ブラック・ブレット 漆黒の魔弾   作:Chelia

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蓮太郎と延珠

ガストレア対戦で人類が敗北してから10年後…

今は2031年だ。

零が1人になってしまったあの日、戦争は集結した。

朝霧家だけでなく、都心の方でもバラニウム金属の存在が室戸菫という研究者により明らかになり、現在、この東京エリアの周りを囲っているモノリスが完成した日である。

 

ここは元東京都に位置している場所だが、何故東京エリアと呼ばれているかというと、元近隣県であった千葉、埼玉、神奈川の一部も含まれているからである。

しかし、その一部は殆どモノリスのせいで土地を持っていかれ、その先はガストレアの住む闇の世界。

なので、東京近辺の人類が住めるエリアを総称してこう呼んでいるわけだ。

 

そんな東京エリアの住宅街を、一人の少年が歩いていた。

茶髪で服装は黒服。赤色のマフラーを着用し口元を隠すことで、無表情のように見える。

このいかにも厨二病らしい服装と、170cm程度しかない身長によってまだ幼さを残す青年という感じが第一印象として見て取れた。

 

「さて…凌牙の奴がいうには、この辺りに厄介もんを抱え込んだガストレアが現れるって話だが…」

 

小声でボソッというと、この少年「零」はとあるマンションを見上げた。

下にパトカーとボロいチャリが止めてある。

警察が絡んでいる以上、ガストレアか呪われた子供たちに関する事件が大半だろう。

マンションに近づき、上の方に聞き耳を立てると案の定それだった。

 

「あぁん?お前が俺達の応援に駆けつけた民警だぁ?馬鹿も休み休みに言え!まだガキじゃねえか!」

 

「んなこと言われても仕方ねえだろ… 銃もライセンスもある、社長命令ってんで仕方なく来てんだ。疑うなら帰るぜ?」

 

3階で話しているようだが、1階まで声が丸聞こえだ。仮にも民警と警察なら、もう少し機密情報を使用する職場上、周りに気を配ったほうがいいと思うんだが…

 

話をしているのは民警と警察。警察の説明は要らないだろうが、民警の説明をしておこう。

ガストレア大戦終了時までは、自衛隊や警察が主としてガストレアの駆除を担当していた。

しかし、ガストレアに対する対抗手段であるバラニウムが発見されてからは、その金属を武器に変え、ガストレア退治を専門とするエキスパート「民間警備会社」という会社が次々と設立されていった。この会社のことを略して民警という。

それにより警察は事件の事前、事後処理を主に担当するようになり、ガストレア関連の事件では民警の応援なしでは手を出してはいけないという法律まで生まれている。

警察側からしてみれば、単純に自分達の仕事を奪われたのと同義…故に、警察と民警は仲の悪い場合が多い。

 

「最近はガキまで民警ごっこかよ…」

 

警察は民警のライセンスを確認すると、民警の顔をジロジロと見つめる。

民警の方は、自分の着ている学校の学生服を見ていた。

流石に、学生服を来た人間に私が応援ですと言われでもいい顔はできないだろう。

話を聞いていると、警察の方の名前は多田島、民警の方の名前は里見と言うことがわかった。

 

仕事内容は上の階から血の雨漏りがするんで確認して欲しいという電話をもらったとのことだ。

小さい事件…わざわざ自分が出るまでもないだろうと考えた零は、「一般の」民警の仕事でも見物していこうとぼーっと上を見上げ続けていた。

 

「情報を総合すると間違いなくガストレアだ。やっと中に入れるぜやっとな!!」

 

やっとの部分をわざと強調させて言う多田島。

民警と警察の仲が悪いのは今に始まったことではないが、ここまで露骨だと怒るというよりより呆れてしまうだろう。

早速中に入ろうとする多田島だったが、ふと気づき里見に声をかける。

 

「お前、相棒のイニシエーターはどうした?お前等戦闘員は二人一組で戦うのが基本だろ?」

 

