堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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プールス 小さな少女の大きな一歩

楓が真名の足止めをし、超の元へ向かうために前へと駆けるネギ達に更なる刺客がやってくる。

 

「あっ貴女達は!?」

 

それはいつもエヴァンジェリンと共に行動している茶々丸?大と背丈がネギ位の茶々丸?小達であった。各々自動小銃や刀等を装備している。その中の1人の茶々丸?大が徒手空拳で古菲に殴りかかってきた。

問答無用で攻撃を仕掛けてきた茶々丸?大に驚きながらも、冷静にカウンターの組技で茶々丸?大を無力化する古菲。

 

「いきなり何するアルか茶々丸!落ち着いて話をっぐきゃ!?」

 

話し合いに持ちかけようとするが、背中に付いていたコードの様なものを古菲に当て、電撃を浴びせる。

電撃で痺れ変な悲鳴をあげてしまう古菲。その間に拘束が解け、古菲の拘束から抜けて後退する茶々丸?大。

 

「あのお姉ちゃん達、茶々丸お姉ちゃんじゃないレス」

 

プールスの言う通り目の前にいる茶々丸?達は自分達が知っている茶々丸とは違う感じがしてきた。

確かに茶々丸はロボットであり、茶々丸の記憶や思い出は言い方が失礼だがデータの1つでしかない。おそらく開発者である超や葉加瀬だってバックアップ等はしているだろう。

だがそれだからと言っても、目の前の茶々丸?達は自分達が知っている茶々丸と全然違う。

ロボットでありながらも段々と感情が現れてきた茶々丸と違い、目の前の茶々丸?達は無機質で能面のよう。まさにロボットそのものだ。

そんな茶々丸?達に警戒していると茶々丸?達が一斉に話し始める。

 

『はい、我々は茶々丸の予備の身体であり通称『茶々丸妹』と申します。データも最低限のものしか入っておりませんので、貴方方には何の感情もありませんのであしからず』

 

故にと茶々丸?改め茶々丸妹で自動小銃を持った者がネギ達に銃口を向ける。

 

『私達の創造主の命により、貴方方を排除します。お覚悟を』

 

茶々丸妹が引き金を引こうとした瞬間、ハルナの方が早く動いた。

 

「残念だけど、そっちがそういう風に動くのは読んでたよ!いけ撹乱ゴーレム、囮カモ君大行進!!」

『カモっす!!』

 

ハルナのアーティファクトに書かれた無数のカモが飛び出してきた。そして茶々丸妹が放った自動小銃の銃弾に直撃し、鈍い悲鳴をあげながら次々と消えていった。

 

「思ったとおり!着弾前に何かにぶつけて誘爆させた方が最善策よ!」

「いい案なんだけどよ、モデルになった俺っちにとっては何か複雑……」

 

カモの嘆きにネギ達も苦笑い。

 

「……それは良いこと聞いたアル」

 

何処か安心した声色で古菲は茶々丸妹達と間合いを詰め、先程組技を仕掛けた茶々丸妹を殴り飛ばした。

 

「茶々丸じゃないなら、思い切りやれるアル」

 

茶々丸じゃないなら無問題。古菲の切り替えの早さは見事なものだ。

 

「ネギ坊主、ここは私に任せていくアルよ。そんで超を止めるアル。頼む、超は私の親友アルからネ」

「古老師……分かりました。ここは任せます。ですが、無理はなさらないでください」

「大丈夫だってネギ君!私も残って戦うからさ!」

 

とハルナもここに残ると言い出した。

 

「ハルナ!?」

「大丈夫だってのどか。出過ぎた真似はしないからさ。それに、こんな美味しい展開逃したら勿体ないでしょ?」

「全くハルナ、貴女って人は……くれぐれも古菲さんの邪魔だけはしないでくださいです」

「ゆえっちも心配性だねぇ。ほらほら、こんなところで油売ってないで早く行きなって!」

「ハルナさん、ありがとうございます!お願いします」

 

この場は2人に任せて、先へと急ぐネギ達。

 

「さて、派手にやるアルかハルナ!」

「おうよ!超達の科学力と私の想像力どっちが強いか、いざ勝負と行こうじゃない!」

 

剣の女神を召喚し、ハルナと古菲対茶々丸妹がぶつかり合う。

 

 

 

 

 

「兄貴、もうそろそろ着きそうですぜ!」

 

