アスナ達がバッジ争奪戦をやっている中でマギはプールスを連れて屋台を回っている。
「すごいレス!キラキラピカピカってきれいなお店がいっぱいいっぱいレス!」
「そうだな。俺もこんなすごい光景を見るのは初めてだ」
記憶が無いから初めてなんだけどなとは口が裂けても言わない。そんなことを溢せばプールスが悲しい顔を浮かべるのは見てとれるからだ。
こんなに楽しんでいるなら折角だし何か買ってあげるかと考えていると
「あら、マギ先生。こんばんは」
「あっマギさんにプールスちゃん!やっほー!」
千鶴と夏美が現れた。どうやら彼女らも夏祭りに来たようだ。千鶴はおしとやかな青の浴衣と夏美は明るいオレンジの浴衣を着ている。
「どっちも似合っているな。とても綺麗だし、かわいいな」
似合っていると思いそのままストレートに声に出して誉めるマギ。
「ありがとうございますマギ先生」
「ありがとうマギさん!そういえばそのっ、コタロー君はどこに行ったか知ってる?」
「ネギと一緒に輪投げやるって言ってたな。どっちが多く点取れるか勝負するって」
尋ねられてマギは小太郎がいるであろう場所を指差した。
「ありがとうマギさん!その、千鶴姉……」
「良いわよ行ってきなさい。折角の夏祭りなんだし、思い出作りも大事よ」
「ありがとう!それじゃあ行ってくる!」
千鶴にお礼を言い、夏美は小太郎がいるであろう場所へと向かった。
と残された千鶴。これからどうするか折角だしゆっくりのんびりと祭りを見て回ろうとしたら
「なぁ千鶴。折角だし、俺達と祭りを見て回らないか?」
「え?宜しいんですか?」
「ああ。迷惑じゃなければどうかな?2人より3人の方が楽しいと思うんだけど」
「私も千鶴お姉ちゃんと回りたいレス!」
プールスも千鶴と回るのを望んでいた。折角慕っている人のお誘いだ。断る理由もないと判断した千鶴は早い。
「ええ。ではご一緒しましょう。参りましょうかマギ先生」
にこやかに笑い、一緒に祭りを回る事にしたのだ。
屋台を回ってプールスが気になったもの。白くて雲のようにモコモコしている、わたあめだ。
「マギお兄ちゃん、あのおじさんくもさんを作ってるレス!」
「いや、雲じゃあねえだろうけど、何を作ってるんだ?」
「あれはわたあめです。屋台の代表格とも言えるお菓子ですわ。甘くて口の中で溶けてしまうそういったお菓子です」
プールスは機械の中にざらめ糖を入れ棒をくるくると回し白いわたあめになっているのを目を輝かせて見ている。
折角なのでプールスに1つ買ってあげた。女児向けのアニメの袋いっぱいに入ったわたあめを受け取り、早速わたあめを一口食べるプールス。食べた瞬間に目を大きく見開き可愛らしく瞬きをする。
「あまくっておいしいレス!それにお口の中でとけちゃったレス!」
そう言ってわたあめをぱくぱくと口に運んでいく。マギもプールスから貰い食べてみる。
「ほぉ。甘いなまぁ砂糖だしな。けど口に入れて直ぐに溶けるって言うのは面白いな」
と夢中に食べて小さい手と口がべとべとになったプールスを見てくすりと微笑んだ千鶴はウェットティッシュを取り出してプールスの手と口を拭いてあげる。
「あらあら、かわいいお手手とお口がべとべとよ。拭いてあげるからじっとしてね」
「ありがとうレス千鶴お姉ちゃん」
「流石千鶴。手馴れてるな」
わたあめを食べてしばらく歩いていると、今度はマギがとある屋台を凝視した。
特別な鉄板の上でころころと球体を焼いていく。たこ焼きだ。
知識ではたこ焼きを知っているが、食べたことのないので味は分からないので今度はマギが興味津々にたこ焼きを見ている。
「どうだい外国人の兄さん?出来立て熱々を食べてみるかい?」
屋台のおっちゃんがマギにたこ焼きを勧めてくる。
「それじゃあ1個頂こうか」
毎度と屋台のおっちゃんは手馴れた手付きで出来立てのたこ焼きを船の形をした容器に次々と入れていき、ソースをたっぷりとたこ焼きに塗っていく。
マヨネーズ、青のり鰹節はつけるかと聞かれお願いするとマギは頼みマヨネーズ青のり鰹節の順番にふりかけていく。
「はいおまちどう!熱いから口の中、火傷しないようにね!」
