マギとネギが闇の魔法をものにする、制するためにラカンの元へ弟子入りしている中、別の場所で仲間たちがどう活動しているのか……
とある場所にある古い遺跡。その地下にはRPGゲームでお馴染みな地下ダンジョンが広がっていた。
地下ダンジョンと言えば財宝が眠っているのが常。その財宝を手に入れるために、冒険家達は危険を承知で挑むのだ。
「だからあんなあからさまな罠に首を突っ込むのに反対だったのよ!」
「いいだろ! そのおかげで追加ボーナスが手に入ったんだから!!」
「今は急ぐ。じゃないと生き埋め」
「急げ! こっちだ!」
4人の若い男女が喚きながら崩れている最中のダンジョンから脱出するために出口へと駆けていく。
エルフのような耳の長い箒に乗った女性が髪を括った男を責めるが、どうやら彼が罠でへまをしたようだ。しかしその彼の手には輝く偶像が握られている。恐らく重さが変わると作動する、某冒険映画でも使われるような有名な罠でもあったのだろう。
同じく耳の長い女性が物静かにこのままだと崩れる事を他人事のようにぼやき、リーダーであろう大剣を背負った男が先導する。
「! 見ろ出口だ!」
リーダーの男が指差した先に光が見えた。
もう大丈夫だ。そう思った4人の頭上に巨大な瓦礫が落ちてくる。
「ちょ! ゴール手前でそりゃないでしょ!!」
「クレイグ! 迎撃!」
「無理だ! 間に合わねぇ!!」
箒に乗った女性にクレイグと呼ばれた大剣を持った男は無理だと叫ぶ。
最早これまでかと諦めかけていたその時
「リー・ド・ア・ブック・イン・ザ・リブラ 来れ 虚無の炎 切り裂け 炎の大剣!!」
4人の後ろにずっと着いてきたのどかが予め詠唱しており、炎の大剣で落ちてくる瓦礫を切り裂いた。
「すまねぇ嬢ちゃん!!」
「お礼は大丈夫です! 今は先へ!!」
クレイグがメンバーを代表しのどかへお礼をするが、のどかの言う通り、今はダンジョンを脱出するのが先決であった。
「────うへぇあと少し遅かったら、あの遺跡が俺らの墓標になっていたかも思うとゾッとするよ」
崩れ落ちる遺跡を遠くの丘で眺めている髪を括った男が辟易とした様子で呟いていると、箒に乗っていた女性がのどかにお礼を言った。
「助かったわのどか。アンタが居なかったら一巻の終わりだったわよ」
「そんな、私だってアイシャさん達に拾ってもらわなきゃどうなってたか……」
箒に乗った女性アイシャに改めてお礼を言うのどか。
のどかは強制転移で遺跡に到着した。その時、その遺跡を攻略しようとした彼らと出会った。
のどかは周りに仲間が居ないのを見て、1人で行動するよりも彼らと行動し、情報を集めた方が得策だと判断し仲間にして欲しいと懇願した。
最初は自分等よりも年下ののどかを仲間にすることに渋っていたが……
「いやー! しかしホントに嬢ちゃん凄いね! アイシャに負けない位に魔法使えるし、罠発見能力もピカ一だし!」
「使える」
「その歳でそんなスキル、どこで身に付けたんだ?」
「いえ、クリスティンさんやリンさんのような本職の皆さんに比べたらまだまだです。その、部活で少々」
お気楽な感じでのどかを誉めちぎる髪を括ったクリスティンと静かにサムズアップをするリンにどこで身に付けたのかと尋ねるクレイグに照れながらも、部活でと答えるのどかであった。
閑話休題。
「さて、それじゃあ! お待ちかねのお宝山分けターイム!!」
風呂敷を広げ、先ほどの遺跡で手に入れた宝の山を嬉々として山分けするクレイグ達。しかしのどかは宝には見向きもせず、目の装飾がされ、爪のように尖った指輪を愛おしそうになぞった。
「嬢ちゃん、ホントにその指輪だけでいいのかい?」
「そーそー遠慮すんなって! 今回は嬢ちゃん大活躍だったんだし」
「い、いえ! 私はこれだけで充分です」
クレイグ達は宝を物色しながらのどかにその指輪だけでいいのかと尋ねる。
「これがのどかが探してたマジックアイテムなのね」
「はい! ついに、皆さんのおかげです!」
アイシャはのどかが持っている指輪がをまじまじと観察する。
のどかは探していたもの、名前を『鬼神の童謡』。これを手に入れるためにのどかは自分なりに動き、そして念願のこの指輪を手に入れた。
これを使い、のどかが色々な意味で大活躍をするのは少し先の話である。
「うわぁぁぁぁぁん! せっちゃああああん!!」
「おおおおおおおおおじょじょじょお嬢様あああああああ!?」
また別の場所ではとある村でアスナとこのかと刹那に楓が偶然合流した。
この4人は村民に被害をもたらす2匹の黒龍を討伐するために、アスナは刹那、このかは楓と行動をしており、各々黒龍の角を折って追い払ったのだ。
そして黒龍の角を持って村に戻って来て今に至るのだ。
「アスナぁ! 会いたかったぁ!!」
「このか少しは落ち着いて! 気持ちは分かるけど!!」
泣きじゃくりながら抱きつくこのかを何とか落ち着かせるアスナであった。
「……そう、このかも他の皆とは会えなかったのね」
「うん。でもアスナと会えて嬉しい。ウチ正直言うとちょっとツラいと思ってた所やったし」
「そう、よく我慢したわね。偉いぞ」
このかを優しく撫でて上げる。久しぶりの親友との再会に和気藹々とするアスナにこのか。
そんなアスナを遠目で眺める楓。楓はアスナが前よりもかなりの成長を成し遂げたのを見抜いた。
「アスナ殿、かなり成長したようでござるな」
「分かるか楓。アスナさんは賞金稼ぎの中で魔獣討伐や私達を狙う賞金稼ぎの連中を返り討ちにしてきた内にな」
「ほぉ、それは何とも頼もしい限りでござるな」
白き翼4人と合流出来たのだ。
「それじゃあ! この角を換金してネギ達が行こうとしてるオスティアって所へ行くわよ!!」
「「「おー!」」」
(ネギ、マギさん無事でいてよ。アンタ達絶対無茶するんだから……!)
