堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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お久しぶりです!
お盆明けに漸く投稿出来ました。
お盆は色々と大変でなかなか執筆する時間が無かったので疲れました
今日から第3章つまりあの幼女が表舞台に立てるという事です!

幼女を待っていた皆様大変長らくお待たせしましたそれではどうぞ!!



~第3章~桜通りの吸血鬼
桜通りの吸血鬼


 ネギとマギのパートナー騒動も何の問題もなく収まったその夜、麻帆良には桜が綺麗な桜通りと言う通りがあって春という事で桜が満開となっており、夜の夜桜も綺麗だった。

 しかし一人の少女はそんな夜桜を楽しむ余裕なんて無かった。

 

「はぁッ…!はぁッ…!はぁッ…!!」

 

 体育姿で桶やシャンプーボディソープに体を洗うスポンジなどの風呂道具一式を持ったまき絵が涙を浮かべながら走っていた。時折後ろを振り返ったりしていた。まるで何者かに追われている様子だった。後ろを振り返っても誰も居なかった。まき絵はもう追ってこないと思い、ホッと溜息を吐いた。

 しかし…それはまき絵の勘違いだった。

 

 

 ザザァッ!!!

 

 

 急にまき絵の目の前に、音もなく全身黒づくめの何者かが現れた。

 

「ひッ!!?」

 

 まき絵は短い悲鳴を上げ、後ずさりして黒づくめから離れようとしたが、地面から出てしまった桜の木の根っこに足を引っ掛けてしまった。足を引っ掛けてしまいバランスを崩して尻餅をついてしまうまき絵。まき絵に近づいて来る黒づくめ。

 

「あ…あう…」

 

 まき絵は恐怖のあまり声が出ないようだった。そんなまき絵の事など知った事ではないと言いたげに黒づくめはまき絵に近づいて来る。黒づくめはニヤリとまき絵に笑いかけた。

 

「クックック…悪いな…貴様の血を少し貰うぞ」

 

 黒づくめの口の中に…人間には無い鋭利な牙が見えた。黒づくめはまき絵の首筋に顔を近づけそして…

 

「アム」

 

 首筋に噛みつき、まき絵の血を吸い始めた。自分の血が吸われている事に最初は気づかなかったまき絵だが、黒づくめに自分の血を吸われていると気づくと

 

「キ…キャアァァァァァッ!!?」

 

 悲鳴を上げジタバタと暴れ、黒づくめから逃げようとしたが、黒づくめはまき絵を離そうとしなかった。血を吸われて数十秒まき絵は段々意識が遠のいていき

 

「あ…う…」

 

 気絶してしまった。黒づくめは気絶したまき絵を一回見ると

 

「ふう、此れ位でいいか」

 

 と言うとまき絵の首筋から口を離した。牙に付いた血が滴り落ちようとしたが、黒づくめは血を手で拭うと手に付いた血をなめとった。黒づくめは気絶したまき絵を桜の木の根にゆっくり優しく寝かせた。そしてフウ…と溜息を吐いていると、すたすたと何者かが近づいて来る足音が聞こえた。黒づくめは足音がした方を向いた。其処に居たのは

 

「…周囲を探索しましたが、魔法教師並びに魔法使いの生徒の反応はありませんでしたマスター」

 

 メイド服姿の絡繰茶々丸が其処いて、黒づくめをマスターと呼んでいた。黒づくめはご苦労茶々丸と茶々丸に労いの言葉を贈った。黒づくめは全くと呟いていると雲に隠れていた月が顔を出した。月の光により黒づくめの正体が露わとなる。

 

「なぜこの私がこんな面倒くさい事をしなきゃいけないんだ…」

 

 黒づくめの正体はまき絵と同じエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルであった。黒いボロ布を纏ったエヴァンジェリンはまるで吸血鬼の如く血を吸ったのだ…否吸血鬼の如くではない。何故なら彼女は

 

「この『闇の福音』と恐れられていた吸血鬼が落ちぶれたものだな…」

 

 エヴァンジェリンは真祖の吸血鬼の名で魔法世界では知らないものは居ないと言う闇の魔法使いの中でも悪名を轟かせていたのだ。しかしなぜそんな吸血鬼がこんな所で中学生として学校に行っているのかは後々分かる事となる。

 

「だが、ククククク…こんなアホみたいな暮らしももう終わる。あのマギ・スプリングフィールドとネギ・スプリングフィールドがいれば…な」

 

 とエヴァンジェリンが不敵に笑った。茶々丸があのマスターとエヴァンジェリンを呼び止めた。

 

「まき絵さんは如何いたしましょうか」

 

 茶々丸は血を吸われ気絶したまき絵を指差した。体操着という薄着でしかも夜中に外で倒れていたら風邪をひいてしまうだろう。

 

「なにか適当にかけておけ。4月の夜は冷えるからな」

 

 とエヴァンジェリンの指示で茶々丸は何処からか毛布を取り出しそれをまき絵にかぶせてあげた。

 

「よし…帰るぞ」

 

 エヴァンがそう言うとエヴァンジェリンが纏っているマントが大きく開き、まるで蝙蝠の羽の様になった。蝙蝠の羽のようになったマントで空を飛び茶々丸も足からジェット飛行でエヴァンジェリンを追いかけ何処かへと飛び去ってしまった。

 今麻帆良では桜通りに吸血鬼が出る噂でもちきりだが、その吸血鬼の正体がエヴァンジェリンであった…

 明日から始まる新学期。波乱の展開になりそうな予感であった。

 

 

 

 

 

 翌朝今迄2-Aだった教室が3-Aと変わり

 

『ネギ先生!マギさん!今日からの1年間よろしくお願いしまーす!!』

 

 3-Aとなった生徒達の騒がしさに千雨と夕映は呆れていた。そして教卓の前に居たネギは苦笑いをマギも呆れたような表情となりながらも

 

「えと、改めまして3年A組担任になりました、ネギ・スプリングフィールドです。これから来年の3月までの1年間よろしくお願いします」

 

「同じく今日から3-Aの副担となったマギ・スプリングフィールドだ。1年間の間に俺が面倒だと思うような問題ごとは起こすなよ。俺がメンドイだけだからな」

 

 ネギとマギは自分らしいと言えば自分らしい挨拶をした。

 

『は~い!ネギ先生~!!』

 

『よろしくマギさ~ん!!』

 

 ネギは元気そうな生徒達を見て一安心だった。ネギは教室を見渡した。

 

(そう言えば、僕まだお話してない生徒さんが一杯いるな~この1年間で全員と仲良くなれるかな…?)

