ブラック・ブレット 漆黒の魔弾   作:Chelia

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何のために戦う?

何が起こったのか。

答えは4人の戦士がぶつかり合った。

ではどうなったのか。

 

…目の前には、制服が焼き焦げ地面に這いつくばる蓮太郎と、全身が氷漬けになり身動きの取れなくなった延珠がいた。

木更は認めざるを得なかった。

抜刀術を使うものとしての剣さばきはもちろん、目の前の二人は通常みることのできない特殊な力を駆使することで蓮太郎と延珠を圧倒した。

 

「し、勝負あり!」

 

「ふふっ…やりましたね!蓮斗さん!」

 

木更の声に結愛が笑顔になる。

試合が終わるとわかると蓮斗が炎を使って氷を溶かし延珠を助け、結愛が蓮太郎を起こし火傷してしまった部分を冷やして介抱していた。

 

「驚いたよ…まさかここまでの威力とはな…」

 

「蓮太郎さん達も強かったです。言い忘れていましたが、私はモデル・イエティの超イニシエーターです。その私相手に互角に渡りあった貴方達はもっと誇っていいと思いますよ。」

 

超イニシエーターとは何か?

ガストレアウイルスは基本的に動物などの因子を使用することで、その力を開放する。

だが、稀に媒体とした人間の思考の中に存在する空想上の動物のデータを読み取り、それを現実に具現化してしまう強力且つ頭の良いウイルスが存在する。

そのため、感染者からしか生まれないという条件がつくが、ドラゴンや神、あるいは天使や悪魔など現実に存在するはずのない姿を見せ、現実ではありえないような特殊な力を使うことさえできるという。

その特殊な因子を持つガストレアを超ガストレア、呪われた子供たちを超イニシエーターといい伝説級の強さを見せるとされ最近噂になり始めているのだ。

 

「先生から聞いたことがあったけど、本当にいたんだな…」

 

「でも、超イニシエーターなどの存在が確認されたのはここ最近らしいですね?私は田舎育ちで時事には疎かったので少し驚きましたよ。」

 

「現在確認されている超イニシエーターの数は、全呪われた子供たちの中で僅か1%しかいない。そのうちの1人だって言われても正直実感わかないよ…」

 

「あはは…私は超イニシエーターの中ではかなり下級…残念ながらめちゃくちゃ弱いんですけどね…」

 

「こら二人共!いつまでも話してないでこっちにきなさい!」

 

蓮太郎と結愛か話し込んでいると、木更が向こうから叫んできた。

気づけば延珠も元気そうな表情に戻っており、蓮斗と話をしていた。

 

「おっしゃ!これで俺たちの新しい職場が決まったぜ!」

 

「それ程の腕前があるなら、雇わないわけにはいかないでしょう?剣術を使う私からみても、貴方達2人の剣さばきは見事なものだったわ。」

 

木更の承諾もあり、こうして2人は天童民間警備会社で働くことになった。

炎を操る蓮斗、氷を操る結愛。

2人の活躍はここからが本番です!

 

☆SIDE 零☆

 

蓮太郎達が激戦を繰り広げていた日の夜、零は夜道を1人であるいていた。

 

「やれやれ…もう少しちゃんと話しておくべきだったな。会社に行ってもいないし、蓮太郎の奴はどこにいるんだ…」

 

以前聞けなかった質問をするため、そして預かった報酬を渡すため、蓮太郎を探していた零だが、タイミングが悪く中々会えないようだ。

丁度空き地の方に移動してしまったタイミングで会社にきたのが仇となり、日が暮れた今になってもぶらぶらしている。

今日は帰ろうかと諦めかけた時、目の前で蓮太郎が走っていくのが見えた。

これだけ暇つぶししてようやくお目当ての人物がお出ましか…

零は蓮太郎を軽く追うと、後ろから声をかけた。

 

「よっ、蓮太郎。」

 

「うわっ!?な、なんだよ!びっくりさせんな!」

 

軽く声をかけたつもりなのに、過剰に反応する蓮太郎。

こいつ…もしかして怖がりなのか?夜道で声をかけられてビビるのは、子供か女性くらいだろうに。

 

