堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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それではどうぞ!

活動報告に新しい事を投稿しておくのでよかったら見てください



オオカミ少年と蜘蛛の鬼

 ネギとアスナそして分身のマギは関西呪術の本山がある場所へ電車で向かっていた。電車の中ではネギとアスナが色々と話している光景でとても微笑ましい。そんな光景を分身マギは見ていたが、何故だろう何処か不安な所もある。

 

(分身の俺が嫌な予感を感じるのは結構危ないかも…な。面倒な事にならなければいいんだけどな…)

 

 分身マギはそう思いながら不快溜息を吐いた。と電車が目的の駅に停車したようで、ネギ達は電車から降りた。

 歩く事数分、ネギ達は本山の入り口にたどり着いた。本山の入り口は大きな鳥居に竹林と朱色の小さな鳥居がトンネルのように続いていた。

 

「これが関西呪術協会の本山…」

 

「伏見神社って所と似てますね」

 

 ネギは漸くたどり着いた本山の入り口を見て、カモは伏見神社と似ているとそう言った。

 

「京都だけに何か出てきそうね~」

 

 アスナは今迄色々な体験をしてきたせいか、口調はどちらかというと軽い方だ。分身マギは頬を掻きながら

 

「まッ何にしてもここの長に親書を渡せば任務完了ってわけだ。さっさと親書を渡しに行こうぜ」

 

 分身マギの言った事にネギとアスナは頷き、いざ本山に向かおうとしたその時、アスナの目の前に光る物が漂って来て

 

「ネギ先生、マギ先生にアスナさん、大丈夫ですか!?」

 

 小さい刹那が現れた。いきなり小さい刹那が出てきて、驚くネギとアスナ。彼女は連絡係の分身の様で、自分の事はちびせつなと呼んでほしいと言いながらお辞儀をした。ちびせつなの登場に呆然としているネギとアスナ。

 

「この奥には確かに関西呪術協会の長が居ますが、東からの使者であるネギ先生とマギ先生が歓迎されるとは限りません。罠などに気を付けてください。一昨日の奴らの動向もまだ分かっていませんし」

 

 ちびせつないっている事も一理ある。用心に越したことはない。アスナもハマノツルギをアデアットさせた。

 

「行くぞ!」

 

「うん!」

 

「分かったわ!」

 

 分身マギの掛け声でネギとアスナは鳥居のトンネルに突入した。

 

「あ…マギさん達、鳥居の中に行っちゃった…」

 

 近くで隠れながら分身マギ達の動向を覗いていたのどか、のどかも恐る恐ると言った歩調で鳥居のトンネルの中へと入って行った。

 鳥居のトンネルを走る事数十分。恐らくだがトンネルの中間地点へとたどり着いたネギ達。一度止まると鳥居の柱に隠れて様子を伺った。

 

「ねえさっきから何も起こらないけど、アタシ達の考えすぎだったんじゃない?」

 

 アスナが荒い息を整えながら、辺りの様子を隠れながら伺った。罠がある様子は無いように感じられ、アスナの言う通り考えすぎだったのかもしれない。まぁ何もないことに越したことはない。

 

「何もないならこのまま突っ切っちゃうわよ!」

 

「ハイ!アスナさん!!」

 

「まッ待ってくださいネギ先生アスナさん!油断は禁物です!!」

 

 アスナとネギは再び駆け出し、ちびせつなは2人を追いかけた。しかし分身マギはすぐさま駆け出そうと思わなかった。此処まで何も起こらないと言うのはかえって不気味である。それに何処からか見られているように感じ取った。

 

(……気のせいでありたかったな。まぁ此処まできちまったら前に進むだけか)

 

 分身マギは自分にそう言い聞かせ、ネギ達を追いかけた。分身マギが走り去った数秒後、鳥居の柱に文字のようなものが浮かび上がった。

 

「クク…」

 

 分身マギが感じていた視線の主だろうか。分身マギ達が走り去った後も不吉な笑い声を上げていた。

 

 

 

 

 

 

 分身マギ達は可笑しな事に巻き込まれることになった。かれこれ1時間以上は走っているだろう。もう関西呪術協会に辿りついていい頃合いだ。しかし…

 

「なんで……。なんで……。なんで鳥居のトンネルが終わらないのよ~~~!!」

 

 アスナが叫び声を上げながら鳥居のトンネルを走っていた。

 

「おかしいです、もう協会にたどり着いてもいい頃合いなのですが……!」

 

 ちびせつなももう協会に到着してもいい頃なのに何時になっても到着しない事に可笑しいと感じていた。

 バイトで体力の有るアスナが少し休もうと提案した。ネギとちびせつなも同意して少し休むことにした。

 ずっと走り続けていたためか、肩で息を吐くアスナとネギ。

 

「やはり可笑しいです…マギさんついてきて下さい!」

 

「なんで俺が…めんどくせぇ…」

 

 ちびせつなと分身マギが何時までもたどり着かない原因を探すために少し先に向かった。これで原因が何か分かると思った…しかし

 

「おい」

 

「「ワァッ!?」」

 

 背後から分身マギの声が聞こえて、驚きながら振り替えると、分身マギが不機嫌そうな顔で仁王立ちしていた。

 

「ちょっ!なんでマギさんがアタシ達の後ろにいるのよ!?」

 

「知るか。俺だってよくわからねぇんだからよ。前を走ってたのにいつの間にか戻ってきちまったんだよ」

 

 分身マギがアスナにそう言った。ネギとアスナは後ろから現れた分身マギに驚くが分身マギが

 