 

 とネギが生徒全員と仲良くなれるかな?と思っていると何処からか鋭い視線を感じた。見ればマギもその視線を感じたのか、ある一点を見つめて…と言うより睨み付けていた。ネギも視線の方を見てみると

 廊下側の一番後ろに座っていたエヴァンジェリンがネギとマギの事を見ていた。まるで氷のような瞳で

 

 

 ゾクゥッ!

 

 

 ネギはエヴァンジェリンに見つめられ、背筋が寒くなってしまった。エヴァンジェリンがフイと視線を外すと、ネギはすぐさま出席簿でエヴァンジェリンの事を見てみた。エヴァンジェリンは部活には茶道部と囲碁部に所属していた。そしてタカミチの文字だが、『困った時には相談しなさい』と書かれていた。

 

(タカミチの困った時には相談しなさいって言うのは如何いう意味なんだろう…?)

 

 ネギは如何いう意味なのか考えていると、コンコンというドアを叩く音が聞こえ、しずな先生がドアの横に立っていてドアを叩いたようであった。

 

「ネギ先生マギ先生、今日は身体測定ですよ。3-Aの皆も直ぐ準備してくださいね」

 

 としずな先生の身体測定と言う言葉に、ネギはうっかりしていた顔になり

 

「でッでは皆さん今日は身体測定ですので…えと今すぐ脱いで準備して「なに言ってるんだお前は(スパァァァァァァァンッ!!)」あうッ!!?痛いよお兄ちゃん!何するの!?」

 

 とネギは行き成りハリセンで叩いてきたマギに文句を言おうとしたが、ハッとした。見ればあやかなどが顔を赤くしていた。今のネギの発言はまさに自分の前で服を脱げと言っているものだ。完全にセクハラ発言である。

 

「ネギ先生のエッチィ~~!!!」

 

「ウワァ~ン!また間違えました~~!」

 

「早く出るぞこの馬鹿」

 

 生徒達にからかわれ、ネギは恥ずかしさのあまり赤面し呆れられたマギに襟元を掴まれ、引っ張られてしまった。

 

 

 

 

 身体測定という事で3-Aの生徒達は服を脱いで下着姿となり始める。話の話題はさっきからかったネギが可愛かったやらマギは相変わらずぶれないのが良いとかこれからの1年間が楽しくなりそうという物だったが、不意にアレ?と思ったハルナ。

 

「そう言えば今日まき絵ちゃんは?」

 

「さ…さあ?」

 

 ハルナが言った通り、今日はまき絵が来ていないのである。まき絵の事を聞かれたのどかも知らないと答えた。

 

「まき絵今日が身体測定アルから仮病を使ったのと違うカ?」

 

 古菲はまき絵がずる休みをしたのではないかと言ったが、まき絵がそんな事をする子ではないと言うのは皆が知っていたから不思議に思っていた。

 

「まき絵胸ぺったんこだからねー」

 

 風香が胸を張って高笑いをしていたが

 

「お姉ちゃん言ってて恥ずかしくないですか?」

 

 史伽が高笑いしている風香に虚しい溜息を吐いた。この双子体格が小学生みたいなため正直まき絵より胸が小さいと言うより無いに等しい。この双子はある意味虚しい乳と書いて虚乳である。巨乳の巨ではなく虚しいという虚である…なんだろう虚しくなってきた。

 他でも慎重を謀るはかりを頭にぶつけたり、体重計に手を乗せたりして体重を増やしたりなどの悪戯で3-Aは騒がしかった。廊下に出ていたネギは中は楽しそうだな~と思っていた。と行き成りねえねえと美砂がある話題を出してきた。それは…

 

「ところでさ最近寮で流行ってる…あの噂どう思う?」

 

「何よ柿崎あの噂って?」

 

 アスナは美砂が言ったあの噂と言う物を知らない様子だったが、あぁとアスナの隣にいた美空が何か知っている様子だった。

 

「あの桜通りの吸血鬼の話ね」

 

 と美空が答えた事に美砂がそうそうと頷いた。とそう言う系が好きな3-Aの生徒の何人かが美砂に詰め寄った。

 

「何それどういう話?」

 

「怖いけど聞きたいです」

 

「聞かせて聞かせて~!」

 

「どういう話や?」

 

 桜子と史伽や風香にこのかがどういう噂か聞いてみたい様子だった。

 

「知らない子結構居たんだ……まあいっか。結構前からある噂だけど……なんか満月の夜になると出るんだって、寮の桜並木に…」

 

 と溜めると、美砂はイヒヒと魔女が笑った様な不気味な笑い声を上げながら

 

「真っ黒なボロ布につつまれた…血まみれの吸血鬼がぁぁぁぁ」

 

 と怪談でお決まりの怖い喋り方で吸血鬼の話をした。

 

「「きゃぁぁぁぁッ!!?」」

 

 風香と史伽は泣きながらオーバーリアクションをして、離れて聞いていたのどかも怖くて震えていた。

 

「ほほう」

 

「へ~なるほどな~」

 

 と桜子とこのかは別段怖がっている様子が無かった。どちらかと言うと面白そうと思っている方が強そうだ。もしかして!と桜子は何か閃いた様子で

 

「まき絵ちゃんもしかしてその謎の吸血生物にやられちゃったんじゃないかな?血美味しそうだし」

 

「た…たしかにまき絵ちゃん美味しそうだけど…」

 

「いや吸血生物じゃなくて吸血鬼ね」

 

