ブラック・ブレット 『無』のテイマー現る   作:天狐空幻

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色々と感想ありがとうございます。
さて、ゼツくんと蓮太郎のエンカウントです。これからどうなるか本編をどうぞ。


005

 黒のスーツに身を纏った男性・里見蓮太郎は意味が分からず混乱してた。

 蓮太郎の上司である天童木更の渡された依頼通り、着物を着た小学生ぐらいの男の子を外周区をくまなく探していた時であった。

 ツインテールで見た目が小学生の少女。彼のイニシエーターであり同居人且つ家族である藍原延珠と共に探していると、その延珠が何らかのぶつかり合う金属音を聞き取った。

 

「蓮太郎。何処からか戦う音が聞えるぞ!」

 

「なっ、何処だ延珠!?」

 

「あっちだ!」

 

 "呪われた子供たち"特有の高い身体能力で、普段の人間では聞き取ることの出来ない音を聞き取った延珠は、自身のパートナーであり自称ふぃあんせの蓮太郎に教える。

 そして、延珠の案内のもと金属音のした場所に向かうと依頼書の記載されていた特徴が合致する子供と、別会社の民警らしき2人組みの内、大剣を持った男――プロモーター――が戦っている現場に遭遇した。

 蓮太郎は最初は意味も分からなかったが大声で戦いを停止するように呼びかけた。

 

「なにやってんだあんた等は!?」

 

 蓮太郎の呼び掛けに、戦っていた2人の刃にふら付きが現れる。そして、将監はあからさまに不機嫌な表情を浮べて呼びかけた蓮太郎に怒りの目線を送った。

 その眼差しにたじろぐ蓮太郎ではあったが意思をしっかり持って睨み返した。

 

「あんた、何処の民警かは知らないが今回の依頼内容知ってるか? 捕縛だ。殺す事じゃない」

 

 依頼書に書かれていた内容はあくまでも対象の捕縛である。生死問わずの逮捕ではないのだ。そう、蓮太郎は述べるが将監はそれを鼻で笑った。

 

「そんなの関係ねぇな。俺はこのガキをぶった切る、それだけだ」

 

「なっ!?」

 

 そのあまりにも無茶苦茶な言葉に、蓮太郎は驚きの声を上げる。

 無論、蓮太郎は民警の中には元犯罪歴のある人物が隠れ蓑にして身を置いている事は知っている。だが、ここまであからさまに殺すと公言する存在に驚きを隠せなかった。

 次に、蓮太郎は依頼で記載されていた特徴と合致する子供に目線を向けた。

 

「なぁキミ、頼む。自首してくれないか?」

 

 優しく子供・ゼツに語り掛ける。

 だが、ゼツは顔を横に振って否定した。

 

「何処の何方かは知らないが、その申し出には否定させてもらう。自分は間違ったことはしてないのでね」

 

 これまた蓮太郎は驚く。

 警察官の1人を重症に追い遣ったのに、自身のしたことに誤りは無いと述べたのだ。驚くのも無理ないのかもしれない。

 すると、先程まで黙っていた延珠がゼツに声を掻けた。

 

「お主、名前はなんと言うのだ? 妾は藍原延珠、そして隣にいる蓮太郎は、里見蓮太郎と言うのだ」

 

「えっ延珠!?」

 

 急に名前を教える延珠に驚きながら目線を向ける蓮太郎。

 相手が何者で敵対する存在なのかすら分かっていない状態で、自分たちの情報を公開するなどあってはならない行為だった。それに叱ろうと声を出そうとするが、延珠は真剣な眼差しで見詰返した。

 

「相手が何者であれ、妾たちが敵ではないと心を開いて訴えねば相手には伝わらぬ」

 

「でも……」

 

「ここで意見が食い違い揉めては、本末転倒であろう」

 

