堕落先生マギま!!   作:ユリヤ

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何が善か

学園内で激闘が繰り広げられている中、図書室にて

 

「……ん」

 

横になっていたネギが目を覚ました。

 

「おうネギ、気分はどうだ?」

 

聖骸布を腕に巻き椅子に腰かけたマギが声をかける。

 

「うん、だいぶ良くなったよ。お兄ちゃんは?」

「……六割弱ていった所か。それよか見てみろよ。外結構ハデなことになってるぜ」

 

マギは千雨から借りたパソコンの映像をネギに見せた。丁度巨大ロボットが登場して暴れている最中だった。

 

「超の奴どうやら計画を早めたそうだ。エヴァが言うには学園の結界が全く機能してないんだと。だからデカイロボが動けるようだな」

「超さん……」

 

思うところがあるのかまた沈むネギ。そんなネギを見てまたこの弟は無駄に悩みやがってと肩を竦めながら思うマギ。

 

「ネギ先生、気がついたようですね」

 

夕映がのどかとハルナに千雨に亜子とプールスを連れてくる。

 

「夕映さん、皆さんお待たせして申し訳ありません」

「いいってネギ先生、こういった時、中途半端に体力回復させると後々ピンチになるのがお約束だからね」

「全くハルナは……でもハルナの言う通りな所もあるです。しっかりと体力を回復させるのが第一です。ネギ先生もそうですが、マギ先生もお体はどうですか?」

「正直寝てスッキリ全快!……とかいけばいいんだが、此ばかりはどうにもな」

「そうですか……」

 

マギの状態を聞き、夕映達は沈んだ表情を見せる。いつもなら大丈夫だと安心させようとするが、確信もないのに安心させるのは却って逆効果だと思ったマギは皆に微笑みを見せることしか出来なかった。

 

「俺が言うのもあれだが、今は超の計画を止めることを考えようぜ。外、結構凄いことになってるんだろ?」

「はい。外では巨大ロボットが目的地に前進しそれを魔法先生や生徒が阻止しようとしてるです。ですが妖怪達がそれを妨害し、今は一進一退の攻防中です」

「さっき桜咲と鬼が戦っている映像が流れましたけど、周りの参加者はパフォーマンスだと思ってましたけど、中にはアタシみたいに何処か可笑しいと思う奴も出てくるんじゃないですか?」

「時間の問題……か。超の勝負札が巨大ロボットや妖怪達とは考えられない。他に厄介なものを隠し持ってるはずだな。早々に勝負を仕掛けるべきか」

 

超が千草を使い妖怪達を刹那達にけしかけるやり方にまたネギが悪い方へ思考を巡らせる。こんなやり方をすれば殆どの麻帆良の魔法使い達は超を敵視してしまうはずだと。

 

「ネギ先生、此から超さんと対峙すると言うのに不躾だと言うのは分かってるです。でも……超さんのやろうとしていることは悪いことなのですか?」

「おい綾瀬、それは今言うことじゃないだろ」

 

千雨が夕映を止めようとするが、マギが手で制す。

 

「思った事は今全部ここで吐き出しちまえ。迷いがあればそれだけで危険だからな」

「……超さんのやろうとしているのは言わば革命みたいなものです。魔法が世界に公表されることになれば、救われる人の命も増え、ゆくゆくは超さんの時代の超さんのお仲間さんも救われる。超さんは私利私欲のためじゃなく誰かを救うために行動している。そう思ってしまったら超さんが悪いことをしているとは思えなくなって……」

「まぁ超の奴が高笑いして世界征服するシ◯ッカーみたいな奴なら戦い易いんだけどなぁ」

「ハルナ……」

 

夕映が思い悩み、ハルナが軽い口調で超のことを言いそれをツッコムのどかを見て、ネギも超のやっていることは間違っていないんじゃないかと思い始めてきたが

 

「確かに超のやろうとしてる事は誰かを助けようとする善意だ。だが善意でだれも彼もが救われると思うならそれは大きな間違いだ」

 

ぐるぐる思考になりかけたネギに待ったをかけたマギ。皆が一斉にマギを見る。

 

「まず第一……ハルナ、お前は魔法の存在をどう思う?」

「どうって、そりゃ面白そうっておもうじゃん!魔法なんて未知なる存在憧れるし、自分自身も使ってみたいって思うし」

 

ハルナの魔法に対して好意的な意見にマギは何度も頷く。

 

「ハルナの様に魔法に対して好意な姿勢を見せる人が多ければそれでいいんだが、世の中好奇心が強い人ばかりじゃない。未知なるものに警戒心を持つ人もいれば恐怖し、敵視する人だっているはずだ。まぁお隣に軍隊並の力を持つ奴がいれば普通は怖いと思うけどな」

