み杖で防ぐ。がギャリギャリギャリと仕込み杖から嫌な音が出てくる。

 

(く…くそッ抑えきれねぇ)

 

 偽・螺旋剣を防ぎきれずに遂に仕込み杖が弾き飛ばされ…マギの脇腹を偽・螺旋剣が貫通した。

 

「カフッ!!」

 

 脇腹に風穴が開いた衝撃で、マギは口から吐血をしてしまい、意識を一瞬だけ失ってしまい、黒き翼が強制的に解除されてしまい落下を開始する。

 マギはアーチャーの方を見てみると、バイザーで表情は分からなかったが、冷たい表情をしているのは何となく分かった。

 

 

 

 ゴシャァッ!

 

 

 

 マギは背中から地面に叩きつけられた。貫かれた脇腹からは、穴が空いた貯水タンクのように血が流れ続けていた。見ていた観光客は本当に劇なのか?あれは本当の血じゃないのか?警察と救急車を呼んだ方が良いんじゃないかとざわつき始めた。

 

「マギさん!」

 

「ちょ!ゆえ何かヤバそうだし、近づいたら不味いって!!」

 

「おい離せよ朝倉!どう見たってマギさんがヤバいのは目に見えてるって!」

 

「悪いけど長谷川、私はマギさんと約束してるからね。アンタらを危ない目にあわせないってね」

 

 夕映と千雨がマギの元に駆け付けようとしたが、ハルナと和美が2人を必死に羽交い絞めにしていた。その間にもアーチャーはゆっくりとマギに近づいて来る。手には弓ではなく、白と黒の短剣が握られていた。

 

「まだ息があるか。その無駄な生命力にはむしろ感心する。だがそれもあと少しの事だ」

 

 マギは逃げようとするが、血が足りなくて動けなかった。それに意識も朦朧としてきた。

 

(やべぇ、死んだな)

 

 マギは自分が死ぬと悟った。何も抵抗も出来ずに殺されるのは納得いかねえと悔しさで頭の中が一杯だ。アーチャーが短剣を振り下ろそうした

 

「マギから離れろ貴様!」

 

 エヴァンジェリンが叫びながら、アーチャーに突っ込んだ。腕にはレーザーの様な剣が出ていた。断罪の剣、エヴァンジェリンが接近戦の時に使用する魔法である。断罪の剣と短剣がぶつかり合う。

 

「これ以上マギに近づいてみろ。貴様を八つ裂きにした後に魂まで凍らせてやる」

 

「ふ…お初にお目見えになるか『闇の福音』しかし、たかがこの男のために感情を高ぶらせるとは、この男にそれほどの価値があると言うのか」

 

「黙れ!」

 

 エヴァンジェリンは断罪の剣で短剣を粉砕する。アーチャーが口笛を吹くと、懐から液体の入った瓶を取り出した。

 

「やるな。だったらこれならどうだ?」

 

 アーチャーは瓶をエヴァンジェリンに向かって投げた。エヴァンジェリンは断罪の剣で瓶を叩き割る。瓶の中に入っていた液体がエヴァンジェリンの顔にかかる。

 

「舐めるなよ。何の液体が入っていたか知らないが、この程度に私が参るとおもッ!?」

 

 不意にエヴァンジェリンは体に不快感を覚え、片膝をついてしまう。力が入らないというより魔力が失っていくような感じだった。

 

「き…貴様、さっきの瓶に何が入っていた…!?」

 

「ん?さっきの瓶の中には貴様の弱点であるニンニクやネギを煮詰めて液体にした物だ」

 

 それを聞いてエヴァンジェリンは驚愕で絶句してしまう。その弱点は知っている者はナギだけしか知らなかった。しかしこのアーチャーは自分の弱点を知っていた。この男は何者なんだと考えていると、エヴァンジェリンの腹にアーチャーの足がめり込んだ。

 

「ゴホッ!」

 

 魔力が無いエヴァンジェリンは、9歳の少女と変わらない。アーチャーに蹴飛ばされてエヴァンジェリンは強く地面に叩きつけられてしまった。

 

「え…エヴァ」

 

 マギは地面に叩きつけられたエヴァンジェリンに腕を伸ばそうとしたが、アーチャーに腕を踏みつけられてしまう。

 

「全く無駄な邪魔が入ったが、これで貴様を…ッチ!また邪魔か」

 

 アーチャーが振り向くと茶々丸がアーチャーに向かって踵落としを落とした。アーチャーは腕で踵落としを防ぐ。ミシミシとアーチャーの腕から骨が軋む音が聞こえた。

 

「マギ先生やマスターにこれ以上危害を加えるならこの私が許しません」

 

「やれやれだ…吸血鬼の次は機械仕掛けの人形か。この男には変わった者が集まるようだ。機械仕掛けなら…これだな」

 

 そう言いながらアーチャーは新たに武器を具現化した。しかし今度の武器は武器と言うより払子と呼ばれる道具だった。その払子を茶々丸の頭の上で振るった。

 

「何をしているのですか?そんな物で私を倒せると」

 

「まぁ直ぐに分かるさ」

 

 アーチャーの言っていることが茶々丸には理解できなかったが、急に雲行きが悪くなり、ゴロゴロと雷鳴が鳴り始めた。そして

 

 

 

 ピシャアァァァンッ!!

