堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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飛ばされた白い翼

 ネギが戦線に復帰し、マギが後ろに下がり、先程まで別行動をしていたのどか達が合流し、数では此方側が有利になった。今度は此方から仕掛ける番だ。

 

「うおぉぉぉぉ!!」

 

 ネギが気合を出しながらフェイトに殴りかかる。しかしネギの拳はフェイトに簡単に掴まれ防がれてしまう。

 

「この程度なのかいネギ君? これぐらいの力なら此処へ来るのは早すぎたんじゃないかい?」

 

 軽くあしらわれ、逆に殴り飛ばされてしまう。ネギがダメージを負っているとはいえ、力の差がありすぎる。

 

「このやろ!!」

 

 小太郎もフェイトを殴ろうとするが、こちらも返り討ちにあってしまう。

 

「犬上小太郎か。君もあの時よりも力を付けたようだけどこの程度ならネギ君と差はないようだね」

 

 そう言いながらフェイトは詠唱をはじめ、空中に飛ぶ

 

「それに、僕たちはもう目的を果たしているからね。冥府の石柱」

 

 先程マギを潰そうとした巨大な石柱を何本も召喚し、こちらに向かって放ってきた。

 

「うわあああ!! 潰される!」

 

 迫りくる巨大な石柱を見て裕奈が悲鳴を上げる。

 

「これは、迎撃するしかないな。茶々丸、プールスやるぞ」

「はいレス!」

「了解です」

 

 マギは月光の剣に魔力を送り、茶々丸は腕をマシンガンへ変形させ、プールスは腕をアストロン化させる。

 

「おらぁ!」

 

 月光の剣の飛ぶ斬撃で巨大石柱を破壊する。が破壊したことで、砕けた破片がこっちに降り注ぐ。

 

「破片を迎撃します」

 

 こちらに落ちてくる破片をロックオンし、次々に破片を打ち落とし

 

「やああ!!」

 

 プールスは硬化させた腕を伸ばしながら破片や瓦礫を殴って粉々にする。

 

「うぉぉぉ! マギさんすげえ!!」

 

 迫りくる石柱を破壊したマギ達を見て裕奈達は大口を開ける。

 

「お前ら怪我はないか!?」

「う、うん! 大丈夫だよ」

 

 まき絵が大丈夫と言ってくれて皆が怪我していないことにほっとする。が、ほっとしたのと同時に違和感を感じた。

 

「どうしたんですかマギ先生?」

 

 怪訝な顔をしたマギを心配そうに眺める茶々丸に向き合って

 

「なんか、変な感じがするんだ」

「変、とは?」

「さっきの石柱、確かに脅威なのは変わらない。けど、なんかな、攻撃が雑っていうか、『はなからお前ら眼中にないんだよ』って言っているようなんだよ」

 

 それにとマギはフェイトとぶつかり合いをした時にフェイトはこう言った。目的は此処と……

 

「やばい、なんか絶対にやばい事が起こるぞ絶対に」

 

 マギの中で警鐘が鳴りやまない。その一方、雪姫とのどかと夕映がこれ以上被害が起こらないように何本かの石柱を打ち落とそうとしていた。

 

「行くよ! 歌魔法『戦の歌』!」

 

 亜子が歌魔法で雪姫達を強化する。

 

「行くぞ。私に続け。闇の吹雪!」

 

 雪姫は無詠唱で闇の吹雪を石柱に向かって放つ。闇の吹雪が直撃した石柱はあまりの威力に小間切れになって霧散する。

 

「フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ 来たれ雷精風の精!!」

「リー・ド・ア・ブック・イン・ザ・リブラ 来たれ炎精闇の精!!」

「雷を纏いて吹きすさべ南洋の嵐」

「闇よ渦巻け燃え尽くせ地獄の炎」

「雷の暴風!!」

「闇の業火!!」

 

 のどかと夕映の雷の暴風と闇の業火が直撃し、破壊する。しかし2人で1本しか破壊できていない。というのはまだ彼女らの魔法の威力が足らないわけではない。フェイトの石柱の方が強力だということだ。

 そして千雨はというと

 