「あ、あいつの手を借りるまでもないと思ってな!」

 

イニシエーター…通常民警は二人一組でペアを組むことになっている。一人は通常の社員だが、もう一人は特殊な能力を持つ子供…呪われた子供たちをパートナーにする。

呪われた子供たちの力でガストレア弱らせ、民警社員がバラニウム製の武器でとどめを刺す。これが彼等民警の基本戦闘スタイル。

この社員のことを加速因子(プロモーター)、呪われた子供たちのことを開始因子(イニシエーター)という。

どういうわけか、この民警はイニシエーターを連れていないので具体的説明ができないのが非常に残念な所ではあるが…

 

「何か変化は?」

 

多田島が他の警官に声をかける。

 

「すみません!たった今、ポイントマンが2人窓から突入!その後、連絡が途絶えました…」

 

「馬鹿野郎!どうして民警の到着を待たなかった!」

 

慌てる警官と怒る多田島。そんな2人をくだらないとスルーするかのように、民警里見は前へ出た。

 

「どいてろボケ共!俺が突入する!」

 

里見は拳銃を抜くと、そのまま室内に突入する。

…その瞬間、零はゾクリとした謎の感覚に襲われた。

背中から全身にかけて寒気が広がるような謎の感覚だ。

 

「なんだ………?今のは…」

 

こういうときの零の予感は大抵当たる。自分の仕事ではない(間接的にはそうかもしれないが)とはいえ、目の前で悲惨な状況を目にする可能性があるとすれば黙って立っているわけには行かなかった。

後続に続く警官を追うように、階段を駆け上がっていく…

そしてその部屋の中で見たものとは…

 

部屋の中は血があちこちに吹き飛び、真紅の海が広がっていた。

その部屋の中央には長身の男が佇んでいる。

身長は190越え、細すぎる手足に胴体、細い縦縞の入ったワインレッドの燕尾服にシルクハット…極めつけは舞踏会用の仮面という奇怪な人物。

ガストレア関連の事件ではなかったのだろうか?

その謎を解決するかのように仮面男が口を開く。

 

「民警くん、遅かったじゃないか…」

 

「何者だアンタ…」

 

聞きたい事を代弁してくれる里見。

 

「私はガストレアを追っていた者…しかし、君と同業者ではない。なぜなら、この警官隊を殺したのは私だからだよ…」

 

その言葉を聞き終わるか終わらないかのタイミングで里見は仮面に急接近し、掌打を繰り出した。

良いタイミング、良いスピードだ。確実に警戒心が薄らいでいる絶妙のタイミング。

しかし、仮面はそれを首を捻るだけの動作で悠々と躱した。

 

「ほう…中々やるね…」

 

相手も素人ではなく相当の手練だ。里見は警戒するが特に反撃の様子はない…あくまでもその男からは!!

 

「窓だ!」

 

隠れていたはずの零が咄嗟に叫ぶ。

 

「な、何だお前は!?」

 

部外者がいることに気づかなかった多田島は叫ぶが、里見は言われた通り窓に注意を払っていた。

…だが、コンマ数秒遅い!

 

バリンと激しい音がすると、1人の少女が窓ガラスを突き破り突入してきた。

その少女は両手に持っていた2本の刀を里見に向け、そのまま切り刻もうとする。

 

「邪魔だ!そこをどきやがれ!」

 

零は里見の前に立ちはだかるように立つと、その2本の刀をまとめて自分の右腕に突き刺さるようにすることで受け止める。

しかし、刀は腕に深く突き刺さることはなく、零にも痛がる様子は全くなかった。

 

「パパ…この腕切れないよ?なんで?」

 

戦闘に乱入してきたイニシエーターと思われる赤目の少女が首を傾げている間に、隙ありと言いたげに里見が再び接近し技を浴びせようとする。

 

「隠禅・黒天風!」

 

