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イッシュ地方ライモンシティに立つ「バー・パッチール」。
フットボールやテニスなどの試合で沸いた観客が夜の帰りに寄っていくのにピッタリな酒場だ。
広い席に多種多様な酒、そして完備された防音壁。興奮収まらぬ客が語り合いを肴に飲み明かすのが、この酒場の日常だ。
また、二十歳以上のトレーナーがバトルサブウェイでの激戦を語るのも良く観られる光景である。
―――
この日の「バー・パッチール」では、ライモンシティに住まう元したっぱ達の飲み会が開かれていた。
3人とも20歳以上でありながらポケモントレーナーを続けており、働きつつもポケモンバトルの腕を磨くのだ。
「今日は10連勝行けたぜ!どうだっつーの!」
元プラズマ団のしたっぱ・金髪碧眼といった外国人のような青年ランデがビールジョッキを片手に自慢げに言う。
そんなランデに対し、彼と同期であった赤髪の青年ジョージが鼻で笑った。
「はん、こっちは11連勝!」
「1勝違うだけだっつーの!」
「いいじゃん!1勝は1勝だ!」
「まぁまぁ2人とも、落ち着いてください」
そんな2人を落ち着かせようとしているのは、元フレア団のしたっぱの青年ビリー。大人しそうな眼鏡青年だ。
ビリーは近年になってライモンシティに引っ越してきた新入りで、ランデとジョージは先輩に当る。仕事人としても会員としても。
またこの3人は、休日にはバトルサブウェイに入り浸りするほどのバトルマニアで、激戦を終えたら「バー・パッチール」で飲みあうのが日課だった。
「けど私から見ると、電気ポケモンに偏りがちなランデさんの方が凄いと思いますよ?」
「なんだよビリー、こいつの肩持つ気かよ。どうせ地面タイプに当らなかっただけだろ」
「バトルサブウェイでそんな事あるかっつーの!普通にカバルドンとかヌオーとか出たっつーの!」
「ちなみにランデさんの手持ちは何でした?」
「ウォッシュロトム、レアコイル、クロバットだな」
「ウォッシュロトムか……嫌な思い出しかねぇなぁ」
「使っていて解るけど、ウォッシュロトムって中々便利だぜ?トリックでこだわり系入れ替えて行動縛りとか、鬼火やら電磁波やら」
「しかも特性は浮遊ですし、地面タイプにも強いですよね」
「最近じゃエリートトレーナーが是非にもと欲しがるポケモンらしいからな。ちきしょー、どこで手に入れやがったコンチキめ」
「それよりも僕はレアコイルですよ。もしかして進化の輝石持ちですか?」
「おお。この前、コツコツ貯めたBPを奮発して使ったんだ」
「くっそー、俺なんかアップグレードと怪しいパッチ目当てでコツコツ貯めているってのに……」
「お前本当に好きだなぁポリゴン。ポリゴン2持ってたろ?」
「次はポリゴンZ狙いなんだよ!」
「そういえばポリゴンも電気タイプの技って覚えますよね。私も電気ポケモン育てようかなぁ」
「確かお前って飛行タイプが好きだったんだよな。ならエモンガとかどうよ?」
「可愛い系よりカッコいい系が好きなんですよ。狙うならレントラーかゼブライカかなぁ」
「俺はエレザードを進めるぜ。技のレパートリーが自慢よ」
「お前はどう足掻いてもノーマルタイプを付けたがるんだな」
「弱点がほぼ無いって便利じゃん」
「電気だって弱点がほぼねーよ。シビルドンなんか弱点無しだっつーの」
「サブウェイマスターのクダリさんも使っているぐらいですし、強いですよねシビルドン」
「けど時代は、スピードのあるポケモンを活かした蜻蛉ルチェンが主流らしい」
「とんぼるちぇん……ってなんです?」
「とんぼがえりとボルトチェンジを使って、攻撃しつつ交換する戦法だな。便利だぞ」
「だぞってことは、お前も使ってんのか?」
「2、3回使っただけだっつーの。電気ポケモン使いだからって毎度の如く蜻蛉ルチェンしているわけじゃねーっつーの」
「電気タイプのポケモンって大抵はボルトチェンジを覚えますもんね」
「偏見反対だっつーの。電気タイプだからってボルチェン覚えてるとは限らねーっつーの。地面ポケモンで止まるし」
「そうよそうよ。便利だけど」
―隅の席、つまりは3人の隣の席でチビチビと酒を飲んでいた女性……ジムリーダーのカミツレが同意した。
「「「カ、カミツレさんーーー!!?」」」
