堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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ちびっこ達の神隠し

 プールス、カモ、風香史伽が何故アーチャーと一緒にいるのか、それは強制転移された日まで遡る。

 

「―――ここは、どこ……レス?」

 

 目映い光と衝撃波が去り、目を開けたそこは草木も生えていない渓谷であり、ぽつんとただ1人。プールスは立っていた。

 

「マギお兄ちゃん、ネギお兄ちゃん、アスナお姉ちゃん、エヴァお姉ちゃん、のどかお姉ちゃん……」

 

 皆の名を呼ぶが、返ってくるのはしんと静まり返った沈黙であった。

 周りに誰もいない。その事実がプールスの幼い心に深く突き刺さる。

 涙が溢れそうなのを堪える。今流してしまえば立ち直るのは難しくなりそうだから。

 しかし静かな渓谷はプールスの孤独な心を刺激する。

 耐えきれなくなったプールスは大声で泣き叫びそうになった。

 

「ぉぉぉぉぉぃ──おおおおおい、だれかいねえかぁ」

 

 遠方から見知った者のか細い声が聞こえる。

 流れそうになった涙を強引にぬぐい、目を擦るとカモがとことこと歩いているのが見えた。

 

「あぁ、兄貴も大兄貴もアスナの嬢ちゃんもいないで俺っちたった一匹、こんな誰もいない所に飛ばされるなんて……このカモミール・アルベール、一巻の終わりかも「カモおじちゃん!!」なぁぁぁぁ!?」

 

 小さいカモにプールスが飛び込んできた。そしてぎゅっと抱き締める。

 

「カモおじちゃん! カモおじちゃんレス!!」

「うごおおおおおお! プールスの嬢ちゃん、俺っちに会えて嬉しいのは分かるがちと力を緩めてくれ! このままじゃ俺っち熊の敷物みたいにぺっちゃんこになっちまうぜ!」

 

 めきめきとカモの骨が軋む音がし始めたので、カモに謝罪し抱き締めるのを止めたプールス。

 

「しかし、プールスの嬢ちゃんに合流出来たのは俺っちの運もまだまだ尽きてねえな! それでプールスの嬢ちゃん、嬢ちゃんの他に誰かいるのか?」

 

 首を横に振り、自分1人しか居ないことを告げるとそうかとあからさまにしょげるカモ。

 

「まぁ俺っちがしっかりサポートするから、今はこんな辛気臭い所を一刻も早く出て明るい場所に行こうぜ」

「はいレス!」

 

 いざ出発しようとしたその時

 

「おおおおおい! そこに居る誰かぁ!!」

「助けて欲しいです!」

 

 後方から2人、こちらに走り寄ってくる声が聞こえる。

 振り返り、そこにいたのは予想外の人物であった。

 

「風香お姉ちゃん、史伽お姉ちゃん!」

「よりによって一般人組の双子かよ……」

 

 プールスは嬉しそうに、カモは落胆の溜め息を吐いた。

 

「ここ何処なんだよ!? さっき凄い光で何も見えなくなったと思ったらこんな変な所に居るんだから!」

「マギお兄ちゃんは何処なの? それに此処なんか怖い……」

 

 風香は詰め寄り、史伽は恐怖で身体を震わせる。どちらも急な事にパニックになっている。

 プールスは2人のパニックに感化されそうになったが

 

「俺達は強制転移で何処に飛ばされたのか分からず仕舞い。それに兄貴達とも連絡が取れない言わば詰み状態ってわけさ」

 

 カモが現在の状況を簡潔に教えてくれた。風香と史伽はぽかんとしていたが

 

「「オコジョが喋った!?」」

「まぁそれが普通な反応だよなぁ」

 

 至極当然な事を呟くカモであった。

 

 

 

 

 

 プールス達は少し歩き、安全そうな洞窟を見つけこれ迄の事を風香と史伽にカモが教える。

 

「──とまぁこんな感じで兄貴と大兄貴は親父であるナギ・スプリングフィールドを探そうと魔法世界に来たわけだが、敵に襲われて、まんまとしてやられて俺っち達は強制転移魔法で飛ばされて気づけばこんな辺鄙で気味が悪いな場所に居るわけだ」

「そんな、マギお兄ちゃんはそんな危険な事をしてたなんて……」

「マギ兄ちゃんも何で僕達になにも言わなかったんだよ!」

(そりゃあ何も力の無い一般人組は足手まといになりかねないって言えないなぁ)

