ブラック・ブレット 『無』のテイマー現る   作:天狐空幻

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今回は民警VSデジモンです。まず、絶対に民警では勝てません断言できます。
それでも、どこまで蓮太郎たち民警は耐え切れるか……。
それでは本編どうぞ!


006

 ゼツ脳裏に戦慄が走る。

 目の前には本来、存在する事のない二体のデジモンが雄叫びを上げて、ゼツたちに的を絞って睨みかけていた。

 スカルグレイモン。凶悪な完全体、ウィルス種。戦闘本能の赴くまま周囲を破壊尽くす破壊の化身。

 スカルバルキモン。完全体のデータ種。哺乳類の化石データ、それに幾つかの化石データで偽造され蘇生された。そこには感情という物は存在せず、反射的に獲物を狙い容赦も加減も無い攻撃を自らが動けなくなるまで繰り返す。

 どちらも危険な存在にゼツは、咄嗟に傍にいた夏世を抱きしめてその場を離れた。その寸分違わぬ場所にスカイバルキモンの、鋭い前足が振り下ろされた。

 踏まれた地面は陥没、それでも失われない強力な衝撃は周囲の地面に伝われり、皹が入りそして爆ぜた。夏世はそんな一撃を見て顔を青褪めた。もし、ゼツが助けれくれなければ一瞬で肉片になっていたっ、と。

 

「全員逃げろ!」

 

 今まで感じた事のない焦りの雄叫び。

 ゼツの叫びを聞いた周囲の者たちは、ガストレアと戦って培ってきた経験で本能的に相手が危険な存在だと気付き、叫びと同時に一気に前線を離脱する。

 前線を離脱。だが、それを許すまいと咆哮を上げて全速力で逃げようとするゼツたちを追いかけてきた。蓮太郎と夏世は撤退しながら射撃でスカルグレイモンの足を止めようとするが、逆にスカルグレイモンを更に興奮する結果になってしまう。

 

「何だよあの骨の化物!?」

 

「あれはガストレアではなのか蓮太郎!?」

 

「ガストレアはあくまで生物の遺伝子が急変して生まれる化物だ。だから、あんな骨だけの生命体ですらない存在は決して生まれない!」

 

「話している場合ではありません! 上から!」

 

「チッ! 全員散開しやがれ!」

 

 将監の言葉と同時に全員が四方に散る。

 空から襲ってきたのはスカルバルキモン。前の足を前方に突き刺すように向けた格好で突貫してきた。幸い皆は一斉に避けて直撃はなかった。だが、その圧倒的な威力は地面を潰し、その威力は周囲の空気を押しのけてゼツたちを吹き飛ばす。

 

「うあぁ!?」

 

「蓮太郎!」

 

「きゃっ!」

 

「グオッ!?」

 

「ッ! 夏世!」

 

 強風でゴミが舞い散るか如くに皆は薙ぎ飛ばされ。

 延珠は態勢を崩され吹き飛ぶ蓮太郎を助けようと、一緒に吹き飛んでいる岩の瓦礫を足場にして飛び受止める。

 ゼツも夏世を助ける為に延珠と同じく舞う瓦礫を足場に一気に駆けつけて抱きしめる。

 

「ゼツさん!?」

 

「喋るな噛むぞ! ディアボロモン!」

 

 頬を少しだけ桃色に染めながら夏世は驚く、だがそれを気にしている程にゼツには余裕がなかった。自身のパートナーであるディアボロモンを呼ぼうとする、だがディアボロモンが居るであろう場所には0と1の緑色のデジコードが暴風の如く吹き荒れていた。

 

「アレは……結界。こんな姑息な方法を取るのはアイツか!」

 

 苦虫を噛み潰したような表情を浮べながらゼツは、この危険な状況を打破する方法を模索する。すると、ゼツの袖に入れていたスマホが震えた。

 自然とゼツの視線が袖に向けられると同時にボコッと袖の中が膨れた。その現象に抱き寄せられている夏世も驚く。そして、

 

「クルッ」

 

「くっクラモン!?」

 

