ブラック・ブレット 漆黒の魔弾   作:Chelia

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紗雪の説明がかなり長いですが、無理に全部覚える必要はないです。
細かい設定を気にしない人は飛ばし読みを推奨します。
あと、今回もメタばっかです(^_^;)


世界最強のイニシエーター

「先手必勝だ!」

 

相手は感染爆発したてで戦闘準備に入っている状態だ。

なら、今なら一方的に叩ける可能性もある。

蓮斗は真正面からのジャンプ斬りを選択し、ガストレアに襲いかかった。

技は命中、頭に刀が突き刺さるが全く貫通しない。

ガストレアの戦闘準備が整い、カウンターが来そうなのを予測すると追撃をさっさと諦め、後退する。

 

「くそっ… 外見に反して滅茶苦茶かてぇなこいつ…」

 

「はぁぁぁっ!」

 

延珠はというとその素早い速度を生かし、敵の注意が蓮斗に向いているうちに背後に回っていた。

後頭部目掛けて飛び蹴りを繰り出し、こちらも命中。

しかし、ダメージは与えているものの、どう見ても致命傷には見えなかった。

 

「延珠ちゃん避けろ!」

 

蓮斗の言葉から1秒もしないうちに、ガストレアの拳と言う名の鉄槌が振り下ろされる。

延珠は蓮斗の隣まで後退すると、唇を噛みしめた。

 

「ぐぬぬ…バラニウム製の武器を使ってるというのに、妾達の攻撃が全然効かないぞ…」

 

「スピードをある程度捨てて、攻撃と防御に特化したガストレアだな… ちくしょう…埒があかねぇ…」

 

ガストレアがその剛腕を再び2人に向けて振り下ろす。

蓮斗も延珠も軽々と躱すが、その一撃は木々を2、3本粉々に粉砕した。

あれを受ければ一撃で戦闘不能になるだろう。

 

(ちくしょう… 蓮太郎のイニシエーターを傷つけるわけにはいかないが、こんな堅物どうやって倒しゃいいんだよ…)

 

討伐方法が思い浮かばず、逃走も視野に入れた時、白と黒の銃弾がガストレアに命中し、後方に吹き飛んだ。

気づけば、蓮斗達の後ろから小さな影が1人歩いてくる。

 

「…誰だ?」

 

「天童民間警備会社所属、朝山蓮斗…同じく、藍原延珠で間違いはありませんか?」

 

身長は延珠ほど。

ショートカットの白髪が特徴的で、両手には先程の銃弾の色と同じ白と黒の二丁拳銃が、両足にはがっしりと重そうな白と黒のレガースが装備されている。

単身で乗り込んできたあたり、相当優秀なイニシエーターだろう。

 

「その通りだ。そういう可愛いアンタは何もんだい?これ以上の新手は勘弁なんだが…」

 

「私は★3(ブラックナンバ-スリ-)の朝霧紗雪です。★2、夜桜の命を受け、あなた方二人をとある場所に案内するのが今の私の任務です。」

 

「なっ、七皇だと!?」

 

「朝霧ということは、お主は零の妹なのか?」

 

「お察しの通りですよ藍原さん。詳細を説明したいのですが、生憎非常に時間が足りません。どうでしょう、そこのガストレアは私が始末するのでその代わり、あなた方にご同行願うというのは?」

 

「どーにも唐突過ぎて信憑性に欠けるな…こっちには蓮太郎のパートナーの延珠ちゃんがいる。迂闊にホイホイ聞いてやるわけには行かねぇ…」

 

「私が本当に七皇なのかどうかは、これから身を持って知るので問題ないでしょう。それに、私の依頼を蹴れば、間接的に貴方は貴方の一番大切なものを失う。貴方の身近に今いない最も大切なもの… 想像はつくでしょうが、この話を聞いた上で私の依頼を蹴れるほど、貴方は冷徹な人間ですか?」

 

「…ゆあちーに何かあったのか?」

 

少し考え、その結論に至った蓮斗が心配そうに尋ねるとその悪い予感が的中するかのように紗雪が無表情のままこくりと頷く。

 

「彼女を助けられるのは貴方しかいないと、里見さんはおっしゃっていましたよ…」

 