 

 除け者にされたと頬を膨らませる風香にキツイ事を言うのは酷だと思ったカモだが、ここはあえて現実を突きつけることにした。

 

「風香の嬢ちゃん、嬢ちゃんは魔法世界って聞いて物語とかのメルヘンな世界をイメージしたかもしれないが、魔法世界はそんな生易しい所じゃねえ。治安が良い場所から離れれば悪い悪党なんてごまんといるし、ドラゴンといった人を襲う魔法生物だっているんだ。自衛の手段を持たない嬢ちゃん達は言っちゃ悪いが足手まといになるかもしれないからな」

「だ、だったらカモおじちゃんやプールスはどうなんだよ! カモおじちゃんはオコジョだし、プールスはボクらよりも小さいじゃないか!」

「まぁ確かに俺っちは何の力を持ってないオコジョ妖精。けど、俺っちは頭脳専門。持ち前の知識でサポートするのが役割だ。そしてプールスはただの女の子じゃあない。マギの大兄貴が気になってイギリスまで着いてきた嬢ちゃん達とはわけが違うぜ」

 

 好意が分かるカモには風香と史伽の考えなどお見通しだ。何も言い返せず黙っている風香と史伽である。

 

「カモおじちゃん、誰か来るレス……」

 

 外へ気配を張っていたプールスはカモへ報告をする。それを聞き皆に緊張が走る。

 こんな人気のない場所にまともな人がいるはずもないだろう。

 いや、そもそも"人"ですら怪しいものである。

 いざというときは隠し持っているマグネシウムとチャッカマンで相手の目を潰す準備は出来ているカモ。プールスも直ぐに動けるように準備をしていると

 

「──―妙な気配を感じたと思いきや、まさか君たちだったとはな」

 

 仲間ではなく、マギを必用に付け狙うアーチャーであった。

 

「……よりによってアンタかよ。アンタ1人なのか? お付きのあのきわどい格好の姉ちゃんは一緒じゃねえのか?」

 

 アーチャーに舐められないように世間話をするかのように、話しかけるカモ。警戒のアンテナはびんびんに張って。

 

「今回はマスターはマギ・スプリングフィールド達がどうなったのか情報を集めるために別行動中だ。この地に用があるのは私だけだからな」

「こんな何にもない場所に何の用があるってんだよ。とても興味深いね」

「……何故そこまでづけづけと入り込もうとするのかな?」

 

 カモが飄々とした態度にアーチャーは気配を鋭くする。バイザーで隠れているが、目線も細く鋭利になっているだろう。

 

(カモおじちゃん……)

(プールスの嬢ちゃん、今は俺っちに任せてくれ)

 

 心配で小声で話すプールスに同じく小声で返すカモ。カモなりに何か考えがあるのだろう。

 

「頼みがある。俺っち達が仲間と合流するまで俺っち達を護ってくれ。俺っちこのなりで戦う事は出来ないし、プールスの嬢ちゃんもまだ子供だ。それにあっちにいる双子の嬢ちゃんは魔法を知らない一般人だ。仲間と合流するまでに無事なんて都合よくいくなんてこれっぽっちも考えてない。だからこそ、アンタに護衛を願いたいってわけさ」

 

 そう言ってカモは頭を下げた。まさかの敵に護って欲しいという提案にプールスに風香と史伽もざわついている。

 これには流石のアーチャーも面食らったようで

 

「私と君達は敵の間柄だと認識しているのだがな。私が君達を護る事に何のメリットがある。むしろ君達を見殺しにした方がマギ・スプリングフィールドのメンタルを傷つける事が出来ると思わないかね」

 

 正論である。アーチャーがカモ達を護る事に何のメリットもないのが現実だ。それどころかカモ達を見捨てる方がアーチャー自身都合がいいのだ。

 かもなとカモも数回頷く。カモ自身アーチャーが自分達を見捨てた方が都合が良いことなど百も承知だ。なのに何故カモは余裕そうな態度をとるのか

 

「だってアンタ、根っからの悪人っていうわけではないだろ?」

「……何?」

 

 アーチャーは眉を寄せる。まさか自分が悪人ではないと言われたのが予想外であったようだ。

 