里見の持ち技なのだろう。そこにいる誰もがギリギリ目視で確認できるくらいの恐ろしい速度で接近し、仮面に鋭い回し蹴りを浴びせようとする。

零はこの二人の評価を改めずにはいられなかった。

小さな事件と軽く見ていたが、二人共相当やるようだ。

これならば奴も避けられまい…そう思っていたが、どうやらその予想を遥かに上回るような事態になってきた。

仮面の周りに青白いドーム状の光が現れると、まるで電子バリアのように里見の蹴りをはじいたのだ。

目の前の少女も、零の腕から素早く刀を引き抜くとバックステップで後退し仮面の横に並ぶ。

 

「やれやれ…ただの民警ではないのか。はっきりいって、瞬殺して帰る予定だったのだけれどね…」

 

「それはこちらのセリフだ…特殊能力者か…それとも機械化兵士の被害者か…果たしてお前はどっちなんだろうな…」

 

表情は読めないが睨みつける零と向き合う仮面。

 

「それはすぐにわかることだよ。私達はひとまず退散と行こうじゃないか…お目当てのものもここにはないようだし、君達もその方が都合がいいだろう?」

 

「馬鹿か!こんなことをしている奴をミスミス逃すなんて!」

 

里見は叫ぶが、零がそれを制した。

 

「お前の依頼はガストレアに関する事件だろ?この男を捕まえることじゃない。ガストレアの本体が見つけられなかった以上、最優先すべき事項は感染爆発(パンデミック)を防ぐことだ。」

 

「ちいっ!」

 

「ではまた会おう、里見君、そっちの硬い少年。」

 

舌打ちする里見を馬鹿にするかのように仮面はキヒヒと奇妙な笑い声を発しながら窓ガラスを突き破り落ちていった。

パパーと呼びながら少女も後に続く…何とも奇妙な光景だ…

 

「何だったんだ…一体…」

 

次々と想定外のことが起こり続け、全てが終わった後にただそう呟くことしかできない多田島。

 

「さて、状況を整理したいんだろうがそんな時間はない。この現場から逃げ出したガストレアの本体を叩き、事後処理をするまでが民警くんと刑事さんの仕事だろう?」

 

「アンタ…一体何者なんだよ…敵か?味方か?」

 

「…敵なら助けたりなんかしねぇよ。俺は朝霧零。お前と同じ民警だ。少々危険な雰囲気を醸し出していたから手助けしてやっただけだ。」

 

「そういうことなら助かったぜ… 俺は里見蓮太郎だ。珍しい奴だな…民警同士も、民警と警察も仲悪い奴ばっかりだからな… けど、俺も金欠だ。手伝ってもらったからといって、報酬を分ける気はないぜ?」

 

互いに自己紹介を終える零と蓮太郎。

蓮太郎の自己紹介を聞くと、零は突然マフラーをずらし口元を見せながら笑いはじめた。

 

「ぷっ…お前面白い奴だな… こんな状況の中で自分のお小遣いの心配かよ!なら、乗りかかった舟だ、最後まで付き合わせろ… 当然金はいらない。お前の戦いぶりを最後まで見れるだけでも、充分報酬なような気がしてるんだ…」

 

戦いを見るのが報酬とは、何なのだろうか…

戦闘データでも集めているのなら自分よりもっと手練のところに行くべきだろうと蓮太郎は思ったが、1円足りとも金はいらないと零が言うのでその要求を飲むことにした。

先程の剣激を片手で防いだ零の腕は、何事もなかったかのように元に戻っていた。

それを見逃さなかった蓮太郎は、その瞬間零を只者ではないと判断したのだ。

相手に自分の事を見せる以上、自分も相手のことを知っておきたい…そんな動機だ。

 

「ったく、民警だけで勝手に話進めやがって!俺も行くぞ。」

 

呆れたように多田島が言うと、三人はガストレアを探すために町にでた。

 

