ブラック・ブレット 漆黒の魔弾   作:Chelia

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14話目にしてようやく主人公のまともな戦闘シーンに入れました( ̄▽ ̄;)


世界最強のプロモーター

零の腹部から血が凄まじい勢いで吹き出る。

常人なら瞬殺されているだろう…

周りの人間が驚く中、1人笑っている結愛に対して蓮太郎は慌てて叫ぶ。

 

「何やってんだ結愛!そいつは敵じゃない!、今すぐ刀を抜くんだ!!」

 

「ふふっ… ダメですよぉ蓮太郎さん、こんな重罪人を放置しておけるわけないじゃないですか? そうですよね………なぁ、朝霧ぃぃぃ!!!!」

 

「嘘… この間結愛ちゃんは気絶してて零とは会ってないはず…なのになんで零の苗字を…」

 

血相を変えてブチ切れる結愛に驚く桜。

蓮太郎は以前結愛が怒った時と全く同じ表情をしていたことから、事態を推測する。

 

「…まさか、結愛の師範を殺したっていうのが」

 

「そうです、だから瞬殺なんて生ぬるい… こいつは…こいつだけは苦しんで苦しんで、絶対に耐えられないような辛い死に方をさせてやる!」

 

そういいながらグリグリと刀を体にねじ込む結愛。

自分の大切な人が目の前でこんなことになっている。桜は耐えられないと目を閉じ今にも泣きそうだ。

 

「がはっ… くっ…身に覚えが…ねぇな!」

 

「今更惚けるんですか? まさか、この世には似た人間が3人、なんて言い訳をするつもりじゃありませんよね?」

 

「とにかく、理由は細かく聞かせてもらう… 俺だって、覚えのない理由で殺されてはい、そうですかって納得できるわけないんだからな!」

 

零は自分の手を真っ黒に硬質化させると、結愛の刀の剣先を掴み、強引に背中に向かって押し返した。

 

「うおおおおおっ!!」

 

「なっ!?超イニシエーターの私が、普通の人間に力負けしてる?」

 

痛みが伴うので長期戦にするわけにはいかない。

零は全力で刀を押しぬくと、貫通してしまった腹部も硬質化させ、止血を一瞬で行った。

体を自由にバラニウム金属に変換できるこの能力。

10年前とは比べ物にならないくらい使いこなすことができているというわけだ。

 

「はぁっ…はぁっ… ったく、余計な力を使わせやがって… 桜、悪いが痛み止めだけ頼む。」

 

「あ、うん…」

 

呼ばれると慌てて零の治療をする桜。

それを見た結愛は、なお機嫌が悪くなる。

 

「ちっ、瞬殺しておくべきだったか…」

 

「こっちだってやろうと思えばこんな痛い思いしないでお前の刀ごと俺の体に取り込んじまえばいいだけの話だった。見たところ、市販で売ってるようなものじゃねぇみたいだし、命の危険に晒されながらもお前の武器の心配をしてやったこっちの身にもなって欲しいぜ…」

 

「ふざけるな!! 私は幸せだった…師範がいて、蓮斗さんがいて、3人で笑い合う毎日がどれだけ掛け替えのない大切なものだったか… でも師範が死んだあの日から蓮斗さんは変わってしまった… いつもふざけてて、何に対してもやる気がなくなって、私も事も結愛って呼んでくれなくなって… 私の、いや、私達の全てを奪ったお前だけは絶対に許すことはできない!!」

 

「話が噛み合っていませんね… 私には結愛さんがいきなり朝霧さんを刺したようにしか見えませんでしたよ?」

 

「夏世の言う通りだ、証拠はあるのか?」

 

流石に夏世も黙っていられなかったのか、状況を判断しつつ結愛に声をかけるが、それも全くの無駄。

 

「はい、あります… 師範を殺した犯人を私は二年前に目撃しています。その犯人とこいつはあまりにも瓜二つ。 それに、私が刺したのにはもう一つ理由があります。それは相手の力量を測るため。師範がやられた以上、犯人は相当の手練です。強いかどうかがわかればよかったんですが、それ以上の収穫が得られてよかったですよ…」

 

「…何?」

 