「アンタは確かにマギの大兄貴の仇敵みたいなもんだが、俺っち達と遭遇しても冷酷に葬ることをしていない。それにアンタ弓兵を自称してるんだ。遠目で俺っち達の事を見てマギの大兄貴が見えなかったから接触してきたんだろ?」

 

 図星だった。アーチャーは魔力を使い、遠くからカモとプールスが風香と史伽と合流し、マギが居ないのを見て、非戦闘員の風香と史伽を見殺しするのは良心の呵責を感じ、偶然出会ったかのように装って接触を試みたであった。

 

「あんた、仲間にお人好しって言われたことあるだろ」

 

 アーチャーが黙ったのを見て、ニヤニヤ笑うカモを見て、別にコイツだけなら伸しても構わないだろうかとよぎったが、深い溜め息を吐きながら

 

「……私の目的の邪魔をしない。この条件を呑めば私は君達を仲間の元へ送り届けると約束しよう」

「分かった。んでその条件ってのは?」

 

 余裕な態度を取っているカモであるが、目の前のアーチャーがこの人の居ないような場所にただ単身で乗り込んできた訳はある程度予測出来ていた。

 

「この地にある不死を断つ刀。それを手に入れるまでは私の邪魔をしないこと。たったそれだけだ」

 

 不死を断つ。それは即ちマギを倒すために手に入れるつもりだ。

 プールスや風香史伽はマギを狙っている武器を手に入れる事に驚いていたが、カモはこの流れを読んでいたので

 

「分かった。俺っち達はアンタの邪魔はしない。その代わり、アンタも俺っち達を護ってくれ。いいか?」

「あぁ、交渉は成立って事で宜しいかな?」

「カモおじちゃん!?」

 

 プールスはカモが勝手にアーチャーと契約を結んだ事に意義を唱えるが

 

「プールス、俺っちはお前達をマギの大兄貴の元へ無事に合流させたい。そのためなら俺っちは敵に媚びへつらうのも躊躇わない。確かに俺っちの行為は裏切り行為でもある。でも、リスクを減らすためなら俺っちは頭を下げてやるさ」

 

 けどなとカモは不敵に笑いながら

 

「マギの大兄貴がそうやすやすとアンタに負けるなんて俺っちは微塵も思ってないからな」

 

 カモは信じていた。マギがアーチャーに負けることは絶対にない。

 

「大した自信だな。その根拠は何処から来るのかね?」

「根拠ならあるぜ。アンタ2回もマギの大兄貴に負けてるじゃねぇか。一度目は修学旅行で。二度目は学園祭で。強力なアイテムを手に入れたからってそう簡単に形成逆転が出来るもんか?」

「そうだな。最初は認識の甘さ。次は準備の甘さの結果だ。しかし3度目の正直と言うだろう? 次は負けないさ」

「へっ言うじゃねえか。ま、精々頑張りな」

 

 少々な舌戦を繰り広げ、カモとアーチャーが契約を結ぼうとしたその時。

 

「嫌だ!!」

 

 風香が叫んだ。皆が一斉に風香を見るが、風香は構わず叫び続ける。

 

「忘れるもんか! こいつはマギ兄ちゃんに酷いことした奴なのに何でこいつの手助けをしなきゃいけないんだよ!!」

「風香の嬢ちゃん、嬢ちゃんの気持ちも分かるがここは呑んで──―」

「うるさい! カモおじさんの裏切り者! もうボク1人で皆と合流する! こんな奴のやることなんて邪魔してやる! 皆はコイツに護られながら尻尾振ってればいいんだ!!」

 

 一気にまくしたて、最後は叫びながら洞窟を飛び出した。外は危険な筈なのに愚かな行動に走ってしまった。

 

「風香お姉ちゃん待ってレス!」

「外に出たら危ないよお姉ちゃん!!」

 

 史伽とプールスが飛び出していった風香を追いかけるために自らも飛び出していった。

 取り残されるカモとアーチャー。

 

「あー、やっぱり納得してもらう方が無理があったか。風香の嬢ちゃん連れ戻して来るからさっきの護衛の件なかった事にするんじゃねえぞ!」

 

 アーチャーにそれだけ言うとカモも風香を追いかけるために飛び出していった。

 洞窟にぽつんと取り残されたアーチャー。何か思う所があったのか黙っている。

 アーチャーの脳裏に浮かぶ光景は泣きそうになりながらも気丈に笑顔で”本来の記憶の持ち主”を見送ろうとしている赤い少女の姿があった。

 

