プロペラの音がすぐ側で聞こえる。
翌日の朝、蓮太郎一行はヘリに乗り込み未踏査領域の上空を飛行していた。
目的はこの間見つけたガストレアの感染源を見つけ出し討伐。そして、七星の遺産を影胤より先に手に入れることである。
この間戦ったガストレアはモデル・スパイダーだったため、今回の相手もそれに似た姿をしていることが予想されるが…
「どうだ蓮太郎?見つかりそうか?」
「流石に樹海が広がってるから地面はほとんど見えないな… やりたくないけど、もう少し高度を下げてもらうしかなさそうだ…」
ちなみに、ヘリに乗る直前に菫と、蓮太郎と延珠が普段からお世話になっている司馬重工によって武器の補充は済んでいるので蓮太郎と夏世の装備はバッチリである。
それぞれが自分の武器を握り締め、戦闘態勢に入っていた。
「れんたろー?あれは何のガストレアなのだ?」
延珠が指差す先を見ると、ちょっど雲に隠れるように巨大な黒い塊が浮いている。
空母型ガストレアか…
そう思い軽く流そうとしていたが…
「なんだ…あいつは…」
良く見れば、明らかに飛行するに向いていない二等辺三角形型の体つき。飛んでいるのではなく、浮き袋のような物を使って浮いているように見える。
「そうか!あいつだ!」
何かを思いついたように蓮太郎が手を叩く。
蓮太郎は生物学を趣味としているため、生き物の生態にある程度詳しい。
延珠が見つけた対象は何本もの長い脚が使われていないかのようにぶらんと垂れ下がっていた。
あれは進化の過程で退化したものではないだろうか?
そう考え込むことでどんどん想像力が広がっていく。
南米の方に、蜘蛛の巣を絡ませ網を作り、風とともに飛んでいく小蜘蛛がいる。
なら、なぜパラシュートのような形でなく二等辺三角形なのか。
答えは浮遊ではなく滑空である。パラシュートではなくハンググライダーである。
その原理を応用し、上空での移動を可能にしているのだとしたら政府が発見できないのも納得がいった。そしてなにより…
「突然変異してるから、ステージ3以上なのは確定。ハンググライダーを人の脳からインプットしているのだとしたら最悪の場合、超ガストレアという可能性もありか…」
「空中ですし、長期戦はできませんよ?」
「何とかしてみんなの攻撃を一度に当て、一撃で沈めるのがベストだな。」
「お、なら俺の技にとっておきがあるぜ?」
蓮斗が立ち上がると自分の武器である煉獄刀・焔の鞘を抜く。
朝山式抜刀術・五ノ型・朱雀。蓮斗の持つこの技は、体内に眠る炎エネルギーを爆発させ、自らの背中に炎の翼を具現化する。
強風や雨の天候では使えないし、効果持続時間も一分間と極めて短いが、その間は鳥のように空を飛ぶことが可能だという。
「蓮太郎と延珠ちゃんは俺が抱えようか… これなら出し惜しみなくみんなが全力を出せるし、一撃決めてヘリに戻るくらいなら制限時間の心配もない。どうだ?」
「それで行こう。俺と延珠が本体を叩く。蓮斗はサポート、結愛は翼の破壊、夏世は頭を撃ち抜いてくれ。」
「「「「了解!」」」」
元気の良い返事とともに作戦が決行される。
結愛と夏世が共に床に寝そべり、スナイパーライフルのスタンバイを完了させ、蓮太郎達が蓮斗に掴まった。
「いいぞ!開けてくれ!」
蓮太郎の合図でヘリのハッチが開く。
それと同時に蓮斗が朱雀を発動させた。
「よっしゃいくぜぇぇぇぇ!」
「全力だ延珠!上下花迷子バースト!!」
「はぁぁぁっ!!」
「氷槍の雨(アイシクル・ペネトレイション)!」
「一発で…確実に!」
蓮太郎はカードリッジを3つ全て開放し、最大火力の踵落とし、延珠も蓮太郎に習い、バラニウム金属の錘の入った靴を使って踵落とし。
