ポケットモンスター・ライフ   作:ヤトラ

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 「きのみでこんな菓子または料理を作って欲しい」という方をプチ募集中。
 後、これから記す調理過程とかは割と適当です。


その2「きのみ屋さんの午前」

 僕は旅をして学んだ事がある。

 生きて旅をする以上、食べ物に詳しくなり、食べ物を好きなように調理できるようにならなくては楽しくないと。

 

 こう言い切れるようになったのも、僕と一緒にキンセツシティを旅立った2人のおかげ……いや2人のせい、と言うべきだろうか?

 何しろ2人揃って勢いで行動するから決まった日程で目的地に着いた事が一度も無く、計画性が無いから食べ物はすぐに消えて無くなる。正確には胃袋の中で。

 大食いな2人+ポケモン達の食材を賄う為にも、道端のきのみを上手く調達し、美味しく調理しなければならなかったのだ。少なくとも僕しかまともに作れなかったから。

 パン屋のおじさんから作り方を学んだ。激ウマなきのみ料理店でバイトをした事もあった。カナズミシティできのみの勉強を1から学ばされた時は長かった……ツツジちゃん、元気にしてるかな?

 そんな事もあり、僕は料理も得意だったりする。趣味のガーデニングに比べたら見劣りするだろうと自負してるが。

 

 まずはオレンパン。磨り潰したオレンのみを混ぜて練り込んだパン生地をちぎって耐熱皿に並べ、表面にミルタンク印のバターを軽く塗る。

 ついでに乾燥して保存してたオボンのみを細かく切り、別のパン生地に混ぜ込んで型に流し込む。これはオボンブレット用。

 これらきのみ入りパン生地を業務用オーブンに入れて焼く。売り切れればよし、余れば夕飯に良し、そして焼き上がり待ちと色んな意味で楽しみで仕方ない。

 焼いている間にきのみスパイスを調合すべく、クラボのみをベースに辛味のあるきのみを細かく刻み、よく混ぜてから味を確かめ……。

 

「か、辛っ……!」

 

 辛いきのみのみだから当たり前だけどコレは辛い……!しかし旨味が出てるからカレーとかに入れたら最高かも。

 試しに辛いものが好きなゴーさんにスプーンで食べさせてみた所、好評だった。僕が甘党なだけ?

 後は汁気が無くなるほど炒めて乾燥させ、磨り潰して瓶に入れればOK。炒めるのに時間は掛かるけど。

 

-チリンチリン

 

 お、誰か入ってきた。

 多分あの人だろうと予測しながらフライパンの火を弱め、厨房と直結してるカウンターに向かう。

 

「いらっしゃい……あ、アサ婆ちゃんか。こんにちわ」

 

「こんにちわハヤシくん。きのみパンは焼けたかしら?」

 

 やっぱりアサ婆ちゃんだ。

 アサ婆ちゃんは先代……この店の元家主・イシ爺が営んでた時からの常連客だ。遠いフエンタウンから毎日チッチ(チルタリス♀)に乗って来ては、大好物のきのみパンを買っていく。

 結構なお年寄りだが、毎日フエン温泉に浸かったりきのみパンを食べたりしているからか、アサ婆ちゃんはいつも元気いっぱい。

 そんなアサ婆ちゃんは、きのみパンが焼ける頃合いを狙って来店するんだけど……。

 

「さっきオーブンに入れたばっかだから、もう少し掛かるかな?」

 

「あら、残念ねぇ……」

 

 本当に残念そうな顔をするアサ婆ちゃん。今日は勘が外れたね。

 

「売れ残りのオボンブレッドでよかったら焼いて食べる?いつも贔屓にしてくれてるし、タダでいいよ」

 

「あら、そういうなら頂いちゃおうかしらねぇ」

 

 あ、すぐ明るくなった。単純だなぁ。

 さて、店から良い香りがして、10時になって、アサ婆ちゃんが来たとなると……。

 

-チリンチリン

 

「いらっしゃいませー!」

 

―お客さんが増えてくる時間帯だ!

 

 

 

―――

 

「これくださーい!」

 

「オボン2個にキー2個、カゴが3個にヒメリ4個で合計650円ね」

 

「店長さーん、モモンのみのジャムはもう無いのかしらー?」

 

「すみません、今日出したので全部なんですよー」

 

「オレンパン4つちょーだい!」

 

「はいよ600円!焼きたてだよ!」

 

「なんか目が痛い……ていうか、辛い?」

 

「しまった、きのみスパイス炒ってたまんまだー!」

 

「写真撮ってもいいですかー?」

 

「お好きにどうぞ!裏庭はヤーさ、ネンドールに声を掛けてくれたら乗せてくれますから!」

 