「……やれやれ。あの小動物の言う通り、とんだお人好しのようだな私は」

 

 自虐的な笑みを浮かべ、アーチャーも洞窟を後にした。

 

「お姉ちゃん待って! 待ってってば!」

 

 洞窟から数百m離れた所で史伽が風香を捕まえる。

 

「離せよ史伽! 史伽もマギ兄ちゃんを裏切ってあの悪者に着いていけばいいんだ!」

「私だってマギお兄ちゃんに酷いことした人と一緒にはいたくないよ! でも、今は意地を張ってもマギお兄ちゃんには会えないんだよ!」

「でもだからってアイツに着いて行こうとするなんて! 史伽の裏切り者!」

「んな!? 言うこと書いて裏切り者とかお姉ちゃんのバカ

 」

 

 そのまま口喧嘩が勃発し、周りのことを考えずに大声で互いを罵り合う双子の姉妹。

 少しして風香と史伽に追いついたプールスとカモは喧嘩を止めようとして、なにかの気配に気づき上を見上げ、さっと顔を青くする。

 

「か、カモおじちゃん……」

「分かってる。嬢ちゃんら、黙って静かにこっちに来るんだ。絶対に叫ぶんじゃあないぞ」

 

 頭に血が登っててもプールスとカモが来ているのは気付いていた双子は尋常じゃないプールスとカモの態度に一度喧嘩を止めて上を見上げてしまった。見上げなかった方が良かったかもしれない。

 何故なら────龍のように巨大な白い大蛇がじっと風香と史伽を見ていたのだから。

 

「「──────!!」」

 

 声にならない絶叫を上げた2人であるが、直ぐに両手で口を覆い声を抑える。そして言われた通りにゆっくりと下がりカモとプールスの元へ行こうとするが、恐怖のせいか思った通りに足が動かない。

 お願い、どうか気づかずにどっかいって。必死に懇願する風香と史伽。

 因みに蛇に外耳はなく、音を感じ取る内耳は体の中に埋もれており、体の表面にあたった音が振動として内耳に伝わり、音を感じ取っている。 人間のように音を聞き取ることはできないが、全身を使って音の振動を感じ取れることから、聴力自体は他の動物よりも優れている。

 さらにかなりの巨体。普通の蛇よりも何倍も優れているだろう。つまり何が言いたいか

 

「────」

 

 声を抑えてもさっきの絶叫で風香と史伽の事はもう分かっていた。

 

「逃げろぉ!!」

 

 カモが叫んだのと白い大蛇が大口を開けて襲いかかるのはほぼ同時だった。

 紙一重で躱す風香と史伽。避けられたのが奇跡である。

 さっきまで2人がいた所は大蛇によって大きく抉られていた。

 あと数秒遅かったらと最悪のイメージをする前に3人と1匹は急いで大蛇から離れるために駆け出す。

 大蛇は人間の少女2人スライムの少女1人そして小動物を食らっても腹の足しにはならない事は承知していた。

 目の前に現れた獲物はただの遊び道具。自分はこの渓谷の主、王は何をしても許される。

 崖に自身の体を打ち付け、大きめの石や岩をあえて当たらないように調整し獲物に落としていく。

 そうだ、逃げろ逃げろ。逃げても意味がなく絶望した後に羽虫のように潰し、食らってやろう。

 

「あう!!」

「お姉ちゃん!?」

 

 風香が躓き転んでしまった。直ぐに史伽が助けに行く。

 

「お姉ちゃん立って!」

「っ……ごめん、足を捻ったみたい。史伽、ボクをおいて逃げて」

「何言ってるのお姉ちゃん! 馬鹿なこと言ってないで立って!」

 

 足を捻ってもう素早く走れないと悟った風香は史伽に逃げろと言うが史伽はそれを遮り早く立たせようとする。

 

「風香お姉ちゃん立って! 立つんレス!」

「何諦めようとしてんだ風香の嬢ちゃん! マギの大兄貴に会うんだろうが! だったら諦めるんじゃねえ!」

 

 プールスが少しでも抗おうと腕を硬質化して皆を護ろうと大蛇の前に立ち、カモは史伽の手伝いをしながら風香へ必死に呼びかける。

 やれやれこの玩具はもう終わりか。仕方ないさっさと潰して次の獲物か玩具を探すとしよう。

 大蛇は巨体を持ち上げると自身の体を武器のように振り下ろした。

 

「ごめん史伽、さっき裏切り者って言っちゃたけど、あれ本心じゃなかったんだ」

「そんなの今はいいから! 立って!」

 

 プールスは両手を組んで大きな盾を形成するが意味がないと理解はしていた。

 もう駄目だと諦めせめて少しでも恐怖を和らげるために両目を強く瞑った。

 しかし諦めていながらも風香と史伽、そしてプールスは強く願っていた。

 

 ―――マギお兄ちゃん助けて! 