「おいネギ、お前ひとっ飛びして来い」

 

 分身マギに言われた通りにネギはちびせつなを連れて杖に跨り、ネギは空へと上がった暫くすると

 

「うわ何で!?」

 

 空に飛んでいたネギが行き成りアスナとぶつかってしまった。

 

「イタタタ…もぉ~何なのよぉこれは!?」

 

 アスナは訳が分からず喚き散らした。分身マギとちびせつなは此れで合点がいった。

 

「マギ先生これは…」

 

「あぁ、してやられたな。これはループ型の結界、俺達は結界の中に閉じ込められたってわけさ」

 

「「ええ結界!?」」

 

 アスナとネギは自分達が閉じ込められたことにただ驚きを隠せなかった。

 

 

 

「へへッアイツら簡単に罠にかかったやん。やっぱ所詮は餓鬼っちゅうことやな」

 

 分身マギのすぐ近く、ゲームセンターに居た少年が千草と一緒にネギ達の様子を窺っていた。ネギとアスナは如何すればいいか慌てふためいていた。

 

「フフ、これで足止めはOKや。アンタは此処で奴らを見張っとき」

 

「えぇ~メンドイなぁ~」

 

 千草に命令されて少年は面倒そうな顔をしながら言った。

 

「あのマギ・スプリングフィールドは分身だそうやけど、本物の実力もまだ未知数や。若しかしたら結界を突破する可能性もあるかもしれないえ。だからお前に護鬼を付けようえ…とびっきり強いの(・・・・・・・・)をな」

 

 千草はそう言いながら式神を召喚した。召喚された鬼を見て少年は若干顔を引き攣らせた。

 

「千草姉ちゃん結構えげつないもん召喚したなぁ~」

 

「おだまりや、あの坊やどもには一昨日痛い目にあわされたんやから念には念や…ほなら犬上小太郎しっかりやるんやえ」

 

 千草は去って行った。犬上小太郎ははぁとつまらなそうな溜息を吐いて

 

「こんな面倒な事やらんで、マギ・スプリングフィールドと本気で喧嘩やってみたいなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 分身マギ達はしばらくの間如何するか喚いていたが、アスナがトイレに行きたくなって(分身マギが小便かと聞いたら大声で喚きながらハマノツルギを振り回した)結界の中を走り回っていると、休憩所に辿り着いた。

 

「取りあえずは私達の状況を把握して、何とか打破出来る方法を探さないと」

 

 ちびせつなの言う通り、自分達の状況は良くないっていう事はネギやアスナでも分かっている。

 

「というよりも何で親書を渡すのを妨害するの?そもそも何で仲良くさせたくないのかしら?」

 

「それはおそらく、関東の人達が伝統を忘れて西洋魔術に染まってしまったことが原因の一つだと考えられます」

 

 アスナの疑問をちびせつなが分かりやすく教えてくれた。まあそれよりも、と分身マギが頭を掻きながら

 

「早く打開策を思いつかないとな、時間も余りないし」

 

 分身マギの体が少しだけだが、ジジ…ジジとノイズのようにぶれだした。

 

「俺は本体の魔力と気で作られた分身、魔力と気には限りがある。俺の体を構成できる時間はあと1~2時間って所だ。そういう事だからカモ、お前アスナにもうちょっと契約執行の効果を教えとけ」

 

「合点でさ。という事で姐さん、早速ですがあそこにある岩を思い切り蹴ってみてくだせぇ」

 

 カモが指差した方向にはアスナの膝ぐらいの大きさの岩があった。アスナは嫌々ながらも思い切り蹴ってみるが砕ける事も無く、アスナは案の定足を抑えながら片足で飛び跳ねていた。

 

「んじゃ今度は兄貴が姐さんに契約執行してみてくだせえ」

 

 カモの言われた通り、ネギはアスナに契約執行をする。アスナの体にオーラみたいな物が包む。そして先程と同じように岩を蹴ると木端微塵に砕け散った。これにはアスナも自分がやった事に引いた。カモ曰く、この状態ならプロのレスラーにも負けないという事だ。

 契約執行は従者が魔法使いから供給される魔力により身体能力を大幅にアップできる。ネギの魔力が尽きぬ限り、アスナは超人的なパワーが身に着くと言うわけだ。さらに体を覆う魔力により物理的衝撃を緩和できると言う優れものである。この力があったからこそ、刹那はアスナに戦闘を任せる事が出来たのだ。

 

「これでアスナさんが一応大丈夫なのは分かりましたが、ネギ先生の魔法の方は大丈夫なのでしょうか?」

 

 ちびせつなが尋ねると、ネギは何処か答えにくい顔をしていたが

 

「ネギは確かに魔法は強いが近接格闘がからっきしだ。正直相手に懐を入られたらお終いだな」

 

「ちょお兄ちゃん!?」

 

 分身マギがあっさりとばらしてしまった。そうネギは魔法は強力なのだが、近接格闘はからっきしなのだ。この前のエヴァンジェリンとの戦いのときもネギは殆どを魔法の力で戦っていたのだ。

 ハッキリ言って魔法が使えなかったら普通の子供との喧嘩でも勝てないだろう。

 しかしネギは有る事を考えた。それは…

 

「若しかしたら、僕が僕自身に魔力を貸したら同じように強くなれるのかな…?」

 

 因みに、ネギが何時も普通の子供以上の力を出せるのはその縮小版というものである。

 

「というかマギさんもたまに凄い力を出してるじゃない。あれはどうやってやっているの?」

 