「だったらもう少し簡単に見つかってくれ…お前を探すためだけにどれだけ時間を無駄にしたと思ってるんだ…」

 

「いや、知るかよ… とはいっても、俺も零にはお礼をしておきたかったしな。この間は助けてもらったのに事後処理放り出して悪かったな… 社長にこっぴどく叱られたよ…」

 

「そいつは災難だったな。けど、そこまで手を出されるほどは怒られてないだろ?俺の方で、お前達が依頼を達成したように手続きは済ませておいたし、ほら。」

 

そういって茶封筒を投げ渡す零。

 

「これは?」

 

「この間の報酬。俺は金は要らないって言っただろ?」

 

中にはこの間の報酬全額分が入っていた。

警察が払わなかったのは、既に報酬を納入した後だったからか…にしてもあの野郎(多田島)、もう少し言い回しを親切にできないのか…

本当に民警と警察が仲が悪いのを実感してしまう。

 

「俺は報酬を受け取り忘れた身だ…これはお前が使えよ。」

 

「あいにく、俺は金には困ってないんでな。お前の方は金欠だろ?貸しにしたりしないから見栄張るなって…」

 

「…本当に悪いな」

 

零の表情を読み取り、渋々受け取る蓮太郎。

 

「そういえば、蓮太郎はどこに行くつもりなんだ?」

 

「ああ…」

 

こんな夜に1人でどこに行くのかと零が尋ねると、とある病院と答えた。

そこの地下にある死体安置所には室戸菫という研究者が住みついている。

この人物は、四賢人と呼ばれ世界最高峰の頭脳を持つ1人であり、現在は廃止されている機械化兵士計画の元最高責任者である。

蓮太郎のように、体の一部をバラニウム金属に変換することで常人より強力な力を使うことのできる人間たちは、この計画の被害者と言うわけだ。

蓮太郎は自分のメンテナンスや様々な相談を聞いてもらうため、よく菫のいる場所に足を運んでいるという。

 

「室戸菫…まさか、こんな所にいたとはな…」

 

「…どうかしたか?」

 

思いつめたような表情をみると首を傾げる蓮太郎。

確か、機械化兵士計画の最高責任者だよな?と零が言うのでそうだと答えるとますます考え込む仕草をした。

 

「俺も連れて行ってくれないか?」

 

「先生の所にか?あの人、かなり人見知りの上に頭のネジがかなり逝ってるからちゃんと話を聞いてもらえるかわからないぞ?」

 

「構わないさ…意地でも聞かせる。」

 

何とも恐ろしいことを恐ろしい表情でいうものだ。

本人は要らないと言っていたが、仮が多くあるので蓮太郎は菫に合わせることを承諾した。

2人はラボのある地下までいくと、その扉を開けた。

 

「せんせー!ちょっと遅くなっちまった。せんせー!」

 

蓮太郎が声をあげるが特に返事はない。

いつもこんな感じなのだそうだ…

地下に一室、そしてこの奇妙な物とその配置。

確かに普通の常人ではないだろう

お香を炊いているのかあちこちから煙が立ち昇り、机の上の至る所には謎の生命体がうようよ動いてる。

部屋はかなり暗くて視界が良くない中、奥の方にあるカーテンの向こうでぶちゅっ…ぶちゅっ…とあまり聞きたくないような音が聞こえていた。

しばらくして生々しくてグロテスクな音が止むと、カーテンの向こうから白衣を着た女性が姿を現した。

 

「やあやあ蓮太郎君。君が男を連れ込むなんて珍しいね、ついに幼女だけでは物足りなくなってそっちの方向にまで手を伸ばしはじめたのかい?」

 

「ちげーよ!!つーか、初対面の人が来たんだから少しくらい真面目に挨拶しろ!」

 

「別に誰が来ようが私の知ったことではない。ここにくるのは、蓮太郎君のようなお馬鹿で変態で彼女もできないような残念な男か、私の居場所を掴んで研究関連の依頼をしにくる業者くらいのものだよ。」

 

予想以上の変人だなと苦笑いする零。

しかし、ふと思い出すとすぐに真面目な表情に戻った。

 