 

 そして願いが通じたのか1本の閃光が大蛇に向かい、轟音を上げながら爆発した。大蛇は玩具で満足せずにその意識を手放したもであった。

 体が文字通り消し去って力なく崩れ落ちる大蛇を見て自分達が助かったのだと少しずつ理解していると

 

「やれやれ、危険だらけだというのに勝手に飛び出してからに。でも、無事で本当に良かった」

 

 どこか芝居かかっているが、心配げな優しい声色に振り返ると

 

「それで、護衛の件はOKということで構わないのかな?」

 

 バイザー越しではあるが不敵な笑みを浮かべ弓を携えているアーチャーを見てゆっくりと頷くしかないのであった。

 

 

 

 

 

 

 アーチャーと共に行動することになり、驚く事を知ることになる。

 ここの土地は外界と隔絶されているらしい。試しにプールスが持っていたバッジで連絡を取ろうとしても壊れているわけではないのにうんともすんとも反応しない。

 アーチャー曰くこの原因はアーチャー求めている武具に関係しており、皮肉にもアーチャーがそれを手に入れないと自分達はここから出られないと分かった。

 さらに隔絶されているせいか、ここの情報を誰も知らないらしい。

 それなのに噂に尾ひれがついて、ここには素晴らしい宝が眠っているなんて話でトレジャーハンターが意気揚々と入り、プールス達のように事故でこの地に飛ばされた者が戻ってくることはなかった。

 何年も何十年も人が戻ってくることはないこの地を人は『神隠しの地』と呼んでいた。

 目的の場所に向かう道中、カモやプールスはここの地が如何に危険で自分達の命を刈り取ろうとしているのかを身を持って理解することになる。

 

『────』

「きゃあああああ!! 首無しのお化けだぁぁぁぁ!!」

「こわいよおぉぉぉ!!」

「カモおじちゃん攻撃が効かないレス!」

「普通の攻撃が無効化されてるのか!? それとアイツを見てると心臓を締め付けられるような怖さが……!」

「ここは引くぞ! 早くするんだ!」

 

 見るも無惨な首無しの怨霊が襲ってきたり

 

『ウキャアアアア!』

「今度は武装した猿軍団があああああ!!」

『ウギョアアアアアアアア!!』

「それと巨大なお猿さんだあああああ!!」

 

 錆びた武器を装備した猿軍団と獅子猿に襲われたり

 

「わぁ、きれいな所。ここなら安心──―」

『ゴボァアアアアアア』

「いやあああ!! 今度は巨大鯉だあああ!!」

 

 巨大な湖の中にある雅な宮殿で一休み出来るかと思いきや、湖から巨大な鯉が現れ、呑み込もうと大口を開けてきた。

 ……とこのようにあらゆるものがプールス達を殺しにかかっていた。

 というよりこの地全体が殺意増し増しといった所だろう。

 まず倒せない怨霊の他に死角から現れた猿軍団。そして油断していた所で巨大な鯉。所謂初見殺しのような配置に辟易してしまいそうだ。

 それにプラスされるように敵全体の攻撃力が高い。猿軍団も油断したら直ぐに集団で袋叩きにされてしまいそうだった。

 数多の危険を掻い潜り目的の場所へと目指すプールス達。

 救いは道中でまともな食事にありつけられた所だろうか。

 アーチャーがサバイバルスキルと料理スキルを持っていたようで、現地で食料を調達しサバイバル飯をプールス達に振る舞った。

 その味わいは道中の死にかけた辛さを忘れる程の絶品であった。

 その後の艱難辛苦を乗り越え遂に

 

「漸く辿り着いたか……」

「なんじゃこりゃ」

「凄いレス」

「でっかいお城だ!」

「まるでここだけ日本みたい」

 

 眼前に巨大な日本のような城が見えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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