「犯人の使用した能力は、「自身の体の物質を金属に変換させて攻撃する」能力でした。 外見も能力も同じ。 ここまで一致していて、言い逃れしますか?」

 

「おかしな話だな… 俺の能力は特別なものだ。俺以外に使える人間は絶対に存在しない…」

 

「だから、お前が犯人だと認めればいいだけだ!!」

 

「ダメっ!」

 

「とにかく落ち着け結愛!」

 

刀を持って斬りかかる結愛の前に桜が立ちはだかり、蓮太郎は後ろから結愛を抱え押さえつける。

もし結愛の話が全て本当なら、犯人が零である可能性は非常に高いことは素人でもわかる。

しかし、零に自覚がないことや、結愛が今正常な判断ができていないことから信憑性は100%ではない。

しかし、普段から冷静な判断をしている結愛が嘘をつくとも思えない。

何とも判断が難しかった。

 

「そうかよ…」

 

それを聞いた零は目を閉じる。

すると、周りの空気が凍りついた。

 

『殺気』

 

この世の物質でないそんなものでは空気の温度は変化しない。

しかし、零がそれを放出した瞬間からその周りにいる人間全てが寒気を覚えた。

本当の強者の威圧。これがそれほどまでに恐ろしいということが痛感できる光景に、蓮太郎も夏世も唖然とする。

 

「桜、蓮太郎、もういい…離れろ…」

 

「ダメだよ!ここで私が退いたら、2人とも戦っちゃうんでしょ!?」

 

「うるせえな… これは「命令」だ。邪魔だっつってんだよこの役たたずが!!さっさと夜桜と代わりやがれ!!」

 

「…っつ!? 酷い…酷いよ零………」

 

ボロボロと泣きながら桜は2人のまえから離れた。

片目の緑色の輝きが消え、髪色が紫に変化。

どこから取り出したのかコスチュームが変化し、黒のマントを羽織ると、人格が変更され夜桜が現れる。

 

「あのですね零! 私なら何でもホイホイ言う事聞くと思わないでください!何で桜に酷いこと言うんですか!」

 

「こ、これが二重人格のもう一つの方ってやつか…」

 

夜桜は登場から物凄く不機嫌だった。

そりゃ、自分の片割れが酷い目にあえば当然そうなるだろう。

蓮太郎の存在に気づくとすぐに我に帰り冷静に戻るが、それでもやはり納得はしていないようだった。

 

「悪いな… けど、身内同士での殺し合いなんざ、桜には見せたくねぇ…それだけだ。」

 

「ホント不器用ですね…貴方って人は…」

 

「それをお前にだけは、言われたくねえな…」

 

「殺し合いって…嘘だろ?」

 

「夜桜、二人の動きを止めろ。」

 

「了解です。申し訳ありませんね、里見さん、千寿さん。少し大人しくしててもらいますよ。」

 

(本当に…何でいつも私がこんな役ばかり…)

 

夜桜の周りから黄色の気体が現れると、それがどんどん広がっていく。

 

「強力な神経毒ですか…」

 

「麻痺の霧(バインドミスト)といいます。大脳と運動神経の繋がりを一時的に全てシャットアウトする猛毒薬ですので、抗体のない人間が吸い込めば指一本動かすことはできません。ですが安心してください。首から上は動かせるように調整しておきましたから会話くらいならできます… 氷雨のように口からブレスを放てる化物なら話は別ですが、そうでないのなら暫くそこで寝ていてください。」

 

「くそっ… 目の前で止めなきゃ行けないことが起こるって分かってるのに、なんで…」

 

そのまま地面に倒れる蓮太郎と夏世。

結愛は夜桜が現れた瞬間するりと蓮太郎の包囲網を抜け木の上に飛び移り、気体を吸うのを避けていた。

零と紗雪には効かないのか、全く気にした様子はない。

蓮太郎は凄く悔しそうな顔をするが、夏世は特に何とも思ってなさそうな表情で床を舐めた。

短い時間だったが、結愛と仲良さそうにしていた蓮太郎の説得がミリ単位でも効果がないのだ。

自分が何をしても無意味なことが既に理解できていたのだろう。

 