 アスナが聞いているのは咸卦法の事だろう。マギは何時も魔力と気を合成して瞬発的に強力な力を出しているのだが

 

「アレは説明するのが面倒だから説明しない」

 

 と分身マギは説明を拒否した。

 

「まぁ兄貴は魔法に専念してくだせぇ。魔法使いを守るのが従者の務めってやつですし」

 

「そうそうネギは魔法を唱える事だけを専念していなさい。アイツらそんなに大したことなさそうだし、分身のマギさんと一緒ならどうって事もなさそうだし」

 

 アスナが自信満々で答えた。

 

 

 

 

 

 

「ほう…そら聞き捨てならないなぁ」

 

 しかし何処からか声が聞こえ、ネギ達は一斉に己の武器を構える。何処から来ても対応できるように警戒を怠らない。

 そしてその声の正体が遂に現れた。

 

 

 ドスンッ!!!

 

 

 と鈍い音を出しながらそれは落ちてきた。落ちてきた正体にネギ達は驚愕した。

 

「そんなデカい口を叩くんやらまずは俺と戦ってもらおか」

 

 ゲームセンターに現れた少年、犬上小太郎だった。

 ネギ達は小太郎が過激派の一人だという事にも驚いたが、小太郎と一緒に落ちてきた者に(中でもちびせつなが)驚きを隠せなかった。

 それは一昨日の着ぐるみ達よりも大きく足は6本更に頭の上に鎌のような腕が2本、背中に大きなこぶが2つ付いており、6つの眼が爛々と光っていた。頭には4本の角が

 まるで蜘蛛と鬼を一緒にした化け物であった。

 

「こッこれは鬼のミフチ!鬼の中でも中位の鬼!気を付けてください、この鬼は一昨日の着ぐるみが可愛く感じてしまうほど強力で厄介な鬼です!!」

 

 ちびせつなの言った事にアスナは確かにと思った。一昨日の着ぐるみ達は可愛らしいと思える見た目だったが、このミフチと呼ばれている鬼は恐ろしいと思える姿だ。現に口の鋏でネギ達を威嚇している。

 

「ほんなら始めようか、西洋魔術師……いや、ネギ・スプリングフィールド!」

 

 小太郎は拳を握りしめながら好戦的な笑みを浮かべていた。

 

 

 

「な…なにあれ…?」

 

 のどかは分身マギ達の近くの竹やぶに身を隠していたが、行き成り現れた現実離れの蜘蛛の鬼の化け物を見て、言葉が出なかった。それでものどかはその場を逃げ出さず、自分の本を握りしめた。

 

 

 

 小太郎は指の関節をボキボキと鳴らしながら笑みを浮かべ、ミフチはギシャーギシャーと唸り声を上げながら分身マギ達を威嚇していた。

 分身マギ達も拳と杖にハマノツルギにちびせつなも小さい刀を構えた。

 

「俺の名前は犬上小太郎!ネギ・スプリングフィールド、この俺と勝負や!…まぁ姉ちゃんに護られている貧弱な西洋魔術師なんかに、俺が負ける可能性なんてゼロやけどな」

 

 小太郎はネギに勝負を申し込んだが、最後は挑発的な台詞で終わらせた。小太郎はネギと同年代位だろうか?同じくらいの歳の少年の挑発にネギは思わずムッとする。

 

「ちょっとアンタ!ネギと同じくらいのガキンチョみたいだけど、その蜘蛛のお化けが仲間に居るからってずいぶん強気ね!こっちにはアタシとネギでも敵わないマギさんが居るのよ!そんな蜘蛛のお化けなんてパッパとやっつけちゃうし、アンタなんかケチョンケチョンに伸しちゃうんだから!!」

 

 アスナはハマノツルギを分身マギに向けながら(分身マギはだからハリセンをこっちに向けるなとツッコむ)叫んだ。如何いうわけか、小太郎は分身マギに目もくれない。ネギやアスナはこう思った。こう言った場合はロクな目にあわない…と。

 すると小太郎は呆れたような溜息を吐きながら分身マギを指差して

 

「アホぬかせ、其処に居るマギ・スプリングフィールドは分身やろ?どうせだったら本物のマギ・スプリングフィールドと戦いたかったわ」

 

 小太郎は此処に居る分身マギが分身だと知っているようだった。つまり囮作戦は失敗したという事だ

 

「俺らと行動している傭兵の兄ちゃんが言ってたけどな、『マギ・スプリングフィールドは、浅はかな考えしか出来ない』って言ってたんやで、しかも兄ちゃんは分身を一目で見抜いたんや…とそんな事はどうでもいいんや。其処の姉ちゃんはテキトーに伸しといて、ネギ・スプリングフィールドは俺がここで潰す!行け、化け蜘蛛!」

 

 小太郎に命じられ、ミフチはアスナに向かってくる。

 

「こうなったら囮作戦とかは如何でもいいでさ!姐さんはそのハマノツルギであの化け蜘蛛をズバーッと倒してくだせぇ!姐さんのその武器だったらあの化け蜘蛛に有効なはずですから!!」

 

「そッそうね!ネギお願い!!」

 

「はい!お願いしますアスナさん!!」

 

「ちょッちょっと待ってください!皆さん!!」

 

 ちびせつなの制止の言葉を無視してネギはアスナに契約執行をした。身体能力が極限まで上昇したアスナはハマノツルギを構えミフチに突撃する。

 

「ヤァァァッ!!」

 

 気合を入れて、アスナはハマノツルギを振り下ろす。しかし

 