 桜子とこのかは人型で背中に棘を生やした生物が、まき絵を襲って血を吸っている図を想像して、美砂が吸血生物ではなく吸血鬼だとツッコんだ。そんな遣り取りを見ていたアスナは

 

「まったく…そんな噂作り話に決まってるでしょ。アホな事言ってないで早く身体測定終わらせるわよ」

 

 と呆れたようにさっさと身体測定を終わらせようと言った。しかし面白い話をすると止まらない3-Aは止まるはずもなく

 

「そんな事言ってぇアスナもちょっと怖いんでしょ~?」

 

 桜子がニヤニヤとしながらアスナにそう言った。このかはこのかで黒板にUMAで有名なチュパカブラを描いてのどかや風香と史伽を怖がらせていた。

 

「違うわよ!というよりあんなの日本に居るわけないでしょ!!」

 

 とツッコミをいれたが、ハッとした。

 

(ん…?でも待てよ。ネギやマギさんのような魔法使いが居るんだし図書館島のゴーレムやドラゴンだって居たんだし…吸血鬼位いてもおかしくないかも…?)

 

 ともしかしたら自分も襲われるのではないのかと思いうげッと声を上げていると

 

 

「その通りだな神楽坂明日菜」

 

 と不意に自分の事を呼ぶ声が背後から聞こえ、後ろを振り返ってみると其処に居たのは

 

「噂の吸血鬼はお前のような元気で活きのいい女が好きらしい。十分と気を付ける事だ」

 

 クックックと笑っているエヴァンジェリンが居た。

 

「え…?は…はぁ…」

 

 アスナは行き成りエヴァンジェリンが話し掛けてきたため空返事しか出来なかった。アスナが驚くのは無理はないだろう。何故ならエヴァンジェリンは滅多に他人に話し掛けないのだ。しかもアスナとエヴァンジェリンはそこまで仲が良いというわけでもないのだ。というより

 

(なんでエヴァちゃんがそんな事知ってるんだろう?)

 

 と疑問に思ったが、如何でもいいかと考える事を止めた。

 

 しかし噂の吸血鬼の正体がエヴァンジェリンだという事をアスナ達は知らないのであった。

 

 一方廊下に居たネギとマギは何処からか変わった気配を感じて辺りを見渡したが、何の反応かが分からなかったほど曖昧な気配だった。と廊下を走る音が聞こえ

 

「ネギ先生~~!マギさん大変や~~!まき絵が!まき絵が!!」

 

 亜子が大慌てで廊下を走っていた。亜子の声は教室にも聞こえ、教室のドアや廊下側の窓が一斉に開き

 

「何!?まき絵が如何したの!?」

 

 下着姿のアスナ達が一斉に飛び出してきた。下着姿のアスナ達が飛び出してきてネギとマギの反応は

 

「わッわぁ!みッ皆さん!!?」

 

「お前らな…少しは恥じらいを持てよ」

 

 ネギは顔を赤くし大慌て、マギはいたって冷静で呆れていた。ネギとマギの反応が可笑しいと思い、自分達が下着姿だったと数秒後に気づきアスナ達は

 

『き…きゃ~~~!!?』

 

 他の教室に響くほどの大絶叫が響きわたった

 

 

 

 

 

 

 

 保健室。3-Aの生徒達とネギとマギが向かうと、まき絵が保健室のベッドで静かに寝息を立てていた。

 

「まき絵さん如何したんですか?」

 

 ネギがまき絵に何があったのか尋ねてみるとしずな先生が

 

「何か桜通りで寝てるところを見つかったらしいのよ…」

 

 とまき絵が見つかった状況を話してくれた。ネギは何故桜通りでまき絵が発見されたのかを考えた。アスナ達は大したことではないと言ってさほど心配していない様子だったが、ネギはまき絵の体をよく観察して驚愕した。

 

(いや違う…!ほんの少しだけど…確かに魔法の力を感じる)

 

 まき絵の体からほんの少しだが、魔法の反応があったのだ。何故まき絵の体から魔法の反応があるのかネギは考え始めた。

 

(まき絵さんが魔法使いの生徒の可能性は明らかにゼロだ。それに図書館島以外でこんな力を感じた事がない…もしかしてさっき柿崎さんが話していた吸血鬼と何か関係があるのかな…?)

 

「おいネギ」

 

 とマギがネギを呼んだ。ネギは振り返りマギがネギに頷くとネギも頷き返した。如何やらマギも同じことを考えていたようだ。

 

「如何したのよネギ?急に黙っちゃって、マギさんもマギさんだし」

 

 アスナはネギとマギの事を怪しそうに見ていた。ネギは怪しまれていけないと思いなんでもないですよと誤魔化した。

 

「まき絵さんは心配ないですよ。ただの貧血かと…それとアスナさん僕とお兄ちゃんですが、今日は帰ってくるのが遅くなると思いますので、晩御飯はいりませんから」

 

 とネギの言った事にアスナはポカンとしていたが

 

「ごはんええの?」

 

「ああ悪いな、今日はネギと適当に食べるわ」

 

 このかが本当にいいのかと尋ねると、マギが適当に食べるとそう答えた。ネギとマギにアスナ達はまき絵が大丈夫と分かったため保健室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は新学期初日という事もありホームルールだけで終わったが、部活に所属している生徒達は部活を行っているために帰るのが遅くなってしまう。午後7時、帰宅途中で美術部のアスナと図書館探検部のこのかとハルナに夕映とのどかが偶然に帰る時間が一緒だったために一緒に寮に帰る事にしたのだ。歩いている時に出た話題は先程噂になった吸血鬼の話である。

 

「吸血鬼なんてホントに出るのかなぁ~?」

 

「あんなのデマに決まってるです」

 

 ハルナは吸血鬼が出るか出ないのかと期待していたが、夕映がデマだと言い切った。とハルナと夕映が噂の事に付いて討論していると、ハルナがあッ!いけない!と言い出した。

 

「やば!部室に大切な物忘れてきちゃった!」

 

「何やってるですか」

 