「店主さん、裏庭で泥棒のおじさんがもんぞり返ってるよ!?」

 

「……あ、もしもしジュンサーさん?大きな庭のきのみ屋さんです。今うちの裏庭に泥棒が……話が早くて助かります、回収お願いします」

 

「このロゼリアかわいい!」

 

「ローちゃんです!」

 

「うわーん怖いよー!」

 

「ゴーさん、お子さんのウケ悪いんだから近づかないであげて!」

 

 忙しい忙しい、パンが焼けてからは特に忙しい!アサ婆ちゃんは既に帰っていきました。

 

 ここ1ヶ月間で解ったけど、お客さんが倍以上に増えているな。

 観光雑誌片手に持つ客の半数近くは別地方からやって来た観光客らしく、連れ回っているのは雑誌やパソコンでしか見たことがないポケモンばかりだ。

 あれはパチリス、空飛ぶマイナンみたいなエモンガ、小さなライチュウみたいなのは……なんだっけ?デブンネ?珍しいポケモンばっかだー。

 

 遠いとこからお客さんが来てくれるのは嬉しいけど、趣味で開いた店ってそんなに需要のあるご時世だっけかな?不思議。

 とにかく客が増えてきたからというものの、ゴーさんの手を借りても全然間に合わない。手先が器用だけどこわモテなゴーさんに接客は無理だし……悪い子じゃないんだけどなぁ。

 やっぱりバイトを雇おうべきだろうか?2階にはまだ空き部屋があるし、住み込みバイトも視野に入れて考えとこ。

 

「きのみスパイスはまだかのぅ?」

 

「今から磨りますのでお待ちをー!」

 

 それは置いといて、お仕事お仕事。炒って乾燥させた辛いきのみを薬研でゴーリゴーリ、オニゴーリゴーリキーってね。

 

―――20点だな。

 

 

 

―――

 

 お昼休みになる頃は客足が少なくなり、だいぶ落ち着けるようになった。

 接客してたローちゃん、商品を並べてくれたゴーさんにお疲れ様と言って昼食の準備を始める。

 売れ残りのきのみパンは売り切ったし、今日は久々に丼飯かな?シンプルにラッキーの卵丼とか……。

 

-チリンチリン

 

「こんにちわー」

 

 あ、この声はあの子か。

 

「やあミツル君。久し振りー」

 

「お久しぶりですハヤシさん」

 

 深々と頭を下げるこの少年はミツル君。緑の髪が特徴的だ。

 お隣さんである彼の両親を通じて知り合った仲で、たまに旅から帰って来てはうちに寄ってくれる。

 

「……なんか肌がツヤツヤしてんね。もしかしてフエン温泉の帰り?」

 

「あ、解りますか?長旅で汚れていたので両親に会う前に洗ってきたんですよ」

 

 いい心構えだよ。野宿の多い旅は自然と体が汚れるからねぇ。というか、旅をしてると意外なほどに汚れるんだこれが。

 

 ミツル君は過去にチャンピオンロードを抜けかけ、あるライバルに負けてからはより見聞を広めようと、ホウエンを巡る旅に出ているんだとか。

 そんな彼を応援しようと、きのみの詰め合わせをあげたりバトルに付き合ってあげたりと少なからず旅に貢献していたりする。

 けどミツル君が育てるポケモンって結構強いし、ミツル君のトレーナーとしての判断力も高い。信頼度が高いんだよね。

 

「あ、これお土産のフエン煎餅です。よかったらオヤツにでもどうぞ」

 

「君はなんて良い子なんだ!」

 

 あーもう可愛いなぁ!おじさん(20歳だが心はおじさんだと自分で思ってる)頭撫でちゃうぞー!

 こんな子が病欠だったなんて嘘みたいだ。山登りやロッククライムもするワイルドな一面もあるのにねー。

 

 

 

 せっかくだからお昼に誘ってみたけど、ミツル君は両親の家で食べるからと断ってから別れた。

 なのでいつも通り、「まきびし」を取り除いた裏庭でポケモン達と一緒に昼食。ラッキーのタマゴ丼ウマー。

 

 

 

―さーて、午後も程ほどに頑張りますかー。

 

 

 

―続く―




●さっと登場人物紹介
・ハヤシ:キンセツシティ出身のポケモントレーナー。趣味はガーデニング。
・イシ爺:「大きな庭のきのみ屋さん」の前家主。現在はカイナシティの息子夫婦と生活している。
・アサ婆ちゃん:皺の深い白髪のお婆ちゃん。フエンタウンの温泉の常連さん。イシ爺とは友人。
・ミツル:元トウカシティ出身のポケモントレーナー。病弱だったのが嘘みたいに元気いっぱい。

 登場人物項目は後日製作予定です。要らないかもだけど(苦笑)

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