日曜中に本編を更新できるよう執筆中であります。夜?眠いじゃん……(ぉぃ)
5/31:誤字修正
シンオウ地方キッサキシティの外れに位置する居酒屋「
元雪山救助隊の男性が開いたこの店は、時にはニューラ救助隊の拠点としても活用される。
古き良き暖炉とブランデーを中心とした酒で暖を取りにくるお客が多く、繁盛している。
―――
居酒屋「白雪」の喫煙席に4人の男女が座っている。
元々静かに過ごす客が多い中、この席だけは特に静かで、気まずい沈黙を保っていた。
その沈黙から脱したのは、ため息のように煙草の煙を吐く大男であった。
「……それってさ、マジで?」
元ロケット団残党したっぱ、山男のサダユキが重苦しい声で発する。
「冗談であったならどれだけいいことか……」
元ギンガ団したっぱ、大人のお姉さんのサチが深い溜息を零す。
「いや~、俺達と似たような境遇になったっていうのは解ったけどさ~」
アクア団のしたっぱ、船員のタカシがポリポリと頭を掻く。
「なんつうか、あれっすよね……」
元プラズマ団したっぱ、クラウン(今は私服)のジェイスが汗を垂らす。
『転勤先に敵対したトレーナーが居るって、滅茶苦茶気まずい……』
「まぁ……だからこそ俺達を呼んだわけだな」
「俺達みたいな元したっぱを呼んで相談したいっていうのは、そういうことなのか~」
「いやぁ……俺達、組織を潰したトレーナーと良く会っているっすからね……」
「そうなのよ~!だからさ、なんでもいいからアドバイスとか頂戴!」
「必死だなぁ……けど俺の場合、趣味の山登りでたまに会う程度だぜ?ヒビキっていう男の子なんだが、ロッククライミング中にバッタリ会ってな」
「サダハルさんって山歩きでっすよね?ロッククライミングなんかしていました?」
「いや男の子の方が崖を登っていたんだよ。山道を歩いていると高い確率で、オーダイルと一緒に断崖絶壁を平然と登っている様子を見かける」
「どんだけ~(汗)」
「ポケスロンの練習だとよ。そういうタカシこそ、海でよく会うっていうじゃねぇか。ユウキ、だっけか」
「そうなんだよな~。あの子、海に関するバイト沢山受けていてな。この間はマリンスポーツの助手をしていたなぁ」
「……ん?もしかしてさ、この間タカシさんと一緒の船に乗っていたガイドさん。あの少年がそうだったりするっすか?」
「お~、そうそ~。あいつの仕事の範囲って広くてさ、観光船や定期船のガイドや船員もたま~に……つうかなんで解んのよ?」
「いや、流氷ウォッチングでもバッタリあってさ。そん時はトドゼルガに乗ってガイドしてたっす」
「地方を越えて海の仕事をするとか、そいつも筋金入りだな(ドン引き)」
「……でさ、2人ともよく会うらしいけど……気まずいとか思った事、ないの?」
「「ない」」
「いや最初はあったけどな。元したっぱだって気づかれた後も、あいつは平然としていたぜ?」
「サダに同じく~」
「あ~、俺も同じっすわ。……つうか、そいつが忙しすぎてそこまで回らないみたいだけどよ」
「確かジョインアベニューっていう施設のオーナーやっているんだっけな」
「いや店舗の並びとか集客率とか半端ねーっすよ。ライモンシティの観光客増加の半分はあそこで賄っているといっても過言じゃねぇっすわ。もう一つはポケウッド」
「元2代目プラズマ団したっぱから聞いたけど、そのオーナーって凄い手腕なんだって?」
「ええ、そうっすね。トレーナーとしても強かったのに業界にも通じる頭脳もあるとか反則っすわマジで」
「そういうんならユウキ君もすげーぞ~。アクア団をけちょんけちょんにしたばかりか、サメハダーの群れだって平然と返り討ちにするんだぜぇ?」
「あめぇな。ヒビキなんか素手で複数のしたっぱをコテンパンにしたぜ?」
「え!?マジで!?」
「マジでマジで。なんか格闘術習っているらしくてさ、あいき?っちゅう技で大の大男をポイポイ投げるのさ」
「あ、けど最近のトレーナーって、一流であるほど護身術は基本的に習うものだっていう風にも聞いたぜ~?」
