ブラック・ブレット 漆黒の魔弾   作:Chelia

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黒の七皇

「朝霧…だと?先日のあの硬い少年が朝霧?」

 

影胤は銃を下ろすと、まるで魂を抜かれたかのように机の上に立ち尽くした。

隣にいる小比奈がパパーどうしたのー?と脇をツンツンつついているが、それすら全く気にしていないようだ。

 

「蛭子影胤…元序列134位の絶対的な力を持ちながら、罪のない人間を殺傷しすぎたため序列を剥奪された愚かな兵士… そんなお前が、今度は七星の遺産を奪い世界を破滅にでも追い込むつもりか?」

 

「くっ…くくくくくっ!いやぁ面白い!実に面白いよ!確かに驚きはしたが君と殺りあえる日が訪れるとはね!」

 

影胤は零の話しなど最初から聞いていないのか、自分の中で自己解決すると先程までのように笑い出した。

 

「何がどうなってるんだ?」

 

「いい加減隠す必要もなくなったしな…いいぜ?蓮太郎。俺の正体を教えてやるよ…」

 

零がパチンと指を鳴らすと、会議室のあらゆる方向の壁及びガラスが物凄い音を立てて破壊されていく。

聖天子が移されているELパネルがある方向以外の6方位から、零と同じ真っ黒のローブで全身を隠した影が6つ現れた。

大きなものが3、小さなものが3…単純に考えて半数はプロモーター、半数はイニシエーターだろう。

 

「俺達の名は漆黒の騎士団。この東京エリアの治安を影で守る、最強の部隊だ。俺はその中のトップ…★1(ブラックナンバーワン)の朝霧零。影胤…お前は立った今、最重要危険人物として俺達のターゲットになった。逃しはしないぜ?」

 

零が上記のように名乗ると、周りにいる6人のメンバーも一人一人ローブを外し、名乗りをあげていく。

 

「★2、舞姫桜!悪いことはめっ!だよ!」

 

「★3、朝霧紗雪… 私は兄さんの命のまま、敵を殲滅する…」

 

「★4、相馬凌牙。ゲームを始めようぜ?ルールは、先に死んだ方が敗者だ。」

 

「★5、セレーネ・E・トルスタヤです。クシシ…凌牙様素敵ですわぁ///」

 

「★6、兵藤恭介!うぉぉ!!可愛いロリおっぱいはどこだぁぁぁぁ!!」

 

「★7、桐城氷雨です… 裁きを受けてもらいますよ。」

 

「漆黒の騎士団メンバー、全員集合だ!さぁ、七皇の名の元に跪いてもらうぜ!」

 

漆黒の騎士団。

先程の零の説明にあったように、この東京エリアで活動を行なっている組織名でリーダーは零。

民警にして民警にあらずのこの組織はIISOにも聖天子にも統括されておらず、完全に独立していて独自のルートで依頼を遂行したり、目的のために動いたりしている。

現在、所属する全ての人間が未成年という圧倒的平均年齢の低さだというのにも関わらず、その存在は東京エリアを越え世界中に知られ、認められているほど。

構成メンバーは計7人で、彼らには序列の代わりに★(ブラックナンバー)という称号が与えられている。

通常、序列はプロモーターとイニシエーター…2人の戦闘能力や戦績の合計によってきまるが、★は個人…単体の実力で表記される。

しかし、その実力は序列数値と互角。つまり★1の朝霧零は、単体で世界最強といわれる序列1位の民警ペアと同等の力を持つということになるのだ。

子供の戦いごっこなど政治を動かす材料にすらならない。そもそも、眼中にすらなかったであろう政府は彼らの力、強さを認めざるを得なかった。否、認めなければ自分たちが殺されてしまうから…

普段は表立っての行動はあまり行わないため、漆黒の騎士団全員の顔と名前を知っているものは少ない。東京エリアの裏で動きを見せることが主なことから、人々はこの7人を総称して「黒の七皇」と呼んだ。

 

「1…2…3…4…5…6…7… まさか、黒いライセンスカードを7枚同時に見る日が来るとはね…これは面白くなってきたよ。朝霧くん。…?おっと失礼。」

 