「アンタが室戸菫か… 俺は朝霧零。民警だ。」

 

「民警君が何の用かな?私は便利屋じゃない。何かの依頼とかならお引き取り願うよ…」

 

まるで先を読んだかのように釘を刺してくる菫。

零は相変わらず真剣な目つきのままだ。

戦闘時のような殺意は感じられないが、もっと別の敵…つまりは商談相手や交渉相手に使うような目をしていた。

これが、仕事ができる奴ということになるのだろうか…

零はしばらく無言のまま、睨みつけるわけでもなく、諦めて視線を逸らすわけでもなく、ただ真っ直ぐに相手の目を見続けていた。

 

「別に依頼に来たわけではない…ただ、専門家としての話を少しだけ聞かせて貰いたいんだ…」

 

「ほほう?それで、君の聞きたい話とはなんだい?蓮太郎君の性癖かい?それとも、私の今の彼氏の話かい?」

 

「前者は論外だし、後者はアンタの場合死体だろうが…」

 

呆れてため息をつく蓮太郎。

ここまで真面目な空気の中、全くブレずに自分を貫き通す菫にはいつでも頭が上がらないのがこの男だ。

 

「バラニウムとガストレアについてだ。俺は始めて蓮太郎を見た時から確信していた…こいつはイニシエーターを駒としてではなく、人としてみているってな…俺はそんな人間をずっと探し続けてきた。そして、そんな蓮太郎を影で操っているのがアンタだとすれば、必然的にアンタにもそういう感情があると期待してもおかしくはないだろう?」

 

「ふむ…残念ながら、私は呪われた子供たちを人としては見ていないね。気持ちがわからないでもないから、蓮太郎君にはアドバイスをしているに過ぎない。君を見たところ、一定以上の知識はあるようだし、バラニウムやガストレアの説明は要らないだろう?本当に欲しいものはなんだい?」

 

「………このデータを見て欲しい。極秘資料だから、他言無用で頼む。」

 

零はポケットから小型のチップを取り出すと、それを菫に渡した。

面倒ごとは嫌いなのか、やれやれと嫌そうな顔をしながらパソコンをつける。

データを読み込むと、イニシエーターと思われる小さな女の子の体が出てきた。

 

「解剖図…ではなく、生きている人間を特殊なX線を使って撮ったもののようだね。」

 

「流石四賢人だな… その通り、その子は実在して、今も生きている。それを見てどう思うか聞きたいんだ。」

 

その子の体内には、人間らしい臓器など殆どなく、真っ黒い金属と常に動き続ける気持ちの悪いウイルスで埋め尽くされ、体の90%以上を占めていた。

 

「ガストレアウイルスとバラニウム金属の共演…しかも体内侵食率は限界値の49.9%、人間としての臓器をすべて失っているのに人の体の状態を保ち続け、挙句の果てに君の言う事は聞く…とね。はっきり言って、次世代型の最終兵器を見ているようにしか思えないよ。この体内侵食率なら、呪われた子供たちとしても最高レベルの火力出すことができるし、バラニウム金属が体内を覆っているから侵食率があがることもない。脳の方はどうなんだね?そこだけは人間の物のようだが…!?」

 

そう言いかけて菫は目を見開く。

脳以外をバラニウム金属で構成するというのは、以前菫が携わっていた機械化兵士計画の最終段階。今まで何人もの人間を犠牲にしてでも達成することができず、呪われた子供たちの存在により必要性が重要視されなくなり、凍結されたあの計画…

しかし、目の前のデータに示されている子の体は脳以外をバラニウムで構成している完成体そのものといっても間違いではなかった。

それどころかバラニウムを極端に嫌い、共存不可能と言われているガストレアウイルスを同時並行で体内に宿し、発動できないはずの力を自由自在に扱っているのだ。

 

「そう…そんな状態の体を持ってしても、人として普通に過ごすこともできてしまうのがその子なんだ。ただ1つ問題なのは、その体の負荷により、脳の一部が欠落…感情がなくなってしまった…俺の言う事を聞くには聞くが、その表情に変化はない…俺は、その子の感情を何とかして取り戻したいんだよ…」

 