「でもマギさんやネギ先生は私達に危ない魔法を使ったりしてないじゃん。学園にいる魔法使い達だって皆好い人ばっかりだし、そんなに危惧することじゃなくない?」

「そりゃあ、お前達に魔法を使うことがないからな。けど、エヴァのようになってしまった悪の魔法使い、じゃなく自分から悪の魔法使いの道に走った奴はお前達が知らないだけで多くいる。自己顕示欲が強い奴が悪の道に走ってみろ。自分の名前を後生に残すために平気で人を殺せる魔法を使用する。被害にあった者や遺された遺族はこう思うだろう『魔法と言うものはこんなに恐ろしいものなのか』……とな」

 

マギの例え話にハルナは押し黙る。楽しいもの面白そうなものを基本受け入れるハルナであるが、危険なものを楽観視するほどでもない。マギの例え話を聞いて、魔法の危険性を改めて知るハルナ。

 

「第二に魔法が知れ渡れば多くの人が救われる。夕映の言うとおり強力な治癒魔法を使うものがいれば突然の災害や事故で救われる人が増えるだろうな」

「そうです。このかのような治癒魔法を使える人が世界中に赴けば多くの難病の人を救うことが―――――」

「出来るな。じゃあちょっと嫌な質問をしようか。救える人が増えた反面、そのひとたちを救おうと尽力していた医者や薬剤師と言った医療関係者の立場はどうなる?」

「っ、それは……」

 

マギの再度の問い掛けに夕映は口をつぐむ。頭の回転が早い彼女ならマギが言ったことの最悪なイメージが簡単に浮かび上がったのだろう。

怪我や病気になった当事者なら、自分達が治るなら万々歳だ。だが、医者等は患者を直すのが仕事でその生業で収入を得ている。

医療系の物語では患者が救われる事を第一に考える医者がいるが、世の中全ての医者がそう言った人ではない。自分の功績の名を後生に残したい名誉欲が強い医者だっている。

魔法が知れ渡ったら医術の世界はどうなるだろうか……

 

「一朝一夕で医療の世界が直ぐに変わるとは思えないが、段々と魔法が認識されるようになれば、最悪の場合世界中の多くの医療関係者が首切りにあうかもしれない。あんまり考えたくねぇが絶望を覚えた人は何をするか分からない。自殺するか自棄になって周りの人を巻き込むかもしれない……多くの人が救われるはずが、傷つき死の道に向かう人が出てしまうかもしれない」

 

人と言うのは一度自棄になったら何をするか分からないから恐ろしい。そして第三の問題、これはマギが考えられるなかで一番あって欲しくないこと。

 

「第三の問題、魔法に対して恐怖や混乱、妬みや恨みその他の多くの負の感情がポップコーンの様に膨らみ弾け飛んだ瞬間、大きな災いとなる。戦争だ。一般人と魔法使いによる血で血を精算する動乱が起こるかもしれない」

「せっ戦争ってマギさん事を大きくし過ぎじゃない?」

「隣人トラブルの最悪の結果で殺人が起きる世の中だ、戦争が起きないって言う保証が何処にある?魔法使いは世界中にいる。最初が隣人でのいざこざでしたなかったものが町、国、そしてゆくゆくは世界を巻き込むような争いに繋がるかもしれない。それで死傷者が出たら未来に影響が出る。超の未来の仲間だって存在しなくなるかもしれない」

 

何よりとマギは周りを見渡しながら話を続ける。

 

「ここ麻帆良だってどうなるか分からない。ここにはこのかのじーさんやタカミチその他にも多くの魔法使いがいる。ここも争いの場になればお前達だけじゃない、他の一般生徒にも被害が及ぶかもしれない。俺はお前達やクラスの子達が傷つくのを見たくない」

 

ネギ達は最悪の未来で超が3ーAの生徒が皆自分の仲間だと思われ避難場所にて門前払いをされた話を思い出す。人は敵だと思った相手には容赦しない一面を持っている。

 

「さっきも言ったが超は善意で動いているのは分かる。だがそのやり方は理の壁を破壊してこちら側の色に変える侵略行為と変わらない」

 

……これが考える最悪な結果だ。と話を終えるマギ。マギの話が終わるが、空気が完全にお通夜状態だ。此から超を止めなければいけないのにプレッシャーを掛けすぎたかもしれない。

内心でやれやれだぜと呟きながら頭をかきながらネギの方を向く。

 