茶々丸妹達を古菲とハルナに任せ、また暫く走って漸く目的の場所へ到着しようとしていた。

あと少し、あと少し……ネギも気持ち急かされるが、またもネギ達に壁が迫り来る。

 

「っ!ネギ先生止まって下さい!!」

 

刹那の叫びで急停止するネギ。建物の屋根から何者かが何十人と飛び降りてきた。

 

「また貴様らか!」

 

飛び降りてきたのは鬼等の妖怪達であった。

 

「おぉ、さっきの嬢ちゃんに京都で喧嘩した外国の坊主もいるやないか。強そうな面白そうな奴はあの黒い嬢ちゃんが片っ端から消しちまって、全然楽しめなかったんや。だから……俺らと遊んではくれねぇか」

 

妖怪達はやる気に満ち満ちており、刀や鉈に大槌など武器を構える。目の前の妖怪達は雑魚ではない。ぐずぐずしている暇はない。現に巨大ロボットの何体かは目的地に到着しており、あと少しで全世界に魔法が認知されてしまい、超の勝ちとなってしまう。もう一分一秒も無駄には出来ないのだ。

 

「ネギ先生、ここは私に任せて早く先へ。もうこれ以上時間を無駄には出来ません」

「そんな、この数を刹那さん1人で相手にするのは無理です!僕も一緒に戦います!」

「いけませんネギ先生!貴方のやるべき事は目の前の敵を倒すことじゃない。超を止めることです!もし、超を止めることが出来なければ、貴方が本当にやらなければいけないことを出来なくなるかもしれないんですよ!」

 

だが、それでもネギは首を縦には振れなかった。真名や茶々丸妹達はまだ加減等を出来るかもしれない。しかし目の前の妖怪達は完全に部外者。こっちの事情など考えてないかもしれない。

やっぱり自分も戦うとネギが言おうとした瞬間、信じられない一言をネギは耳にする。

 

「ネギお兄ちゃん、プールスもここに残って刹那お姉ちゃんと戦うレス」

「っ!プールス!?」

 

思わず信じられないと目を見開いてプールスを見るネギや刹那達。まだ幼い少女であるプールスが、先程も急な妖怪の登場に驚いて萎縮してしまい、現に目の前の妖怪達を見て足を震わせているプールスが小さな勇気を振り絞り戦うと言ったのだ。

 

「ばっ馬鹿な事を言わないでプールス!君はまだ小さいじゃないか!無理をしなくていい、ここは僕に任せて」

 

戦わなくていい。そう言おうとした瞬間、プールスがそれを遮るように大声で叫ぶ。

 

「私は!マギ・スプリングフィールドお兄ちゃんとネギ・スプリングフィールドお兄ちゃんの妹、プールス・スプリングフィールドレス!!私だってお兄ちゃん達の役に立ちたい!だから、今此処で戦うレス!!」

 

かつてプールスは形とはいえ幽霊のさよを徐霊しようとした真名とさよを護るために戦ったことがあった。プールスは誰かを護るため、助けるためならば、その小さな体で戦う勇気と精神力、そして覚悟があるのだ。

 

「ネギ先生、ここは私とプールスに任せ、早く先へ」

 

刹那の言葉にまだ渋っているネギであったが、今度は怒気をはらんだ声で刹那は叫ぶ。

 

「貴方は!啖呵を切り、覚悟を決めた妹の思いを踏みにじるのですか!?彼女の思いを尊重するのならば、彼女を信じ、前へと進んで下さい!……心配し心を痛むのはとても分かります。私が全霊をもって彼女に傷一つつけないように御守りしますので信じて下さい」

「……………分かり、ました。刹那さん、どうか……プールスをお願いします」

 

何とかネギが折れ、刹那にプールスを頼む。

 

「プールス、どうか無理をしないでね。それと……これが終わったら、一杯頑張ったよってマギお兄ちゃんに誉めて貰おうね」

「はいレス!」

「プルちゃん、無理しないでね。私、プルちゃんが傷つくのは見たくないからね」

「プールスちゃん、こんな私が偉そうに言えることじゃないですが、貴女はマギさんやネギ先生の立派な妹さんです」

「本当、お前さんは立派な妹だよ。兄貴や大兄貴の弟分として鼻が高いってもんでさ」

 

