今回のポケライフテーマは「トライアスリート」です。お仕事というより趣味に近いですが。
3/2:後書きにてトレーナー情報追加
―だるい。疲れた。しんどい。
そんな言葉が頭の中を占める中、私は走り続ける。
雨に打たれ、強風に吹かれ、サングラス越しでも雨水と風で見えにくくなる。
体中の筋肉が悲鳴を上げ、呼吸は荒くなり、雨水と汗で衣服がビッショリと濡れていた。
けど私は走る。遠いと思っていた目的地がすぐそこにあるからだ。
当初はとても遠いと思っていたのに、夢中になって走ると時間を忘れちゃうんだね。
いつしか雨雲は嘘のように晴れ渡り、走り続けた私を迎えるかのように眩しい光が差し込んでくる。
ああ、まるで出来すぎた物語みたい。けど私は喜びのあまり、辛かったはずの足が軽くなる気がしてきた。
そして私はついに―――――!
「とうちゃ~く!」
ヒマワキシティから120番道路を通り、ミナモシティに到着!やった、私
……あれ?皆どこに行ったのかな?てっきり後ろについてきているとばかり思っていたけど。
まさか走っている途中で迷子になったとか……流石にないよねぇ~。
―――
120番道路の空には雨雲が浮かんでいるが、そこを抜けたミナモシティでは穏やかな日差しが差し込んでいる。
そんなミナモシティの入り口付近に1人の女性がソワソワしながら待っている。トライアスリートのカナタだ。
彼女はある人物を待っているのだが、ヒマワキシティで別行動を取った直後に降ってきた大雨を前に、徐々に不安になってきたのだ。
すると彼女のポケモンであるドドド(ドードリオ♀)がコツコツと軽めにカナタの頭を突きだし、我に戻ったカナタはその先を見る。
赤いスポーツブラとスパッツを着込み、赤いバンタナを頭に巻いた女の子―――ハルカがこちらに向かって走っていた。
不安げだったカナタの表情がパッと明るくなり、背負っていたリュックから大きなタオルと美味しい水が入ったペットボトルを取り出す。
「とうちゃ~く!」
「ハルカちゃんお疲れ!はいコレ」
息切れしながらもガッツポーズを取るハルカをカナタは迎え入れ、ペットボトル飲料を手渡すのだった。
ハルカはさっそくペットボトルを受け取り、飲む。喉が渇いているからと飲みすぎず、ゆっくりと。
「そういえばハルカちゃん、あなたのポケモン達はどこへ?」
ふと気づいたカナタはハルカの後ろを見て問いかける。
確かヒマワキシティを出る直前まで、バシャーモ・ザングース・ライボルトも一緒に走っていたはずだが。
ペットボトルを口につけたままハルカは後ろを振り向き……。
「……さぁ?」
本気で解っていないように首を傾げるのだった。
相変わらず走る事となると夢中になりすぎる子なんだなー、とカナタは呆れ半分尊敬半分の気持ちを抱くのだった。
―――
ハルカの手持ちポケモン達は、ハルカがミナモシティ入り口に着いた30分後に合流することが出来た。
麻痺した傷らだけで毒液まみれのザングースをバシャーモが担いで。麻痺させた張本人だろうライボルトはいつも通り冷静だった。
この様子から見て途中でハブネークに出会い決闘をし出したのだろう。豪雨の中でも頑張ったのか、バシャーモは特に息が荒かった。
そんな彼らにハルカが気づかずココまで走り続けたのは、きっとランナーハイになっていたからだと思われる。
とりあえず皆にお疲れ様と声を掛け、ハルカとカナタはフエン煎餅と美味しい水を振舞うのだった。
ところ変わって、2人とポケモン達はミナモシティにあるカナタの家に居た。
シャワーを浴びてスッキリしたハルカはカナタと自分のポケモンしか居ないからとハレンチな格好をしているが、ハルカもカナタも付き合いが長い為、気にしていない。
……どんな格好かって?少なくとも裸ではないな。
「しっかし随分とタイムが縮んだね~」
「そうかな?」
ワシワシとタオルで頭を吹いていたハルカは自覚がない為に首を傾げるが、タイム測定してくれたカナタが言うのだからそうなのだろう。
「そうだよ。この調子ならトライアスロンも夢じゃないよ」
ハルカは嬉しかった。トライアスリートとしての先輩でありコーチでもあるカナタのお墨付きだからだ。
世間はポケモンに関する大会に注目が集まっているが、決してポケモンばかりではない。
「ポケモンと付き合うにはまず体力から」という言葉があるように、ポケモンは人よりも優れた身体能力を持つ者も多く、付き合うには相当の体力を要することもある。