「あら、意外な反応。あなた達、私がこの店によくお忍びで飲みに来ているって噂、知らなかったの?」
「し、知らなかったッス……」
「ま、まじで本物のカミツレさん?驚きだっつーの……」
「今まで気づきませんでした」
「そりゃそうよ。ここは試合の語り合いとかで騒がしいから、隅で大人しく飲んでいれば目立たないのよ。ここのお酒はお気に入りだし」
「は、はぁ……」
「……で、電気タイプポケモンの話の続きなんだけど、電気タイプの偏見っていえばあれよね、電磁波とか嫌がられるわよね」
「あ、ああ。普通のバトルとかだと電気タイプってだけで嫌がられるなぁ。どんだけトラウマあるんだっつーの」
「麻痺で動けないのはイライラしますし、幼いトレーナーは電光でビビっちゃうことが多いらしいですからね」
「あ、だから電気タイプのジムリーダーって中堅以上が基本なのか?」
「それは秘密よ。少なくとも電気タイプポケモンは扱いが難しいともされているわね」
「プラスルやマイナンといった電気ポケモンがイタズラで配電盤を壊して停電、という事故が多いぐらいですからねぇ」
「感電して気絶したっていうケースも多いらしいな……そこんとこどうよ、ランデ」
「しょっちゅう感電して気絶したっつーの。連中に悪気は無いし、今じゃ慣れっこだけど」
「お、おう……大変だな電気ポケモン使いも」
「……フッ」
「なんですかカミツレさん、その含み笑い」
「ランデ、と言ったわよね……甘いわ。私なんかポケモンの放つ雷を直撃した事があるわ」
「「「いやいやいや!それ死ぬんじゃね!?」」」
「普通にアースで逃がしたから助かったのだけど」
「あーす?」
「電気の逃げ道よ。電気を通しやすい線を地面に垂らして、電気を地面に逃がすの。電気ポケモン使いの間じゃ割とメジャーな対策よ」
「……ランデ、お前知ってたか?」
「しししし知っていたっつーの!」
「知らなかったのね」
「……はい」
「精進なさい。同じ電気ポケモン使いとしての助言よ」
「う、うっす。頑張ります」
「さてと……そろそろ帰るわね。楽しかったわ。よかったら受け取って頂戴」
「ちょ、なんで金なんか置いていくんだっつーの」
「少しだけど、楽しませてくれたお礼。……それと、謝罪料」
「謝罪料、ですか?」
「実は今日以前にも見ていたのよ、あなた達の事」
「マジっすか?……で、それの何の関係が?」
「見覚えるのあるプラズマ団のしたっぱだったから、何か企んでいるんじゃないかと疑っていたのよ。けど、話す内容はどれも楽しそうな話ばかり。だからついつい参加しちゃった」
「ああ、そういうことっすか。気にしなくていいっすよ、俺達、疑われるの慣れっこだし」
「今でこそこうして楽しく暮らしているけどな(笑」
「そうですよ。むしろカミツレさんとお話できて光栄でした!また電気ポケモンの極意とか話してください」
「……そうね。楽しみにしているわ」
「つーか今度、バトルしてください!電気ポケモン同士で!」
「おいおい人気者のカミツレさんはスケジュールが」
「あら、なら明日一日空いているからジム戦に来なさい。ここんところ暇なのよ」
「マジっすか!?やっほい!」
「ていうかスターが暇してるってどういうことなの」
「スターが暇しちゃいけない?ていうか、自分で暇を入れられるぐらいのスケジュール管理を出来るのが一流スターってものよ」
「な、なるほど……」
元したっぱの彼らは、他人から疑われても気にしない。何故なら真っ当に暮らせているのだと証明できるのだから。
「元したっぱどもの集い」―――それは、足を洗い真っ当な暮らしを始めた、元したっぱ達が集う飲み会サークルである(全国各地受付中)。
―完―
ポケモンブリーダーのジョージ(元プラズマ団したっぱ♂)
駆け出しギタリストのランデ(元プラズマ団したっぱ♂)
バトルサブウェイの清掃員ビリー(元フレア団したっぱ♂)
特別ゲスト:シャイニングビューティ・カミツレ(ジムリーダー♀)
飲み会の場所:「バー・パッチール」
飲み会の切欠:「バトルサブウェイの語り合い」
飲み会の話題:「電気ポケモンについて」
足を洗った下っ端は清く正しく生きているんだ!けどヒュウとか考えなしに突っ込んできそう(ぇ)
そろそろ、したっぱ団の飲み会の話題についてリクエストとかすべきだろうか(ぇ)
ネタは色々と思いつくので必要ないかもしれませんが(苦笑)