「蓮太郎も無事なのか!?」

 

「ええ、今のところは、ですが…」

 

「やれやれ…そんな話をされたら、俺は従うしかねぇな… けど、条件は呑んでもらう。七皇の力がどの程度なのか、俺に見せてくれよ?」

 

「………」

 

紗雪は返事をするわけでもなく、ただ黙って目を閉じガストレアの方を向いた。

ガストレアは先程頭を撃ち抜かれふらふらしていたようだが、丁度自動回復が済んだのか再び凶暴な雄叫びをあげ、3人の方に向く。

 

この少女は一体どんな攻め方をするのだろう…そう考えて紗雪を再び見ようとした蓮斗達の前には、既に対象の姿はなかった。

 

「き、消えた?」

 

「違う…あまりにもスピードが早すぎて妾達の目で追えなかったのだ…」

 

スピード型のイニシエーターである延珠がそういうのだ。恐らく彼女もスピード型のイニシエーターなのだろうが、その速度が延珠の比ではない。

しかも、足に仕込まれているバラニウムの重りも延珠の比ではない。

靴に鉛が仕込んであるだけならまだしも、紗雪の場合は足全体をレガースが覆っている。

あのサイズなら2つ合わせて30kgはくだらない。

自分の体重と同じ重さの重りをあの速度で軽々と操っているのだ。

 

紗雪は先程延珠がとったのと同じ戦法で背後を奪うと、後頭部にかかと落としを決める。

 

「スコール!」

 

右足に装備された白のレガースが金色の残像と共にガストレアに突き刺さると、あれだけ堅かったガストレアが玩具のように地面に叩きつけられる。

 

「なんなのだ…あの攻撃力は!」

 

「ステージ3… その程度ですか? これなら、私は銃弾を一発も撃たなくても勝負がついてしまいますよ?」

 

相手を雑魚と判断した紗雪は、左足で相手を回転するように蹴りあげると今度は体長4mの巨体が上空に吹き飛ぶ。

 

「といっても、手の内をある程度明かさなければ信憑性が得られなさそうなので…!!」

 

空中に浮いてしまえば回避することはできない。

紗雪はそこに二丁拳銃を向けると、トリガーをゲームのAボタンのように激しく引きまくり銃弾を速射する。

通常市場に出回っている拳銃とは明らかに違うようだった。リロードする様子もないし、何しろ銃弾の色が白と黒で、一発一発がレーザーでも放たれたかのように弾道線に白と黒のラインが数秒間残っている。

どういう原理でできているのだろうか…

 

空中で蜂の巣にされたガストレアは、もはや動くことも許されなくなったかのように地面に堕ちる。

それはもはや敵ではなく、ただの肉の塊だった。

 

「終わりにしましょう。」

 

紗雪はそういうと、両銃をクロスさせるように持ち高く跳躍する。

そして、白い銃からは白の、黒い銃からは黒のエネルギーが銃口に集まっていく。

よくゲームであるチャージショットのような構図だ。その様子からしてあれが紗雪の必殺技の一つであるのは間違いない。

 

「(うたまる…アルキメデス…行くよ…)福音の魔弾(ヴァイス・シュヴァルツ)!!」

 

エネルギーの放出を今か今かと待ち望む2発の銃弾が放たれる。

光と闇。その二つを連想させる魔弾は空中でクロスし、そのままガストレアへと直撃した。

 

「ぐおおおおおおお!!」

 

(俺は結局…何がしたかったんだ…)

 

ガストレアは跡形もなく消えた。

伊熊将監の思考も誰にも伝わらないまま消えた。

しかし、彼の言葉を借りれば強いものが正義の世界。それを一番よく知っている彼は反論することなく、ただ自分の行ってきた行為を振り返りながら、この世界に別れを告げるのであった。

 

「さて、急いで向かいましょう… 全てが手遅れになる前に。」

 

「本物の強さだった… けど、なんで初対面の俺たちにこんなに親切なんだ?」

 

「依頼だからです。それ以上の私情は一切ありません。」

 

(本当は、兄さんに犯罪者になって欲しくないからなんですけどね…)

 

「そうかい…」

 