ネギとマギの事を憂いながらアスナ達をオスティアへ向かうのであった。
またもどこかの霊峰、その頂にぼろぼろの胴着を身に纏った古菲が呼吸を整える。
そして、頂に拳を当て、瞬間的に自分の最大の力を当てる。
轟音を立てながら崩れるのを見て満足そうに頷く古菲。だが
「あ、足場のことを考えてなかたアル」
頭の方は相変わらずだったようで、崩れる足場を瞬時に乗りながら無事な別の山に着地。
「うーむ、ちょっとやりすぎたアルな」
今もなお崩れる岩山を見ながらそう答える古菲。いや、ちょっとではないだろう。己の肉体とその身に纏われた気だけで岩山を破壊するまでに至った古菲。流石は3ーAの1人である。
「だがまた一歩前進したアル。日々精進、これだから修行は止められないアル」
そんな古菲の周りを小型の浮遊する数体の機械。
「うぉっなんアルかお前達!?」
突然の出現に構える古菲に
「いた──!! くーへーさあああん! 探しましたぁ!!」
小型の浮遊物体、和美のアーティファクトのゴーレムに乗ったさよが古菲に向かって飛び込んだ。
此処で感動の再会、となればいいのだが
「おお!! 地味幽霊!!」
さよが気にしてる事をバッサリと言い切った古菲であった。
「うわああん! くーへーさんのばかああ! 気にしてることをもおおお!」
「あははは冗談アル! 元気だたアルかさよ坊! それにしてもこんな広い世界でよく私を見つけられたアルなぁ!」
こうして、確実に仲間が集まって行くのであった。
「ほんまか和美姉ちゃん!? 菲部長が見つかったって!?」
闘技場に残っていた小太郎が和美が飛ばしてきた小型ゴーレムで衛星電話のように連絡をとる。その中で古菲が岩山を砕いたと言う話を聞いて頼もしく思うのと、状況が落ち着いたら古菲と一戦交えたいと思う小太郎であった。
小太郎が和美の報告を聞いていると夏美が嬉しそうに手を振りながら小太郎に駆け寄る。
「コタロー君! ビックニュース! アスナと刹那さんがこのかと楓さんと合流出来たって! それに本屋ちゃんから連絡が!!」
「おお! マジか! こっちも菲部長が見つかったと和美姉ちゃんから連絡が来とった所や」
と今度はアキラと亜子が小太郎に駆け寄る。目尻には涙が溜まっており、何か良いニュースでもあったのだろうか。
「今! イルカの獣人のおじさんが元気そうな裕奈とまき絵の写真見せてくれて!」
「2人共無事でオスティアに向かうために元気に働いとるって!」
そう言って亜子が元気にピースサインで記念撮影してるウェイトレス姿の裕奈とまき絵の写真を見せてくれた。
「はは、ほんまにたくましすぎるやろこの2人!!」
「よかった、2人共元気そうで……!」
何時もの感じな裕奈とまき絵を見て吹き出す小太郎に緊張の糸が緩んだのか静かに涙を流す夏美であった。
「さて、続々と仲間の情報が集まって嬉しい状況やけど、まだまだ油断できんのもまた事実や」
小太郎は世界地図を開き、今分かってるメンバーの現在位置に目印をつける。一番遠いのはのどかであり、逆にアスナ達が一番目的地のオスティアに近いようだ。
そしてまだ行方しらずなのはハルナに夕映、アーニャ、そしてプールスと風香に史伽。あとついでのカモ。
夕映はアリアドネーに飛ばされたので一応は安全圏ではあるが、アーティファクトは強力ではあるが非戦闘員のハルナ、バッジのないアーニャに一般人組の風香と史伽。スライムではあるが、精神年齢は少女のプールス。カモは、まぁ何とかなるだろう。
「ハルナ姉ちゃんやアーニャは何とか生きて行けそうな気がするし、夕映姉ちゃんも大丈夫な気はするんやけど、一番の心配はあの双子の姉ちゃんや。アイツらはバッジ持っとらんし、戦いなんて持っての他や。プールスはまぁまぁ強いがまだまだガキやしな……」
「プールスちゃん、風香に史伽、大丈夫かな……」
「亜子……だ、大丈夫だよ! ぜっったい皆無事に集まる事が出来るって!」