結愛は氷柱の雨を降らせて左翼を確実に破壊、夏世はきちんとヘッドショットを決める…と全員の技が一気に降りかかった。
ガストレアは短い悲鳴を上げると破裂し、中から銀色のケースが飛び出す。
蓮太郎がそれを掴むと、蓮斗が再び二人をキャッチし、ヘリへと帰還した。
「よっしゃ!作戦成功だぜ!」
「もっと苦戦すると思ってたけどあっけなかったな…あれ以上の硬質は滑空に支障を来たすのか…」
「とにかく、上手くいってよかったです!」
結愛をはじめ、イニシエーターの3人も笑顔を浮かべる。
しかし、世の中は上手くいかないように作られていて、みんなの笑顔も一瞬のものだった。
青白いレーザーのようなものが地上から放たれるとこのヘリに直撃。
エンジンは破壊され、真っ逆さまに墜落を始める。
「うわぁぁぁぁ!」
「落ち着け、パラシュートで脱出する。急げ結愛!」
「はい!」
蓮太郎が操縦者に活を入れると、結愛が全員にパラシュートを配る。
夏世は必要最低限の装備だけを持ち、残りを全て切り捨てると全員の準備が整う。
このタイミングを見計らい、延珠が蹴りでハッチを破壊し全員が脱出をする。
「ちっくしょー…どうなってんだ?一体…」
「十中八九影胤だろうな…そう簡単には帰らせてくれないか… って、やばい!」
蓮太郎が気づいたのも束の間、先程乗り捨てたヘリが勢いよく爆発した。
後1分遅れていたなら全員死んでいただろう…とはいえ、無傷と言うわけにもいかずパラシュートで浮遊してるだけのみんなは全員爆風で飛ばされてしまった。
方向は二手で、蓮太郎、結愛、夏世の3人と蓮斗、延珠、ヘリ操縦者の3人が北と南に飛ばされた。
★side 蓮斗★
上空80mから真っ逆さまの3人。よほど爆風が強いからか蓮太郎達の姿はすぐに見えなくなってしまった。
「再発動か…あんましやりたくねぇんだけどな… 朝山式抜刀術・五ノ型・朱雀!」
焔を媒体として再び炎の翼を出現させると、1分という制限時間に間に合わせるため、延珠と操縦者を抱えて猛スピードで地上を目指す。
着地地点で木々に着火させないようにしなければならないので割りとギリギリになってしまった。
「ふぃー…危ねぇ危ねぇ…」
「けど、れんたろー達とはぐれてしまったぞ?」
「お、俺が未踏査領域に立つなんてどうすりゃいいんだよ!」
ヘリの操縦者はまさか自分が地上に降りることになるとは夢にも思っていなかったのか、かなり動揺している。
正直状況はよくない。
「とりあえず、運転手さんを安全圏まで送り届けるのが先だな… 蓮太郎達の安否も気になるし、向こうには時間差で延珠ちゃんが電話すればいいと思うぜ?」
「うむ!了解だ! ではモノリスの方に歩けばいいのだな?…っぐ!?」
「延珠ちゃん!?」
警戒を怠っていたわけではなかったが、何者かがこちらに接近していることに気づくことができなかった。
日が昇っているとはいえ、樹海の奥は薄暗い。
木の陰から手が伸びると、延珠の首を掴んで締め上げるように持ち上げた。
「同業者の民警か…殺す。」
「誰だてめぇ…」
「俺の名は伊熊将監… ここでの依頼を受けている一人だ…」
延珠を拘束した人間は蓮斗と同等、あるいはそれ以上の巨体。
その名は意外にも伊熊将監だった。
夏世のパートナーであることをこの二人は知らないし、初対面なので蓮斗は敵意を剥き出しにする。
「てめぇの事情は聞かねぇ… けど、一つだけ要求させてもらう。 延珠ちゃん、放せよ…」
そう話す蓮斗のオーラ、目つきには確実な殺気がこもっていた。
以前結愛が対峙していた時の煽りスタイルなんかよりも確実に恐ろしい。
鞘に手をかけ、余計な動きをすれば今にでも飛びかかる。