 ハルナが部室に忘れ物をしてきたようで夕映が呆れていた。もう寮との距離は目と鼻の先のである。

 

「仕方ない私達ちょっと部室に戻るからのどかは先に帰ってて」

 

「のどかごめんなさいです」

 

「う…ううん気にしてないよ気を付けてね」

 

 とのどかはハルナと夕映にそう言った。とりあえずという事でアスナとこのかも付き添いで向かう事にした。のどかだけ寮に帰る事になった。

 

「本屋ちゃん…一人で大丈夫かな?」

 

「吸血鬼なんかいないゆーたのアスナやろ?」

 

 アスナは一人で帰る事になったのどかを心配そうに見ていたがこのかが大丈夫やと笑いかけた。しかし

 

「やっぱり気になるから本屋ちゃん送ってくよ」

 

「あアスナー」

 

 と木になるという事でアスナはのどかの元へと向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 一人で帰る事になったのどかは心細くならないために鼻歌を歌っていたが、急に歩みを止めてしまった。何故なら

 

「あ…桜通り…」

 

 噂に出た桜通りに着いてしまったのだ。何だか怖くなってきてしまい、風が生暖かく感じた。

 

「ちょ…ちょっと急ごうかな~」

 

 とのどかは早歩きで寮に向かっていた。怖くない怖くないと呟いていたが、急に風が強くなったりすると、やっぱり怖くなってしまう。とその時

 

 

 ざわ…ざわ…    クックックック

 

 

 風の音と一緒に誰かの笑い声が聞こえた気がした。のどかビクッと驚いたが、風が笑い声に聞こえたのだとそう思い、気にしないで寮に向かおうとしたが今度は

 

「クックックッククククク…」

 

 と自分の真上から笑い声が聞こえ、のどかは恐る恐るゆっくりと上を見上げると

 

「クククククク…」

 

 黒いマントを纏ったエヴァンジェリンが街灯の上に立っていた。のどかからは街灯の上にエヴァンジェリンが立っているなんて分からなかった。それよりも恐怖のせいで頭の中が真っ白になってしまったからだ。

 

「宮崎のどか…悪いがお前の血を少し貰うぞ」

 

 エヴァンジェリンがニヤリと笑い牙が光る。のどかは光る牙を見て動けなくなってしまった。そしてエヴァンジェリンが口を開けてのどかに襲い掛かって来た。のどかは恐怖で目を瞑ったその時

 

 

 

「待ちな」

 

 マギの声が聞こえ、エヴァンジェリンが動きを止めた。のどかもマギの声が声が聞こえた方を見ると

 

「吸血鬼の話を聞いて、ここら辺一帯を見張っていたら本当に来るなんてな…正直面倒だったから俺の方で当たりが来るんじゃねえと祈ったのに意味が無かったか」

 

 と木と木の間からマギが現れた。

 

「マギさん!!」

 

 のどかはマギが来てくれたので安心したのか声を上げた。

 

「おうのどか、大丈夫か?血吸われていないか?」

 

 マギはのどかが無事かどうか尋ねた。

 

「は…はい!大丈夫で…す」

 

 のどかは大丈夫だと言い切る前に恐怖の糸が切れたのかゆっくりと気を失ってしまった。マギはのどかが地面に倒れる前にのどかの体を優しく掴み、ゆっくりと地面に寝かした。そしてのどかが本当に大丈夫か改めて体をよく見て本当に大丈夫だと分かるとよしと言いながら立ち上がり、エヴァンジェリンと向かい合う。

 

「さてと…俺の大切な生徒を危ない目にあわそうとしたんだ。お縄についてもらうぜ」

 

 と言いながらマギは詠唱を始める。

 

「俺は捕縛系の魔法がそんなに得意じゃねえから……ちと火傷しちまうけど構わねえよな?マギウス・ナギナグ・ネギスクウ…来たれ爆炎 焼き尽くせ 燃え盛る流星! 」

 

 マギが詠唱を唱え終えると、空から3弾の炎の塊が降り注ぎエヴァンジェリンに迫ってくる。エヴァンジェリンは落ち着いた様子で懐から液体が入ったフラスコを取り出す。

 

「氷楯…」

 

 と呟くとフラスコを火球に投げつけた。すると

 

 

 ガキュイィィィィィィィィィン!!!

 

 

 液体が瞬時に凍って大きな楯の様な形になり火球を防いぎ火球が爆散された。これを見てマギは確信した。この吸血鬼と呼ばれている者は魔法使いだと。と火球を完全に防げたわけではなかったようで爆散した火の粉がエヴァンジェリンがかぶっていた帽子が燃えはじめ、エヴァンジェリンはすぐさま帽子を脱いだ。帽子が燃え尽きエヴァンジェリンの素顔がマギにも視認できるようになる。

 

「驚いたぞ…その年でこれほどの強力な魔力とは…」

 

 エヴァンジェリンはマギの魔力を素直に称賛した。マギはエヴァンジェリンの顔を見てっておいと呟いた。

 

「オメェはクラスに居たエヴァンジェリンじゃねえか…テメェが噂の吸血鬼だったのか?」

 

 と尋ねるとエヴァンジェリンはああそうだよと素直に認めた。そしてフフとエヴァンジェリンは不敵に笑うと

 

「新学期に入った事だし改めて歓迎のご挨拶と行こうか先生…いやマギ・マギスプリングフィールド…17にしてこれほどの力。さすがに()の息子だけはある」

 

 奴の息子という所でマギは眉毛をピクッと上にあげた。

 

「なんでテメェがクソ親父の事を知ってるんだ?と言うよりなんでテメェが魔法を使えるんだ話してもらおうか」

 

 エヴァンジェリンはマギの言ったクソ親父がツボだったのか、アハハハと大笑いした後に挑発的な笑みを浮かべると

 

「聞きたかったら…私を捕まえる事だな」

 

 と今度はフラスコと試験管を取り出すとそれをのどかに投げつけた。

 

「!おい馬鹿野郎!!」

 