「ギシャシャーッ!!」

 

 ミフチは一鳴きしながら蜘蛛の足をバネのように使い、アスナの攻撃を上に跳んで軽々と躱してしまった。

 

「えッ!?ウッ嘘!何で!?」

 

 アスナは攻撃が躱されると思っていなくて、思わず足を止めて戸惑ってしまう。

 

「だから待ってくださいと言ったじゃないですか!ミフチ程の鬼になると喋れはしませんが知力が高くなるんです!そんな安直な攻撃なんて簡単に避けられてしまいます!」

 

 ちびせつなの怒ったような説明にもっと早く教えてほしかった、とアスナは心の中でそう言う。そんな遣り取りをしている間にも飛び跳ねたミフチがアスナを上から押しつぶそうと落ちてきた。

 

「え?ちょちょちょ!!」

 

 アスナは自分の思考が追いつかず、あたふたしてしまう。アスナがこのままミフチに押しつぶされるかと思っていたが

 

「全く、面倒な事をすんなのよな」

 

 分身マギが素早く動いてアスナを抱き上げてミフチの押しつぶしを躱す。おまけにミフチの顔面に蹴りを入れる。顔面を蹴られたミフチは短い悲鳴を上げる。ネギはアスナが助かってホッとしているが

 

「なにボケーッとしとるんやネギ・スプリングフィールド!!」

 

 今度は小太郎がネギに迫ってきた。

 

「わッ!ふッ風花武装解除!!」

 

 ネギは小太郎に武装解除の魔法をかけたが、小太郎は手に持っていた護符の様な物でネギの魔法を防ぐが、完全には防げなかったようで、彼がかぶっていた帽子が花弁となり、犬のような獣の耳が現れた。しかしネギは小太郎に懐を取られてしまう。

 

「間合い、入ったで」

 

 小太郎はニヤリと笑う。ネギは直ぐさま障壁を張ろうとしたが

 

「どらぁッ!!」

 

 小太郎のパンチがネギの顔面にクリーンヒットし、ネギは大きく吹っ飛んでしまった。

 

「ねッネギ!?」

 

 アスナはネギが小太郎に吹っ飛ばされたことにアスナは驚愕してしまう。

 

「おいアスナ!ボサッとすんな!!」

 

 分身マギの怒声で、アスナは自分の目の前にミフチの大きな鎌が迫っているのに気付いてアスナは紙一重で躱す。ミフチはアスナに狙いを定めて、2本の大きな鎌を振り回す。アスナは何とか鎌を回避する。アスナの代わりにたけが両断される。

 

「このッ!女のばっか狙うんじゃないわよ!!」

 

 そう叫びながら、アスナはミフチの左側の鎌をハマノツルギで斬り捨てる。

 

「ギシャァ!?」

 

 ミフチは自分の鎌が斬られたことに驚きたじろいでしまう。

 

「よっしゃあ!流石は姐さん!」

 

 カモはアスナが有効な一撃を食らわしたことに喜ぶ。しかし

 

「まだです!アスナさん!」

 

 ちびせつががそう言った次の瞬間

 

「ギシャシャシャァ!!」

 

 ミフチが一鳴きすると、アスナが斬った鎌が霧散し、すぐさま鎌が元通りに再生してしまった。

 

「ええッ!?何よそんな卑怯な!!」

 

 アスナは鎌が再生したミフチを見て文句を言う。

 

「ミフチのような鬼は部位を破壊されても瞬時に再生してしまうのです!なので本体を直接倒さないと!!」

 

「そりゃ面倒な敵だなッ!!」

 

 ちびせつなの解説を聞きながら分身マギはミフチの顔面に同じように容赦なく殴った。先程と同じように分身マギに顔面を今度は殴られて怒り心頭のミフチはめたらやったに鎌を振り回す。鎌によって竹林が切り裂かれ、岩までも砕いてしまった。

 

「兎に角だ。今あの蜘蛛の化け物は周りが見えてねぇ。今のうちに態勢を立て直すぞ…それにネギの奴もけっこうヤバそうだしな」

 

 分身マギの言った通り、ネギの方を見てみると先程から小太郎のラッシュに防戦一方だった。やはり魔法がメインのネギでは近接タイプの相手とは不利な状況になってしまうのだろう。さらにネギは先程から障壁を張っているのに小太郎は、その障壁を抜いて来てネギに攻撃を加えている。このままだと完全に障壁を突破されしまう。

 

「ヤバいな…カモ!ちびせつな!!」

 

「合点でさ!おいちびせつな!!」

 

「分かってます!」

 

 カモが予め買っていたお茶が入っているペットボトルを小太郎に投げる。そしてちびせつなが呪文を唱えてペットボトルを爆発させる。爆発したお茶が水蒸気の霧の煙幕となり小太郎の視界を遮る。

 

「くそ!目くらましかいな!?」

 

 小太郎は何処にネギが居るかも分からず、やたらめたらに腕を振り回す。その間にもアスナがネギの腕を引っ張り一目散に退散する。

 霧が晴れるとネギの姿は何処にもなく、小太郎がポツンと1人だけいる状態だった。

 

「っ!!くそ、逃げられてもうた!!この臆病者!俺から逃げてもこっからは出れへんでーーッ!!」

 

 小太郎は悔しそうに地団駄を踏みながら叫び散らした。

 

 

 

 

 

 小太郎から上手く逃げだしたネギ達は小太郎から離れた場所の小さな滝が流れている池にて少しの間でも傷を癒す事にした。

 