そんな猛獣のような瞳で将監を睨みつけた。
「ああん?何様だよてめぇ… この世界では強者が全てなんだ。つまり、つえぇこの俺がこのクソガキを生かすも殺すも自由ってことなんだよ!」
「がぁっ…」
将監は延珠を乱暴に振り上げると、投げ飛ばすようにして地面に叩きつけた。
地を引きずるようにしながら蓮斗の元に戻る延珠をみて、蓮斗の血管が浮き出る。
「朝山式抜刀術・一ノ型・隼!」
蓮斗お得意の速攻抜刀斬りが炸裂。確実に初対面の相手に行うことではないような行為を見て体が勝手に動いていた。
こいつがこんなことをする理由はなんだ?口では聞かないといいつつ、頭の中で予想はしてしまう。
「その剣技、その技名… お前があの小娘のプロモーターか… 」
「んだよ、さっきから偉そうに…」
将監は、その一撃をバスターソードを使ってきちんとガードする。そりゃ、一度見たのと全く同じ技なので対策も可能であろう。
蓮斗からしてみれば相手は可愛い女の子でもロリっ子でもなく、ただのむさくるしい男だ。ロリコン蓮斗の対象外である。
そういう奴には目には目を、歯に歯をだ。
手を出す相手には容赦はしない。しかし、この男を倒す理由が特になかったので今のところは自己防衛に留まる。
最も、その時間も非常に短く次の話を聞くまでの間ではあったが…
「俺はここでの報酬を独り占めするために同業者を潰していた…だが、俺の計画を邪魔した挙句俺の道具である夏世すら奪っていったゴミクズがいやがる!結愛だ結愛!あの小娘だけは俺が確実に殺す!!」
ぷっちーん。
元々、いきなり目の前に現れたこの伊熊将監という人間に苛立ちを隠せなかった蓮斗。
そして、今蓮斗の目の前にいるそいつは今自分の周りにいる大切な仲間である延珠、結愛、夏世の全員を否定し傷つけた。
特に結愛である。結愛は蓮斗のことが大好きであるように、蓮斗にとっても結愛は唯一無二のとても大事な存在…否、蓮斗の生きる理由そのものと捉えても間違いではないほどである。
その結愛に喧嘩を売る奴が現れたとなれば、蓮斗の怒りゲージがどれほどまで恐ろしく急上昇しているかなんて、わざわざ説明するまでもないだろう。
「てめぇ今なんつったよ?」
「…あ?」
「目の前で延珠ちゃんを傷つけただけでなく、ゆあちーやかよちーの事も侮辱したな… 挙句の果てに殺す?それを俺の前でよく言えたな!殺していいのは殺される覚悟があるやつだけってことをこの場で教えてやんよ!!」
「おもしれぇ…昨日も今日も、散々コケにされてむしゃくしゃしてんだ。この俺の「最後の」力、見せてやるぜ!」
「延珠ちゃんは操縦者さんのことを護衛しててくれ。こういう大人の喧嘩は、兄ちゃん一人で充分だからよ… 」
「…承知した。」
言われずとも、延珠は蓮太郎にイニシエーターは人間を倒すための兵士ではないときつく教えられ、蓮太郎の許可なしに人を襲うことを禁止されている。
本来なら、蓮斗も止めるべきなのだがコンビを組んでるわけでもなく、また問題が延珠だけでなく結愛や夏世も絡んでいるので強く言うことができなかった。
言われたとおりに少し距離を置くと、操縦者の前に立ち周囲を警戒する。
二人はというと、既に互いの武器を抜刀し戦闘態勢に入っていた。
「俺の隼が止められた時は驚いたが…なるほど、ゆあちーの技を見たってことか。」
森林や樹海など、木々が広がるエリアでの戦闘は蓮斗単体ではかなり不利となる。
理由は簡単で、周りの木に自分の炎が引火してしまうと山火事や森火事を起こしてしまうからだ。
いつもは隣に結愛がいるので、多少暴れても氷の力で事後処理は問題ないのだが、今回は結愛がいない。