 マギは思わず大声を出して気を失っているのどかの元に駆け寄り、のどかを庇った。

 

「氷結武装解除!」

 

 エヴァンジェリンが又呪文を唱えると、試験管とフラスコが爆発して中の液体が飛び散ると飛び散った液体が服などに付着すると瞬時に凍り付いてしまった。マギはこれ以上凍りつかない様に抵抗の魔法を使用する。

 

(瞬時に抵抗の魔法が使えるとは…やはりな)

 

 エヴァンジェリンはさっきと同じようにマギの魔法を観察していた。凍りついたのはマギの服の一部とのどかの制服だった。

 

「ったく行き成り何すんだよ…っておいおいマジかよ…」

 

 マギは凍りついた服の一部がボロボロと崩れだし、のどかに怪我がないか確かめてのどかを見て顔を手で覆った。今ののどかの状態は制服がほとんど凍り付いて、ボロボロと崩れだしほぼ全裸の状態だった。先程エヴァンジェリンが使用した魔法はいわばネギの風の武装解除の魔法と同じで風が氷に変わっただけである。それさておいて今ののどかは全裸に近い状態でしかも最悪な事に

 

「お兄ちゃん!すごい音がしたけど吸血鬼が見つかったの!?」

 

 同じく見回りをしていたネギと

 

「あッマギさん!こんな所で何してるのよ!?」

 

「何か凄い音がしたなー!」

 

 のどかが心配になって戻ってきたアスナとアスナが心配になったこのかがやってきた。ほぼ全裸ののどかを抱き上げているこの状況はマズイ。案の定

 

「うひゃあッ!?」

 

「マギさんそれ!」

 

 このかとアスナが勘違いをし始めた。

 

「マギさんが吸血鬼やったんか!?」

 

「ちげーよ!誤解だって!」

 

 とマギが誤解を解こうとしようとしてるその隙にエヴァンジェリンが逃げようとした。

 

「おッおい!テメェ俺にロリコン疑惑を擦り付けようとしてるんじゃねえ!」

 

 マギはエヴァンジェリンを追いかけようとしてのどかをアスナとこのかに任せた。

 

「このかアスナ!のどかの事を頼む!俺とネギは噂の吸血鬼を追うから心配しないで先に帰っててくれ!行くぞネギ!!」

 

「うッうん!分かったよお兄ちゃん!!」

 

 とマギが先に駆け出しエヴァンジェリンを追いかけ始める。ネギも足に力を乗せ走る準備をする。

 

「あッちょっと待ちなさいよネギ!」

 

「アスナさん!のどかさんをお願いします!」

 

 とネギも風の魔法を使い駆け出し、すぐさまこのかとアスナはネギが見えなくなってしまった。そんなネギを心配そうに見ていたアスナは居ても経っても居られなく

 

「ごめんこのかアタシも行ってくる!!」

 

「て!?ちょっとアスナ!まってーな!」

 

 とこのかの制止も聞かずにアスナもネギを追いかけ始めた。そしてこのかとのどかがポツンと残されてしまっのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 エヴァンジェリンを追いかけているマギとネギ。ネギはマギから吸血鬼の正体がエヴァンジェリンだという事に驚いていた。

 

「ええッ!?吸血鬼の正体ってエヴァンジェリンさんだったんですか!?」

 

「ああしかも彼奴は魔法使いで更に俺達のクソ親父の事を知っている様子だった」

 

 とエヴァンジェリンが魔法使いだったという事よりもマギとネギの父の事を知っているという事にさっきよりも驚いている様子だった。それよりも……とネギは先程のどかを襲う時に魔法を使ったという事に怒っていた。

 

「人を助けるために使う魔法で人を傷つけようとするなんて…エヴァンジェリンさんは可笑しいよ!!」

 

 とのネギの言った事にマギは呆れと子供の考えじゃ仕方ねえかと呟いて苦笑いを浮かべたマギ。ネギの言っている事は魔法は良い事に使う物だという考えだが魔法なんて強力な物を悪事に使おうと考える者なんてごまんと居る。ネギは少し頑固な所が有るが、ネギは魔法=良い魔法使いと言う考えなんだろう。と不意にマギが走りを止めた。

 

「お兄ちゃん如何したの!?」

 

 ネギはマギに何故急に止まったのかを聞くと

 

「如何やらエヴァンジェリンの仲間が近づいて来てるみたいだな。ネギお前は先にエヴァンジェリンを追いかけろ」

 

「ええ僕一人で!?もしエヴァンジェリンさんが凄い魔法使いだったらどうするの!?」

 

 とネギは一人で追いかけるのは聊か不安が残る様子だったが、大丈夫だとマギはネギに言った。

 

「エヴァンジェリンだが…アイツは確かに凄い魔法使いかもしれない。だけどなアイツはさっき使ってきた魔法は威力が低いしそれに魔法を発動するときに態々魔法薬を触媒にしていた。つまり…だ」

 

 と一回言葉を区切ると話を続けるマギ。

 

「エヴァンジェリンは魔法薬を使うほど魔力が弱い。お前でもアイツを捕まえる事が出来るはずだ…いいから早く行け。見失っちまうぞ」

 

「うッうん分かったよお兄ちゃん!お兄ちゃんも気を付けてね!!」

 

 とネギはさっきよりも倍のスピードで駆け出した。一人になったマギはさて……とと懐からタバコを取り出し火をつけると

 

「そこに居るのは分かってるんだよ。さっさと出てきたらどうだ?」

 

 とマギは追手が居るらしい場所を指差した。其処には何の気配も無かったが、ガサリと言う音が聞こえた。

 

「…驚きました。気配を完全に消していたはずなのに…良く分かりましたねマギ先生」

 

 と現れたのは茶々丸だった。マギは隠れていたのが茶々丸であったのに別段と驚いた様子は無く簡単さと話を続ける。

 

「簡単な話だ…逆に気配を消しすぎて、其処だけ変に感じたからな」

 

 煙を吐きながらそう言うと、茶々丸はそうですか…と表情を変えずにそう言った。

 