「ガキ如きが組織を潰すはずねーって言えない時代……いつもそんな感じっすね(苦笑)」
「……ふっ」
「どうしたよサチ、陰りを帯びた顔で溜息ついて。ていうか『甘いわね』って言っているような目だな」
「甘いわよあんたら……私の転勤先にいるのは……
「「「な、なんだってー!?」」」
「コ、コウキっつうと、あれか?」
「飲み会でトラウマの話題を繰り出すと、元ギンガ団したっぱ10人中9人が真っ先に挙げるという、あのトラウマメーカー・コウキの事?」
「『冷徹トレーナー』、『真っ直ぐな処刑人』、『ピュアハート・クリーチャー』、『「よろしい。ならば
「そのコウキよぉ~!私がお菓子職人なのは知っているでしょ!?移転先に居るとは思わなかったわぁ~!わぁ~ん!」
「……言っておいてなんだけどよ、そんなに恐ろしいのか?コウキってガキは」
「う~んと、悪い子じゃないのは確かなのよね」
「悪の組織に敵対した時点で悪い子ではないよな~(苦笑)」
「真っ直ぐな子で、悪者は決して容赦しないのよ。ポケモンで下っ端にダイレクトアタックさせるぐらいに」
「ちょ、俺達したっぱですらタブーな事を平然とすんのかよ!?」
「ちなみに私、ビークインの『こうげきしれい』を直撃したトラウマガガガガ……」
「お、おちつけ~、お前さんのライフは既にゼロだぞ~!終わっているぞ~!」
「……ふぅ。そんなわけで、コウキ君は油断も隙も、容赦も情けも無い男の子なのよ」
「ひぇ~、怖い子だなぁ~」
「けどよ、悪い子じゃないのは確かなんだし、『あの時はごめんね』程度に誤っておけば許してもらえるんじゃねぇのか?」
「実は私もそう思いたいんだけど……今度いざ会うと思うとトラウマが蘇りそうで……気まずいのよねぇ」
「まぁ、確かに気まずいよなぁ~。最初だけで済むといいけど」
「……はぁ」
「どうしたよジェイス、さっきから静かに黄昏れてやがんな」
「……俺さ、普段はライモンシティのボクシングジムのバイトしてんだけどさ」
「お、おう……?」
「そこにヒュウってトレーナーが良く通ってんだよ」
「げ、ヒュウってあのツンツン頭のトレーナーか?」
「この間、元プラズマ団したっぱの友達とイッシュ地方で飲み会に言ったら、いきなり喧嘩腰で挑まれたことがあったなぁ~」
「あら、そう?こっちも元プラズマ団したっぱのリリスちゃんと飲みに行った時にバッタリ会ったことあったけど、特になかったわねぇ」
「おめ~知らねぇな?したっぱが改心したって理解してくれるまで何度かドつかれたんだぞぉ?どんだけプラズマ団恨んでいるっていう話だよ~」
「まぁ今じゃ理解してくれたからいいけどな……そいつがどうしたよ?」
「……あいつの妹のチョロネコ奪ったの、実は俺なんだ」
「「「き、気まず~い!!」」」
「何!?ヒュウの奴が仇みたいに言っていたプラズマ団ってお前だったの!?」
「なんでんなことしちまったし!?」
「いや……あん時は良いカモネギだって思ってつい……反省はしている」
「しているのならさっさと謝っちゃいなさい!今の彼ならゲンコツ10発程度で許してくれるはずよ!」
「……この間フラッと聞いちまったんだよ、ボクシング習ってどうすんだって。そしたらヒュウの奴……」
『1発ぶちかましたい奴がいるんですよ』
「……って言ってたんだ。目がマジだったし、日に日にパンチ力が増してよ……」
「「「生きろよ」」」
「殺すな!殺されそうな思いはするだろうけどっ!」
したっぱ時代の悪行は悔い改めている。しかし相手次第では気後れしてしまうこともシバシバある。
「元したっぱどもの集い」―――それは、足を洗い真っ当な暮らしを始めた、元したっぱ達が集う飲み会サークルである(全国各地受付中)。
―完―
飲み会の場所:「キッサキシティの居酒屋」
飲み会の切欠:「相談」
飲み会の話題:「転勤先に敵対していたトレーナーが居る状況」
そろそろ飲み会のネタが切れてきました(汗)