「トップの命令は絶対ですから… とはいえ、零が戦闘をするなら私達は暇ですね… 紗雪は借りてても文句はないのでしょう?」

 

「………好きにしろ。」

 

ここで夜桜が初めて笑みを浮かべた。

恐らく、何かが上手くいったのだろう…

 

「そういうことですか、流石ですね…」

 

「まだ私は何も言ってません。にも関わらず、私の考えが読めたなんて相当頭が切れるんですね、千寿さんは…」

 

「どういうことだ?」

 

「私は里見さんと千寿さんを拘束しろと命令は受けましたが、私と紗雪はそのような命令を受けていない。つまり、私達は動いてもいいという事です。教えてください里見さん、誰ならこの状況を止められますか? 紗雪がいればどんな人間でもすぐに呼べますよ?」

 

「そんなやついるわけ……… いや、いる!」

 

「それは一体…」

「名前は朝山蓮斗。俺と同じ警備会社所属で、結愛のプロモーターだ… あいつならもしかして…」

 

「補足します。朝山さんは、現在この未調査領域のどこかにいます。特徴は赤い髪に赤い刀。身長は高めで、藍原延珠という里見さんのイニシエーターを連れているはずです。」

 

「他に手段がない以上、その人に掛けるしかないようですね。紗雪、私からの命令です。」

 

「兄さんからの命令さえなければ問題はありません… では、行ってきます。」

 

先程から殆ど会話に参加していなかった紗雪は夜桜の二言で信じられないくらいの速度で飛んでいった。

あれが紗雪の能力なのであろう… 速さを得意分野とする延珠と比較しても恐らく早い。

蓮太郎は最初夜桜に憎しみの感情を抱いたが、今はその真逆だった。

 

「アンタ…優しいんだな…」

 

「やめてください…恥ずかしいですから… 私は、これがベストだと判断したまでです…」

 

「できればこの毒も消してくれるともっと優しいんだけどな。」

 

「調子に乗らないでください。ダメですよ?命令なんですから… それより、二人の戦闘が始まるみたいです。こればかりは、避けられそうにありませんね…」

 

夜桜は視線を零と結愛に向ける。

その視線を追うと、今にもどちらかの命が消えるのではないかというほど凄まじい殺気を放つ二人が対峙していた。

あの様子だと、言葉での和解は不可能だったのだろう。

 

「俺は違うと何度も説明はした。これで聞けないってんなら、少々痛い目は見てもらうぞ?」

 

「貴方の言葉なんか聞きたくもない… 御託はいいですから、せいぜい私に瞬殺されないように足掻いてみてくださいね…」

 

結愛はそういうと刀を一度納刀する。

おそらく『あの技』の発動条件を満たすためだろう。

既に戦いのゴングは鳴った。どちらが先に攻撃を仕掛けるか分からない状態で結愛の方を見ると、僅かに手元が震えている。

対峙している以上、零の放つ威圧感がどれほど恐ろしいかは結愛自身が一番わかっているのだろう。

また、犯人だと断定している結愛にとっては、本人にとって最強の師範を殺した相手。

間接的にだとしても、最強のさらに上を行く存在だとするのならば、恐れずにいられるわけがないのだ。

 

「朝山式抜刀術・一ノ型・隼!」

 

モーション的に先に動きを見せたのはやはり結愛だった。

零は左腕を硬質化させると、小比奈の小太刀を受け止めた時のように自分の体に刀を刺して受け止める。

手加減しているのか、生身状態の右腕を使ってゼロ距離にいる結愛を弾き飛ばすことでカウンターをした。

 

「効きゃしねえよ… それが全力か?」

 

「くっ…」

 

相手の技を全て受け止め、尚且つ平然としている。

こうすることによって、相手は自分の持ち技が相手に通用しないのだと錯覚し、向こうから勝手に折れてくれる。

また、折れなかったとしても攻め方が単調になるなど何らかの影響で支障は出てくるだろう。

これが、ディフェンスタイプの戦闘スタイルの理想形。

能力からして想像はつくが、零もディフェンスタイプのプロモーターなのだ。

結愛は木を上手く蹴り、ノーダメージで地面に着地する。

隼はその恐ろしいスピードと自分の全体重をかけて攻撃するため、結愛の持ち技の中でも威力が高めの技。

これでダメージ0となれば、結愛の戦闘内容はかなり限られたものとなってくる。

 