七皇の7人がそれぞれ手にしているライセンスカードは民警とは違うことを示すため、真っ黒のカードに白字で文字が刻まれている。

そのカードを見渡しながらも、臆することなく笑っていた。

すると、再び影胤のケータイが鳴り、前回同様敵前で堂々と電話に出る。

 

「今だ、奴をつかまえ………!」

 

零が指示を出そうとすると、七皇の1人である相馬がそれを止めた。

 

「その必要はなくなった。ここは彼を泳がせることにしよう。」

 

「どういうことだ?元々、俺と紗雪だけで行く予定をわざわざ全員出撃に変更させてまで影胤を捕らえるっていったのは凌牙だろうが…」

 

「それは、七星の遺産を欲している敵のトップがわからなかったからだ。それが分かった以上、ここで奴を止めるのは得策ではない。泳がせて彼らの繋がりを観察するべきだ。」

 

「この一瞬で敵のトップを見抜くとはな…流石はウチの頭脳だ。悪いなみんな…派手に登場させといて悪いが、出番はもう少しお預けらしい…」

 

「そうしてください…あなた方全員が暴れたらこの会議室は愚か、東京エリア全てが吹き飛ぶので…」

 

その様子を黙視していた聖天子も呆れてため息をつきながら口を挟んできた。

彼女からしてみれば、この7人がいて「会議室が全壊」程度で済んでいることが奇跡に近いのだから。

 

「それはこちらとしても好都合だよ。退けと言われてしまってねぇ…」

 

互いの裏方役は牽制しあっているのか、影胤の方も撤退の指示がでたようだ。

本当の実力者というのは、目の前の事象だけで全てを判断しない。

ただ喋っているだけのようにみえても、実は互いの脳内で戦いが繰り広げられていることなど普通である。

周りに残された民警や、怪我をして動けない社長達は何がなんだかわからない様子でポカンとしていた。

それは蓮太郎とて例外ではない。

 

「では朝霧くん、里見くん、また会おう… 最も、次に会うときはこれまでのように穏便に事は進まないだろうけどね…」

 

前半はいつものノリで明るく、後半は殺気のこもった声で脅すようにと言葉を放つと、影胤は小比奈を連れて去っていった。

残されたのは飛び散った鮮血や瓦礫と七皇…そして一部の社長や民警のみなさんだった。

 

「説明していただけるんですよね?」

 

一瞬のみ訪れた沈黙は直ぐに壊される。

口を開いたのは結愛を抱きかかえた木更だった。

 

「ここまで話が上がってしまった以上、隠すわけにも行きません… ケースの中身は七星の遺産。それ一つで、この東京エリアを壊滅させることのできる恐ろしい物です。」

 

「正確には、ステージ5のガストレアを呼び出すことのできるアイテムだ。そんな曖昧な発言で、そこの女性は納得しないと思うぜ?聖天子。」

 

「…できれば隠しておきたかったのですが、仕方ありませんね。」

 

聖天子のセリフに零がつけ足すと、周りはざわつき始めた。

ステージ5と聞けば流石に皆黙ってはいられないのだろう。

 

「ところで零さん…今回はどんな内容で?」

 

「悪いが俺達は中立の立場だ。七星の遺産を回収し、調べをつけた後なら物を政府に送っても構わないと思ってるぜ?」

 

「わかりました。私も、七皇を敵に回すような愚かな真似はしません。どうか今回も、私達に力を貸してください。」

 

「了解した。んじゃ、俺達はさっさと戻るとするか…」

 

「ち、ちょっと待ってください!」

 

聖天子との話も済み、戻ろうかというところで七皇の1人が零を止めた。

名前は桐城氷雨。★7の実力を持つ小柄な少女だ。

服装は何故か黒のメイド服で瞳はイニシエーターならではの真紅。光り輝くように美しい銀色の髪をツインテールにきちんとまとめているその姿は可愛い、美しい以外の何者でもない。

他に特徴的な部分といえば、アキバにいそうなコスプレメイドがつけそうなアクセサリーの1つである小悪魔の尻尾がお尻の部分でひょこひょこ動いていること。

さっきまで活発に動いていた尻尾が今はだらんと下に落ちてしまっている。

アニメ的な解釈をすれば、テンションが下がったのだろう。

 

