堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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最凶襲撃

 目の前で凄惨な光景を見てまき絵達一般人組は頭の整理が追いついていなかった。

 アキラは目の前の光景が撮影か何かだと思いたいが、目の前の光景が現実であるという事を理解してしまい、どうあがいても目の前の光景から逃避することが出来ないでいた。

 まき絵やあやかはネギが血を流していることにパニック状態になっており、頭が半分吹き飛んでしまったマギを見て風香と史伽は顔から血の気が引いて顔面蒼白になっている。

 一般人組が阿鼻叫喚な事になっているが、古菲がこのかを連れてきた。

 

「やだ!ネギ君大丈夫なん!?」

「大丈夫です!お兄ちゃんのおかげで致命傷にはなっていません!」

 

 ネギはローブを千切り、切られた箇所を強く縛って出血を抑えようとする。しかし出血が酷くこのままでは失血死してしまうかもしれない。

 

「このかお願い!あんたのアーティファクトでネギの事を治療してあげて!!」

「うっうん!わかった!」

 

 このかは自分のカードを取り出そうとして、はっと思い出す。

 

「あかん……!うちらのカード、あの箱に全部入ったままや!!」

 

 そう、アスナ達のカード、ネギの杖に刹那の刀や楓の忍具その他諸々などは封印箱に入ったまま。そして先程受付の女性の説明にあった通り、ここでは箱を開けることが出来ない。3分経つとこのかのアーティファクトの能力が効かなくなってしまう。タイムリミットは3分間である。

 どうすればいい……頭をフル回転して打開策を考えるアスナ達。そんなアスナのローブの裾を裕奈が引っ張る。

 

「ちょ!何してんの!?ネギ君が血を流して大変なのは分かるけど、マギさん頭半分吹き飛んで死んでるんだよ!?なんでそこまでネギ君だけに構ってるの!?」

「ゆーなちょっと黙ってて!マギさんは大丈夫だから!」

「何が大丈夫なの!?マギさん死んでるんだよ!?」

 

 とパニックで叫んでる裕奈にごめんと最初に謝り、アスナは平手を打つ。

 

「マギさんは大丈夫だから黙ってて!それよりネギは急がないと本当に死んじゃうんだから!!」

 

 アスナの言っていることが分からず、もう頭の中がぐちゃぐちゃになっている裕奈。

 アスナ達が叫んでいる間にもフェイトはゆっくりとこちらに歩いてくる。

 

「まったく、中途半端に力をつけていてもこのありさまか。無様というのはこのことだろうね」

「止まれ貴様!」

 

 警備兵がフェイトを捕縛しようと杖を向けた瞬間、フェイトの背後から長身の者と両手に刀を持った少女、そしてローブのフードを深くかぶった者が一瞬の内に魔法や刀で警備兵を無力化してしまった。

 

「何時まで死んだふりをしているんだい。マギ・スプリングフィールド。早くしないと、ネギ君が大変な事になってしまうよ」

 

 フェイトは感情の読めない口調でそう話している間に、マギのはじけた頭に、マギの脳や骨の破片や耳や目がまるで逆再生のように集まり、元に戻っていく。一般人組はマギの元にはじけた肉片が戻っていくのを見て口を開閉していると

 

「ぶはぁ!!!」

『きゃあああああああ!!?』

 

 マギが大きく息を吐きだしたのを見て、マギが生き返った事に正気を失いそうになってしまった。

 

「目の前が真っ暗になって意識が飛んでびっくりしたじゃねえか!何があったんだ!?」

「実際に見たわけじゃなかったけど、本当に不死身になったんだね。彼が一苦労しそうだ」

 

 マギはフェイトを睨む。

 

「誰だお前」

「僕はフェイト・アーウェルンクス。それよりも僕に構っていていいのかい?このままだとネギ君は死んでしまうよ」

 

 マギは先程まで意識を失って、状況が掴めていなかったが、ネギが血を流していて、時間がないというのは理解できた。

 

「このか!アーティファクト!!」

「マギさん!カードは全部あの箱の中や!!」

 

 ならばとマギはアスナの方を見て

 

「アスナ!お前があの箱をぶっ壊せ!!」

「え!?アタシ!?なんで!!?」

 

 なぜ自分なのかと再度聞くが。

 

「雪姫に聞いたぞ!雪姫と茶々丸と戦った時にアスナが雪姫の魔法障壁を無視して蹴り飛ばしたって!それにアスナのアーティファクトは魔法を無効化するんだろ!?だったらアスナ自身に何か魔法を無効化する力があるんじゃないのか!?」