「おい長谷川! 貴様だけ何をさぼってるんだ!!」

「うっさいわ! 今どう見たってピンチだからこのスーツケースを使おうとしたらこのありさまだよ!」

 

 憤慨してスーツケースを指さす千雨。そこにはこう掲示されていた。

 

『生体認証に伴い、起動までお待ちください。残り時間1時間38分』

「葉加瀬の奴セットアップぐらいしてくれてもいいだろうが! いや、あいつもこんな事予想外だっただろうな!!」

 

 悪態を突きながらも1人で納得する千雨。出来ることなら千雨も魔法を使って援護をしたい所だが、千雨は攻撃魔法はあまり使えず魔法の矢と精々雷の斧程度である。殆どがかつての木の守護者を動かす魔力に回している。このスーツケースの中も木の守護者だと思うがなんでこんな七面倒な過程を組まないといけないのかと納得はあまりしていない。

 しかし……と千雨はマギと同じように思案する

 

「おい雪姫さんよぉ!!」

「何だ!? 戦わない役立たずに構ってる暇はないぞ!!」

「うっせぇ!! 自分が役立たずだって言うことはあたしが一番理解してるわ!! それよりも何か可笑しくねぇか!?」

 

 闇の吹雪を放っている雪姫に話しかけ、雪姫から役立たずと言われ千雨も即座に言い返す。

 

「何かあたしらアイツらの手のひらで踊ってる感じしねぇか!? さっきからあたしらの方が数も雪姫さんが居て有利になってる筈なのに全然勝ってる気がしねぇんだわ!!」

「えっ!?」

「それってどういうことです!?」

 

 雪姫も一筋の冷や汗を流し

 

「我々は、とっくに負けているというのか?」

「……かもしれねぇ」

 

 千雨は最悪なパターンを想像してしまう。皮肉にもその予想は見事に当たってしまうのは直ぐに分かることだった。一方で長身の者と戦っている楓と古菲も違和感が拭えていない。

 

(何でござるかこの感覚。戦う前から勝負は決まっていて、こっちが当に負けている……)

(嫌な気配が全然消えないアルよ。凄く気持ち悪いアル)

 

 しかし相手の攻撃が強力なのは確か。油断をしていたら相手の力に飲み込まれてしまうだろう。更に刹那は刀を持った少女と刀で渡り合う。

 

「ふふふ。皆あの時よりも美味しそうに育ちましたなぁ。それは貴女もですよ先輩」

「月詠、貴様……!」

 

 刀を持った少女は修学旅行で刃を振るった月詠であった。月詠は嬉しそうに狂気の笑みを浮かべている。しかし直ぐに残念そうな悲しげな顔をしている。

 

「でも、こんな楽しい時間ももう終わり。あぁ残念やわぁ」

「どういう意味だ!?」

「文字通り、この時間はもうお終い。さよなら先輩。無事だったらまた会いましょね」

 

 背筋が寒くなる刹那。

 

(何かが起こる。我々にとって良くない事がこの後直ぐに起こる!!)

 

 そしてアスナは石柱がまたもまき絵達に向かってきたので、ハマノツルギで石柱を打ち消す。

 

「やっぱり消せた!!」

「アスナもすげぇ!!」

 

 自身のアーティファクトのツルギが相性がいいと言う事が分かり、強く出るアスナに

 

「なぁアスナ!! 何か違和感を感じねぇか!?」

「ええ!? 違和感!!?」

「ああ! さっきから雰囲気は最終決戦なのに気分は茶番を味わってる感じだ! 何か、何か俺見落としてる事ないか!? アスナは勘がいいからよ何か分からないか!?」

 

 ……あ、とアスナは何かに気づいたようだ。

 

「そう言えば、あのフェイトって奴やあのでっかい奴と刀持った女の子の他にあと1人、フードを深く被った奴がいた。そいつがさっきから見えない!」

「ほんとか!? 頭吹っ飛んでたからここにはあのフェイト、デカい奴に仮面野郎と刀少女だけだと思った!!」

 

 だったらそのフードを深く被ったその人は何処にいる。マギは辺りを見渡し、見つけた。フードの者がストーンヘンジの中心に置かれた石を破壊しようといていた。

 それを見た瞬間、マギの背筋が寒くなっていくのを感じた。あれが壊されれば、何か良くない事が起こると直感が囁いている。

 