「それにしてもオメェがエヴァンジェリンの仲間だったとはな。確かに何時も一緒に居たしな」

 

「はい…マスターを支えるのが私の役目ですので」

 

「マスターって言うとお前は…」

 

 とマギの考えが当たったのかその通りですと茶々丸はペコリとお辞儀をすると

 

「私はマスターの魔法使いの従者(ミニステル・マギ)をしております」

 

 つまりはエヴァンジェリンのパートナーをやっているという事だ茶々丸は。成程な…とマギは呟くとマギは拳を構えた。

 

「だったら生徒を襲うようなエヴァンジェリンとそれを手助けするオマエみたいな悪い生徒にはお灸が必要だな」

 

「…申し訳ありませんが、マスターにはやるべき目的があります…その為に私もマスターを支えるべきで今はお灸をすえる場合ではないのです」

 

 と茶々丸も静かに拳を構えた。そして先制攻撃で茶々丸が踏み込んできた。正拳突きに膝蹴り飛び蹴り、回し蹴り裏拳などがマギに迫る。しかしマギは攻撃を防いでいるだけで一方に攻撃をしてこない。

 

「如何したのですかマギ先生?私にお灸をすえるのではなかったのですか?」

 

 茶々丸は攻撃を繰り返しながらマギにそう聞いた。一方のマギはんあ?と茶々丸の攻撃を躱して捌きながら

 

「いやさ、さっきあんなことを言ったのに俺、女には暴力をふるうほど落ちぶれていないし、生徒にそんな事をやっちまったら体罰問題じゃねえか」

 

 と茶々丸の腕を掴んでそう言った

 

「優しいのですね、マギ先生は…」

 

「そうじゃねえって、問題になってメンドクなるのが嫌なだけさ」

 

 だけどな…とマギは茶々丸を自分の方に引っ張ってくると茶々丸の額にでこピンを構えた。

 

「流石に生徒に舐められるのは恰好がつかねぇからな…痛いけど我慢しろよ」

 

 とマギはでこピンに少しだけ魔力を練り少しだけ強力にした。

 

「久々の破壊神のでこピン!」

 

 魔力で強化された破壊神のでこピンが茶々丸に炸裂した。普通の人間だったら余りの痛さに悶絶するものだが茶々丸は

 

 

 

 カァァァァァァァァンッ!!

 

 

 

「!?」

 

 茶々丸の額から人間から聞こえない金属音が聞こえた。マギは驚いて咄嗟に後退し、自分の指を見た。見れば自身の指が少しだけ赤くなっていた。茶々丸方も強がっているという訳でもなく、平気そうであった。マギは信じられなかったが、茶々丸に聞いてみた。

 

「茶々丸…お前人間じゃねぇな?」

 

「はい…私は此処麻帆良で開発されたガイノイドです」

 

「つまりはロボットっていう物か?ほんと…この学園には変わった奴が多い全く…やれやれだぜ」

 

 だけど…とマギは改めて拳を構えた。

 

「ロボットっていう事は少しは怪我しても大丈夫だな」

 

「…先程と言っていることが矛盾していますが?」

 

「そこは気にしない方向で頼むぜ」

 

 と今度はマギから攻撃を仕掛けようとした。しかし…

 

「!?なッなんだ?か…体が痺れて動けねぇ…」

 

 マギの体が痺れて動けなくなってしまっていたのだ。行き成り如何して動けなくなってしまったのか分からないでいると、申し訳ありませんマギ先生と茶々丸が頭を下げた。

 

「先程から無臭の麻痺毒のガスを撒いていました。ガスを吸ったマギ先生は数分の間動ける事は出来ません」

 

 なのに何でお前は動けるんだ?と言うツッコミをいれようとしたが、あぁロボットだから効かないのかと結論付けた。

 

「それにしても結構えげついなお前…」

 

 口も痺れだしまともに喋るのが難しくなってきた。茶々丸は申し訳ありませんと再度頭を下げながら

 

「私はマスターの為ならどんな事でもしますので…なのでマギ先生にはここで眠っていただきます」

 

 そう言いながら茶々丸がマギに近づくと腕から飛び出したロケットの噴射力で威力が倍になったパンチをマギの水月に直撃した。

 

 

 ドゴォッ!!!!!

 

 

 いくら体を鍛えているマギでも人間の急所の一つである水月は鍛える事は出来ない。そのまま数m程吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられてしまった。そして遂には体が動かなくなってしまい意識も朦朧としてしまった。

 

「申し訳ありませんマギ先生。私はマスターの元に急ぐのでこれで」

 

 と茶々丸はマギにお辞儀をすると足からジェット噴射で飛んで行ってしまった。そして一人となってしまったマギは

 

「…たっく恰好がつかねえな……本当にやれやれだぜ」

 

 と言い残して意識を失った。マギと茶々丸の一騎打ちはマギの油断によりマギが敗北する事となってしまったのであった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方エヴァンジェリンを追っているネギはと言うと、マギと分かれた後に直ぐにエヴァンジェリンを発見し、追いかけようとしたがエヴァンジェリンは自身のマントに空を飛びネギも自身の杖で追いかけ始めた。ネギはエヴァンジェリンを捕まえようとして、風の精霊を召喚する魔法を使い自らの分身を作り出すと、エヴァンジェリンを捕まえるために飛ばした。エヴァンジェリンは先程と同じように液体の魔法薬で氷の楯を造りだし精霊分身の攻撃を防いだ。とネギはマギが言っていた魔力が弱いという事が本当だと分かると、エヴァンジェリンの一瞬の隙をついてエヴァンジェリンに風華・武装解除の魔法を発動した。エヴァンジェリンのマントはまるで蝙蝠の群れの様になりエヴァンジェリンは飛行能力を失い、学校の屋根に着地した。同じようにネギも学校の屋根に着地した。

 

「こ…これで僕の勝ですね。如何してこんな事をしたのか教えてもらいますよ。それと…お父さんの事も」

 