『!!それだ!!』

 

 さっきまで騒いでパニックになっていた皆の心が1つになった。こうなったらアスナの力に頼るしかない。

 

「どうやら打開策が見つかったみたいだね。けど、君たちの思い通りにはさせないよ」

 

 長身の者と刀を持った少女がマギ達に突っ込んでくる。

 

「ここは俺が何とかする!アスナは箱の破壊に専念しろ!コタロー!楓!刹那も行けるか!?」

「おう!わかったわ!」

「承知!」

「了解です!!」

「雪姫はアスナ達やあやか達一般人組を護ってくれ!」

「あぁ。分かった」

 

 マギは影から刀とナイフを出すと刹那に刀、楓にナイフを渡す。

 

「とりあえずこれ使え!鈍だから愛用してるものよりも使い勝手が悪いだろうから、壊れても文句言うなよ!」

「いえ!感謝します!」

「ないより、ある方が心強いでござるよ!!」

 

 楓が長身の者へ、小太郎と刹那は刀を持つ少女へ、そしてマギはフェイトへ向かっていった。

 フェイトは地面から鋭利な岩を隆起させてマギを攻撃する。マギは腕が岩で吹っ飛ぶが直ぐにくっつけてロングソードをフェイトに向かって振り下ろすが防がれてしまう。

 

「てめぇが何者かは分からない。けど、ネギの敵だっていう事は理解できた。目的はなんだ、ネギをこの場で消すことか?」

 

 ロングソードに力を籠めるが、びくともしない。それどころかこの感触、本当に人なのかと思ってしまった。

 

「まさか。ネギ君と僕が出会ったのは偶然さ。目的は此処、ネギ君は不幸な事故というわけだ。まさか僕に気付くとはね。ただ気づかれた以上、応援は呼ばせないよ。今ここは外部と完全に隔絶してある」

「そうかい。でも残念だったな。こっちには最強の雪姫がいる。お前らが強いのは分かるが、雪姫がこっちに居れば百人力だ」

「雪姫、エヴァンジェリンの事か。確かに彼女は強敵だ。僕らが本気を出しても負けるかもしれない。けど大丈夫なのかい?僕が気にしてるのはネギ君であって貴方ではない。僕ばっかを気にしてると大変な事になるよ」

 

 こんな風にねとフェイトが思わせぶりな発言をした瞬間に、一般人組に向かって無数の矢が飛んで行った!

 

「雪姫!!」

「任せておけ!!」

 

 雪姫は咄嗟に一般人組達に氷の障壁を展開し、矢がまき絵達を襲う直前に止めた。

 まだ伏兵が居たのかとどこのどいつだと矢を放った正体を探ろうとすると

 

「此方だ戯け」

 

 マギの背後を何かが切り裂く感触があり、マギはくぐもった悶絶の声を上げる。背後からの奇襲に面食らっていると、フェイトがマギの腹に向かって殴りかかってきた。

 咄嗟に剣で防ぐが、剣の耐久力が足らず砕けてしまい、そのまま後ろに吹っ飛ばされてしまった。

 

「背中を無防備に晒すとは、まったく成長をしておらんようだな」

 

 マギの背中を襲った者はかつて学園祭でマギと一騎打ちを行った傭兵、アーチャーであった。

 アーチャーを見てマギは

 

「誰だアンタ!?初めまして!!」

 

 咄嗟に叫んでしまった。自身を見て忘れた素振り見せたマギにアーチャーはこめかみをピクリと動かし

 

「背中を取られた仕返しが随分と幼稚だな。君がそこまで子供っぽいとは思わなかったぞ」

 

 とマギを見下す態度を取っていたが、マギは逆に冷静に

 

「いや、俺つい最近過去の記憶を無くしてて、アンタの事も丸っきり覚えてないんだわ」

 

 馬鹿正直に答えておいた。でもな……と話を続けながら、マギはグレートソードを影から取り出すと切っ先をアーチャーに向ける。

 

「アンタが俺によって因縁の相手だっていうのは分かる。さっきから俺の中で『アンタをぶちのめせ』と五月蠅いからな」

「ほぉ、随分と威勢がいいが、果たして貴様だけで我々に勝てると思っているのか?」

 