その為に趣味でスポーツをするトレーナーも多く、トライアスロンといった長距離を走る大会も番組としては人気だ。
ハルカもまた大地を駆け抜け海を渡るトライアスロンに興味を持ち、日々カナタの指導を受けて特訓している身だ。
ランニングにサイクリング。ここまでは順調なのだが……。
「後は泳ぎを覚えるだけね」
「う……っ!」
しかし悲しきかな、今までルンパッパに乗っていた為か、ハルカはまだ泳げないのだった。
バシャーモ達3匹も「イイ加減泳げるようになろうぜご主人」と言っているかのように生暖かい目で見られる始末。
キラキラと輝く水平線を眺める彼女の視線は遠く、表情は険しい。それだけ泳げない事を自覚しているのだと察してください。
「なんならユウキ君に泳ぎを教わればいいのに」
カナタが冗談交じりにそういうと、ハルカは顔を赤くしてカナタを見る。
「べ、別にユウキ君に頼る必要はないもん!」
「強情な子ねぇ。いやユウキ君も強情なんだけど」
そっぽを向いて再び海を眺めるハルカを見たカナタは、両想いでありながら強情故に認めようとしない少年少女を思い出して笑う。
ハルカは知らないだろうが、カナタはミナモシティのダイビングツアーで度々ユウキを見ている。そしてユウキもミナモシティで特訓しているハルカの存在を知らない。
バッタリ会った時の2人がどうなるのか楽しみだ―――20代独身のカナタは己の状況下を理解しないままほくそ笑むのだった。
―――
ハルカと呼ばれる少女は、元チャンピオンであるユウキと過去幾度と戦ってきた強者だ。
移動手段は足か自転車のみという彼女とそのポケモン達は凄まじい脚力とタフネスを誇り、別名「ド根性ガール」という名で知られている。
彼女もまたマグマ団とアクア団の野望を阻止した貢献者であり、大地を創造したとされるポケモン・グラードンと対峙した経験を持つ。
彼女は現在、トレーナーでありながらトライアスリートとしての道を歩んでいる。
先輩であるカナタの指導の下、いずれはトライアスロンに出場し、ホウエン地方を己の体だけで一周することを夢見ているのだ。
いつどこで走っているのかは解らないが、彼女はこのホウエンの大地の上ならどこでも走っているだろう。
また、本業がポケモントレーナーとだけあってポケモンバトルも強い。
足があるポケモンなら必ずと言っていいほどランニングに付き合わせる為、彼女のポケモンは総じてタフで素早い。
バトルはもちろんのこと、ポケモン達が三つの競技を行うとされる「ポケスロン」でも上位に君臨するほどの実力者揃いだ。
特に彼女のパートナーであるバシャーモは足技が尋常でないほど強いので、挑む時は注意しよう。
かといって、もしトレーナーに直接攻撃しようなら止めた方がいい。ハルカ自身もバシャーモから鍛えられているので強いからだ。
自身とポケモンを心身ともに鍛え上げるアスリート・ハルカ。彼女は今日も、大地のどこかを走り続けている。
しかし彼女は未だカナヅチ。泳げるようにならない限り、トライアスロン出場への夢はまだまだ遠いようだ。
―完―
●ハルカ
ホウエン地方出身のトライアスリート♀。頑張り屋な性格。ちょっぴり強情。
頭よりも体が先に動く直感タイプ。体を動かす事が大好きな元気娘。笑顔が眩しい女の子。しかしカナヅチ。
ホウエン地方を己の体だけで制覇することを夢見てトライアスリートの特訓をしている。しかしカナヅチ。
『つるぎのまい』や『ビルドアップ』といった強化系を使ってから戦うのを好む。攻撃型。
ハルカとユウキはラヴです。けどお互い個性が「ちょっぴり強情」だから認めようとしないという(笑)
そんなわけでポケライフ「トライアスリート」編。いかがでしたか?
ポケモンばかりじゃないだろうと思い、女の子主人公だけどスポーツに走らせてみました。
前回は仕事なのに対し、今回は趣味というイメージで書いてみました。
ポケモンとあまり関係なくね?とお思いでしょうが、トレーナーがスポーツに走ればポケモンもスポーツに強くなると思うんですよ。
だからハルカもポケモンも総じて心身共に強い子なんです!多芸はわが身を助けるともいいますし(違う気が)
さて、次回はキモリを選んだトレーナー(オリキャラ予定)のポケライフを書こうかどうか……。
いっそポケモンハンごとリクエストを設けるかゲフンゲフン
ではでは!