☆SIDE 延珠☆

 

「れんたろーの薄情者ー!!」

 

歩く度にひょこひょこ揺れるツインテールが特徴的で、蓮太郎のイニシエーターである藍原延珠は先程の事件が起こっていた場所と少し離れた所を1人で歩いていた。

蓮太郎と延珠の所属する会社「天童民間警備会社」は恐ろしいほど儲かっていなく、まさに倒産の危機に陥っていた。

社員も社長を除けば蓮太郎と延珠の2人だけという超のつく小規模。先程、蓮太郎が行っていた仕事はそんな小規模会社に奇跡的に潜り込んできた大事な仕事なのである。

何としても遅刻するわけにはいかず、オンボロチャリを飛ばしていたところ荷台に乗せていた延珠を蓮太郎が落としてしまい置き去りにされてしまったというわけだ。

イニシエーターは呪われた子供たち…故に、人間より遙かに強靭なためチャリから落ちた程度では大したダメージにはならないのだが、延珠の場合別の意味でのダメージを負っているようだ。

 

「蓮太郎…妾より仕事が大事なのか…仕事がだいじなのかぁ!」

 

両目にうるうると涙を浮かべていると、当然脇道から不審な男が出てくる。

 

「ここはどこだ?俺は…俺は!!うわぁぁぁ!!」

 

ブチブチとグロテスクな音がして人間の体を突き破ると、中から蜘蛛のようなガストレアが出てきた。

街中ではあまり見ることのないガストレア化現象が目の前で起こったのである。

 

「…っつ!?」

 

咄嗟に戦闘態勢を取る延珠。

 

「モデルスパイダー・ステージ1を確認!これより交戦に入る!」

 

延珠が身構えるのとほぼ同時に、背後から聞き慣れた声が聞こえると、黒い銃弾が蜘蛛の頭を撃ち抜いた。

先程の現場から駆けつけた零と蓮太郎である。

 

「君、大丈夫か!?」

 

「問題ない。妾はお主の後ろで銃を構えている男のイニシエーターだ。遅いぞ蓮太郎!」

 

一般人と予想していた零は若干慌てていたが、そんなことはなく延珠も蓮太郎達と共にガストレアに対して構えをとった。

遅いと文句を言われ、蓮太郎はすまないと謝っていたが…

 

「なるほど…この子が蓮太郎のパートナーか…」

 

「モデル・ラビットのイニシエーター、藍原延珠と言う。よろしく頼む!」

 

バラニウム弾を受けたガストレアは再生を阻害され、狂ったように暴れ始める。

通常ではありえないほどの速度と速さで跳躍し、三人まとめて押し潰そうとしてきた。

一番最初に避けたのは蓮太郎。左目の義眼が奇妙に起動すると、まるでガストレアの動きを察知したかのように左へ…延珠は流石モデルラビットとも言うべく恐ろしいジャンプ力で後方跳躍し躱した。

零は体重を利用して突進してきたガストレアをそのまま片手で受け止めた。

 

「…ステージ1なんざ、所詮はこの程度か。延珠ちゃん、やっちゃってくれ。」

 

「承った!」

 

片手でガストレアを持ち上げる零を見て、なんて馬鹿力なんだと蓮太郎は驚愕する。

延珠は先程跳躍した高さを生かし、まるでライダーキックとも呼べる高所から、地面に足をつくことができずに暴れるガストレアに向けて飛び蹴りを放った。

1バウンド、2バウンド…地面を跳ねながら20mほど吹き飛ばされた彼奴は最終的に頭を地面にめり込ませることで静止を遂げた。

こんな小柄な少女が、これ程の破壊力のある蹴りを見せたことに後から来てこの戦場を見ていた多田島は口をパクパクさせていたが、これがイニシエーターの強さというもの。

ガストレアもイニシエーターも、ほとんどのものは動物や昆虫、植物などを媒体としたガストレアウイルスによって力を得るため、その元々のモデルの能力を反映させて戦う。

延珠の場合は、うさぎのような強力な脚力と跳躍力を駆使して戦うというわけだ。

 