「やめろぉぉぉ!!」

 

 叫びながら石を破壊しようとしてる者へ向かおうとする。恐らくもう間に合わない。だが一抹の希望があるのならただ真っ直ぐ向かうしかない。マギが向かおうとしたその時

 

「偽・螺旋剣」

 

 仮面に罅の入った、何時の間にか復活したアーチャーがお馴染みの螺旋剣を高速でマギに向かって撃った。マギは防御する暇もなく、右肩に直撃し余りの威力にマギに右肩が抉られ、皮一枚で繋がってる状態になりながら、無数の剣がマギに刺さる。

 

「貴様が一番最初に気付くとはな。だがもう遅い。こちらの目的はほぼ完了している。思う存分貴様の邪魔をしてやろう!」

「ぐはぁ!!」

「マギさん!」

「マギ先生!!」

「マギ兄ちゃん!」

「「マギお兄ちゃん!!」」

 

 剣が体中に刺さり肩が抉れて叩きつけられるマギを見てアスナ達は悲鳴を上げる。痛みに耐えながらマギは自身の傷を治す事を集中させ、瞬時に体の傷を治す。

 まずいまずいまずいまずいまずい、まずいまずいまずいまずい!! マギの警鐘は早鐘を打っている。早く止めないと本当に大変な事になる。マギはまた四つん這いになる。

 

「マギさんアンタまたあれ使おうとしてるでしょ!? やめなさい! それ以上の自分の事を酷使しないで!!」

「黙ってろアスナ! 止めるにはもうこれしか……! SWITCHON ON BERSERKER LEVEL……うぐ!?」

 

 もう一度発動しようとした瞬間マギの体中に電撃が入ったような痛覚が巡る。体に力が入らない。

 

「どうやら貴様はもう使えないでくのぼうのようだな。事の顛末を寝転んで眺めているがいい」

「てってめぇ……!!」

 

 アーチャーの嘲笑にマギは何も出来ない。悔しさにマギが歯を食いしばって睨んでいる間に、フードを深く被った者が、石に罅を入れて破壊した。

 

「さて、僕達の目的は達成した。しかし、僕達を相手にしてよく持ちこたえたね。ネギ君、君の仲間をゴミと評価していたがそれは取り消そう。しかし……君はこの程度でこちらに来たのか。もう少し力を付けてきた方が良かったかもね」

「ま、待て……まだ僕は戦えるぞ!!」

「俺らを殺さんでよくデカい口が叩けるなてめぇ!!」

 

 無表情でネギと小太郎を見下すフェイト。ネギと小太郎はかなりダメージを負っていながらもまだ戦う意思を残している。そんな2人を一瞥し、フェイト、アーチャーに刹那達を適当にあしらっていた長身の者と月詠は石を破壊したフードの者へ集まる。

 

「フェイト様。楔の破壊完了、離脱用のゲート確保。脱出できます」

「うん……」

「ほな、ずらかりましょか~」

「私は別行動をしよう。君たちの目的に協力したのだ。君も私に分かっているだろうな」

「あぁ、ここに君が求めている物が眠っている。君が目的を達成する事を願っているよ」

 

 勝手に現れ、勝手に帰ろうとするフェイトに

 

「待て!! 君たちは何者なんだ!? いったい何を……」

「残念だけど時間切れだ。なかなか楽しめたよ。けど、今回はこの辺でお別れだ。君たちの理想を壊したお詫びとしてこれからの現実をプレゼントしよう。では君たちの健闘を応援しておこう……それじゃあね」

 

 ネギが呼び止めようとするが、フェイト達は消えてしまった。転移の魔法を使ったのか、フェイトが消えた瞬間に楔と呼ばれた石が崩れ落ちた。その瞬間にマギ達の足元に魔法陣が展開する。

 

「これは!?」

「兄貴! これは強制転移魔法だ!! マズイ! これじゃあ俺達何処かへ飛ばされちまう!!」

「どういうことカモ君!?」

「ネギ!!」

 

 カモにどういうものか聞こうとしアーニャが悲鳴を上げる。

 