「今度はこっちから行くぞ!黒龍棍!」

 

零の右腕が黒い鉄の棍棒に変化する。

すると、如意棒のようにそれが伸びて結愛に襲いかかった。

 

「この攻撃力クラスでこの速度なんてなんてデタラメな…」

 

結愛は抜群の反射神経でなんとか躱すが、零は一度しまい、また突き出す。

これを繰り返し、連続攻撃のように黒龍棍発動。

結愛に対し容赦のない猛撃を放つ。

 

「零の技は一体なんなんだ?」

 

「…そうですね。里見さんは零と仲が良いみたいなので教えてもいいでしょう。 彼の一番の持ち味、それは体内に宿したバラニウム金属を自分の思うがままに変形させ、武器とすることが出来るという点にあります。」

 

「体内にバラニウム!?…当然、機械化兵士なんて単純なオチじゃないんだろうな…」

 

「ええ、違います。その詳しい理由は私も知りませんので詳しいことは言えませんが… 彼の血は普段は赤いですが、硬質化する時はバラニウムと動揺真っ黒に染まるため、私達は黒血と呼んでいます。黒血は、バラニウムや超バラニウムなんかとは比較にならないほど強力…この世界であのバラニウム金属を持つ者は零しかいません…」

 

「右手だけしか変形できないわけじゃないぜ?」

 

「がぁぁっ!」

 

零は左手も同様に変形させると、追い込んだ結愛に挟み撃ちのように黒龍棍を命中させ吹き飛ばした。

技が命中した結愛はくの字に飛ばされ、後方の木に衝突すると、その木が玩具のように折れる。

破壊力は充分なんてレベルではない。超イニシエーターでなければ、一撃でノックアウトクラスだ。

 

「零しか持ってないってことか?」

 

「正確には、体内にバラニウム金属を宿すことのできる朝霧家の人間しか所持できないのです。とある研究所が、ガストレアを滅亡させる為に伝説の空想動物「ドラゴン」を作り上げました。そのドラゴンはガストレアの天敵であるバラニウム金属でできており、その金属は他でもない零から抜き取ったもの… そんな人口造龍バラニウムドラゴンの母体となった龍バラニウムこそ、零の持つ唯一であり、最大の武器というわけです。」

 

「龍バラニウム… それが、零の鮮血と混ざりあったことで黒くなり黒血として零の体内を循環している。 また、その成分量を自由に調節できるから、鮮血になったり、黒血になったり、今みたいな武器になったりするってことか…」

 

「はい、大正解です。長々と説明しましたが、要するに七皇の頂点に相応しい、ガストレア殺しのデタラメな能力と思ってください。あの成分は超バラニウムの数倍ガストレアが嫌いますから、あれを受けた結愛さんはたまったものではないでしょうね…」

 

夜桜の言う通り、一撃を受けた結愛は動きが鈍り、二撃、三撃と零の黒龍棍を受ける。

 

「うっ…ぐ……」

 

「お前にも思う所はあるんだろうが、生憎人違いだ。やめておけ、これ以上続ければ死ぬぞ?」

 

「それでも私は… 事件の犯人だけは許せない…例え刺し違えてでも貴方を殺す! 朝山式抜刀術・三ノ型・絶対零度!」

 

反撃の為に渾身の一撃を放つ結愛。

対延珠戦で使った、命中すれば相手は必ず氷漬けになるデタラメ技である。

その効果を知らない零は、左腕を硬質化させると先程同様技を受ける。

しかし、絶対零度は相手に致命傷を与えられずとも命中さえすれば効果は発動する。

その効果により零は氷漬けになり、結愛が有利のように見えた。

 

「よし、技が効いた… 人を舐めた戦闘スタイルなんかとってる罰ね…」

 

お前も人の事を言えないだろう…

蓮太郎がそう言わずとも、その言葉を代弁するかのように零を凍らせた氷にすぐにヒビが入る。

黒龍棍が氷を突き破る。変化させているのは両手両足で、その四本の棍棒が順々に氷を突き破ると、最終的に氷を破壊した。

 