 

 

 

 茶々丸に1本の雷が落ちて、茶々丸に雷が直撃した。観光客は雷が落ちた事と茶々丸が雷に打たれたことに悲鳴を上げた。雷に打たれた茶々丸は所々黒くなっており、煙が上がっていた。

 

「が…が…ががが…」

 

 茶々丸はショートしたためか、上手く喋れない様子だった。そんな茶々丸の頭をアーチャーは鷲掴みすると

 

「機械を壊すなら強力な電気と相場が決まっている」

 

 茶々丸を投げ飛ばした。投げ飛ばされた茶々丸は建物に衝突し、建物が半壊してしまった。

 

「く…クソ…ネギの奴に偉そうな事を言っていたが…俺は…ここで何も守れないまま死ぬのか」

 

 マギは改めて自分の弱さを実感した。自分の力は見かけ倒しだったのか…そう思っているとそうだと言いながらアーチャーが再度近づく

 

「貴様は己の弱さを実感して絶望しながら…死ね」

 

 アーチャー短剣を振り下ろした。今度こそ自分は死ぬ、そう思ったマギだがその時、シネマ村を眩い光で包み込まれた。

 

「なッこれは…!クソッタイムアウトか!!」

 

 と初めてアーチャーが狼狽する姿を見せた。マギは何の光だと思っていると、自分の脇腹から痛みが引いていく感じがした。マギは自分の脇腹を見てみると風穴が塞がれているのを見た。

 

「傷口がない?如何いう事だ」

 

 行き成り傷が治った事に戸惑うマギ。アーチャーはクソッ!と舌打ちをする。

 

「だが、此処で貴様を殺せば傷が治っても関係ない!!」

 

 傷が治ったマギをまだ殺そうとするアーチャー。とシネマ村のそとからパトカーのサイレンが聞こえた。如何やら観光客が流石にヤバいと感じたのか警察に通報したのだろう。

 

「ッチ!運が良かったなマギ・スプリングフィールド。だが近いうちに貴様は私が殺す。せいぜい今生きていることに感謝するんだな」

 

 捨て台詞を残すとアーチャーの体が蜃気楼のように霞始め消えてしまった。とりあえずは助かった事に深く溜息を吐くマギ。と先程アーチャーに蹴り飛ばされたエヴァンジェリンがマギに近づく

 

「おいマギ、お前傷は大丈夫なのか?」

 

「傷は塞がったが血が足りねぇ。エヴァこそアイツに蹴られたのに大丈夫なのか?」

 

「私の事はいい。それよりも早くここを立ち去るぞ。流石にこれ以上此処に居たらまずい…茶々丸」

 

「ハイ、マスター此処に」

 

 エヴァンジェリンに名を呼ばれ、茶々丸が瞬時に現れた。

 

「おい茶々丸アイツに雷を落とされたのに平気そうだな?無茶してねぇか?」

 

「いえ、一時的に機能を停止しただけです。超さんとハカセさんに造られた私は伊達ではありません」

 

 とキリッとした顔で茶々丸は言う。ふざけた事してないで早くしろとエヴァンジェリンがツッコむ。

 

「ここを出るぞ。茶々丸頼む」

 

「了解ですマスター」

 

 茶々丸はエヴァンジェリンとマギを担ぎ上げた。

 

「すまねえ茶々丸」

 

「心配ご無用ですマギ先生。それよりもしっかり捕まってください」

 

 茶々丸はそう言い終えると、かなりの速さで走りだし、高い壁はジャンプで飛び越えた。確かにこれはしっかり捕まっておかないと振り落とされるな。そう思ったマギは茶々丸にしがみついた。

 こうして他の観光客が呆然としている間にマギとエヴァンジェリンに茶々丸はシネマ村を脱出できたのである。

 

 

 

 

 

 シネマ村を出たマギとエヴァンジェリンに茶々丸は元の服に(元の服は茶々丸がどさくさに紛れて持ってきた)着替え、とりあえず小休止をしていた。するとマギ達の元に刹那とこのかがやって来た。

 

「マギ先生大丈夫ですか!?」

 

「あぁ刹那か…悪いなコテンパンにやられちまったよ」

 

 マギは刹那に乾いた笑いで応えた。刹那の後ろにはオロオロした様子のこのかが居た。

 

「マギさんホンマに大丈夫なん?元気が無いようやけど」

 

 もし傷口が塞がっていなかったら誤魔化しきれなかったかもしれないが、マギは傷口が塞がった事に有りがたいと思った。マギはハハハと笑いながら

 

「あぁさっきの役者さんなんだけどな、どうやら役に力が入り過ぎるタイプだったんだ。ケリとか殴る所なんか半分マジだったぞアレは、ちなみにさっき飛んで見せたのも血が出たのもエヴァが蹴り飛ばされたのも雷が落ちたのも全部演出な。いやぁ迫真の演技だったぜ?俺将来役者に向いてるかもな」

 

 とマギの苦し紛れの誤魔化しだったが、このかは信じてくれたのかそうなんや~と何処かホッとした感じで溜息を吐いた。

 

「さっきの劇凄くリアルだったから吃驚したんだえー。せっちゃんも矢に撃たれてお城の屋根に落ちた時も吃驚したし」

 

 とこのかは疲れたのか、座り込んでしまった。そんなこのかを見て、マギと刹那はひそひそ声で話し合う。

 

「マギ先生シネマ村に入った事が裏目に出てしまいました。やはりこれは」

 

「あぁこのかを一刻も早く安全な場所に連れて行くしかねえな」

 

 決定し、座り込んだこのかを刹那が抱き起す。

 

「お嬢様、今からお嬢様の御実家へと参りましょう。神楽坂さんと合流します」

 

 このかの実家、すなわち関西呪術協会の本山である。はてさて本山に向かうマギ達、其処で待ち受けているのは鬼かはたまた蛇か…それはマギ達にも分からなかった。




次回からは原作6巻に入ります
修学旅行もいよいよ終盤です

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