「あいつらゲートの要石を! 世界と世界を繋げていた楔を壊していったわ! 多分! いや絶対扉を繫ぎ止めていた魔力が暴走する!!」

「なんだって!?」

 

 皆の嫌な予感が一致する。これだった、今から自身達に起こる大変な事はこれだったのだ。

 

「「「「マギさん!!!」」」」

「マギお兄ちゃん!!」

 

 倒れたマギにのどか達がしっかり掴まり、離れないようにする。

 

「お前ら、俺から絶対に離れるな! 雪姫! どうにかならないのか!?」

 

 マギは倒れながら、雪姫に助けを求めた。しかし雪姫は首を横に振りながら

 

「すまん。こればかりは私には何も出来ない」

 

 万事休すのようだ。何が起こっているのか理解不能な一般人組はただ単に困惑し騒ぐだけ。

 

「ネギくーん!!」

「ネギ先生!!」

「まき絵さん! あやかさん! 皆さん急いで手を────」

 

 間に合わなかった。轟音の爆発と目を焼くほどの眩い光がマギ達を襲う。

 

『きゃあああああああああああああ!!』

 

 悲鳴を上げながら、皆吹き飛ばれそうになっている。

 

「きゃああああ!!」

「マギさん!!」

「いやあああああああ!!」

「くそお!! 何なんだよこれえ!!」

「マギお兄ちゃん!! 怖いレスぅぅぅぅぅぅ!!」

「マギ兄ちゃん!」

「マギお兄ちゃぁぁぁん!!」

「のどか! 夕映! 亜子! 千雨! プールス!! 風香! 史伽! 手を! 伸ばせ!!」

 

 マギも痛む体に鞭を打ち、必死にのどか達に手を伸ばす。しかしそんなマギを嘲笑うかのようにのどか達は散り散りに飛んで行ってしまった。

 

「!! だ、駄目だ! 駄目だああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────!!」

 

 マギの悲痛な絶叫は転移で飛ばされるまで延々とゲートポートで響き渡っていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────! ────い! ────先生! ────ギ先生! ────マギ先生!! 目を、目を覚ましてください!!」

「────! ────ん! ────ゃん! ────ちゃん! ────お兄ちゃん!! しかっりして!!」

「!! うわあああ!!」

 

 ネギと茶々丸に必死に呼びかけられ、マギは勢いよく上体を起こした。

 

「よかったマギ先生、大事はないですか?」

「お兄ちゃん、よかったよぉ。このまま起きないかと思ったよ」

 

 ネギと茶々丸は胸を撫で下ろした。マギは暫く呆然としていたが、段々と意識がはっきりするとネギの肩を掴み強く揺さぶってしまう。

 

「ネギ! 茶々丸! お前たちだけか!? 皆は!? のどかは!? 夕映は!? 亜子は!? 千雨は!? プールスは!? 風香は!? 史伽は!? 雪姫は……エヴァは何処にいる!?」

「おっ落ち着いてお兄ちゃん!! 僕もさっき起きたばかりなんだ!!」

 

 明らかに正気じゃないマギを何とか落ち着かせようとするネギ。茶々丸が状況を教える。

 

「時間は9時間57分が経過、フェイト・アーウェルンクス以下5名は転移呪文で逃走、『白き翼』メンバー及びあの場にいた者は敵魔法使いの強制転移魔法によって散り散りに飛ばされたものと思われます。消息は、不明です」

 

 茶々丸の報告を聞き、マギとネギの頭の中が真っ白になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 マギとネギは直ぐに皆の安否を確かめるために、仮契約をした者達のカードを使い、召喚、念話を試みる。しかし、結果は散々で、誰1人応じる者は現れなかった。

 

「ダメです! 反応がありません!」

「こっちもだ……くそくそくそくそ……みんな、みんな……!!」

 

 ネギは焦り、マギは明らかに様子がおかしくなっている。

 

「元々、カードの念話機能は簡単に妨害されてしまいますし、この地域一帯に天然の妨害岩が大量にあるようです。それにカードで召喚できる限界距離は5キロから10キロ、それ以上遠いと召喚は不能です」

 

 ネギは歯を食いしばる。つまりアスナ達は10キロ以上の距離にいるという事だ。

 