「大丈夫、ネギ?ほらアンタそんなに血出して、ふくからジッとして」

 

「すみませんアスナさん…」

 

 ネギはアスナに血を拭ってもらい、お礼を言った。小太郎に一方的にやられていたが、障壁が守ってくれたおかげで傷は浅いようだった。

 

「油断していました。あの犬上小太郎と言う少年、あの歳であれほどの格闘術…それにあのミフチが厄介ですね」

 

 ちびせつなはこれからどうすればいいか考えていた。今のネギ達にとって小太郎とミフチは脅威な存在だ。

 

「もうマギさんにあのガキンチョと蜘蛛のお化け倒してもらうのが、一番いいんじゃないの?」

 

 アスナは分身マギに小太郎とミフチの相手をしてもらおうという考えのようだ。たしかに分身マギなら小太郎とミフチ程なら相手にならないだろう。しかし分身マギは溜息を吐きながら

 

「アホか、俺がアイツ等を相手するほどの時間はもうねぇよ」

 

 見れば分身マギの体のブレが先程の休憩所の時よりも激しくなっていた。残り時間が少ないのだろう今にも消えそうだ。それに…と分身マギはネギの方を向きながら

 

「あの小太郎はお前が倒せ。出来るよなネギ?」

 

 分身マギの言った事にネギはコクンと頷きながら

 

「僕はアイツに…小太郎君に勝つよお兄ちゃん」

 

 そう宣言した。

 

「ネギ!?アンタ無茶よ!さっきだって一方的にやられていたじゃない!それなのに一人で勝つなんて無茶よ!なんでマギさんも何時もだったら周りを頼れって言ってるのに!」

 

 アスナは納得できない様子だった。何時ものマギだったら一人で暴走しがちなネギに、もっと周りを頼れと言っているのに、今回は一人で勝てなど……これじゃあ矛盾ではないかとアスナはそう思ったが

 

「ネギの周りでは同じ歳であれほどの実力者は居なかった。同年代と戦う事で今の自分の実力を知る事が出来る今がその時だ。それに誰かに頼るのはいい。だが頼り過ぎたら駄目だ。頼り過ぎちまったら自分が壁にぶち当たった時にどうしようもないからな」

 

「それはそうだけど…でも!」

 

 分身マギの言った事にアスナはまだ納得がいかない様だった。

 

「大丈夫ですよアスナさん」

 

 ネギはアスナに心配しないでという風に頷いた。

 

「確かに僕はアスナさんに心配されるほどに未熟です。エヴァンジェリンさんに勝てたのもお兄ちゃんやアスナさんにカモ君の助けがあって何とか勝てました。だからこそ未熟な僕だからこそ、彼に勝たなきゃいけないんです。こんな所で負けていたら父さんを探し続ける事なんか出来はしないんです…心配しないでください。僕には勝算がありますから」

 

 そう言い終えてネギはアスナにサムズアップをした。そんなネギを見てアスナは呆れたような苦笑を浮かべて

 

「殴られて意地になっちゃって、やっぱそう言う所は男の子なのね」

 

「はい!僕だって男の子ですから!」

 

 アスナの言った事にネギは杖を掴みながら笑った。

 

「よし…んじゃ結構休んだことだし、反撃へと移るか」

 

 分身マギの言った事にネギとアスナは頷き、反撃へと移る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

「アスナさんお兄ちゃん!広い場所に出て迎撃します!」

 

「オッケー!!」

 

「了解!!」

 

 作戦を決めたネギ達は小太郎とミフチを迎え討つ為に広い場所へと出た。すると此方に向かってくる足音が聞こえてきた。ハマノツルギと杖を構えるネギとアスナ。上手くいくかはまさに五分と五分、だけどやるしかない。

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 風精召喚剣を執る戦友!!迎え撃て!!」

 

 ネギは詠唱を終えると、風の精霊の分身たちが召喚され、武器を持って小太郎を迎撃するために突撃しに向かった。

 

「ハハッ!漸く本気かちび助!!」

 

 小太郎は漸く本気の戦いが出来るのかと思うと心が震えてきた。小太郎に向かってくるネギの分身たちを蹴りや拳、更には隠し持っていた手裏剣なので蹴散らしていく。

 

「魔法の射手連弾・雷の17矢!!」

 

 しかしネギの攻撃は止まらず、今度は17本の魔法の雷の矢が小太郎を襲う。小太郎は咄嗟に護符で防御する…しかしこの攻撃はただのフェイントでしかない本命は

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 闇夜切り裂く一条の光 我が手に宿りて敵を喰らえ 白き雷!!」

 

「なッ!?があぁぁぁぁッ!!」

 

 今のネギが使える強力な魔法白き雷、先程の分身や魔法の矢は此れを小太郎に食らわすためのフェイントである。クリーンヒットしたのか小太郎は大きく吹っ飛ぶ。これでお終いかと思いきや

 

「ハッハア!今の中々やるやないかちび助!今のはちっと危なかったなぁ!おかげで持っていた護符が全部オシャカや!」

 

 小太郎は護符で攻撃を軽減したためか未だ健在であった。今此処で小太郎を倒せなかったのは痛い。さらに

 

「ギシャアァァァッ!!」

 

 ミフチが居るのだ。ミフチは自分に2度も攻撃してきた分身マギの姿を確認すると、アスナには目もくれず分身マギに向かって行った。ミフチは2本の鎌を振り回したり、口から糸を吐いたりして分身マギに攻撃してきた。

 

「出てこいや!犬神!!」

 