 紫色のスライムみたいな姿に、クリッとしたつぶらな瞳が一つあるデジモン。ディアボロモンの幼年期であった姿、クラモンであった。そんなデジモンを見た夏世は不意にも可愛いと思っていた。

 

「おっお前、そうか分裂したのか……頼めるか?」

 

「クルッ!」

 

 泡を吹いて返事を返したクラモンは、ポヨンと効果音が聞えそうな飛び方をする。

 

――EVOLUTION――

 

 クラモンを包むかのように緑色のデジコードが現れる。そして、デジコードが消えると姿が変化していた。

 サナギの様な形、頭部には赤い角が生え、腕部分から三対で触手が生えた姿、成熟期であるクリサリモンである。そのクリサリモンの姿にゼツは舌打ちをする。

 

「今では成熟期が限界か……夏世、頼みがある」

 

「なんですか?」

 

 急に呼びかけられるも夏世は慌てる事無くゼツに尋ね返す。

 

「悪いけど骨の恐竜をそちらの民警だけで相手をしてほしい」

 

「ゼツさんは、如何するんですか?」

 

「自分はコイツと一緒に骨の獣を倒す。骨の恐竜は倒さなくてもいい、時間稼ぎが出来ればいいんだ」

 

「……あの化物をご存知なのですか?」

 

 沈黙で夏世の問いにゼツは肯定する。

 色々と思う所があるが夏世は頷き後、急いで将監たちに向かった走っていった。それを確認した後、ゼツは一度フラガラッハをカードに戻して別のカードを取り出す。

 新たに取り出したカードには金属のハンマー。四角い面、その反対に進むに連れて細く尖っている。

 

「トールハンマー」

 

 ゼツの片手に重量級の金属製ハンマーが現れた。

 トールハンマー。ズドモン、二足歩行のカメ型デジモン。そのデジモンが携えているクロンデジゾイド製のハンマーである。

 重量級のハンマーを両手で持ちスカルバルキモンに迎え撃つ。

 先制攻撃をしてきたのはスカルバルキモン。鋭い前足の一撃がゼツに放たれる、それを許すまいとクリサリモンの三対の触手が一斉に前足に絡みつき動きを鈍らせる。完全にはスカルバルキモンの前足の一撃を止められないが、その隙をゼツが触手で受止められている前足に飛乗り、そのままスカルバルキモンの頭部まで駆け上がり、そして、

 

「ハンマースパーク!」

 

 有らん限りの雄叫びと共に、雷を纏ったトールハンマーが振り下ろされる。

 強烈な一撃、それはスカルバルキモンの頭部の骨を砕くには十分すぎる一撃であった。だが、スカルバルキモンは屍のデジモン。既に痛覚など無く、痛みで怯む事を失ったスカルバルキモンはゼツに鋭い頭突きを放つ。

 ゼツはトールハンマーを盾にして頭突きを防ぐ、強度の高いトールハンマーは砕ける事無く守り抜くが衝撃までは伏せきれずゼツは吹き飛ばされた。だが、それを咄嗟にクリサリモンの触手が受止め、地面にゆっくり降ろされる。

 

「ナイスだクリサリモン。さて、骨狩りをしようか」

 

 頭部の片目部分が砕け散り穴があいてしまうスカルバルキモンは憤怒を思わせるように雄叫びを上げてゼツたちに殺意を向ける。そんな姿をゼツは不適な笑みを浮べてトールハンマーを肩に担ぎ、傍に居るクリサリモンに呼びかける。

 クリサリモンはゼツの言葉を返事を返すように三対の触手を勢い良く振り回して答える。

 

 

  ◆

 

 

 一方、夏世は将監たちと合流してゼツの託を伝えた。

 伝えられた夏世以外の者たちは驚きの声を上げる。たった一人であの化物一体を相手するなど正気の沙汰ではない、死ぬきか、そう思う蓮太郎、だが将監は何も言わずに大剣を構えてスカルグレイモンに向く。

 