「ありがとう」
お金を渡し、たこ焼きを受けとる。湯気が出てとても美味しそうだ。
「マギお兄ちゃん。食べてみたいレス!」
「待ってろ。熱いから冷ましてやるから。ふー……ふー……はいどうぞ」
プールスが欲しいとおねだりしてきたので息で冷まして渡し自身も1個竹串に刺して冷ます。
「マギ先生。冷ましてもまだ熱いと思いますのでお気を付けて」
「おう。気を付けるよそれえじゃあいただきます、と」
マギとプールスはたこ焼きを口に運び、咀嚼する。と
「「~~~~~~~~!!」」
身悶えをするマギとプールス。たこ焼きの表面は冷ます事は出来た。問題は中である。噛んだ瞬間にトロッとした生地がマギとプールスの口の中を攻めていった。
たこ焼きを食べた時の定番のはふはふをしながら熱々のたこ焼きと格闘し、何とか飲み込む事が出来た。
「熱くってびっくりした。たこ焼き、美味いが侮ってたな……」
「お口の中がアッチッチレス~」
「ふふ、大丈夫ですか?」
クスクスと笑う千鶴を見て、少々いたずら心が芽生えたマギは
「なぁ千鶴もたこ焼き食べるか?」
「え?良いんですか?」
「あぁ。折角だし一緒に食べないか?」
「それだったら、はい。頂けるなら」
分かったとマギはたこ焼きに竹串を刺して先程と同じように口で冷ます。そしてそのまま口へと運ぶ。
「はい、あーん」
「え?マギ先生?」
多少戸惑いを見せる千鶴。まさかマギからあーんをされるとは思ってもいなかったからだ。
「遠慮するなって。ほら」
「はっはい……あ、あーん」
内心、心音が高鳴っているが顔に出さないようにしてたこ焼きを咥える千鶴。
ばくばく心臓が鳴っており味など分からない状態だが、噛んだ瞬間にトロッとした生地に同じように悶える千鶴だった。
「ぷ……ははっ」
「もう、マギ先生ったら」
マギと千鶴の周りで甘い空気が漂っていて。周りの人達も当てられてしまった。
その後も熱々の(別の意味も兼ねて)たこ焼きに格闘しながら何とか完食したマギ達であった。
たこ焼きを食べた後も夏祭りを回ったマギ達。
口を冷やす代わりに食べたかき氷は逆に冷たすぎてきーんとなった事に身悶えした。
チョコバナナではじゃんけんで勝てばおまけしてくれるということでマギが連勝して両手にたくさんのチョコバナナを獲得し、それをほぼ全部プールスが平らげて(人の形を保つためにエネルギーと魔力を大量に消費してしまうため)しまい、周りの人を驚かせた。
食べ物以外に遊びも行い、輪投げではマギが全部のわっかを入れて大きなぬいぐるみをゲットして、型抜きでは一番難しいのをクリアして大金をゲットした。
さらに珍しく珍しくストラックアウトの屋台があり、試しにやってみたら力の加減を間違え、投げたボールが縁に当たった瞬間に的が全部一斉に落ちてしまい。居たたまれない空気になり、謝罪しその場を去った。金魚すくいも軽く本気になったら入れ食い状態になり、屋台のおっちゃんの泣きが入り、リリースしてこれまた謝罪しその場を去った。
このままでは屋台荒らしになってしまいそうなので今は祭り会場から少し離れた人気のない林で一休みしている。
歳があまり離れていない男女が人気の無い場所に来たらふしだらな展開になりそうだが、幸いプールスが居る。そう言った展開にはならないだろう。
……人がいないのが幸いと思う輩も居るが。
「ふー、結構回ったな」
「楽しかったレスし、お腹もいっぱいレス!」
満足そうなマギやプールスを見て千鶴も微笑む。
「良かったですね。それにマギ先生も記憶を失う前のように楽しんでいるようで良かったですわ」
千鶴の言ったことに反応するマギ。
「前の俺って千鶴と結構一緒に居ることが多かったのか?」
「そうですね……私はエヴァンジェリンさんやのどかさんと比べれば一緒に居る時間は少なかったですわ。それに二人きりという訳ではなく、園児の子達と一緒の時が多かったです」
成る程なと千鶴から聞いたことに頷く。
「なぁ千鶴から見て前の俺ってどんな感じだったんだ?」
試しに自分の事を聞いてみると千鶴も答えてくれる。