 小太郎は自分の足元から数体の黒い犬の式神を召喚した。

 

「あの姉ちゃんと兄ちゃんと遊んでやり!!」

 

 小太郎はそう命じると黒犬の式神は唸り声を上げながらアスナと分身マギに向かって行った。

 

「ちょ!何よこの犬は!?あっち行きなさい!!」

 

「くそ、デカい蜘蛛にすばしっこい犬どもなんて面倒な展開だな!!」

 

「うぉぉぉぉ!こっちにくんな!俺っちなんて食べても美味くねえぞ!!」

 

「えい!やぁ!たあ!!」

 

 ミフチの他にも素早い黒い犬たちを加えて、犬たちにハマノツルギを振り回すアスナに、ミフチの攻撃に加えて犬たちの攻撃を辛うじて躱す分身マギ。特になんの力も無く、犬たちに追いかけまわされるカモに、果物ナイフ程の刀を振って犬たちと戦うちびせつな。

 

「アスナさん!お兄ちゃん!!カモ君にちびせつなさん!!」

 

 ネギはアスナ達を助けに行こうとしたが

 

「ネギ!このバカ野郎!!目の前の敵に集中しやがれ!!」

 

 分身マギの怒声にハッとすると、目の前に小太郎の拳が迫っており、何とか掠りながらも回避した。掠ったネギの頬からツーッと血が流れ出す。

 

「ほぉ、戦いの最中に余所見とは余裕やな…でもその余裕、何時まで続くんやろうな!?」

 

 戦いの最中に余所見をされると言うのは小太郎のプライドが許さないのか、小太郎は攻撃のスピードを更に上げる。ネギは何とか躱したり、杖で防いだりしているが何発か攻撃を喰らってしまう。今は魔法の障壁で防いでいるが、その障壁も何時まで続くか分からない。障壁がなくなれば小太郎の攻撃をもろにくらってしまう。下手をすれば死んでしまう可能性もある。

 

「ねッネギ!…キャッ!?」

 

 今度はアスナがネギの事が心配になり余所見をしてしまう。そのアスナの頭すれすれにミフチの鎌が振られる。

 

「おいアスナ!今は自分の目の前の敵に集中しろ!!死にてぇのか!?」

 

 そう叫びながら分身マギはミフチの鎌と蜘蛛の足を蹴りで蹴り飛ばす。しかしミフチは瞬時に鎌と足を再生してしまい埒が明かない。それに加えて小太郎が召喚した犬も(カモとちびせつなは捕まって遊ばれている)居る。ハッキリ言って先程よりも状況は最悪である。小太郎の攻撃もだんだんネギに当たるようになってきた。

 

「ハハハ!護衛のパートナーが居なければ西洋魔術師なんてカス同然や!遠距離攻撃を凌ぎ!呪文を唱える間をやらんかったら怖くもなんとも!!」

 

 遂には小太郎の蹴りがネギの腹に入り、ネギは地面に叩きつけられた。ダメージも入り上手く動けない様子だ。

 

「勝ったで!これで終いや!!」

 

 小太郎は勝利を確信した。止めの一撃をネギに食らわせるために、ネギの懐に再度入ろうとした。

 

「ねッネギーーッ!!」

 

 アスナは悲鳴のような叫び声を上げた。もう駄目かと思った…しかしネギは

 

(!!此処だ!!)

 

 小太郎の攻撃を完璧に見切り

 

「契約執行0.5秒 ネギ・スプリングフィールド」

 

 

 

 ガシッ!!

 

 

 

 小太郎のとどめの一撃を捌く

 

「なッな…に?」

 

 小太郎は自分の攻撃が防がれたことに驚きを隠せなかったが、バキッ!と魔力により強化されたネギの拳が小太郎の顔面にクリーンヒットして大きく上へと打ち上げられた。小太郎は初めて殴られたことに困惑しているが、ネギの攻撃はまだ終わっていない。

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 闇夜切り裂く一条の光 我が手に宿りて敵を喰らえ」

 

(まッまさか!!?)

 

 小太郎はこの後の展開が簡単に予想できた。小太郎は背中からネギの手に乗っかりそして

 

「白き雷!!!」

 

 護符で防いでいた魔法の強力な雷を零距離で喰らった。

 余りの強力さに小太郎は一瞬意識が飛びそうになった。意識が飛びそうになって、小太郎は傭兵が言っていた事を思い出した

 

 

 ―――――気を付けろよ小太郎。ネギ・スプリングフィールドは確かにお前からしたら大した奴ではないかもしれない。しかし、ああいった人間は土壇場で何をしでかすか分からない。油断してやられない事だな―――――

 

 

 白き雷を喰らい、体が痺れて動けない小太郎はそのまま地面に叩きつけられた

 

(かッ体が全く動かん…あのちび助、傭兵の兄ちゃんが言っていた通りピンチをチャンスへと変えよった!!)