「良いじゃねぇか。あのガキが1人でやるって言ってるんだ、任せれば良い。それなりの覚悟あっての事だろうよ」

 

「だけど……」

 

「それよりもこっちを何とかしねぇと死ぬぞ!」

 

「ッ!?」

 

 将監の怒号に自然に蓮太郎の視線が上を向く。

 そこには緑色の瞳が蓮太郎たちを捕らえ、長い腕と指の骨がギギギッと唸り襲い掛かろうとしていた。その姿に舌打ちをして今の現状の最悪に悪態を付きながら傍にいる延珠に振向く。

 

「延珠、あの骨の化物をさっさと潰してあの子の援護に向かうぞ!」

 

「うむ任せろ! 骨など妾の蹴りで粉々するのだ!」

 

「延珠さん、サポートします。その代りに将監さんのこと、お願いします」

 

 夏世の頼みに延珠は頷いて承諾してから一気にスカルグレイモンに向って駆け出した。ショットガンの弾丸を確認した後、夏世は傍にいる蓮太郎に視線を向ける。

 

「ご指示を、それに従います」

 

「いいのか?」

 

「構いません」

 

「そうか、なら眼を狙うぞ」

 

「眼をですか?」

 

 眼を狙う。そう言った蓮太郎に夏世は不思議に思う。何故、眼だけをピンポイントに狙うのか疑問に思っていると蓮太郎がその疑問に答えた。

 

「さっき前線で逃げる際に足止め代わり数発、あの骨恐竜に撃ったんだが簡単に弾かれた」

 

「只の骨、て訳ではなさそうですね……」

 

「あぁ。普通の弾丸、それもバラニウムすら効かない。なら、俺らが出来るのは前線で戦っている延珠たちに的を絞らせないように眼を狙って攻撃に邪魔するんだ」

 

「成程、分かりました。ですが、見かけによらずに頭が切れるんですね」

 

「おい!?」

 

 酷い言われように蓮太郎はツッコミを交えて怒鳴る。

 兎にも角にも、蓮太郎と夏世は銃を構え前線で戦っている延珠と将監のサポートを向う。振舞わすスカルグレイモンの腕の攻撃を避けながら戦う前衛二人、だが斬戟も蹴りも効果なく弾かれる。

 

「かっ硬いのだ!?」

 

「斬れねぇ!」

 

 愚痴る2人。弾かれた二人に反撃をしようと腕を振り上げるスカルグレイモン、だがそこに目元に弾丸を打ち込まれて腕攻撃の標準がぶれ、その隙に前衛に戦っている2人は回避を成功させる。

 だが、目元に弾丸を受けたスカルグレイモンに決定的なダメージにはならず、更に暴れさせる結果になってしまった。

 

「クソッ、やっぱしダメージは通っていないか……。ダイナマイトみたいな爆弾があれば良かったが、無いもの強請っても仕方ないか」

 

 愚痴りながら援護射撃を続ける蓮太郎は、自身が予備として持ってきていたマガジンを手に触れ、ある方法を思い浮かべる。成功すればダメージが通る可能性があるが、その逆に失敗すれば攻撃手段を大きく削ぐ事になる。

 考えた末に持ってきたマガジンを手にする。

 

「奴の右股関節に集中攻撃だ! 動きを封じる!」

 

 大声で周囲の者たちに聞えるように叫んだ蓮太郎はマガジンを持ち、スカルグレイモンの右股関節に投付ける。スカルグレイモンも投付けてきたマガジンを叩き落とそうと腕を振るおうとする。だが、それを凄まじい飛び蹴りで妨害する延珠。

 マガジンは目的のスカルグレイモンの右股関節に当たる。その瞬間、蓮太郎はそのマガジンを自身の愛銃であるXD拳銃で打ち抜く。

 打ち抜かれたマガジンは大爆発。スカルグレイモンは予想以上のダメージに雄叫びを上げる。痛みで苦しむスカルグレイモン、その隙を見逃さずに将監が凄まじい速さで一気に近付き手、ダメージを受けているであろう右股関節に大剣に一撃を放つ。