 真っ当な正論に蓮太郎はぐうの音も出せないでいた。

 そんな2人のやり取りを見ていたゼツは、すっかり戦う意思が消えて大剣・フラガラッハを地面に突き刺し、相手をしていた将監もまた戦う意欲が失意してしまい大剣を背中に収めていた。

 

「これはご丁寧にどうも。名はゼツ、苗字はないのでゼツと呼んでほしい」

 

「そうかゼツだな。妾は延珠で構わぬ。それで一昨日、警察官一名が重症を負ったそうなのだが、犯人はお主で構わぬか?」

 

 名を聞いた延珠は嬉しそうに笑顔を浮べた後、本題に切り出した。

 ゼツが警察官を重症に追い込んだのか。何故、そのような行為に転じたのか延珠を尋ねた。ゼツは、その質問に丁寧に答えた。

 若者に襲われた"呪われた子供たち"のルリを助け、その場に駆け込んだきた警察官が状況も聞かずにルリに手を出そうとした所を助け、その際に警察官の1人を重症にしたこと、それらを包み隠さず答えた。

 その回答に、一番驚いていたのが"呪われた子供たち"である延珠と夏世だった。どの様な理由であれ"呪われた子供たち"を助ける為に国家機関である警察に楯突いたのだ。それも、見た目は子供たちと変わらない年齢の子供が。

 その事実に驚いているのは呪われた子供たち"の2人だけではない。その2人のプロモーターである男性たちも驚く。

 態々、道具を助ける為にバカなことをすると思う将監。国家機関を敵に回しても子供たちを助けようとするなんて、そう思う蓮太郎。

 

「何故、助けたのですか?」

 

 皆が思う疑問を夏世が代弁して問う。

 警察を敵に回してまで何故助けたのか。そうまでして、助ける意味があったのか。何のメリットがあったのか。夏世は胸奥に募る疑問を、ゼツにぶつけた。

 そして、ゼツは簡潔に答えた。

 

「助けたかった。ただ、それだけだ」

 

「……それだけ、ですか?」

 

「転んだ子に手を差し伸べるのに、理由などないだろ」

 

「…………」

 

 迷い無く、当たり前に答えるゼツに皆は愕然とする。皆が愕然としていると、ゼツは何かに気付いたのか視線を、何も無い廃墟に向けた。

 その動作に皆も一斉にゼツが向けた視線の先を見る。そして、最初に気付いたのは延珠であった。

 

「ッ! 将監さん、ガストレアです!」

 

「それも、かなり大きいぞ蓮太郎!」

 

「どれだけ大きい、延珠!?」

 

「少なくとも5メートル以上の大きさですね」

 

「ハッ! ガキとの決着つかずのストレスを晴らしてやらぁ!」

 

 ゼツは突き刺したフラガラッハと抜いて構え、将監は背負ってた大剣を構える。

 蓮太郎と夏世はホルスターから愛用の銃を準備して、延珠は踵を地面に蹴って身構える。

 皆が皆、其々準備を終えて待ち構える。そして、近付いてくるガストレアが肉眼で捉えられた。

 四足歩行、背中には鋭い棘がびっしりと生え、蛇の様に長い首、ワニの様に長い口、色々な因子が交じり合った、最低でもステージⅢ以上のガストレアが砂煙を上げてゼツたいに目掛けて走っていた。

 その姿に皆が戦慄が走った。これ程までに巨体のガストレアがモノリス内に潜入してくるなど想像もしておらず、更に皆が持っている武器はあくまで護身用としての準備だった為に手持ちの武器は少ない。

 

「何でこんなステージⅢなみのガストレアが潜入してんだよ! 上の連中は気付いてないのかよ!?」

 

「どうするのだ蓮太郎。足止めに向うのは構わぬが、妾ではそれ程時間を稼げぬ!」

 

「クソッ! これだったら本格的に実戦準備してけばよかった!」

 