「………………」

 

 黙っているマギが勝手に駆けだした。

 

「お兄ちゃん待って!!」

「いけませんマギ先生!! まだ動ける状態じゃありません!!」

 

 ネギと茶々丸の静止の声を無視をし、どんどんと先に急いでしまう。そして巨大な岩を登り切り、遂にマギは立ち止まる。

 目の前に広がるのは広大なジャングル。修行で使っていた雪姫の別荘のジャングルの何十倍も広い。所々で獣たちの声が聞こえる。

 

「見渡す限りのジャングルですね……」

「茶々丸さん、僕らはどのくらい飛ばされたんでしょう。皆とはどれくらい離れてしまったんでしょうか?」

 

 今の自分たちの状況が絶望だというのは肌で感じる。しかしネギは気丈に振る舞い茶々丸に聞く。

 

「植生を見るにここは熱帯、メガロメセンブリアは温帯地域です。元の世界の気象学的常識が通用するなならばですが……少なくとも1000キロ程度で飛ばされたかと」

「っ! そんなに……」

 

 100キロ200キロ規模ではなく、千キロ。それだけを聞いて、ネギは想像出来なかった。茶々丸は何かを思い出した。

 

「そうですネギ先生! バッジを『白き翼』のバッジです。これには幾つかの機能がありますが、他のバッジの位置を探知する機能があります」

「ほんとですか!?」

「科学と魔法の融合ですので、ここでも機能するかと……」

 

 茶々丸がバッジを使い、他のバッジを探知してみる。暫く経って

 

「いました!」

 

 何とか位置を掴み取ったようだ。

 

「北西に2つ100キロと地点と180キロ地点です。他には東北東540キロに1つに北東に560が1つ。更にいくつか数100キロ単位で点在していますが、数が足りません。おそらく探知限界の1800キロを超えているものと……」

「そんな……!」

 

 そんな遠い地に皆散り散りに飛ばされた。しかもその中には『白き翼』のメンバーではないあやかやまき絵達の所在を知るすべを持っていない。

 

「……世界地図を出します先生。我々と皆の位置を特定出来るかと」

 

 黙っているネギに辛いが更なる現実を突きつける。

 

「ネギ先生、総面積は我々が住む地球の3分の1弱ですが、この『魔法世界』はそれでも尚、広大です。私たちが麻帆良学園に無事に戻るためには、この広大な世界から仲間達を探し出さなくてはならなくなったようです」

 

 まさか父であるナギを探す旅が、散り散りに飛ばされた仲間を探し出す旅になってしまった。

 と鈍い音が何度も聞こえてきた。見ればマギが何度も左拳を岩に叩きつけている。しかし傷は直ぐに塞がってしまう。それでもマギは何度も何度も左拳を岩に叩きつけて鮮血が宙に舞う。

 

「お兄ちゃん! 何やってるの!? 止めて!!」

「いけませんマギ先生! それ以上自身を傷つける真似は!!」

 

 ネギと茶々丸は必死にマギを止めようとするが

 

「うるさい!!」

 

 マギは何時もなら大事にしているネギや茶々丸を突き飛ばした。そして今度は額を岩にぶつける。痛々しい自傷行為にネギと茶々丸は息を呑む。

 

「何が短い期間で戦い方をその身に刻んだだ! 何がいざとなったら不死身になったこの体を肉壁にして護り通すだ!! 何が皆で無事に戻ってくるだ!! 何が!! その覚悟だけは本物だだ!!! 俺は! 何も見えてなかった! エヴァに修行をしてもらって強くなったと勘違いした、大馬鹿野郎だ!! 不死身だから皆を護れると驕り高ぶった愚か者だ!! その覚悟だけは本物だって言って自身に酔っていた最低野郎だ!!」

 

 左拳と同じように傷ついた額は直ぐに塞がる。遂にマギは思い切り額を岩にぶつけ、額の骨を砕いてしまった。

 

 

「俺は!! 弱い!!」

 

 涙を流しながら自分の弱さを実感したマギを見て、ネギも涙を流し悲痛な空気が辺りを漂うのだった。

 

 

 

 

 

 

 


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