 今まで弾かれていた大剣は少しだけ通る。そして、その大剣に向って延珠の蹴りを叩き込む。まるで釘という大剣に、金槌という蹴りが放たれるが如く。

 効果は絶大で大剣は骨の中央部分まで刺さり、スカルグレイモンも苦痛をもらす。更なるスカルグレイモンの隙に誰かが近付く。夏世だ。

 

「将監さん、延珠さん、離れて!」

 

 その声を聞いた2人は一気にその場を離れると同時、夏世がショットガンをスカルグレイモンの大剣が深く刺さった右股関節に銃口を密着させ、トリガーを引く。

 凄まじい炸裂音と衝撃。ショットガンの銃口は破裂、その衝撃は夏世を遅い吹き飛ばされるが延珠が受止めて大事にはならなかった。

 決定的な大打撃。

 スカルグレイモンは肘を地面に着かせて苦しみながら蓮太郎たちを睨みつける。その瞳には闘争本能を灯らした真紅へと変えていた。両手を地面に付いて、獣のように四つん這いになる。そして、

 

「グオオオオォォォォ!」

 

「ッ!?」

 

 蓮太郎たちも何か嫌な予感が脳裏に走る。だが、その時には既に遅かった。

 スカルグレイモンは蓮太郎たちにロックオン、そして背中に背負っている有機体ミサイルを撃ち放つ。放たれたミサイルは奇声を叫びながら蓮太郎たちに向かって突き進む。

 

「逃げっ!」

 

「蓮たっ!?」

 

「あっ!」

 

「チッ!」

 

 逃げようとする。だが、反応が一歩遅かった。

 そして、スカルグレイモンの有機体ミサイル『グラウンド・ゼロ』は直撃する寸前で大爆発を起こし、爆風を蓮太郎たちを襲った。

 

 

  ◆

 

 

 一方、スカルバルキモンと激戦を繰り広げていたゼツは、既に相手を行動不能に追い込んでいた。翼は片方をへし折られ、前の片足は粉々に砕かれ、腹部の骨も粉砕されて内部の神経データが露出している。

 ゼツは衣服に埃などの汚れがあるも無傷でいた。その背後では繭姿のクリサリモンが、蜘蛛みたいな姿に変化していた。完全体のインフェルモンだ。

 戦いの最中で完全体に進化したインフェルモンは一瞬にしてスカルバルキモンを撃破したのだ。

 

「これで終わりだ。――ハンマースパーク!」

 

 倒れ伏せていたスカルバルキモンの頭部に、ゼツは力一杯にトールハンマーを叩き落す。その一撃でスカルバリキモンは断末魔の雄叫びと共に0と1のデータの粒子となり消滅した。

 撃破を確認したゼツは夏世たちを助けに行こうと反転しようとした時、凄まじい爆風に見舞われた。

 

「これは、グラウンド・ゼロか!」

 

 爆風に吹き飛ばされないようにインフェルモンが風除けになる為にゼツを覆い被さる。そんな何気ないフォローにゼツは内心、嬉しく思いながらインフェルモンの腹部を擦る。爆心地をゼツは睨みながらスマホを取り出す。

 

「備えあれば憂い無しっか。忍ばせて良かった」

 

 スマホには太陽の様な絵が描かれた盾が浮かび上がっていた。

 

 




スカルバリキモン即刻退場です。いやぁゼツくんも強いね(勿論、クリサリモン――途中でインフェルモンに進化してますが――も手伝ってますから余裕です)。
さて、今回は皆さんお気づきかもしれませんがディアボロモンの分裂、してみました。そもそも、これが目当てでディアボロモンですからね(笑)
では皆さん、『クラモン大漁』で連想する答えは?
まっ、答えなんて言わなくても知ってますよね。楽しみに待ってて下さい。

ゼツくん色々と用意周到です。
そもそも、デジモン戦初の夏世たちを何の保険無しで突っ込ませたりしません。突っ込ませるだけの準備をしています。その結果は次回で判ります。って、分かる人は直ぐに分かるか……。

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