この作品がゲームと違う所の1つ:賞金なんてなかったんや。
6/19:小説の投稿先を間違えていました!読者の皆様本当にありがとうございます!
「ふへへへへへへ」
「気味が悪いですよハヤシさん」
ミツルの「悪意の無い悪口」攻撃!
「君って時々ドライだよね」
効果はいまひとつのようだ……なんてね。
パインのみの皮を剥きながらニヤニヤ笑っているとか怪しさ抜群だから、ミツル君の言っている事が正しい。厨房でよかった。
けどなー、僕がリクエストした曲をホミカさんが選んで歌ってくれたと改めて思うと……にへへ、笑いが止まらないぐらいに嬉しい。
おかげで興奮して中々眠れず、今朝は久し振りに一時間も寝坊しちゃった。ポッポ(時計)さんは運悪く寿命を迎えました。電池交換はマメにしないと。
店の準備に3匹そろって慌てていたんだけど、たまたま早めに来てくれたミツル君が手伝ってくれたおかげで、なんとかいつものペースを取り戻せたよ。
もちろん裏庭の仕事はサボったり手抜きしたりしません。仕事兼趣味ですから。朝食をしっかり取り、きのみ栽培に収穫、スーちゃんの水やりもちゃーんとやりました。
後でミツル君にはサービスしてあげるとして、お仕事お仕事。今日の特売品はパインのみの皮の砂糖漬けだよー。甘酸っぱくて美味しいよー。
「ハヤシさん、言われた通り書きましたけど、どうですか?」
パインのみの皮剥きをしていた所へミツル君が声をかけ、いつもは玄関先に置いてある黒板を持ってきてくれた。そこには……。
「ポケモンバトル挑戦受けます。勝てば好きなきのみを10個、負けても4個を進呈。勝敗に限らず店の手伝いを1日だけしてもらいます」
―――と書かれた黒板の下半分に
「アルバイト募集!年齢問わず、やる気のある方歓迎。短期、長期、当日、住み込みなんでもOK。仕事・給付・時間については応相談」
―――と書き足されていた。ミツル君って字が綺麗だなー。上半分の僕の字とは大違いだ。
「文章はそんなもんでいいよ。後はアルバイト募集の文字に赤い下線を足しとけばオッケ」
赤い下線があると人目につきやすいからね。
「解りましたけど……随分アバウトですよね、これ」
言われたとおり赤いチョークで下線を書き加えながらミツル君はそう言った。
確かに募集するにはアバウトだろうけど、こちらにはこちらなりの考えがあるんだよ?
「気軽にやれるってのが大切なんだよ。旅のトレーナーでも小遣い稼ぎできるようにね」
悲しいけど、旅をする上でお金は割と大切なんだよね。
旅をして学んだ事の一つだが、自分とポケモンの命を守る以上、必要なものは沢山ある。
食材は勿論のこと、傷薬やモンスターボール、衣服や寝袋、僕ならテントに調理器具に救急セット、そしてガーデニングセット。
最後のはガーデニングマニアにとって必需品です。良い植木をカットしたり野生のきのみ畑の整理とかに使っていました。
これらは道具である以上はいずれ消耗し、買い足すのは勿論、長く使い込んだとしても買い換える必要もでてきてお金が掛かる。
商品によってはトレーナー割引もあるし、ジムリーダーに勝てばバッジと一緒に賞金も貰えるが、それでも旅ってのはお金を使う世知辛いもんです。
旅ってのは楽しいもんだけど、時には辛いと思ったり悲しいと思ったり、そしてお金が無いときの侘しさを味わう時もあるんだよね。それなのにあの2人ったら無計画で……いや、今は語るまい。
そういう訳で、トレーナーとそのポケモンは時にバイトなどして働く事もある。
人とポケモンが沢山いる世の中だが、だからこそ人手とポケモン手が常に足りず、世間には放浪するトレーナーでも受けられる短期求人やバイト募集が山程あるのだ。
お金を稼げるだけでなく、社会を学び見聞を広め、将来の進路を考えさせる事も出来る為、ポケモン界のお偉いさん達(主に歴代チャンピオン)は積極的にトレーナーを対象にした求人を設けるよう社会に呼びかけているんだとか。
ちなみに僕が旅をしていた時は料理店や植木屋、造園の補助が主。趣味と実益を兼ね揃えました。
そんな事もあって、うちもトレーナーを対象にしたアルバイト募集を始めようとしたんだよ。ここんとこ観光客が増えていて人手が足りないってのも事実だし。
趣味の店だけどそれなりに儲かっているし、給料に色を付けてあげられる自信がある。ついでに人1人分暮らせる空き部屋があるので宿も提供できます。
「……なるほど、解りました」
それをミツル君も理解したのか頷きながら微笑み、黒板を玄関に置きに行った。
ミツル君も旅の最中によくポケモンセンターでお手伝いさんをしていたから、働く事の大切さを知っているんだろう。
やっぱり良い子だなーミツル君。両親(特に父親)が自慢し、いつも心配しているだけあるわ。よし、お駄賃は奮発してロメのみをあげちゃろ。
さて、剥けたパインのみの皮を瓶に詰めて、そこに砂糖水を容れて……。
「ハヤシさーん」
「はーい?」
ミツル君の声だ。どうしたんだろ?