 ネギは流石に恥ずかしかったのか指と指の間からエヴァンジェリンを事見てそう言った。しかし追い詰められたというのにエヴァンジェリンはクククと不敵な笑みを止めなかった。

 

「お前の父…お前の兄の言う所のクソ親父すなわち『サウザント・マスター』の事か?」

 

 エヴァンジェリンが言った事にネギはドキッと自分の心臓の音が大きくなったのを感じた。やはり彼女は父の事を知っていると

 

「とッともかく!魔力もなくマントも触媒の魔法薬も無いあなたに勝ち目はないですよ!素直に従ってください!!」

 

 とネギが手をブンブンと振り回して訴えかけているが、エヴァンジェリンはまだ不敵な笑みを崩さなかった。

 

「これで勝ったと言うなら、お前の頭の中は随分とお気楽なものだな…策というのは最後まで残しておくものだ」

 

 とエヴァンジェリンの後ろからガシャンという音が聞こえた。ネギの方からは何が来たのか暗くてうまく視認できなかった。

 

「さあお前の得意な呪文を唱えてみるといい」

 

 と不敵な笑みから挑発的な笑みとなったエヴァンジェリン。

 

(新手!?もしかしてさっきお兄ちゃんが言っていた仲間なのか!?仕方ない二人纏めて…)

 

 ネギはラス・テル マ・スキルと詠唱を始める。

 

「風の精霊11人縛鎖となりて敵を捕まえろ!」

 

 とネギが詠唱言い終える前に暗闇から…茶々丸が飛び出してきて

 

「サギ…(ビシッ!!)あう!?」

 

 茶々丸にでこピンをされ、魔法は不発に終わった。ネギは自分の魔法を妨害してきた者が同じクラスメイトの茶々丸だという事に気づいた。

 

「紹介しよう私のパートナーで、3-A出席番号10番で魔法使いの従者の絡繰茶々丸だ」

 

「ええッ!?茶々丸さんが貴方のパートナーなんですか!?」

 

 ネギは茶々丸がエヴァンジェリンのパートナーという事に驚愕した。

 

「そうだ。パートナーが居ないお前では私には勝てないぞ」

 

 エヴァンジェリンの言った事にムカッとしたネギは

 

「なッ!パートナーが居なくたって!風の精霊11人…」

 

 と再び詠唱を始めようとしたが、茶々丸が一瞬でネギに近づくと、ネギの頬を横に引っ張った。ネギは又詠唱を妨害され呆然としていたが今度こそと詠唱のえの字を言う前に茶々丸にでこピンをされた。魔法が使えないと分かるとネギは慌てだした。

 

「驚いたか?元々魔法使いの従者は戦いのための道具だ。我々魔法使いは呪文詠唱の時は完全に無防備なってしまい攻撃されたら呪文は完成できない。そこで盾となり剣となって護る事が従者の本来の役目だ。つまりパートナーのいないお前には我々二人には勝てないという事さ……まあお前の大切なお兄ちゃんが居たら勝てたかもしれんがな。というよりそのお兄ちゃんは何処にいるんだ?」

 

「はいマスター実は先程マギ先生と交戦し、戦闘不能にしておきました」

 

「ほうお前があの男に勝ったのか?私の思い違いか…」

 

「いえマギ先生は私が生徒と女性という事で本気では無かったのと油断により勝ったものです。本気だったら私が負けていました」

 

 茶々丸の報告にエヴァンジェリンはそうかと言った。ネギは茶々丸の言った事に驚愕した。

 

(そッそんな~!お兄ちゃんが居ないのにこの2人に勝つなんて無理じゃないかぁ~!!)

 

 ネギは完全に戦意を消失していた。

 

「さて話はここまでだ…茶々丸」

 

「はいマスター…申し訳ありませんネギ先生マスターの命令ですので」

 

 と茶々丸がそう言い終えると、ネギに近づき持ち上げた。ネギは首が締りさらに持ち上げられているために拘束から逃れられなかった。

 

「フフフ…漸この日が来たか。お前とその兄が学園に来てから今日という日を待ちわびていたぞ…」

 

「ど…どういう事です…か?」

 

 ネギは首を絞められながらもどういう事なのかを尋ねた。

 

「お前達が学園に来ると聞いてからの半年間…お前達に対抗できる力を身に着けるために、危険を冒してまで学園内の生徒を襲い血を集めた甲斐があった…これで奴が私にかけた呪いも解ける…」

 

「え……?のッ呪いってなんですか?」

 

 ネギはエヴァンジェリンが言っている呪いがどういう物か分からなかった。それはな…とエヴァンジェリンは何かを思い出すと、俯きプルプルと震えだした。そして次の瞬間ネギに迫りより、ネギの胸倉を掴むと

 

「私はお前たちの父、つまりサウザントマスターに敗れて以来魔力も封じられてからは!15年間もあの教室で日本の能天気な女子中学生と一緒にお勉強をさせられてるんだよ!!」

 

 それほど嫌だったのかエヴァンジェリンは涙で顔は赤面してネギの胸倉を掴みながら揺さぶった。揺さぶられたネギ本人は

 

「そ…そんなの…僕知りませんでした」

 

 胸倉を離されて咳を何回かした。そしてとエヴァンジェリンは口を大きく開きネギににじり寄って来た。牙がキラリと光る。

 

「このバカげた呪いを解くには…奴の血縁の貴様たち兄弟の血が大量に必要なんだ。本当はお前とお前の兄で半分半分にしてやろうと思ったのだがなお前の兄はタバコを吸ってるからアイツの血を飲んだら体に悪そうだからな…悪いがお前の血を死ぬまで吸わせてもらうぞ」

 

 エヴァンジェリンの牙がネギの首筋に迫ってきた。ネギ絶体絶命である。

 

「うわぁぁんッ!!誰か助けてぇぇぇぇッ!!!」

 

 ネギは叫び助けを呼んだが、当たり前のように誰も助けに来てくれなかった。そして

 

「アム(カプリ)」

 

 エヴァンジェリンがネギの首筋に噛みついた。首筋から血が失っていくのを感じるネギ。

 