………

黙り込む菫。

しかし、こんな無茶なことを言ってどうしようもないのは零にもわかっている。

もしかしたらという藁にもすがりつくような思いで、このデータを提供したに過ぎないのだから。

 

「…はっきり言って、今の私にできることは何一つないだろうね。機械化兵士計画が私の知らない所で続けられ、あろうことか完成品までできていることにも驚きだし、この子の場合ガストレアウイルスの問題もある。というより、そろそろこの子が誰なのか説明してあげたらどうだい?蓮太郎君も読者の諸君も口をポカーンと開けて見ているぞ?」

 

メタをはるなよ…

本当に何でもありだなこの人は…

そう思うが、確かに菫の言う通り蓮太郎は途中から話についていけていなかった。

機械化兵士計画は元々、呪われた子供たちが発見される前に今で言うプロモーターに該当する普通の人間の臓器や体の一部をバラニウムに変えることでガストレアへ対抗する手段を持とうというのが本来の目的であった。それがイニシエーターに行われていることがまずおかしいし、何よりこの子の場合は臓器の一部なんてレベルを越えている。

バラニウム金属が固まって固体化したり、溶けて液状化したりして体中を血液のように循環しているのだ。

 

「この子の名前は朝霧紗雪。俺の………たった一人の妹だ。」

 

……………

 

しばらくの沈黙の後、蓮太郎と菫はほぼ同時に口を開いた。

 

「………お前、妹がいたのか」

 

「ふむ、なるほどね。これが君の民警として戦う理由というやつかい?」

 

「ああ。タダとは言わない。俺に提供できるものも、必要な研究費用、データ、素材も全てこちらで調達する…だから…」

 

「構わないよ。蓮太郎君のような厄介者が1人増えたようなものだからね…最も、結果はあまり期待しないで欲しいが…」

 

「充分だ、本人は後日連れてくる。それと、俺の体も提供させてもらうよ…自分で言うのも何だが、俺にはこの戦争の根底をぶち壊す力が宿っている。これも何かに使えるかもしれないからな。」

 

無事に商談が済んだからか、蓮太郎も菫をようやく口元が緩む。

今回はいつもふざけまくっている菫も割りと真面目なほうだった。

普段は蓮太郎をからかってばかりだか、蓮太郎の時も零の時も、人が大切にしている物が絡んでいる真面目な話の時はあまりからかってこない。

人が苦手で人見知り…それでもって研究所から一歩も出ない引きこもりの割りには、そういった人の心境をある程度読むことができるというのは羨ましいことこの上ないだろう。

零は聞きたかった質問をするために、今度は蓮太郎に向かって話しかけた。

 

「なぁ蓮太郎。単刀直入に聞くが、お前…俺と来る気はないか?」

 

「…どういうことだ?」

 

「さっきも言った通りだ…俺の戦う理由は、妹である紗雪が幸せに過ごすことのできる世界を作り、最終的には、誰もが願いし平和(ゼロワールド)を手にすることだ。その世界では奪われた世代も呪われた子供たちも関係ない…悲しむ人なんか誰もいない、そんな実現不可能な世界を強引にでも作ってやろうって集団だよ。それには、現時点で呪われた子供たちを偏見なく愛することのできる人間…お前が必要なんだ。」

 

「ゼロワールド…か… 俺の戦う理由は………」

 

そう言いかけて蓮太郎は固まった。今の自分の戦う理由は何だ?

立ち上がった当初の蓮太郎は、ガストレア大戦で死んだ父と母を探すという何とも無謀で子供じみた願いを持っていた。

蓮太郎も僅か6歳の時に、父と母を失っている。

しかし、疎開に先に逃げた蓮太郎の見た死体とは既に灰となってしまった粉と骨そのものだった。

まだ幼い子供にそんなものを見せて、これが両親だよと言われたところで信じられるはずもない。

流石に今では両親が死んでいることをわかってはいるものの、深く考え直してみると自分の戦う理由を咄嗟に答えることができなかった。

この世界は理不尽ではあるものの、木更がいて、延珠がいて、僅かながら現状に満足してしまっているのではないだろうか?