「この人がハヤシさんに話したいそうです」
厨房からカウンターに向かうと、ミツル君と大きなリュックを背負った見知らぬ人の姿が。
歳は僕と同じ20代ぐらいで若い方だが背丈は並。僕がのっぽなだけか。ちょっと目つきが怖い。
「えっと、さっき黒板の案内を見たんだけど……」
普通に対応してくれました。目つきが怖いとか考えてごめんなさい。
なになに?さっそくバイトしに来てくれたとか?
―――
ポケモンバトルの挑戦でした。ちょっと残念。
さっきの人はバックパッカーのマサユキ(呼び捨てOKだけどマーさんというあだ名は却下された。チェッ)と言って、遥々イッシュ地方から旅をしに来たのだという。
イッシュでは砂漠や岩山などで珍しい砂や石を採取しそれを売って稼いでいたのだが、初めてのホウエン地方では上手く行かず路銀が尽きたのだとか。
せっかくだから宿も兼ねて住み込みバイトを薦めてみたが、頻繁に野宿をしていたマサユキは一箇所に留まるのが嫌なんだと。いじっぱりさんめ。
なので、節約とポケモン達の修行も兼ねてうちに挑むそうだ。確かに勝っても負けても一日バイトをしきのみが貰えるのは、マサユキにとって好条件だね。
そっちがその気なら、こっちも手加減無用で頑張るとしますか!
お客さんに事情を説明すると、「バトルだバトルだ」と野次馬たちがゾロゾロと集まってきた。ミツル君も乗り気で審判役を買って出たし。
ゴーさんに店番を任せ、看板っ子のローちゃんを連れて行く。うちのゴーさん、実は大雑把な性格が災いしてバトルが苦手なんだよね。
で、場所は裏庭。ポケモンバトルをするならここで決まり。
「……なぁ、ここってお前さんにとって庭だろ?ここでバトルしても大丈夫なのか?」
昼寝をしていたアーさんを起こし、翼を羽ばたかせ『まきびし』を吹き飛ばすようお願いしていた所へマサユキが声をかける。馴れ馴れしくしているのはお互い了承したので問題なし。
マサユキはホウエン地方の旅行雑誌を見てココに来たらしく、裏庭についての情報は聞いている。旅行雑誌の取材の時にしっかりと自慢しといたからねぇ。
「え?荒らしてもより綺麗に直しますが?」
『荒らされてもより美しく直す』が僕達ガーデンマニアのモットーですから。
バトルするんで集合してくれた(ゴーさん以外の)ポケモン達も自慢げに胸を張る。うん、それでこそ僕の精鋭達だ。
「そっか、なら無茶しても大丈夫だな」
そんなポケモン達を見てマサユキはニっと笑う。荒々しい戦法でも好むのかな?
けどそんなマサユキの顔を見てほっとした。庭を気遣って全力で戦えないのはこちらとしても嫌だからね。
バトルは2対2の公開無しを所望してきたので、僕のポケモン達をモンスターボールに戻してシャッフルする。
混ぜている中、一つだけカタカタと震えるモンスターボールが……
「それではこれより2対2のポケモンバトルを始めます。先に手持ちのポケモン全てが倒れた方が負けとなります。
またトレーナーは道具及び図鑑の使用を禁止しますが、ポケモンに道具を持たせるのは許可します」
ただし同じ道具を持たせることは許しません、とミツル君が告げる。それに僕らは一言返事をして了承する。
マサユキのポケモンは既に持ち物を持たせているらしいので、僕の手持ちにも持ち物を持たせておく。何を持たせたのかは内緒。
僕とマサユキを交互に見て確認したミツル君は片手を挙げ、バトル開始を宣言。
「試合はじめ!」
そして2人同時にモンスターボールを投げる。
―さぁ、バトル開始だ!
―続く―
園児ですら微少とはいえ賞金を進呈させる仁天堂マジブラック。
トレーナーがアルバイト、という独自設定はそんな殺伐を減らす為に浮かんだ妄想です。一番多いアルバイトはポケモンセンターのお手伝いというどうでもいい設定。
ちなみにジムリーダーが渡す賞金はポケットマネーという私的設定。リーダーも大変だ。
~オマケ・寂しがりなゴーさん~
―ボクもバトルしたかったなぁ。けどボクが戦うと近所迷惑だからって怒られたからなぁ。遊びたいなぁ。
「皆バトルに夢中だね」
「せっかくだし、お店のきのみをコッソリ貰っちゃおうよ」
「えー、ドロボウはダメだよー」
「一個ぐらい大丈夫だって!さっそくお店に……」
―お坊ちゃん、お嬢ちゃん、今はお店に入っちゃダメだよぉ。
(はわわわ、こ、こいつってバクオング!?)
(ここここっちを睨んでるよ、ドロボウしようとして怒ってるんだよきっと!)
―そんなことよりボクと一緒に遊びましょう。
「バグオォーン!」
「「うわぁぁぁん怖いよぉぉぉ!」」
―逃げられちゃった……ボクってそんなに怖いのかなぁ?……寂しいなぁ。
バクオング♂のゴーさん。寂しがりな性格で好奇心が強い。見た目は
―続かないかも―