「どうした氷雨?」

 

「え、えと…治癒能力のない私が言うのもなんですけど周りに怪我してる人たくさんいるので桜さんとセレーネは助けてあげたほうがいいんじゃないかなって…」

 

「クシシ…セレーネに命令するとはいい度胸ですね氷雨。」

 

「文句を言うなセレーネ、零がそれでいいなら俺に異論はない。」

 

「じゃあ、桜とセレーネはここに残して残りのメンバーは一度撤退、次の作戦を練ることにしよう。」

 

氷雨の発言に突っかかろうとするセレーネを相馬が止めた。

七皇の人間関係もまた特殊で、最も性格に難があるのがセレーネである。

影胤のように狂った思考回路を持ち、自分の尊敬する相馬以外の言う事は聞かない。

例外的にリーダーである零の言うことは聞くが、それでも相馬>零の優先順位であることは間違いないだろう。

ただでさえ事態がややこしくなっている今、これ以上面倒になることを避けた相馬は予めセレーネを諭しさっさと撤退していった。

他のメンバーも続く。

 

「私達も作戦実行に変更はありません。目的は影胤にケースを渡さないことに変更します。負傷した方もいるようですが、この場は一度解散とします。」

 

聖天子がそう言い終えると、ELパネルの電源も切れた。

 

「こんな訳のわからない状態でも続けろってか…」

 

「ゆあー!ゆあー!大丈夫!?」

 

そう蓮太郎が呟くと、先程意見していた氷雨が真っ直ぐこっちに向かって走ってきた。

後ろには桜も一緒である。

 

「えっと…確かアンタは…」

 

「私は桐城氷雨。ゆあの友達です!って、背中が斬られて…」

 

「はいはい、慌てないの慌てないの…それより、ひーちゃんはもう戻りなよ?みんな帰っちゃったし… この子にはよろしく言っておくから…」

 

「はい…じゃあお願いします、桜さん…」

 

心配そうな顔をしつつも、氷雨は帰っていった。

入れ違いにセレーネがやってくる。

 

「もう何がなんだか…」

 

「ふふっ…そりゃ、こんがらがっても仕方ないよね… 始めまして里見蓮太郎くんと、天童木更さん。私は桜。零から話は聞いてるし、ある程度調べてもいるからそっちの紹介はいらないよ?」

 

「質問、してもいいか?」

 

「そういうと思ったよーいいよ?何でも聞いてごらん?」

 

私もと木更。流石にこれだけのことがあれば、いくつもいくつも疑問点があって当たり前である。

隣にいるセレーネは相馬の命令なので仕方なくといった感じで不機嫌そうな顔をしており、結愛の服をいきなり脱がすと傷口周辺に縫合針をブスブスと刺し始めた。

 

「お、おい!」

 

「だーいじょうぶよ?ああ見えてちゃんとやってるから。セレーネはあの糸を中心として、どんな傷でも治しちゃう天才医術を持ってるの。どっちかというと、こんな場所で服を剥ぎ取ってる方が問題かな…」

 

差し障りない程度に結愛のコートを桜がかけ直すと、セレーネはやりにくいとブーブー文句を言っていた。

 

「里見くん、鼻の下伸ばしたでしょ?」

 

「怪我人相手に伸ばすか!!そんなことより、漆黒の騎士団って名前だけは聞いたことあったけどまさか零がそこのリーダーだったなんてな…正直驚いたよ…」

 

「まあ、ウチの組織を1から全部作り上げたのは零だからねー… 私はそんな零を素直に尊敬してるよ。まだ19歳なのに、これだけのこと普通はできないしね。」

 

「聖天子様と親しげにしていたのはどういうこと?」

 

「それは単純だよ、私達は政府の部下じゃないから組織を作る過程では当然国家元首ともぶつかる… 零は実力や知能等々全ての面で聖天子様を認めさせて、今みたいな関係になってるってわけだね。」

 

「お前達は俺達の味方なのか?」

 

「うん、基本的にはね。私たちの目的は誰もが願いし平和(ゼロ・ワールド)を作り上げることだから、あまり民警と敵対することはないよ?」

 