「まだ生きているな…蓮太郎、後は任せたぞ!」

 

先程ガストレアがいた場所…つまり、零の隣に相手を吹き飛ばして自信満々な延珠が立つと、相棒の蓮太郎にそういう。

蓮太郎はバラニウム製の黒い銃弾をガストレアに打ち込んでいき、完全に息の根を止めた。

 

「流石に、三人もいると楽なもんだな… 助けてくれてありがとう。」

 

「そういえば、お主は同業者か?そんな話は聞いていなかったが…」

 

素直にお礼を言う蓮太郎と、首を傾げる延珠。

多田島達警察はこの現場の事後処理があるのでここからが仕事の本番だが、民警の仕事はもうこれで終わり…

後は蓮太郎達と適当に話して、処理が終わるのを待っていればいいだけだ。

 

「紹介が遅れたな。俺は朝霧零。特に依頼を受けていたわけじゃないけど、さっき君のパートナーの蓮太郎君が苦戦していたみたいだったから、手助けさせてもらってたんだよ」

 

「全く!妾を連れていればそんな目には合わなかったというのに!」

 

「だからすまなかったって延珠…」

 

「うーっ…そんなことで許せるかぁ!!キスだキス!結婚を前提にお付き合いするという誓いのキスをしろおお!!」

 

「ばっか!そんなもんできるか!第一お前はまだ10歳だろうが!!」

 

「このー!待て待て待てー!」

 

何故か零の回りをぐるぐると回りながら蓮太郎と延珠が追いかけっこを始めた。

…目が回るんだが

それにしても随分と仲の良いプロモーターとイニシエーターだ。普通、プロモーターがイニシエーターを探す際、イニシエーターを専門とする特別な施設から送られてきた呪われた子供たちをパートナーとして選択する。

特別な指定等がなければ完全にランダムで送られてくるシステムだし、相性が合わなければ使い捨てのようにして新しいイニシエーターを請求することだってできる。

そのような制度と、呪われた子供たちへの差別的風潮からこのようにプロモーターとイニシエーターの仲が良好なのは極めて珍しい部類に入るのだ。

ある程度仲の良さそうに見えるペアでも、大抵は死んだらそれまでレベルの関係がほとんど…

しかし、目の前の2人。里見蓮太郎と藍原延珠からはそれ以上の信頼関係が見て取れた。

仕事の最中に隣でギャーギャー喚かれてイライラしている多田島が今にもぶっ殺しそうな目でこちらを見てきたが、まあ気にしない事にする。

 

「なあ、蓮太郎… お前に聞きたいことがあるんだが。」

 

「なんだ!?俺は今延珠から逃げるので忙しいんだけど…!!」

 

「おお、そうだ!」

 

キキーっと通常人が静止するのではありえない音がして延珠が旧停止すると、何かを思い出したかのように声を上げた。

 

「蓮太郎、タイムセールはいいのか?」

 

「………はっ!?しまった!忘れてたぜ!」

 

「おいおい…まだ俺の質問も仕事の事後処理も終わってないぜ?そんなに大切な用事なのか?」

 

「もやしが一袋6円なんだよ!!!!」  

 

蓮太郎は慌てて延珠の腕を掴むと、オンボロチャリを置いてきてしまったことに舌打ちしながらスーパーのあると思われる方角に猛スピードで走っていった。

何か、色々すっ飛ばしてて面白いとは思うが、こんなに中途半端に現場を残していいのだろうか…

いや、それ以前に大切な用というのが

 

「………もやし、だと?」

 

「なぁんだ、ガキと嬢ちゃんは行っちまったのか…」

 

事後処理があら方片付いたのか多田島が戻ってきた。

 