(こ…こんな…こんな事になるなら…誰かパートナーを探しておくんだったよぉ~~)

 

 ネギは血を吸われながらもあらかじめにパートナーを探しておくんだったと後悔した。それと今更だがタバコを吸っているマギの事を恨んだのだった。そしてネギはこのまま本当に死ぬまで血を吸われるのではないかと思ったが…救いの女神?がやって来た。

 

 

 

「こらぁぁぁッ!!この変質者共ォォォォッ!!ウチの居候に何すんのよぉぉぉぉッ!!?」

 

 突如現れたアスナが茶々丸とエヴァンジェリンに飛び蹴りを食らわした。

 

「あ」

 

「はぶうッ!!?」

 

 茶々丸は別段と痛そうな感じではなかった(もともとロボットだから痛みなど感じないだろう)がエヴァンジェリンはもろ顔面に直撃して

 

「あぶぶ~~~!!」

 

 学校の屋上をヘッドスライディングしていく形で滑って行った。

 

「アッアスナさん!?どうやって此処に!?此処8階ですよ!?」

 

 ネギはアスナがどうやって此処に来たのか尋ねると、アスナは黙って上を指差した。ネギは上を見上げると

 

「お…お前…急に離れるなよ危ねえだろうが」

 

 黒き翼でゆっくりと降りてきたマギが屋上に着地したら膝をついてしまった。

 

「おッお兄ちゃん!大丈夫なの!?」

 

 とネギがマギが大事が無いのか触って確かめると

 

「おッおま!あんまり触んなよ!俺今体麻痺ってて上手く動けないんだからよ!」

 

 麻痺?ネギはマギが言っていることが今一よく分からなった。

 

「うう…なんだ今の力は…って!神楽坂明日菜!?」

 

 エヴァンジェリンは蹴られた顔を押さえながらよろよろと立ち上がると自分を蹴り飛ばしたのがアスナだったことに驚愕した。

 

「あれ?…って!アンタ達ウチのクラスのちょっとどういう事なのよ!?」

 

 アスナの方も今回の噂の吸血鬼がエヴァンジェリンだっ事に吃驚しているようだった。そしてエヴァンジェリンと茶々丸を指差し

 

「今回の事件の犯人はアンタ達なの!?しかも二人がかりで子供を虐めるような真似して!答えによっちゃただじゃ済まないわよ!!」

 

 エヴァンジェリンはアスナの迫力に思わず後ずさりをしてしまった。さらにさっきまで優勢だったのにネギの方には麻痺により上手く動けないが戦えるマギと喧嘩に強いアスナ。一方の自分は触媒の魔法薬はゼロで魔力が極限に封じられている自分とパートナーの茶々丸だけ、3対2で此方が圧倒的に不利であった。エヴァンジェリンが取った行動は

 

「よ…よくも私の顔を足蹴にしてくれたな!神楽坂明日菜…覚えておけよ!!」

 

 逃げの戦法。お決まりの捨て台詞を言いながら屋上から飛び降りた。

 

「あ!ちょっと待ちなさいよ!!」

 

 アスナはエヴァンジェリンと茶々丸を掴まえようとして屋上の下を覗き込んだが、2人の姿は何処にもなかった。8階なのに何処に行ってしまったのか辺りを探していると、トスンと言う音が聞こえた。アスナは後ろを振り返ってみるとネギは緊張の糸が切れたのか腰が抜けて座り込んでしまった。アスナはネギに近づいて

 

「もうネギ話はマギさんから聞いたわよ!アンタったらマギさんに言われて一人で犯人を捕まえようとして!マギさんにはさっききつ~く言っといたけど、取り返しのつかない事になったらどうすんのよこのバカ!」

 

 アスナはネギに説教をしてネギの首筋から血が出ていることに気づき大丈夫か聞いたが、ネギから反応が無かった。アスナはネギの顔を覗き込んでみると

 

「ぐす…!ヒグッ!…ウグッ!!」

 

 ネギは目に大粒の涙を溜めこんで泣き出しアスナに抱き着いた。

 

「ウワァァンッ!アスナさん怖かったですうぅッ!!」

 

 ネギは号泣しながら怖かったとアスナに言った。

 

「…はいはいもう大丈夫だからね。よしよし…何があったのかちゃんと話してみなさい」

 

 とアスナはネギをあやしていた。その姿は故郷のネカネに似ていると思ったマギ。

 

「あとお兄ちゃんはもう禁煙してくださ~い!!」

 

「なんで行き成り禁煙の話になるんだよ!?意味わからねぇわ!!」

 

 マギは行き成り禁煙しろと言われ意味が分からないとツッコんだ。

 こうしてネギとマギの吸血鬼騒動はネギとマギの返り討ちにあって終わったのであった。

 

 

 

 

 とある麻帆良の夜空にて

 

「ククク…思わぬ邪魔が入ったが、あの坊やと兄にまだパートナーを見つけていないのは今がチャンスだという事には変わりがない…クックック…覚悟しておくのだな先生方」

 

 茶々丸の腕に腰かけてエヴァンジェリンが不敵に笑っていた。エヴァンジェリンの笑い声は麻帆良の夜によく響いていたのであった…

 

 

 

 




今回はオリジナルの話で
マギVS茶々丸の話をいれてみたんですが……
マギはフェミニストという訳ではありません。
ただ女性相手だと今一本気になれないのです。
そのせいであっさりと負けてしまいましたけど……
「お前一応ドラゴンに勝っただろ!」
と言うツッコミは無しの方向でお願いします。
元々マギにはボコられてもらうつもりだったので

後書きが長々となってしまいましたが、次回はあの小動物がやってきます。
何故か他の作者様はあの小動物を途中退場させたり死なせたりしますけど何ででしょうね?
自分原作を読みましたけど、確かに所々嫌なヤツみたいなシーンがありましたけど
結構役にたったりとかしたのに……自分はあの小動物結構好きなキャラですよ

まあそんな事は置いといて次回もお楽しみに!






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