 見れば楓は長身の者の魔法で黒い球体に閉じ込められ、小太郎は刀の少女の技で眠らされ、現在刹那が戦っているが、時間の問題だろう。

 フェイトとアーチャーそして長身の者。3対1の状況となっている。負けることはないだろうが、勝つビジョンもまったく浮かばない。それどころか戦いに気を取られ、アーチャーがまたもまき絵達非戦闘員を襲うかもしれない。

 どうすればいいと思案を巡らせていると、闇の中からぬっと黒マギが現れ、獰猛な笑みを見せる。

 

『分かってるんだろ俺?今の状況は俺が本気を出さないと皆を護ることが出来ないって。本気を出さないとなぁ』

 

 黒マギの悪魔の囁きがマギの頭の中で響く。しかし一理ある。今の状態で自分がびびって手を拱くことをしてしまい、最悪な結果になってしまったらと考えてしまう。

 

「雪姫、わるい」

 

 マギは雪姫に謝罪するが、雪姫は瞬時にマギの謝罪を理解する。

 

「やめろマギ!!あの魔法は闇と人の曖昧な境目があって、闇がどんどん浸食してきたらお前自身どうなるか分からないんだぞ!!」

 

 マギの魔法の使用を却下する雪姫。

 

「悪い。けど、今はこれしか方法がないだろ。アスナが箱を壊す間の時間稼ぎが出来ればいい」

 

 そう言ってマギは四つん這いになり

 

「SWITCH ON BERSERKER LEVEL……50!!」

 

 闇の魔法がマギを包み込む。だが次の瞬間

 

「がっ!?があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 体に激痛が走った。LEVELが10上がっただけでここまで体に負担がかかるとは。しかしまだ50だまだ半分だと行けると自身に言い聞かせる。

 

「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

 マギの咆哮にまき絵達は肩を震わせる。マギはグレートソードを肩に担ぎ、フェイト達に突っ込んでいく。

 

(第1にあのフェイト、第2にあの仮面野郎、第3にあのデカい奴だ!あのデカい奴の能力がどんなかは分からないが、あのフェイトを止めないとネギが狙われる!!)

 

 倒す優先順位を立てていると、長身の者がマギの前に立ちはだかる。

 

「邪魔ぁするなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 マギは先制攻撃でグレートソードを長身の者の者へ横なぎにフルスイングで振るう。そしてまた変な感触を感じた。この長身の者も人ではない。

 しかし、長身の者はグレートソードをいとも簡単に止めてしまった。マギが力を籠めてもビクともしない。

 長身の者の拳がマギの横っ面に突き刺さる。

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 殴り飛ばされたマギはそのままゲートポートの壁にめりこんでしまう。

 更にアーチャーが剣を空間から出現させて、マギに向かって連続で射出し次々とマギの体に刺さっていく。フェイトも魔法を詠唱し、巨大な石柱でマギを押し潰す。

 

「UUUUUUUUUUU……URAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

 何とかフェイトが出した石柱を破壊する。しかし相手の方が上でしかもそれが3人もいる。

 ならば……

 

「LEVEL……60!!」

 

 50が駄目なら60だ。

 

「う、が、GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!?」

 

 先程よりも強烈な痛みが体を巡るが、更なる力を感じる。しかし気を抜いたら持ってかれそうなのも事実だ。

 

「UROOOOOOOOOOOOOOOO!!!」

 

 マギはアーチャーに向かってグレートソードを振り下ろす。アーチャーは剣を何重にも重ね盾にするがマギのグレートソードが剣の盾を破壊する。

 

「哀れだな。まるで獣のようじゃないか。随分と辛そうだな。あの時の戦いの方がまだ理性的であったぞ」

 

 アーチャーの嘲笑に対してマギは持ってかれそうになりながらも踏ん張って笑みを浮かべる。

 

「ほんとは、アンタらを俺が倒せれば、よかったんだけど、な。俺が、何で1人で、お前らの相手したと、思って、るんだ」

 

 何かが砕ける音がし、アスナが封印箱を破壊したようだ。

 

「ネギ!!」

 

 封印箱を破壊出来た事に歓喜の声を上げるアスナ。これでネギを助けることが出来る。

 直ぐにアスナがこのかにカードを渡す。させないとフェイトと長身の者がアスナ達に向かって駆けていく。

 

「いか、せるかぁ!!」

「それはこっちのセリフだがね」

 

 マギがアスナ達の元へ戻ろうとしたら今度はアーチャーが邪魔しようと立ちはだかる。

 

「どけぇ!!」

「形成が逆転、先程とは立場が逆転してしまったな」

 