「学園に来たときは少しピリッとした雰囲気でしたが、暫くたってからは子供達と楽しく遊んでくれる良きお兄さんといった感じだったですわ。子供達もマギ先生に懐いていました。それに私が恐ろしい目に会った時も優しく抱き締めて下さいましたわ」
悪魔が襲来した時の事を思い出し、頬を紅潮しながら思い出す千鶴。つられてマギも赤くなりながらガントレットの手で頬を掻く。
「それに、学園祭時にマギ先生が不審者と戦っている時に私達が勝手に参戦してしまった時もマギ先生は傷付きながらも私達を護って下さった時、私は申し訳ないと思ったのと同時にただ者ではないと改めて思いましたわ」
そして真剣な顔でマギを見つめる。
「あの時の戦い、あれは学園祭における演出ではない。私でもあの場の殺伐とした空気は肌で感じていました。そして不審者も何もない場所から剣を出していました。そしてその剣を防いでいた。普通な事ではありません。マギ先生、貴方は何者なのですか?」
マギは驚きを隠せない。目の前の千鶴は魔法を知らない一般人組の1人だ。
しかし千鶴は元々マギの正体の核心に近づいていた。ネギが時間跳躍していない時間軸ではマギから正体を聞かされていたのだ。
マギは迷った。自身が魔法使いであり、不死の存在になってしまったと話していいのか……と
数分迷いマギは決心する。目の前の千鶴に対して変に誤魔化しをするのは逆に失礼に値するとならばここは正直に告白しよう。
「千鶴、俺は―――」
と正体を明かそうとした瞬間に自身に敵意が向けられていると察知すると、1本の魔法の矢が飛んで来た。
咄嗟にガントレットで矢を防ぐ。決して小さくはない破裂音が響く。
「きゃ!?」
「千鶴危ないから離れるな。プールス!!」
「はいレス!」
両手をスライム形態にし迎撃準備をするプールス。急にプールスの手が液体と個体の中間に変態した事に驚く千鶴。
そして茂みの奥からマギを攻撃した者の正体が現れる。
「……殺気が無いから誰かと思ったらあんたか、ガンドルフィーニ先生」
マギを攻撃したのは学園の正義の魔法使い筆頭とも言って良いガンドルフィーニ先生であり、その他にも魔法先生や生徒が何人か居た。
「まさか夏祭り中ずっと尾行してたのか?もしかしてこの前の事を根に持ってるのかよ。あれはもう決まった事だろうが。掘り返すような真似をするのは勘弁してくれよ」
「当たり前だ!私達がそう簡単に納得するわけがない!大罪人であるエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルをこの学園の外に出すなど、また世界に混乱と恐怖をばらまくだけだ」
そうだそうだとガンドルフィーニ側の魔法使い達が賛同するように叫ぶ。
「……おい、俺の前でまたエヴァの事を悪く言ったな。いい加減にしないと俺もまじで何するか分からねぇぞ」
怒りで逆立ったマギの髪がうねる。何故マギとガンドルフィーニがここまで揉めているのか、それは後程明らかになる。
「いくら学園祭の事があったからと言え彼女は悪の魔法使いだ。我々の目を欺くための演技だった可能性は捨てきれない。それにマギ先生、君も半ば仕方ないと言う状況だったとは言え不死身の存在になってしまった存在だ。もしかしたらエヴァンジェリンに洗脳されている可能性もある」
「……え?不死身?マギ先生、どういう事ですか?」
急にマギが不死身と聞かされて戸惑う千鶴。
「おい、何俺よりも先に俺の正体をカミングアウトさせてるんだよ。結構大事な事だし1から順番に話す積もりだったのに」
「何!?まさかまた君は自身の正体を関係ない一般人に明かす積もりだったのか!?ネギ先生といい何故君達は魔法世界の秩序を乱そうとするんだ!?」
「別に乱そうとは思ってねぇよ。千鶴が自分の力だけで辿り着きそうになっただけだ。それならはぐらかすのも失礼だろ」
「それは詭弁だ!君のような秩序を乱そうとする者はそういう事を平気で宣う……はぁ、これ以上は平行線だ」
ガンドルフィーニの纏っている雰囲気が変わった。戦闘態勢に入ったようだ。ガンドルフィーニに続くように魔法使い達も戦闘態勢に入る。