「それでネギ、お前はどうしたい?超を止めなければいけない理由がまだ見つからなければ別に俺の考えをそのまま使ってもいい。けど出来ることなら俺としては何か1つでもお前の考えを聞かせてほしい」

 

ネギは黙っている。正直マギの様に色々と考えが浮かび上がるわけではない。

だがたった1つだけ得た答えは……

 

「僕はお兄ちゃんのようにそんなに考えが出てこない。けど、けど……超さんが全て背負いこもうとしているのは、それは間違っていると思う。何より僕の大切な生徒が誰かに悪者呼ばわりされるかもしれないのを止めなきゃいけない」

 

それがネギの答え。またも沈黙が流れるがマギは微笑みながらネギの頭を撫でる。

 

「いいんじゃないか。なら次はその思いが折れないように構えなきゃな。ほんとは俺も手伝いたいところだが、この後はクソ傭兵とランデブーだ。正直お前だけに任せるのは申し訳ねぇが、頼んだぞネギ」

「うん、任せて」

 

迷っていたネギの決意も固まった。いざ出陣のための準備に取り込もうとした

 

「ネギ先生お体のお加減は如何ですか!?」

「ネギ君!心配だったからお見舞いにきたよー!」

 

とこのタイミングで古菲に連れられたあやかとまき絵が図書館にやってきた。

 

「あやかさんにまき絵さん。来てくれたんですね。けどごめんなさい、僕直ぐに行かなきゃいけないんです」

「え、でもネギ君まだ疲れ残ってる感じじゃん。それなのに動いたら危ないよ!」

「そうですわ。私はネギ先生の強い思いを汲み取ったまでで、ネギ先生に無理をしてほしいとは思っていません。どうしても行くと言うのなら、この雪広あやかもお供致しますわ」

 

返答に困る展開だ。2人の好意は嬉しいが正直言って足手まといしかない。どう断ろうか迷っていると

 

「あー雪広と佐々木、悪いんだがこれからネギ先生が行く場所はネギ先生が1人でケリつけなきゃいけねえんだよ。ネギ先生に対して好意が強いあんたらは納得しないだろうけどな。けどネギ先生のために動きたいならアタシに強力してほしい。ネギ先生のためにアクティブに動けるあんたらが一緒に居たほうが助かる」

 

千雨が早口で2人を言いくるめた。最初は納得してない様子を見せているあやかとまき絵であったがネギのためにと聞き渋々とだが千雨の話に納得する様子を見せる。

マギは千雨の行動に驚いていると

 

「さっき綾瀬のアーティファクトでアタシのアーティファクトを調べて貰ったんです。アタシのアーティファクトはどうやら前線タイプじゃないようで、ここでサポートします。あの2人ならネギ先生のためなら多少は無茶はできるでしょうから」

「千雨……」

「アタシは元々後ろ向きな性格ですからね、マギさんの考えてたことは予想出来てましたよ。そんなくそったれな世界になったらちうが出来なくなるかもしれませんからね。こうなったら何でもやってやります……よ!?」

 

最後で語尾が高くなる。何故ならマギが千雨を優しく抱き締めたからだ。

 

「ありがとう。それと千雨がそうやって誰かのために一歩歩みよってくれた事に嬉しさを感じてる」

「そっそんな大げさだって。でも、少し我が儘を言えるなら……この作戦が無事に終わったらまた一緒に秋葉原を回ってくれますか?」

 

明らかにデートのお誘いだった。千雨が自分の気持ちを出すようになった事に嬉しく感じながら

 

「あぁまた色々と見て回るか」

 

OKを出すとマギに好意を見せるのどか達も

 

「わっ私もまたマギさんと一緒に本屋とか回りたいです!」

「まっ誠勝手ながら私も一緒に図書館島の探検をしたいです!!」

「うっウチもマギさんと一緒に外で目一杯遊びたい!!」

 

マギに対してデートのお誘いをする。旗から見たらマギが女滴しの男に見える光景ではあるが、マギと彼女等の関係はふしだらなものでもないので

 

「あぁ行こうか。それと……のどか、夕映、亜子、千雨、この戦いが終わったら君達に話たいことがある。今の俺の正直な気持ちを伝えたい」

 

約束し、自身の考えをのどか達に伝えた。マギの真面目な表情を見ながらハルナは思う。

 

(いやマギさん、なんでそこで不吉なフラグ立てちゃうかなぁ……)

 

マギ自身フラグの存在を知らないだろうからそう言いきったのだろう。

そんな一抹の不安を抱えながらネギは超の、マギはアーチャーへの戦いの準備に取りかかるのだった。

 

 

 

 

 


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