「やれやれ…これは元々俺の仕事じゃないんだけどな。」

 

零はポケットから超小型コンピュータのような端末を取り出すと、ピピピと素早く操作しそれを多田島に見せる。

 

「天童民間警備社所属、里見蓮太郎に藍原延珠。この二人に依頼成功のデータ送信をしてやってくれ。成功報酬は俺の方で預かっておいて、後で必ず渡しておこう。」

 

「おいおい、マジでアンタは報酬要らないのかい?お人好しだねぇ… それにその端末…次世代型のコンピュータか?」

 

「俺の仲間に、こういうのなんでもできちまう奴がいるんだよ…」

 

聞いておいて全く興味無さそうにする多田島。

ムカツクので最後に頭を下げさせておくことにしよう。

 

「で、アンタに報酬渡して信用できんのかよ?」

 

「俺のライセンスだ。見りゃわかるだろ。」

 

「なっ… く、黒いライセンスカードだと!? す、すいませんでしたぁぁぁぁ!!!!」

 

零のライセンスを見た瞬間多田島が土下座する。

現場に残ったのは多田島の謝罪声だけだった…




というわけで、10年後の本編を書き始めたわけですがその前に10年前の回想に登場したキャラクタープロフィールを簡単に紹介しておきます。

朝霧優世(アサギリユウセイ)
身長:185
体重:75
年齢:32(2021年時点)
容姿:零と同じ茶髪でトゲトゲしい髪型をしている。瞳の色は黒。
ガストレア大戦敗戦間近のため、この頃はボロボロの黒いタンクトップを着用。

詳細:朝霧家の大黒柱で、華蓮の夫。
理由は不明だがバラニウム金属の存在が明らかになる遙か前からバラニウムの存在を知っており、零と紗雪に超バラニウムの入ったペンダントを持たせていた。
今現在では全てが謎に包まれている男。
華蓮の死とともに行方をくらませる。

朝霧華蓮(カレン)
身長:162
体重:53
年齢:26(2021年時点)
容姿:透き通った緋色の髪で緑色の瞳を持つ美しい女性。髪型はセミロング。ドレスのような服装をしているが、結果的にこれが仇となり最悪の結末を迎えてしまうことになった。

詳細:夫を愛し続けるお淑やかな妻。バラニウムの存在を知って入るが、詳しくはなかった模様。ガストレア大戦終了前日にバスの爆発に巻き込まれ、死亡が確認されている。
胸はEカップと巨乳だった。

朝霧零(レイ)
身長:138
体重:30
年齢:9(2021年時点)
容姿:非常に父親似の子供で、髪色も外見もそっくり。完全に優世の小人のような容姿をしている。

詳細:本作の主人公。
優世、華蓮の間に生まれた一人息子で、自分の意見をしっかりと持ち、幼い頃から冷静な判断や態度を取ることが得意な少年。自己中心的で我儘なのがたまに傷。
何の力も持っていなく、大切な家族を守れない経験から自分が強くなるだけでなく、仲間を集め、ある物を憎むことで今は民警最強クラスと恐れられる程の圧倒的実力を手にするまでに成長する。
父のことを親父、母のことをお袋と呼ぶ。
重度のシスコン。

朝霧紗雪(サユキ)
身長:128
体重:24
年齢:9(2021年時点)
容姿:第一印象は小柄。白髪のショートヘアで、半袖ショーパンとラフな格好をしている。
赤い瞳を持つが、呪われた子供たちというわけではない。

詳細:幼い頃朝霧家に養子として迎え入れられた少女。
笑ったり泣いたりと、よく表情を表に出す子で、朝霧家の笑顔の元として一家を支えていた。
また、大の猫好きで家が残っていた頃は二匹の猫を飼っていたという。
両親のことも大好きだが、一番好きだったのは兄である零という重度のブラコン。
ガストレア大戦敗戦当日に死亡したと思われるが、死体処理が行われていたかどうかは不明。


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