「マギ先生、君を拘束する。そしてエヴァンジェリンももう一度封印しこの学園から一歩も出られないようにする。そこの女子生徒も魔法の事やマギ先生の記憶を消去する。正義を……執行する」
杖を構え、少しずつにじり寄ってくる魔法使い達の据わった目に恐怖を覚えた千鶴はぎゅっとマギの裾を強く掴む。
「たく、こっちの都合も考えずに一方的だよな。それがあんたらの正義か……ふざけんなよ。秩序を護るのは立派だがな、やり方が強引なんだよ。プールス、千鶴に近づく奴には容赦するな。本気でやれ。俺が許す」
「はいレス!!」
「マギ先生!」
不安そうな千鶴に心配かけないように微笑みながら頭を優しく撫でる。
「千鶴、俺を信じてくれないか?」
「……はい、信じます」
ありがとう。そう言うとマギは構え魔力を全力で回す。闇の黒い魔力を全身を覆う。
「何とも禍々しい力だ……!油断するな!我々の正義を知らしめる時だ!」
「正義正義正義……そんなに固いから足下掬われるんじゃねぇか?」
「っ!馬鹿にするな!かかれ!!」
ガンドルフィーニの号令で魔法使い達は各々魔法を発動するために詠唱しようとする。
しかしマギは詠唱の間攻撃しないという優しい事はせず瞬道術でガンドルフィーニ達の前から消える。
「消えた!?何処へ行った!?」
目の前でマギが消えた事に驚き辺りを見渡すガンドルフィーニ達。
次の瞬間には短い悲鳴を挙げるか黙って気を失う魔法使い達。マギは高速で動きながら女性には当て身、男性は顎を殴るか蹴り挙げるか、腹を殴り戦闘不能にさせた。
「―――シャア!!」
マギが気合いの入った叫びを挙げた時にはガンドルフィーニ以外の魔法使いは地面に沈んでいた。
一方プールスの方も頑張っていた。
「やああ!!」
「ぐはぁ!?」
伸ばした手を鉄のように固くし殴る。男の魔法使いは障壁を展開するが、その障壁を越えて衝撃が男の魔法使いを巡りそのまま戦闘不能にさせる。
プールスも修行で1つの段階へ辿り着いた。
『プールス。お前はスライムだが、成長すれば恐らくもっと強力なスライムになる。そうすればお前もマギ達と一緒に戦える事が出来るだろう。強くなりたいか?』
『はいレス!もっと強くなりたいレス!!』
エヴァンジェリンがマギ達の修行の合間にプールスに稽古をつけていた。相手が少女でもエヴァンジェリンは情け容赦なかった。プールスも何度も泣いた。泣き、もっと強くなりたいと自身が願ったため、泣きながらエヴァンジェリンと半ばやけくそに戦った。
その結果、自身の体を鋼鉄に変える術を身につけた。
新しく身に付けたその力、某RPGの呪文から取って『アストロン』と名付けた。プールスはスライムからメタルスライムに成長したのだ。
魔法使い達の魔法の矢が斬撃もアストロンで防いでしまい、誰もプールスや千鶴に近づけない状態だ。
その間にマギが次々と魔法使い達を戦闘不能にしてしまい、残ったのはガンドルフィーニだけとなった。
「まだやるかいガンドルフィーニ先生?」
「まだだ!まだ私の正義は折れていないぞ!!」
そう言いガンドルフィーニは拳銃とナイフを構える。彼も譲れない想いがあるのだ。
「……あんたも悪い人じゃないんだけどなぁ。どうしても合わない所があるもんだなぁ」
ポツリと呟いたマギはまたも瞬道術でガンドルフィーニの間合いに入り、素早い動きで拳銃とナイフをはたき落とすと、ガントレットの方でガンドルフィーニの顔面を掴む。
「悪いがちょっと眠って貰うぜ」
そう言ってマギは自身の魔力をあえて送りガンドルフィーニの中の魔力を掻き乱す。
「がっ……あ……!?」
掻き乱されているガンドルフィーニにとってはたまったものではなく急激な吐き気に襲われ、そのまま白目を向きながら気を失ってしまう。
あれだけ勇ましくマギに掛かっていったガンドルフィーニに率いる正義の魔法使い達はものの数分で返り討ちにあってしまったのだ。
「この方、大丈夫なんですか?」
「まぁ体の中の魔力を強引にかき混ぜたんだ。暫くは起き上がれないだろ。流石はエヴァだな。効果覿面だ」
この魔力を強引に掻き乱す術はエヴァンジェリンから教わったものだ。敵を無力化させるステルスミッションがあったら最適だ。
「……この人達、どうするんですの?」