「今回の敵のトップがわかったって言っていた人がいたけど、あの仮面を使役してるのは誰?」

 

「えーっと…それは相馬さんクラスの頭脳を持ってるから気づけたことであって流石に私は…って!蓮太郎くんも木更さんも質問しすぎ!聞いていいとは言ったけど何この質問攻め!尋問!?」

 

蓮太郎と木更の質問攻めに桜がもう限界を迎えたようだ。

どうやらこういう難しい話は苦手らしい。

 

「ごめんなさいね?ウチのダメダメプロモーターは女の子に鈍感だから…」

 

「アンタも同罪だろうが!」

 

「あはは…仲いいんだね… っと、私の番みたい。」

 

セレーネが桜の裾を引いていて、見れば結愛の背中の傷口はどこにも見えずいつもの真っ白い綺麗な肌に戻っていた。

 

「なっ!?完治だと!?」

 

「縫い跡1つ残さずに治療をしたセレーネに感謝してほしいものです。では、まだ患者さんが多いようなのでセレーネはこれで…」

 

セレーネも立ち去っていった。

言葉通り、怪我を負ったのかどうかわからないほど綺麗で真っ白な背中に戻っている。

魔法でも使ったのかと言いたくなるようなその仕上がりはにわかには信じられるものではなかった。

 

「凄いのね…貴女のイニシエーターは…」

 

「あー…私のイニシエーターはひーちゃんであってセレーネじゃないよ?と言っても、私たち七皇は状況に応じてどんなプロモーターとイニシエーターの組み合わせになっても戦えるように訓練されてるから、正規の組み合わせってあまり意識しないんだよね…今みたいにさ…」

 

「どんな組み合わせでも…か… 結愛も、俺のイニシエーターじゃないんだ。事情があって俺のイニシエーターがいなくて、結愛がその間の代わりにって俺のイニシエーターを買って出てくれたんだ… なのに俺は守れなかった…傷つけちまった…」

 

蓮太郎は自分の無力さにその場で握り拳を作った。

結愛だけではなく、延珠に関することでもそうだ。

おそらく、影胤が自白しなければ今現在誰の仕業でこうなったのか手がかりすら得ることはできていなかっただろう。

今回の仕事を断り、蓮斗に頼らず自分の力で延珠を見つけたとしてそんな自分が傷ついた彼女に何を話してやることができるというのか。

今回の件を通じ、蓮太郎は以前零の言っていたこと…自分の戦う理由を強く持たなければならないということを痛感させられた。

なんとなく…とりあえず…そんな生半可な理由ではこの残酷な世界を生き抜くことはできない。

誰も守れやしないのだから…

 

「守るだけの力が欲しい…そういうこと?」

 

「………ああ。」

 

桜を見つめる蓮太郎の強い瞳。

その姿に、隣に立っている木更は安心し笑みを零した。

蓮太郎は機械化兵士として自らに備わった力を極力使おうとしない。

前回、蓮斗達と戦った時は相手の力量があまりにも上と悟ったためやむを得ず使用したが、普段は使用することをとことん嫌っているのだ。

常人とは違う力を振りかざすということは、恐怖政治の始まり。

蓮太郎はそんな人間にはなりたくないとずっと思っていた。

そんなわけで、延珠という優秀なイニシエーターがいながら低序列だったわけだが、今の蓮太郎はそれではダメだという事に気づき強くなろうと前を向いた…

ずっと一緒にいた木更にとって、それは喜ばしいことこの上ない。

 

「さっき私は★2って名乗ってたけど、正確には嘘。私は民警クラス相当すると序列8400位… 本気を出した蓮太郎くん相手なら、正直私の方が分が悪いよ。」

 

「…は?確かブラックナンバーはその数値が単体で俺達民警の序列とイコールレベルの強さなんだよな?」

 

「うん。それは嘘じゃない…けど、私の場合は完全にあの子に頼り切ってるから…」

 