そもそも結愛なしでの野外実践自体、蓮斗には初めてのことであった。
緋炎の遠距離バージョンや朱雀など、炎を使う大技や遠距離技は全て使えない。
相手の力量が只者ではないことは先程の2件で重々理解できているからこそ、蓮斗は攻めあぐねていた。
「こねぇなら、こっちから行くぞ!」
将監はバスターソードを振り上げると真正面から蓮斗に突っ込む。
その早さ、火力は先日結愛に見せた時よりも数倍まで跳ね上がっており巨大な武器の重さすら感じているようには見えない。
一日や二日でどうにかなる問題ではなかった。
「くそっ…はええな!」
あんな大剣と正面からぶつかり合えば自分の刀など簡単にへし折られてしまうだろう。
蓮斗はバスターソードの側面を狙って刀をぶつけると、剣先の軌道が自分、及び延珠達に向かないように逸らし、そのまま助走も何もつけずに側面すると将監の背後を奪った。
「そんな馬鹿でかい剣じゃ、小回りは効かねえよな… 終わりにしてやるぜ… 朝山式抜刀術・四ノ型・緋炎!!」
剣に炎を纏わせて敵を切り裂く強靭なる一撃。
それを無防備な背中に勢い良く叩き込む…
零距離の攻撃だし、命中すれば確実に一撃でノックアウトだろう…人間の体とは脆いものだ。
しかし、将監にその攻撃は届かない。
自身の武器を納刀するようにして、蓮斗の一撃を防いだのだ。
これも、前回結愛が将監に見せた技である。
憎いといいつつも、自分の記憶の中で見た技を確実に再現可能にしている。
これも、一日や二日でできるような芸当ではない。
「あめぇんだよ!」
将監はそのまま回転切りをするようにバスターソードを振り回す。
蓮斗は躱そうとするが、そのリーチのあまりの長さに完全に避けることはできず、左腕にかすり傷を負った。
「ちぃっ… 利き腕の損傷は避けたにしてもいってーなおい!」
そのまま距離をとり、一度体制を立て直す。
これだけ怒った蓮斗の戦闘だ…当然手加減などするわけがないが、正直ここまで蓮斗が苦戦することになるとは本人も、延珠も思ってはいなかった。
それ程までにこの伊熊将監は強いのだろうか?
「殺す殺す殺す殺す!!どいつもこいつもぶっ殺して、俺が最強だと言う事を証明する!こんなゴミみたいな世界で偉そうにしてる奴は気に食わねえ…俺が全部壊してやるんだよぉぉ!!」
「完全に頭が逝ってやがる… こりゃ、ゆあちーへの侮辱を取り消せって言葉で言ったところで聞きゃしないだろうな…」
「ふん!調子に乗るなよ雑魚が!今度は避けられるかぁ!?」
今度はバスターソードを槍のように突き立て、突進してくる将監。
面積が飛躍的に小さくなる分、避けることは容易ではあるが…
「だーれがそんなバカ正直に突っ込むかよ!」
「…っつ! そりゃそうだよな!」
零距離で接触するギリギリのタイミングで、突きから回転切りに攻撃変換する将監。
何とか食らいつく蓮斗だが、かなりの衝撃に無傷とはいかない。
そのまま互いに2、3度斬り合うと今度は蓮斗の方から動きを見せる。
「漆黒の煙幕(ブラック・スモーク)!」
刀を握っていない方の左手から、炭を利用した真っ黒の煙幕を周囲一帯に撒き散らすと、一気に視界から全ての物が消え、360度を漆黒の煙が覆う。
「道具を使わない煙手榴弾(スモークグレネード)だと!?」
「便利なもんだろ?俺は技を発動するために使う炎エネルギーの不要物を敢えて体内に蓄積して、こうやって刀媒体なしに発動することができんのよ… しかも、排泄物を体外に放出するのと同じ原理だから、発動したところで俺にはなんのデメリットもない。今度は俺の攻撃を受けてもらうぜ!」
上下左右、あらゆる方向から蓮斗の剣撃が猛攻する。