この場を刹那とプールスに任せて、先へと急ぐネギ達。絶対超の目的を止めることを再度胸に刻んで。

ネギ達を見送った刹那は妖怪達へ向き直す。向き直ると奇妙な光景が広がっていた。妖怪達がぼろぼろと涙を流していたからだ。

おんおんと大声をあげながら号泣する者もいれば、静かに男泣きする者、下唇を噛み涙を流さないようにする者もいた。

 

「……なぜ貴様等がそこまで泣いているんだ?」

 

あまりにも奇妙な光景のため引きながらも聞く刹那に、リーダー格の鬼が嗚咽混じりに答える。

 

「そのめんこい嬢ちゃんがなぁ、自分等の兄貴のために俺らに啖呵を切ったのが健気すぎてなぁ。俺らこういうの結構弱いんよ」

 

親分いたら大号泣で小さい池が出来るかもなぁとこぼすリーダー格の鬼。

彼等は妖の者達ではあるが、外道というわけではない。義理人情を貫く者達だ。しかし

 

「そんなにこの子の覚悟に心を打たれたのなら、此処は引いてくれると私としても助かるのだがな」

「悪いがはいそうしますと言えんのがこの世の中や。俺らも呼び出されたもんとして契約はきっちり果たす。それがルールや。恨んでもらって結構やで」

 

律儀な者達でもあり、プールスに向けて武器を向ける妖怪達。

立派な覚悟を見せたプールスであるが、まだ精神は幼い幼女。

また恐怖に呑まれそうになりかけていると、刹那がプールスの肩を優しく叩く。

 

「臆するなプールス。あの妖怪達の前で覚悟の叫びを見せたことで君はもう勝ったも同然だ。後はあいつらに呑まれなければ君の勝ちだ。君はネギ先生とマギ先生の妹、絶対大丈夫だ」

「…はいレス!」

 

刹那に鼓舞され落ち着きを取り戻したプールス。一方妖怪達は円陣を組んでなにやら作戦会議をしており、暫くして作戦が決まったら鬨の声をあげ戦闘体制となる。

 

「いくで嬢ちゃんら、タマまではとらん。だが覚悟はして貰うで。いてもうたれや!!」

『うおぉぉぉぉぉぉ!!』

 

リーダー格の鬼の突撃の一声で突撃してくる妖怪達。刹那も夕凪を構え、プールスもぎこちないながらも拳を構えた。

刹那の所にはリーダー格の鬼と、狐のお面を着けた妖怪、鎧武者の河童他数体が斬りかかってきた。

やはり相手は手練れの妖怪達、斬りかかっては、刹那が反撃してきたら直ぐに退き、後ろに待機してた者達が斬りかかるという撹乱戦法で挑んできた。

対するプールスはというと

 

『うおぉぉぉぉぉぉ!!』

 

鬼、河童、下半身が蛇の妖怪達がプールスに襲いかかる。だが、動きが遅い。明らかに手加減していると刹那は分かった。

どうやら先程の円陣での作戦会議でプールスには手を抜いて戦うように決めていた。小さい少女であるプールスに怪我をさせないための配慮だろう。喧嘩が好きな彼等ではあるがそういう所には好感が持てると思った刹那。

だが目の前のプールスは普通の女の子ではないのだ。鬼が太刀を振り下ろした瞬間に、プールスは人間の体からスライムの体に変化させる。斬られてもスライムの体なので無傷だ。いきなりプールスがスライム状態になったのを目撃して、ぎょっと目を見開く妖怪達。

その隙にスライム状態で跳び跳ねるプールスは妖怪達の背後に回り、また人間の体に戻り腕だけをスライム状態に戻しそして

 

「やぁぁぁぁ!!」

 

腕を伸ばした。その攻撃の仕方は前にハルナが見せてくれた某海賊漫画の主人公の~のピストルのようだった。

 

「うげぇ!?」

 

勢いよく伸びたプールスの腕は鬼の腹に当たり、鬼は鈍い声を出しながら後ろに吹き飛んだ。

 

「何やあの嬢ちゃん、人間の匂い以外に妖の匂いが混じってると思ったらそういう訳あり嬢ちゃんやったのか!?」

 

リーダー格の鬼が刹那と鍔迫り合いをしながら刹那に問い掛ける

 

「そうだ。あの子は人間の身勝手な行いの犠牲者の1人だ。それでどうする、あの子がどういった存在か知り、手加減を止めて本気で斬りかかるか?」

 

刹那の問い掛けに、人間っちゅうのはほんまに勝手な生き物やなと怒りを露にするリーダー鬼。

 