桜は包み隠さず自分の事情を話してくれた。

桜は知っての通り二重人格者であり、桜と夜桜…2人の人格が1つの身体に宿っている。

体は同じ…つまりは身体的技能も本来は同じのはずだが、だからと言って2人の強さが同じというわけではない。

運動神経…戦闘能力の強さ…そういったものはその肉体を扱う人物が、その肉体の潜在能力をどこまで引き出すことができるかで決まる。

人間にはそれぞれ得手不得手がある。

勉強が得意な者、運動が得意な者、芸術に長けている者…個々人の得意分野は様々であるがそれはその人がその分野での潜在能力を上手く解放することができているにすぎない。

そんな話をしながら、桜は結愛の背中に触れると桜の手から緑色の光がで始めた。

自分の体内に存在する無数の物質を合成し、回復薬のような物を作っている。それを体外へ放出する過程で、混ぜた物質によってこうして色が出る場合もある。

 

「私の場合は、私のもう一つの人格である夜桜が私の体で★2と名乗れるほどの実力を勝ち取ってくれたにすぎない。私は何もしてない…名ばかりだけの役立たずな七皇なんだよ… だから、無力だって嘆く蓮太郎くんの気持ちはよくわかるんだー…」

 

「けど、それでもアンタは折れることなくその地位に居続けている… 周りの強さに自分だけがついて行けないのは苦じゃないのか?」

 

「確かに嫌だけど、私には私の役目がある。夜桜は戦闘に特化しすぎたのと、毒から生まれたってことがあって私が今使っているような回復系の薬品合成はできない。私は、1つの分野で他人に劣ってるからってそこで折れたりしないよ。蓮太郎くんも強くなりたいなら、単純技量だけじゃなくて心も強く持てるように努力したほうがいい… 2人のイニシエーターを守れなかったかもしれないけど、死んじゃったわけじゃないでしょ?なら、君のセリフは嘆きの言葉じゃないはずだから…」

 

「次は必ず守る…いや、守らなきゃならない!」

 

「合格♪」

 

強く放つ蓮太郎の言葉を聞くと、桜はニコッと微笑み結愛の肩をポンポンと叩く。

どうやら、治療の方はもう済んでいたようだ。

 

「聞かせてもらいましたよ…蓮太郎さん。」

 

「ゆ、結愛!?聞いてたのかよ!」

 

「えへへ…実は、桜さんに治療をしてもらい始めたあたりで意識はもう戻ってましたから…」

 

「あ、あのなぁ…」

 

先程叫んだ恥ずかしいセリフを聞かれていたと思うと、顔を赤くしそっぽを向く蓮太郎。

そんな姿がおかしかったのか、女性陣3人はクスクスと笑っていた。

 

「けど、もう俺は迷わないぜ… アンタらみたいな化物クラスになるつもりはないけどな… 俺は、目の前の人間を守れるくらいには強くなるさ…」

 

「蓮太郎さん!同じ天童民間警備会社の一員として、私も全力で手伝わせて頂きますので!」

 

そういって、元気よく立ち上がり蓮太郎と握手しようとする結愛だったが、治療のため上半身を脱がされており、桜が上着をかけていただけだったため、立ち上がった拍子に服が落ち裸体で蓮太郎の目の前に立ってしまう結果となった。

 

「…へっ?」

 

「うわぁぁぁ!!ダメダメ結愛ちゃん隠してー!!」

 

桜が叫ぶが時すでに遅し。

蓮太郎の顔は真っ赤になり、片方の鼻から鼻血が垂れていた。

 

「いやぁぁぁ!!///見た!見ましたね蓮太郎さん!!」

 

「いや!今のは明らかに事故だろ!」

 

「まだ誰にも見せたことなかったのに… ふ、ふふふ…そうだ…蓮太郎さんも私みたいに気絶してしまえば記憶があやふやになるはず…」

 

「ち、ちょっと待ってください結愛さん…記憶を吹き飛ばすレベルで気絶させるって、俺に何するつもりなんですかね…」

 

服を整えると、雪月花の柄を握りながらふふふと不気味な声をこぼしながら蓮太郎に接近する結愛。

 

「氷つけええええ!!ド変態がぁぁ!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 

その後、ボロボロの会議室でお馬鹿なプロモーターとイニシエーターの鬼ごっこが始まるのであった。

 

 

 

 

 

 


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