 

「どうだ!これが僕の力だ!!」

 

 ネギはいきも絶え絶えでフラフラになりながらも小太郎にそう言い切った。

 

「よっしゃあ!流石兄貴!まさか勝っちまうなんて流石でさぁ!」

 

 何とか犬から逃げられたカモがネギが小太郎に有効打を入れて、小太郎が動かない事に大歓声を挙げた。犬たちも主人の小太郎が倒れた事に動揺を隠せない様子だ。

 

「もうこの化け蜘蛛なんか無視してさっさと脱出方法を探すぞ!!」

 

 小太郎も倒したことで、ミフチに構う事も無い。さっさと脱出方法を探そうと提案する分身マギ。それにはネギとアスナも賛成する。

 しかし分身マギ達は知らない。狗族にはまだ能力がある事を…

 

「まッまだや!!まだ終わってないで!!」

 

 小太郎が痺れている体を無理やり起こそうとした。それだけならまだいい、しかし小太郎の髪が伸びてきてだんだん白くなっているように見える。

 

「たッただの人間、それも俺と同じくらいのガキにここまでやられるなんえ初めてや…さっきのは取り消すで、ちび助……いや、ネギ・スプリングフィールド!こっから…こっからが本番やネギ!!」

 

 そして小太郎が再度起き上がった時には先程の面影など無く、手足が大きく鋭い爪が生えて、髪も銀色の白髪になり、獣の耳が一回り大きくなり、尻には髪の色と同じ大きな尻尾が現れた。

 

「ちょ!そんなのあり!?」

 

「獣化!?変身したのか!?」

 

 アスナとカモは小太郎が変身したことに驚きを隠せなかった。しかしただ姿が変わったわけではない。

 

「オラァッ!!」

 

 小太郎がネギに拳を振り下ろし、ネギが回避すると

 

 

 ドガァァァァンッ!!

 

 

 たった拳一発で地面が陥没するほどの威力。獣化すると攻撃が大幅に上昇するようだ。

 

「くッ!仕方ない!!」

 

「無茶ですぜ兄貴!さっきでほとんどの魔力を消費したんですぜ!?あんな奴無視して今は脱出の事だけ考えてくだせぇ!!」

 

 ネギはカモの忠告を無視して、自分に契約執行して身体能力を上げた。

 

「へッいいでネギ!とことんやろうやないか!!」

 

 小太郎もネギのまだ戦う姿勢を見て嬉しくてたまらない様子だ。更にスピードを上げて、ネギの視界から小太郎の姿が消えた。速すぎて何処から攻撃が来るか分からなかった。右か左か迷っていると

 

「左ですネギ先生!!」

 

 突然のどかの声が聞こえながらも、ネギは咄嗟に右に避けると、左方向から小太郎の攻撃が来た。ネギや分身マギが振り返ると

 

「ハァ…ハァ…!」

 

 大きな本を持ったのどかが其処には居た。

 

「のどかさん!?」

 

「のどかお前何でこんな所に!?」

 

「ほッ本屋ちゃん如何して!?」

 

 ネギに分身マギとアスナが何で此処にのどかがいる事に疑問に思った。

 

「えッえーとそれは…あの」

 

 のどかは何か理由を言おうとしたがのどかが本を持って

 

「ネギ先生!右です!!」

 

 と小太郎の右からの攻撃

 

「上です!!」

 

 上からの踵落とし

 

「みッ右後ろ回し蹴りだそうです!!」

 

 小太郎の右後ろ回し蹴りが来ることをネギに教え、ネギは小太郎にカウンターを決めた。のどかは小太郎の攻撃を全て読んでいた。当の本人である小太郎も信じられなかった。

 

「う…うぐ!」

 

 しかし今はそんな事は如何でもいい、ネギの魔力が底をつきそうだった。早く脱出方法を探さないとネギが危ない。するとのどかが

 

「あッあのカモさん、私大体ですが状況を理解できています。とにかく此処を出ればいいんですよね?」

 

 と普通にカモに話し掛けていた。普通に話し掛けられたカモも思わずたじろぐが

 

「おッおうそうだが、何か知ってるのか?」

 

 カモはのどかにそう聞くと、のどかは大きく息を吸って

 

「小太郎クーン!此処から出るにはどうしたらいいんですかぁ!?」

 

 と大声で尋ねた。アスナやカモは思わずズッコケそうになった。何故敵である小太郎に聞くのだろうとツッコミを入れてしまいそうになるほど

 

「バカか姉ちゃん!俺が簡単に教えるわけないやろが!!」

 

 小太郎はそう言い終えた。しかしのどかが持っている本を見た。さっきはチラッとしか見ていなかったが、のどかが本を見ながらネギに次のどの攻撃が来るかを教えていた。

 

(まッまさかあれは!?)

 

 小太郎は気づくのが遅すぎた。そうのどかが持っている本にはもう脱出方法が出ているのだから

 

「っここの広場から東へ6番目の鳥居の上と左右の3箇所の隠された印を壊せばいいそうです」

 

「なッなんとぉッ!!?」

 

「凄い本屋ちゃん!!」

 

 カモやアスナはのどかが簡単に脱出方法を探し当てた事に吃驚仰天である。これでもう脱出出来るも当然だった…しかしそう簡単に事は進まない

 

「ギャギャギャアァァァッ!!」

 

 今迄黙っていたミフチが唸り声を上げながら、のどかに迫ってきた。魔法に関係ない普通の人間を消すつもりなのだろうか、理由は分からないが、今はのどかの命が狙われているようだ。

 

「なッその姉ちゃんは関係ない!止まれ!止めんかい!!」

 

 小太郎の命令にも無視してミフチはなおものどかに迫る。

 

「いけない!本屋ちゃん逃げて!!」

 

「はッはい!!」

 

 アスナにそう言われ、逃げ出すのどか。アスナはのどかを逃がそうと足止めをしようとしたが

 

「ギャギャァッ!!」

 

「キャアアッ!!」

 

 ミフチの突進で吹き飛ばされてしまい、地面に叩きつけられる。

 

「ハァハァハァッ!!」

 

 のどかは必死に逃げたが、どちらかというとどんくさいのどかはどんどんミフチに距離を詰められてしまう。そして

 