「馬鹿言うんやない。俺らが一度決めた事を簡単に覆すのは道義に反するってもんや。あの嬢ちゃんの動きは明らかに素人、素人相手に俺らが本気出して怪我させたら、そりゃただの外道や」

「それは賢明な判断だな。あの子の長兄であるマギ先生はあの子を大切にしている。あの子が貴様等に傷つけられたと知れば、貴様等の魂如灰塵に帰すると知った方がいい」

 

マギが本気でキレて自分達が炎の魔法で燃やし尽くされる光景を想像し震え上がるのだった。

一方のプールスは妖怪達相手にぎこちないながらも戦っていた。相手の方が手加減をしているからと言っても自分の方が弱いために勝っているとは思えなかった。腕や脚をスライム状態にして伸ばしたりして攻撃しているが、勢いよく伸ばして威力をあげたとしてもたいしたものじゃない。最初に殴り飛ばされた鬼も飛ばされただけで大したダメージは入っていなかったのだ。

 

「どっどうしよう……」

 

プールスはもう目の前の妖怪達に対して有効な戦いかたが何なのか分からず追い詰められていた。

自身の最大の武器は腕をウォーターカッターのようにして鞭のように振り回すものだ。田中等のロボットも簡単に切り裂くことができる。

だが目の前の妖怪達はロボットではない。見た目がおっかないが嘗て自分を虐めていた女悪魔のような酷い気配を感じなかった。

見た目が怖くてもこの技を無闇に使いたくない。でももう使える手段がない。なにか手はないかと辺りを見渡す。

そして、戦いで壊れたであろう水が止まらなく流れ続ける消火栓を見つけた。

 

「……これレス!!」

 

消火栓を見て何かを思いつき、壊れた消火栓で出来た水溜まりに近づき片足をスライム状態にして水を吸い上げていく。

妖怪達は次にプールスがどういった手を出してくるのか半ば楽しみに待っていた。それはまるでやんちゃな子供と戯れる大人のであった。相手は子供、力も大したものじゃない。そんな子供に対して大袈裟にやられた振りをして子供を満足させるものだ。

だが妖怪達は失念していた。子供の遊びだと嘗めていると、痛い目を見るということを

水を吸い続けるプールスは片腕を妖怪達に向ける。そして

 

「っええい!!」

 

五本の小さい指先から、高速で水の塊が放たれる。真っ直ぐに飛んでいった水の塊は妖怪達に飛んでいき

 

『いででででででで!?』

 

水の塊が体に当たり、地味だが余りに痛く悲鳴を挙げる妖怪達。ただの水だと侮るなかれ、勢いよくプールスから放たれた水の塊は高速でBB弾が当たるほど。地味だが確実に痛い。

これはとてもかなわんと思っていたら、突如地面が隆起し巨大な壁のような妖怪が現れた。

有名な妖怪少年の仲間の1人であり、壁役で有名な妖怪、ぬりかべだ。

 

『ぬ~り~』

 

喋っているのか鳴いているのか分からないが、こんな攻撃俺には効かないぞと言っているようだった。現にプールスが放っている水の塊もぬりかべが自分の体をならしてるため直ぐにもとに戻ってしまう。攻撃しても直ぐに戻ってしまう鼬ごっこにらちが明かない。

しかし直ぐに対ぬりかべ対策を思いついたプールスは吸い上げた水を溜めに溜め、指先ではなく掌をぬりかべへ向け

 

「やあああぁぁぁ!!」

 

プールスの倍もある大きさの水の塊がぬりかべに向かって放たれる。その勢いは正に砲弾。水の砲弾は勢いよくぬりかべに直撃する。

 

『か~べ~』

 

水の砲弾はぬりかべの体を貫通することはなかったが、ぶつかった衝撃で後ろへ倒れ、そのまま何人かの妖怪を巻き添えにした。

妖怪達の中で防御力が高いぬりかべを少女が倒したことに皆呆然とし、リーダー鬼も大口を開け驚愕した。

プールスは刹那の方へ振り返り

 

「ブイ!!」

 

Vサインを見せた。

 

「どうだ?あの子は貴様等が思っていた以上に強かだったろう?」

 

未だに大口を開けているリーダー鬼に不敵な笑みを浮かべる刹那。

 

「……いやぁ、世の中にはおっそろしいお嬢ちゃんがいるもんやなぁ」

 

世の中は広いなぁとリーダー鬼はそう思ったのだった。

 

 

 

 

 

 


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