「蓮斗…妾はこの人を送ってくる。だから蓮太郎と結愛のこと、任せたぞ!」

 

「あ…お、おうよ!」

 

途中から現れた紗雪の圧倒的な印象によりすっかり忘れていたが、ヘリの操縦者をモノリス内に送らなければならなかった。

といっても、延珠の速度ならすぐに行って帰ってきてくれるだろう。

 

「なら、これをお持ちください。里見さんの座標が表記された端末です。藍原さんは、この場所に戻ってきていただければ結構ですので…」

 

そのくらい想定済みと紗雪が端末を渡すと、延珠は飛んでいった。

 

「では、私に捕まってください。あまり時間はありませんよ?」

 

「わかった… ………無事でいてくれよ!ゆあちー!」

 

こうして紗雪に連れられ、蓮斗も結愛の元へ向かっていく。

 

★side 蓮太郎★

 

※時間軸がヘリ爆発まで巻戻ります。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

「きゃぁぁぁっ!!」

 

悲鳴を上げる蓮太郎、ミニスカートの裾を抑えながら悲鳴を上げる結愛、無表情で落下していく夏世。

先程のヘリの爆発により、蓮斗達との距離がどんどん開いていく。

 

「仕方ないですね… 朱雀には期待できませんし、みんなで死にますか…」

 

「夏世!こんな時に無表情でそんなこというな!こええよ! お前の頭脳で何か策は思い浮かばないのか!?」

 

「そういう時はこう言うんですよ?助けてー!夏世モーン!」

 

「〇ラえもんかお前は!しかも語呂が悪すぎる!」

 

「助けてー!夏世モーン!」

 

「言うのかお前は!!」

 

泣きながら夏世の冗談に付き合う結愛。

どうやらパニック状態に陥り、冗談かどうかすらわかってないようだ。

 

「しょーがないなー!」

 

「…まだ続けるのか?そのくだり…」

 

「いえ、飽きたのでやめます。結愛さん。貴女が以前見せてくれた護氷壁、あれで生成できる氷の形はどれくらいの応用が効きますか?」

 

「え、ええと…私の知っている形なら何でも… 場所も目視可能距離であればどこからでも生成できます…」

 

「なら、地面からここまで続くように氷のジェットコースターステージを作ってください。滑って降りましょう。」

 

「けどそれじゃ、氷で滑る加速度と重力加速度で俺たちが潰れちまう …」

 

「その勢いを殺すのは、男である里見さんの出番では?」

 

そう言って夏世はバラニウム性のナイフを蓮太郎に渡す。

空中で渡せるのかって?

たまたま近くにいたんだよ!細かいことは気にするな!

とにかく、地面も近くなってきて文句を言ったり、代案を考えたりする時間はもうない。

IQ200越えの夏世の提案なので、成功率は少なくとも0ではないのだろう。

結愛は雪月花を抜くと、槍投げ選手のように地面に向かってその刀を投げる。

 

「朝山式抜刀術・四ノ型・護氷壁!!」

 

地面に刺さった刀の側から氷の滑り台が天へ向かってグイグイ伸びてくる。

 

「よし、飛び移るぞ! 結愛!夏世!俺に捕まれ!」

 

何とか空中で3人が固まると、蓮太郎が落下軌道を変え、アイススライダーに乗る。

ここからは、蓮太郎の技量次第だ。

強すぎたらナイフが折れる、弱すぎたら勢いが殺せなくて死ぬ。

現在の地点から落下地点までの距離を考え、スライダーにナイフを突き刺し、適度な力で滑る加速力を軽減していく蓮太郎。

流石と言うべきか、3人とも無事に地面に降りることができた。

 

「生還です!!」

 

「ふぅ… お陰で助かったぜ、サンキューな、夏世。」

 

「いえ、あなた方には色々酷いことをしてしまいましたし、お詫びの一つにでもなれれば幸いですよ…」

 

無事に生還はできた。

しかし、失った物も多い…

蓮斗達と離れ離れになってしまったことはもちろん、生存を優先する上で邪魔と判断した蓮太郎は落下中に七星の遺産を投げ捨ててしまった。

あれがなければ依頼達成にはならないので、次の目標は七星の遺産の回収と、蓮斗達との合流になるだろう。

爆発等が起こっていないことから、遺産の中身が爆弾などの危険物でないことが判明しただけでもプラスとしておこう。

 