「そうだよ。今は皆が無事でいる事を願おう。ね?」
皆を心配する亜子を励ます夏美とアキラ。しかしそんな2人も行方が分からない者達の安否を憂いていた。
「そうや。皆無事じゃないと意味ないんや。それに、最悪な結果になったら、一番ダメージが大きいのはマギ兄ちゃんやからな。下手したらまじで大怪獣になりかねないからな」
小太郎の言うとおりマギは皆の中で一番精神が不安定だ。キレてこの世の全てを破壊するようになったら止められる自信は正直ない。
「だが、今は皆が全員無事に集まれるのを信じるしかない。違うか?」
「え、雪姫さん!!」
涼しい顔で戻ってきた雪姫。今日も1人で対戦相手を返り討ちにしてしまったのであった。
「おう、雪姫の姉ちゃん。今日も快勝だったようやな」
「あの程度のレベルにてこずる私ではないさ。そんなことより、プールスは坊ややマギと血は繋がっていないが、アイツもスプリングフィールド家の者だ。私もアイツには柔な育て方をした積もりはない。それに鳴滝風香と鳴滝史伽、あの双子もそんな簡単にくたばるような奴なら3ーAの生徒などやってはいけないだろう。今はアイツらの悪運を信じようとしよう」
不敵に笑う雪姫を見て小太郎達は頷く。そうだ、何時も困難な事に遭遇しても持ち前のガッツで乗り越えて来た3ーAの生徒のしぶとさを今は信じよう。そして雪姫が直々に修行をつけたプールスもそう簡単にへこたれることはないだろう。今は彼女達を信じる。それしか出来ないのだから。
そして……今まで何の話題も出なかったカモは泣いてもいいかもしれない。
そんな皆に心配されているプールス、風香史伽はというと
「うわああああああ!!」
「きゃああああああああああ!!」
「逃げるレスぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「おおおおお今は逃げろ! 後ろを振り返るんじゃないぞ嬢ちゃん達ぃ!!」
草木も生えない山奥で奇跡的に合流出来たプールス、風香史伽そしてカモが必死に駆けていた。
何故死に物狂いで駆けているのか、それは……
『ヴギョアアアアアアアアアアアアアアア!!』
熊よりも巨大な猿のような魔法生物に追われているのだ。
首の周りに立派な鬣があり、仮に獅子猿と呼ぼう。獅子猿は血走った目で涎を垂らしながら咆哮を上げる。
極限の空腹状態なのか、プールス達を獲物として追い回してるのだ。
「あう!」
「お姉ちゃん!」
石につまづき盛大に転ぶ風香に悲痛な悲鳴を上げる史伽。獅子猿は動けなくなった風香を最初に食らいつこうと、大口を開けて襲いかかろうとするが
「アストロン! やあああ!!」
腕を硬質化させるプールスは獅子猿の目に向かって伸ばした。
目に直撃された獅子猿は甲高いうめき声を出しながら目を押さえていたが、直ぐに手を離し、血走った目でプールスを薙ぎ払った。
「きゃああああああ!!」
「嬢ちゃん!」
「プールスちゃん!」
「プールス!」
地面を転がり、動けないプールス。今の薙ぎ払いでダメージを負ったのもあるが、もう心が折れかけているのもあった。
もう何日もマギと一緒にいない。何時も一緒にいた兄の姿がないことが幼いプールスの精神を蝕んでいた。
対して獅子猿はプールスは食えない獲物と判断し、プールスを遊んで殺そうと腕を振り下ろす。
(マギお兄ちゃん……!)
プールスは今この場にいないマギを想うが獅子猿の腕は無慈悲に振り下ろされる。
「投影開始」
獅子猿が腕を振り下ろす前に無数の剣が豪雨の如く降り注がれる。
次々と剣が突き刺さり針のむしろとなり、最後は巨大すぎる大剣が獅子猿の脳天を貫き、獅子猿は物言えぬ死体へと変わり果てたのであった。
「大丈夫かな?」
プールスを助けたのは、白き翼の仲間でも、現地で知った魔法世界の住人でもなく。
「全く、世話を焼かせるな君達は」
マギを執拗に狙うアーチャーであった。