 LEVEL60がかなり体に負担をかけているようで、いつものマギの技のキレがなかった。グレートソードを振るっている間に、アーチャーの干将と莫邪の連撃でダメージを与えていく。

 だがマギは干将と莫邪でダメージを与えられるが、直ぐに傷は無くなる。

 

「どうやら、本当に不死身になってしまったようだな」

 

 干将と莫邪が体を貫通した。そのタイミングを逃さず、マギはアーチャーの腕を掴む。

 

「しまっ――――」

 

 アーチャーも今の攻撃は悪手だと直ぐに気づく。

 

「くらえ!!」

 

 マギの拳がアーチャーの顔面に抉るように入り、そのまま後ろへと飛んで行った。

 当分はアーチャーも動くことが出来ないと判断したマギは直ぐにアスナ達の元へ飛んでいく。

 何とかカードを発動することが出来たようだ。現にアスナとこのかの姿が変わっている。

 と長身の者がアスナとこのか、そしてネギに向かって、黒い炎のようなものを放っている。

 

「GRUAAAA!!」

 

 長身の者へマギが飛び、さっきと同じようにグレートソードの横なぎのフルスイングをお見舞いし、吹っ飛ばす。

 しかしマギが長身の者に気を取られてしまい、アスナの懐に刀を持った少女が入り込んでいた。

 アスナに斬撃をお見舞いしようとした瞬間に小太郎が割って入り、刀を持った少女を蹴り飛ばした。

 小太郎とアスナの間に入るようにマギも着地する。

 

「コタロ!アンタやられてたんじゃなかったの!?」

「やられとったわ!正直危なかった!というかマギ兄ちゃんもボロボロやないか!」

「大丈夫だ俺は文字通りの不死身だ!けど、くそっ、もう限界かよ……!」

 

 マギは肉体のダメージは無いに等しいがSWITCH ON BERSERKERの反動でかなりガタが来てしまっている。魔法を解いた瞬間、かなり足が震えている。

 だが、マギが時間を稼いだおかげで、このかのアーティファクトでネギの傷は無事に治った。

 

「ごめんお兄ちゃん。お兄ちゃんに無茶をさせちゃって……!」

「気にすんな。これで主戦力が戻った。アスナ、この鞘もその剣で壊してくれないか?」

「分かったわ!」

 

 月光の剣の鞘をアスナのハマノツルギで壊してもらい、月光の剣が眩い光を発した。

 

「よっしゃ、こっからは俺たちのターンだ。覚悟しろよ」

 

 マギが月光の剣をフェイト達に向けてセリフを決めたが

 

「いや、お前は後ろに下がってろこの馬鹿者が」

 

 怒気を孕んだ声で雪姫がマギに近づいてくる。

 

「あ、あの雪姫さん?」

 

 マギは今は敵よりも目の前の雪姫に恐怖を感じている。

 

「この、大馬鹿者が!!」

 

 雪姫の拳骨で地面に沈むマギ。

 

「なぜこんな無謀な戦いをしたんだ貴様は!私は貴様に自己犠牲の戦いを教えた積りはないぞ!これ以上そんな阿呆な戦いをするというなら貴様の体を氷漬けにして非戦闘員に格下げしてやるからそう覚えとけ!!」

「……はい」

「分かったら貴様は非戦闘員共を護ってろ!休んどけこのバカ!!」

「……はい」

 

 雪姫に叱られ、後ろに下がりあやか達を護る事に専念することになり、何とも居たたまれない空気がネギたちから流れてくる。

 

「のどか!綾瀬!お前たちも早く来い!和泉と長谷川もだ!」

「はっはい!」

「了解です!」

「うひぃ!怖い!!」

「マギさんのせいでとばっちりじゃねえか!」

 

 雪姫の怒号で急いで雪姫の元へ駆ける。

 

「茶々丸はプールスの元で待機。プールスはマギの元で待っていろ」

「承知致しました」

「はいレス!!」

 

 プールスと茶々丸はマギの元へと戻った。

 

「さて……待たせたな。此処からはこの私が相手だ。せいぜい震えて己の運命を受け入れろ」

 

 雪姫が不敵な笑みを浮かべながら魔力を解放した。

 

「えっと、マギさん……大丈夫?」

「……心と耳が痛い」

 

 まき絵に尋ねられ、沈んだマギが痛々しくそう答えた。

 さっきまで頑張っていたのに、何とも締まらない格好になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 


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