 蓮太郎は持ってきたカートリッジを数えながら悩む。延珠もまた、これ程までに巨体なガストレアと相手するのは初めてな為に焦っていた。

 勿論、夏世も焦っていた。夏世はゼツたちのデジモンを目撃していた為に多めに銃弾を用意はしているが、相手がガストレアのステージⅢ以上は想定しなかった為に耐え切れるか不安を浮べていた。

 

「ハッ! 鬱憤晴らしで相手してもらうぜッ!」

 

「ッ!? 将監さん、1人で猛進してはダメです!」

 

「道具は黙ってろ! あんな化物なんぞ俺様1人で十分だ!」

 

 夏世の制止を聞きもせずにガストレアに突撃していく将監に、やっぱし脳筋のお供は嫌ですね、そう思うのだった。

 猪突猛進で走り出した将監、その姿に蓮太郎は頭を悩ませた。互いに連携して生き延びて増援を呼ぼうとプランを考えていた蓮太郎であったが、初期で断念する事になった。

 これからどうすれば、そう悩んでいた蓮太郎の傍に夏世が近付いてきた。

 

「少し宜しいですか?」

 

「えっと……」

 

「お主は何者だ?」

 

「まだ、自己紹介を終わらせてませんでしたね。私は千寿夏世、モデル・ドルフィンで先程突撃していった伊熊将監さんのイニシエーターです」

 

「そうか。それで、俺たちに何か用か?」

 

「お力を貸して頂けませんか。アレでも私の相棒ですので……」

 

 小さくお辞儀する夏世、その姿に蓮太郎は頭を掻いて考える。

 どうであれ、ここは戦って生残るのが先決である。その為なら、あの将監に嫌々ながらも手伝うのが鉄則であろう。幸い、白兵戦が2人に支援射撃が2人と丁度均等が取れていた。

 夏世の申し出に許可を出した蓮太郎。それを聞いた夏世は軽くお辞儀をしてゼツに向って近付いた。

 

「……お力、貸してはくれませんか?」

 

「…………」

 

 ゼツは突撃した将監に視線を向けたまま沈黙し続けた。そのゼツにお辞儀をしたまま、じっと返事を返すのを夏世は待った。そして、

 

「良いよ」

 

 夏世の協力の申請にゼツは受け入れ、そして下げていた夏世の頭を撫でた。

 その急な行動に驚きながらも、夏世は嫌がらずにされるがまま受け入れた。その暖かな手に、夏世は今まで感じた事のない安らぎを感じていた。

 撫でていた手を離すと夏世は少しだけ物足りなさそうな表情を浮べた。そして、ゼツは一歩後ろに下がり息を大きく吸って、

 

「ディアボロモン! ミレニアモン!」

 

「ケケケケッ!」

 

「ガアァァァ!」

 

 大声でゼツの相棒である二体のデジモンを呼んだ。

 ゼツの背後の左右から雄叫びに近い声を上げながら二体のデジモンが姿を現した。その急な出現に蓮太郎たちは驚きの声を上げる。だが、夏世は一度だけ見た事があったために驚きは少なかった。

 

「行くよ」

 

「えっと、はい」

 

 差し伸べられたゼツの手に、夏世は戸惑いながらも握った。ゼツに導かれ夏世はディアボロモンの掌に乗る。未だに驚きが抜けないでいた連太郎と延珠、その2人にはミレニアモンが手で握る。そして、その状態のままで突撃しに向った将監を追いかけた。

 

 

  ◆

 

 

「ほぉ、そこに居たか……手始めに挨拶としようか……」

 

 淡く青い水晶が光る。

 水晶にはゼツたちが映し出されており、それを真紅の瞳をした者が眺めていた。その者は手をくいっと動かすと水晶は強く発光、それを見たその者は滑稽に笑う。

 闇に、その者の滑稽な笑い声が充満していくのだった。

 

 

  ◆

 

 

 ゼツと夏世、蓮太郎と延珠、その四名を乗せて低空飛行で先行した将監をデジモンたちは追いかける。

 呆然としていた蓮太郎と延珠は正気に戻り、デジモンたちに付いて問い質した。

 