「キャッ!?」

 

 ちょっとした段差で躓いてしまう。のどかが倒れている間にも

 

「ギャギャギャギャ!!」

 

 ミフチがのどかに辿りついてしまい、今まさに2本の鎌を振り下ろそうとした。

 

「駄目!本屋ちゃん逃げて!!」

 

 今から走っても間に合わない。アスナはのどかに逃げろと叫んだ。しかしのどかの目の前には恐ろしい蜘蛛の化け物の顔があり、恐怖で動けない。

 

「ギシャシャアァァァァッ!!」

 

 ミフチの鎌がのどかを貫こうとした。

 

「イヤァァァッ!マギさぁぁぁんッ!!」

 

 のどかはマギの名を叫んでギュッと目を瞑った。自分はこれからあの大きな鎌に貫かれるんだとそう思っていた。しかし

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、人の大切な生徒に手ぇ出そうとしてんじゃねぇよこのクソ蜘蛛が!!」

 

 残りの魔力と気をほとんど使用して、のどかの元に駆け付けた分身マギが自分の腕でミフチの体を貫いた。

 

「ぎ…シャ…シャアァァァ…」

 

 ミフチは断末魔の叫び声を上げることなくか細い声を出しながら塵となって消滅した。

 

「あ…え…?」

 

 のどかは自分が助かった事に呆然としていると

 

「おいのどか、大丈夫か?」

 

 分身マギの声が聞こえ、上を見上げると分身マギがのどかを心配そうに見ていた

 

「まッマギさん…!!」

 

 のどかは分身マギに助けてもらった事に嬉しさと先程まで死ぬかもしれなかった恐怖で顔が嬉しさと怖さが混じった涙で顔がグチャグチャになっていたが、分身マギの体が今にも消えそうなほどに半透明になっていた。

 

「まッマギさん!体が!!」

 

「あ?…ったくあの化け蜘蛛を倒すのに魔力と気をほとんど使っちまったな。この体を維持できるのもあと数分ってとこだな…」

 

 分身マギは頭を掻きながらのどかに立てるかと聞いたが、怖さで腰が抜けて立てないとのどかはそう言う。分身マギはやれやれだぜ…と呟きながら

 

「よいしょっと」

 

「きゃッまッマギさん!?」

 

 のどかを横抱き、つまりはお姫様抱っこで持ち上げた。

 

「兎に角時間も無い。ネギ、アスナさっさと脱出するぞ」

 

「了解お兄ちゃん!」

 

「分かったわ!!」

 

「ちょ待てぇネギ!まだ勝負はついてへんで!!」

 

 ネギは小太郎の攻撃を避け、杖に跨ると魔法の矢を3本だけ発射し、先程のどかが言っていた東から6番目の鳥居の隠された3箇所の印を打ち抜いた。

 印が破壊されたことによって空間に亀裂が発生した。

 

「アスナさん!あの亀裂にハマノツルギを!!」

 

「任せておりゃ!!」

 

 アスナは空間の亀裂にハマノツルギを振り下ろした。亀裂は大きくなり、遂には結界が破壊されたのだ。

 

「やったぁ!!」

 

「脱出成功!!」

 

 ネギ達は無事、結界の外に脱出出来たのだ。

 

「んな!そんなのアリかいな!?」

 

 小太郎はこうもアッサリと脱出されたことにツッコんだ。

 

「まだです!まだ小太郎君が追ってきます!」

 

 ネギの言う通り、まだ小太郎がにがさへんで!と叫びながら追って来ていた。

 

「任せてください!再度結界を閉じてヤツを封じ込めます!無間方処返しの術!!」

 

 ちびせつなが破壊した結界を又閉じて、小太郎を結界の中に閉じ込めてしまった。小太郎はあと一歩の所で一人だけ結界の中に閉じ込められてしまった。

 

「くッくそ!逆に閉じ込められてしもうた!…あぐッ!」

 

 小太郎は獣化を解除してその場で倒れてしまった。獣化を解除したことにより、耳は元の大きさに戻り、獣の手足も人間の手足に戻った。本当は白き雷のダメージが残っていたのに無理やり獣化したのである。本当にもう一歩も動けない状態だった。

 

(あのパンチと雷…凄い威力やった。無理矢理獣化したのはええけど、あのままやってれば負けてたのは俺の方か…?へへ…ネギか…西洋魔術師のクセにやるやないか…)

 

「へへ…ネギ覚えとれよ、次は負けへんで!!」

 

 小太郎は寝ながら拳を高々と空へと掲げた。

 こうして苦戦をしながらもネギ達は関西呪術協会の過激派の一人、犬上小太郎を撃退できたのだった…




はい今回は小太郎との戦いです
今回は原作とは違う点ですが
原作ではアスナに簡単にやられた小太郎と現れた蜘蛛の式神
原作では鬼蜘蛛という名前でしたが、今回ネタとして
ヴィータの狩ゲーの一つである「討鬼伝」の敵モンスターのミフチと言うキャラを出してみました。討鬼伝を知らない人は公式サイトや動画サイトで検索してみてくだい。
見た目が完全に蜘蛛なのでだったら出してみようと考えていたんですよね
それと修学旅行編で他にも討鬼伝のモンスターを出そうと思っています

今回で今年の投稿はお終いだと思います。約半年、自分めの小説を読んで下さった方
登録してくださった方評価してくれた方々、ありがとうございました。
来年も頑張って投稿していきますので、応援よろしくお願いします


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