「蛭子影胤に蛭子小比奈…あの二人は相当強いです…できれば先に回収して、戦わずに帰還したいところですね…」

 

「だな…急ごう!」

 

★side 零★

 

再び時間軸が巻戻ります。

 

未調査領域

 

ここで七星の遺産を手に入れるため、漆黒の騎士団メンバーも当然活動は開始していた。

零の人選により、今回のメンバーは零、桜、紗雪の3人。

相馬、セレーネのペアは今回の事件の真相を掴むため別行動。恭介一人に留守を任せればどうなるかわからないので、氷雨はお留守番である。

というわけで、蛭子影胤の動きを止め、遺産を回収するのはこの三人。

★(ブラックナンバ-)は序列に等しい強さを現しているが、現在のところナンバーが若い順に七皇へ加入している順ともなっている。

この三人は、漆黒の騎士団開設時から一緒の、超古参メンバーなのだ。

 

「わーい!零と仕事~♪零と仕事~♪」

 

「あのなぁ桜…ここはモノリスの外なんだからもう少し警戒をだな…」

 

「いいんじゃないですか?私たちや夜桜さんもついていますし…」

 

「紗雪、桜が一向に成長しない一番の原因は俺達がそうやって甘やかしてるからだ。できるだけ戦闘面も夜桜に頼らないで、多くの経験を積んで欲しいところなんだけどなぁ…」

 

「二人ともつまんない話しない!折角零がこの三人を選んだんだから、もっと楽しまないと!」

 

「確かに、この三人で動いてた頃は懐かしいな…けど、今は仕事中だしつもる話はまた後だ。」

 

「ちなみに、本作6話、桜と夜桜の回想シーンの続きは枠が足りないとのことで先延ばしだそうです。個人的にはここが入れどころだと思うのですが…」

 

「ん?6話?何のこと?」

 

「って、うぉいいいいい!!!!メタるんじゃねぇ!大体紗雪は今感情ない設定だろうが!」

 

「はい、ありませんよ?というより、設定とか言っちゃうあたり、兄さんも微妙にメタってる気がしますが…」

 

「感情はなくても悪意はあんのかよ… もう頭痛くなってきた… これ、番外編かなんかか?」

 

「2人ともさっきから何の話してるの?」

 

「お前は知らなくていい…」

 

「はーい!」

 

適当に桜をあしらう。

何だか戦っていないのに紗雪のせいでどっと疲れが溜まった気がする。

ウチの七皇は何でこんなにメタ野郎ばっかりなのだろうか…

そういえば、先程紗雪達は急いでいたようで大して手の内の説明をすることができなかったのでこの場を借りて少し補足しておこう。

 

朝霧紗雪。

 

彼女の最大の特徴は、世界でただ一人、人間によって生み出された人口のイニシエーターであるということ。

ご存知の通り、元々は普通の人間であったが、体内のほとんどがバラニウム金属、ガストレアウイルスの両方で埋め尽くされてしまっているため、脳の一部が欠落、身体の成長も止まってしまっている。

零のことは、記憶の鱗片に残っているのか零の言うことだけは本能的に従っているが、それ以上の感情はない。

尚、体内侵食率は限界値の49.9%である。

 

次に先程見せたバトルステータス。

プロモーターやイニシエーターには、大きく分けてアタックタイプ、ディフェンスタイプ、スピードタイプ、トリックタイプの4つのタイプが存在する。

 

今まで戦闘を行ったキャラクター達の一部を分類すれば、一撃に特化していて、逆に防御が薄い蓮太郎はアタックタイプ。

素早い動きで敵を翻弄する延珠はスピードタイプ。

護氷壁などの防御手段を多く持つ結愛はディフェンスタイプ。

頭脳を利用し的確に勝利を掴み取る夏世はトリックタイプである。

トリックタイプは様々なパターンがあるので一概には言えないし、相馬のようにどのタイプにも所属しない例外「オールマイティ」タイプというのも存在するが、ここではその説明は省こう。