「残念だったな… 俺の黒血はどんな手を使ってでも止められない。たとえそれが、マイナス273℃の冷気であってもな…」

 

「そんな… 絶対零度も効かないの!?」

 

「黒龍剣!!」

 

「四ノ型・護氷壁!!」

 

次に零が右手から生成したのは真っ黒はチェーンソーのような武器。

名前からして、あれが刀に該当するものだろう。

振りかぶって結愛に接近すれば、結愛は護氷壁を発動し、自身と零の間に巨大な氷の壁を生成する。

厚さはおよそ1m。常人ならヒビすら入れることは叶わない圧倒的な防御壁だが…

 

「………」

 

あって欲しくないと願った状況。

零のもつ黒龍剣は本物のチェーンソーのようにブイイイインと音を立てて回転を始める。

血の流れの変化を自由に変化させることのできる零にとってこの程度は朝飯前だが、夜桜達の会話を聞いていない結愛にとってはただの絶望。

その威力は言うまでもなく、僅か10秒も持たないうちに護氷壁を両断した。

 

「そん………な………」

 

「終わりだ…」

 

そのまま剣で一突きにしようとすると、我に返る結愛。

 

「やっぱり強い… でも、私は諦めない!もう一度、もう一度蓮斗さんが本当の笑顔を見せてくれるのなら、私はどんなことだって成し遂げてみせる!」

 

「初対面の俺でも、アンタがいい奴なのは充分わかるんだけどな… 和解できないのなら意味はない。俺にも俺の目的がある以上、敵と認識したものには容赦はしない…」

 

再び武器を構え合う2人。

 

「…時間の問題ですね。いつ結愛さんが負けてもおかしくない… 紗雪は何をしているんですか…」

 

「あの速度でも、見つけるのに時間がかかったり、何かトラブルに巻き込まれてるってこともあるだろ… 無事に間に合ってくれればいいが…」

 

そんな話をしていると、零達の戦闘している位置の遥か後方で夜桜にとっては見慣れた技を目撃した。

 

「福音の魔弾(ヴァイス・シュヴァルツ)… やはり戦闘中でしたか…」

 

「もう来れそうなのか?」

 

「ええ… 零がもう少し手加減をしていてくれればいいのですが…」

 

しかし、夜桜の思いも虚しく事態は悪化する一方だった。

 

「ここまで殺意を向けられた相手の心を折るのに苦戦したのは始めてだな…」

 

「お褒めに預かり光栄ですね殺し屋… でも、表現に語弊がありませんか? 心を折る?殺すの間違いでしょう…」

 

「つくづくムカつく奴だな… お前、煽りの才能あるよ… その言葉に免じて、本気で潰してやるから覚悟しやがれ!!」

 

先程とは桁違いの殺気を零が放つ。

その戦闘シーンを何度も見てきているからか、夜桜はかなりまずいと呟き舌打ちをしていた。

 

「ブラッディ・バンカー…」

 

「なっ!?」

 

当然結愛の足元に穴が空き、落とし穴に落ちるかのように地面に埋まる。

こうなってしまえばもはや致命的。

脱出するにも上に敵がいるので簡単には行かず、穴の上から下に攻撃を注がれたら回避はできない。

 

「お前が俺の血を流したあの時点から、負けは決まってたんだよ…」

 

零の黒血の特性。

それは体外に放出されてしまっても、すぐには死滅せずその効力を維持し続けられる点にある。

自分の腹を刺された時に失った大量の血液を起爆材のように利用し、結愛がそこに近づいた瞬間巨大な針のように変形。

自分の受けたダメージすらも利用する計算された一手だ。

零は更に黒龍剣で自分の左手首に切り込みを入れると、そこから流れ出る血で針を生成していく。

 

「ブラッディ・ニードル!!」

 

結愛の氷槍の雨の如く、龍バラニウムの漆黒の雨が降り注ぐ。

穴にはまっている為回避は不可。護氷壁は自分の視界に地面が見えること、刀を地面に刺すことが発動条件の為、発動も不可。

打つ手のなくなった結愛は、その猛攻を直で受けるのであった。

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 


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