 

「いいじゃないか、蓮太郎君にそっくりで。」

 

そう口を挟んだのは菫だった。

第三者の目には、蓮太郎と零は似てるように見えたらしい。

 

「俺は目的のためならどんな物でも敵に回せる覚悟がある。それがガストレアであろうが人間だろうがな… お前は、この世界をどう変えたい?」

 

「そんなこと言われたってわかんねぇよ… それに俺は、そこまで強い人間なんかじゃない。会社を移動したり、延珠と引き離したりするつもりなら絶対にお断りだ。」

 

「…天童民間警備会社に特別な思い入れあり…か。」

 

「はいはい、話が済んだのならさっさと帰ってくれ。こんな面白い玩具が手に入ったんだ。私も当分はここに篭りっきりになるだろうしね。」

 

「アンタの場合最初からだろうが!!…まあ、俺の定期検診も大丈夫のようだし帰るとするか。またな先生。零も、俺の協力できる範囲であれば協力させてもらうからその時は声をかけてくれ」

 

「わかった。できれば、会社単位ではなくお前に個人的にお願いしたいからケータイの番号を教えてくれ。何か良い情報が手に入れば、こちらから連絡するよ。」

 

零と蓮太郎はアドレスを交換すると、菫に軽く挨拶をし帰って行った。菫は次の言葉を一言だけ呟くと、零に受け取ったデータを見ながら作業を始めるのだった。

 

「…こんな人間が実在するとはね。やはり、世の中何が起こるかわからないものだ。」

 

菫のラボでの会話が終わった後場面は変わり、時刻は夜の23時、場所は東京エリア第二区の地下施設。

四十三区制の東京エリアにて、そのトップである聖天子がいる場所を第一区とし、その周りから順番に2、3………と数字が大きくなっていく。

二区といえば、かなり場所的には良い所のほうだ。

そんな二区の一角に巨大な地下施設がある。

広さは全長約1kmでモノリスとほぼ同じ大きさ…巨大なショッピングモールの端から端と考えればわかりやすいだろう。

地下なのに必要以外の明かりは殆どつけられていないため、完全に場所を把握できていないと先には進めない闇が広がっている。

コツコツと1人の足音だけが響く…

移動しているのは僅かに1人だとしても、こんな静寂かつ真っ暗な地で足音を立てれば通常以上に大きく聞こえて当然だ。

1つだけ明かりの灯った部屋に足音の主が入ると、元気の良い女の子の声が聞こえた。

 

「あ、おかえりっ!零!」

 

「…ああ、ただいま桜。七星の遺産の回収には失敗したが、代わりに面白いものを見つけてきたよ。それも2つな…」

 

「ふーん…面白いものね… あ、流石にもうみんな寝ちゃってるよ?相馬さんだけは起きてカタカタパソコン打ってるけど…」

 

「凌牙の奴は放っておけ…そんなことより、俺の帰りを待っていたならお前も早く寝ろ。夜更かしはお肌の天敵だぜ?」

 

「えへへっ…バレたか…」

 

桜と呼ばれた女性の話ではもうみんな寝ているらしいが、別の声が二人の会話を遮ってきた。

 

「おかえりなさい、兄さん…」

 

「悪いな紗雪、起こしちまったか?」

 

「私に睡眠は必要ありません。強いて言うなら、唯一の人間器官である脳をスリープさせればいいだけの話ですから。」

 

「そうかよ………」

 

「………」

 

声をかけてきたのは妹である紗雪。しかし、その姿は10年前と全く変わっていなかった。

昔のように明るい性格を表に出し、元気一杯だったあの姿はどこにもなく終始無表情、無感情で話す必要のある時のみ、口を開くような感じだ。

 

こんなのは…俺の大好きだった妹なんかじゃない…

俺は必ず紗雪を元に戻してみせる…

 

そう思いながら、零は1人握り拳を作ったのであった。

 




ここまで読んでいただいてありがとうございます!
説明フェイズは疲れますね…

最後の場面の補足をしておくと、場所は零の所属する民警の会社となり、場所は東京エリア二区の巨大地下施設にあります。

蓮斗、結愛のプロフィールは次回紹介しますので詳細な容姿、持ち技等の情報はもうしばらくお待ちください。


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