千鶴は寝っ転がっている魔法使い達を見渡してマギに訪ねる。マギは少し考えて
「まぁこっちは襲われた立場だ。正当防衛って事で何事もなかったように行こうぜ」
とほっといてこの場を後にするのだった。
「まぁここに居れば変に襲われることはないだろう」
マギ達は人が密集している場所に移った。もうすぐ打ち上げ花火が上がる。そんな中でマギは千鶴と見つめ合う。
「千鶴、さっき俺の事を聞かされたけど、もう一度聞いて貰ってもいいか?」
「はい」
「ありがとう。改めて言うがそう、俺は魔法使いで学園祭の時に不死身の存在になってしまった」
マギは記憶を失っているために、ネギやエヴァンジェリンと言った色々な人から聞いたこれまでの自身の体感した経験を話した。
不死身になった時の話を聞いたときには千鶴は涙を流して謝罪した。マギは泣き出した事に戸惑ったが、マギが不死身になってしまった原因の1つにマギとアーチャーの戦いを邪魔してしまった事を後悔してしまった。
マギは慰めるのは逆効果かと思い、泣き止むまで優しく千鶴の頭を撫でてあげた。
泣き止んでからはこれからの目的を話す。
「俺達はこの夏休みに魔法世界に行き、クソ親父を探しに行く。もしかしたら危険な場所に行くかもしれない」
「だからのどかさん達は白い翼のバッジを付けているんですね。マギ先生達と一緒にその魔法世界に行くために。道理でのどかさん達の雰囲気が最近変わったわけですわ」
「あぁ。一緒なのがとても心強いと思う反面、のどか達の 人生を狂わしてしまった事に申し訳なさを感じている」
まだ負い目を感じているマギ。しかしのどか達は自分達で着いていくと決めた。覚悟は決まっているそんな覚悟を踏みにじるのは却って失礼というもの。
「でものどかさん達が羨ましいですわ。好きな人と一緒にそんな大冒険をするなんて。普通な人生を歩んでいたら出来ない事ですから」
「千鶴?」
何故其処でのどか達が羨ましいのかと首を傾げていると
「だって私はマギ先生、いえマギさん……貴方を好いて慕っておりますから」
千鶴の突然の告白と花火が上がったのが同時だった。プールスは打ち上がった花火を見ており千鶴の告白は聞いていなかった。
「え?どうして?」
いきなりの告白に驚いているマギ。
「コタロー君を襲ったあの悪魔に連れ去られて怖くて不安になっていた私をマギさんは優しく抱きしめて下さった時から私は貴方に心を許していました。欲をいえば私も魔法世界に行きマギさんを支えたいです」
「千鶴、それは嬉しいけど……」
「分かっています。私は自身を護る術もマギさんを助ける術も持っていません。出来るのは安全な所から貴方やネギ先生達の無事を祈るだけ……それしか出来ないのが悔しいです」
本当に悔しがっているようで肩を震わせる千鶴にそんなことないと首を横に振るう。
「俺やネギ達の無事を祈ってくれるだけでも支えになる。だからこそ俺も皆も無事に戻ってくると約束する」
「マギさん」
「千鶴……」
マギと千鶴は周りの目を気にせず抱きしめた。
……がそれを許さない者もいて
「おい、那波千鶴。誰の許しを得てマギに抱きついているんだ?」
不機嫌そうにしているエヴァンジェリンがひょっこりと現れ千鶴を睨んでいる。
「あらエヴァンジェリンさん。別にマギさんは貴方のものではありませんわ。なら私が抱きしめてもらってもいいのではありませんか?」
「ほうほうほう。大きく出たな15しか生きていない小娘が大きく出たではないか」
「マスター。どうか落ち着いて下さい」
余裕そうな態度を取る千鶴に対してエヴァンジェリンの目は鋭くなり、数度エヴァンジェリンの周りの空気が冷えていくように感じ茶々丸がおろおろする。
「あー千鶴さんも告白したか……大人っぽい人がライバルとか」
「うう、強力な人の登場やな」
「また新しい人がマギさんに近づくなんて……ふふ、邪魔だなぁ♪」
「のっのどか大丈夫です?やっぱり強く叩き過ぎたです……!」
結局マギの元に何時ものメンバー(1人何時もの状態じゃない)が集まったのであった。
こうして夏祭りは打ち上げ花火を見て幕を閉じたのであった。
『たーまやー!!』