自らが発動する技だ。何度も使ううちに煙の中でもある程度動けるくらいの慣れは持っているのだろう…
何度も何度も武器同士がぶつかり合う音、どちらかの武器がどちらかの肉を断つ音が聞こえ、煙が晴れた時、傷だらけで対峙する二人の姿が見えた。
流石に、将監の方が圧倒的に傷が多く蓮斗が有利に立っている。
「ぐぁぁっ…」
「自分の欲しか見てない強さなんざ、所詮はそんなもんだ。人殺しは趣味じゃないが、ゆあちー達を襲う可能性があるならそうはいかねぇ… じゃあな、伊熊将監。」
片膝をつき、力尽きる将監の心臓を容赦なく蓮斗の刀が貫いた。
目の前で殺人が起こったことに延珠は目を丸くするが、ここは未踏査領域である。
ここにいる時点で死は覚悟するべきであるし、そもそも先に殺人宣言をし襲ってきたのは向こうだ。
蓮斗は刀を引き抜き、血を振り払うと延珠の方を向く。
「俺の行いが、変だという奴もいるんだろうな…」
「人を殺すことだけは絶対しちゃダメだって、蓮太郎は言ってたぞ…」
「確かにその通りだ。けど、俺は自分の一番大切なもののためならその禁忌を破る覚悟がある。ゆあちーを護るために戦う。これが俺の戦う理由であって、それを脅かす奴は誰であっても容赦はしない… それだけさ…」
「そうか…」
「ははっ!延珠ちゃんはマネしなくていいんだぜ?蓮太郎のやつが殺すなって言ってるんだ。それが正解だよ…」
「うむ、妾はれんたろーの役に立つために戦う!それが妾の理由だ!」
「オッケーオッケー!んじゃま、さっさと蓮太郎達に合流するか。もちろん、このことはゆあちー達には他言無用で頼むぜ?」
お互いの戦う理由を話し、すっきりしたところで本来の目的のために動き出そうとする蓮斗達。
しかし、事はそう単純なものではなかった。
血の海に沈んでいた死体が起き上がると、再び会話をはじめたのである。
「何勝手に終わりにしてやがる… 言ったろ?俺の「最後の」力を見せてやるってなぁ!」
「馬鹿な…俺の刀はお前の心臓を確実に貫通させたはず…」
「蓮斗!あれだ!」
延珠が指差す方向は将監の心臓だ。
そこからは、紫色の謎の物体が突き出ていて、恐ろしい速度で傷を再生させている。
なるほど…蓮斗達が出会った時には既にガストレア化が始まっていたというわけだ。
これなら、急激に強くなったというのも納得がいく。
「うおおおおおおお!!!!」
将監が吠える。
体中の皮膚が破壊され、中からガストレアのボディが現れる。
図体も更に巨大化し、全長4メートル程の巨大なガストレアへと姿を変えた。
「既に体内侵食率50%越えだったのかよ…やべえ…」
「蓮斗、こいつ強いぞ…」
うさぎの因子を使って相手の強さを感じ取った延珠が蓮斗の隣に並び立つ。
「延珠ちゃん…?」
「さっきまでは人の姿だったが、今目の前にいるのはガストレアだ。なら、妾が戦わない理由などない!一緒に戦うぞ!蓮斗!」
「…ったく、頼もしいねぇ!んじゃ、よろしく頼むぜ!」
お互いを見合うと息を合わせる2人。
スパイダーガストレアとの戦闘から連戦続きだが、文句など言ってられない。
第3ラウンド、スタートです!
目の前の将監が変化したガストレアはパッと見ゴリラ。元々体の大きかった将監の取り柄を最大限活かすかのような変化である。
しかし、良く見れば体のつくりがゴリラと多少違うことから、恐らくはモデル・エイプ…猿のガストレアだろう。
あるいは、その二つの多重因子持ちかもしれない。
とにかく、ステージ1、2で収まるような雑魚ではないことは明らかだった。
「ぐおおおおお!!!!」
ガストレアが再び吠えるのとほぼ同時のタイミングで、蓮斗と延珠が地面を蹴った。