 

さて、そんな様々ある戦闘スタイルの中で紗雪はスピードタイプに分類される。

体内侵食率やバラニウムうんぬんの話から推定できるように、彼女は世界最強のイニシエーターであって、彼女を越えるようなイニシエーターは恐らく一人もいないだろう。

 

モデル・キメラの因子を持つが、その因子はキメラだけでなく七つの超ガストレア因子が結合した七重因子結合…

超ガストレアウイルス因子を一つでも持っていれば結愛クラスまで強くなるとすれば、破格の強さであるのは言うまでもない。

紗雪の持つガストレア因子は以下の通りである。

・キメラ

・プレヤデス

・ガーゴイル

・スコール

・ハティ

・ヒドラ

・???

 

次に使用武器の説明です。

紗雪の武器は白い銃、黒い銃、白いレガース、黒いレガースの4つでこれら四つを華麗に使いこなすことから双銃双蹴(ソウジュウソウシュウ)のイニシエーターと呼ばれている。

 

白き銃の名は「うたまる」

プレヤデスの因子を利用していて、バラニウム弾を発砲しているにも関わらず白銀のレーザーのような弾が相手を襲う。

 

黒き銃の名は「アルキメデス」

こちらはガーゴイルの因子を利用していて、漆黒のレーザー弾が…

 

白きレガースの名は「スコール」

ハティと対をなす存在で、北欧神話に存在する狼の一匹。その圧倒的はスピードは太陽すらも追い越すと言われている。

 

黒きレガースの名は「ハティ」

スコールと対をなす存在。月をも追い越す速度。

このスコールとハティ、そして紗雪の技量…これら三つが揃った時、音速や光速などもっての外、万物の速度を凌駕する「神速」が生まれるのである。

 

簡単な設定、所持武器については以上。

紗雪に関しては他にも様々な設定がありますが…

眠くなりそうなので本編戻ろうね、うん…

 

未調査領域を歩く零達3人。

全く宛がなく適当に歩いているのかと言われればそういうわけでもなく、相馬からの情報によりこの樹海の北エリアにある湾岸に影胤の反応、またその奥に協会があり、恐らくそこでステージ5召喚の儀式がなされるのではないかという予想が立てられている。

というわけで、北を目指して歩いていると北の方から氷の滑り台が生成されていくのが視界に入った。

 

「うわー…すっごいねー… ああいうことできちゃう子がいるんだ…」

 

「…能力者。」

 

「だな。って!あれを滑ってるの蓮太郎達じゃないか!?」

 

大掛かりな作戦かと思いきや、単なるピンチだった事に驚愕すると、3人は慌てて走り始めた。

 

★零&蓮太郎 side★

 

ここで二つの視点が合併。

 

「落とした方向は確か北の方だったよな?」

 

「はい、上空から見たとき湾岸エリアが見えましたが、恐らくそこまでは行ってないです… おそらく、樹海のどこかかと…」

 

「対して延珠やさん蓮斗さんは南の方向へ飛ばされています。優先順位の悩みどころですね…」

 

「蓮斗さんなら大丈夫ですよ! ああみえて頑丈で粘り強いですから、きっと延珠さんを連れて戻ってきてくれると思います!」

 

「ま、結愛が言うなら間違いないか… んじゃ、俺達は先に遺産を回収しよう。」

 

そう言って、遺産が落ちた方向に向かおうとすると、後ろから何人かの声が聞こえてきた。

と思えば聞きなれた声である。

 

「おーい!蓮太郎ー!大丈夫か!?」

 

「零? あ、ああ… さっきのやつ見られちまったのか… 生き残るためとはいえ、ちょっとばかし目立っちまったな…」

 

「何かあったのか?俺たちでよければ相談にの………」

 

零が話終わらないうちに鈍い音がする。

見れば、零の背中から腹にかけて見慣れた刀が貫通しており、そこから血が吹き出ていた。

 

「零!?」

 

「兄さん!?」

 

「ふふふっ…み~つけた♪」

 

貫通した刀の名は氷刀・雪月花。

それを手に持ち、悪魔のような笑みを浮かべるのは結愛であった。

 


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