「この化物何だよ!?」

 

「大きいな蓮太郎!」

 

 その巨体なミレニアモンに延珠は直に驚き、蓮太郎は指差して問う。隣でガミガミ言われるのに少しだけうざく感じたゼツは自身が何者で、このデジモンたちの事も説明した。

 話を聞いた蓮太郎は未だに信じきれない表情でゼツを見詰ており、傍に居た夏世も同じく驚いていた。驚いていなかったのは延珠だけだった。

 そんなこんなで前方で既に戦闘を開始していた将監に追いつき、ゼツは声を上げた。

 

「飛び降りろ!」

 

「何ッ!?」

 

 言葉の意味を理解する前に蓮太郎はミレニアモンの手から離され落ちていく。それに気付いた延珠はミレニアモンの手を踏み台にして蹴り飛び、地面に落下する前に蓮太郎をキャッチした。

 ディアボロモンに乗っていたゼツは、傍にいる夏世を抱き寄せて飛び降りた。急な抱かれて身体を強張らせながら驚きながらも、やっぱし抵抗らしい事もせずにされるがままであった。

 皆が無事に地面に着地し、急いで将監の援護の為に向かった。

 

「将監さん、援護します!」

 

「クソッ! 色々と頭がこんがらかってきた……コレよりステージⅢらしきガストレアを確認、援護射撃に移る。延珠、頼むぞ!」

 

「任せろ蓮太郎!」

 

「ッ! ディアボロモン、ミレニアモン、近付いてくる団体にお出迎えをしろ」

 

 夏世はホルスターからショットガンを取り出し、蓮太郎は愛銃であるXD拳銃の残弾を確認してスライドを引いて弾丸を薬室に込めて構える。

 延珠はガストレアに向って飛び蹴りを放つために高く飛び上がっていた。

 ゼツは視線を別の場所に向け、舌打ちをして二体のデジモンに向わせる様に命じた。ディアボロモンたちは軽く頷くと、ゼツが視線を向いていた場所に飛び立っていった。それを確認したゼツはフラガラッハを取り出し、延珠を追いかける。

 最初に先制攻撃を放ったのは飛び蹴りを放った延珠だ。

 鋭く生えた背中の棘を物ともせずに蹴り飛ばし、続いて将監の大剣がガストレアの長い首を切り裂く。怯んだガストレアにすかさず蓮太郎のバラニウム製の弾丸が放たれ目元を射抜く。そして、夏世は背後に回ってガストレアの後ろにショットガンを放った。

 苦しむガストレア、そこで側面からゼツは眼を閉じて深呼吸をしてフラガラッハを構える。そして、

 

「弐之型『昇竜斬波』!」

 

 闘気が宿ったフラガラッハは淡く輝き、それを確認したゼツは有らん限りの気合と共にフラガラッハを下から上にへと切り上げる。切り上げると同時に見えぬ衝撃破が地面を抉りながらガストレアに向い、その胴体を一刀両断にぶった切った。

 強烈な一撃。ガストレアは断末魔を上げ苦しみ悶える。皆が一瞬、身体を固まらせた。その圧倒的な力に驚き恐怖したからだ。

 だが、ガストレアは絶命していなかった。斬られた前方と後方がそれぞれ別の生物かのように動き出した。

 後方の身体は尻尾部分から牛らしき頭部が生え、その左右の側面から猿らしき腕が生え、切られた部分には魚らしき尾が生えた。

 前方のは足が鳥らしき足に変わり、背中からは棘は抜けてイソギンチャクらしき触手が生えた。

 

「うえっ、キモッ」

 

「うわぁ~……」

 

「気持ち悪いです」

 

「分裂して動いた……アメーバか何かか?」

 

「上等だコラァ!」

 

 醜い醜態を見た皆は其々愚痴ながらも臨戦態勢を解かずに構えると、同時に遠くから大きな爆発音が響き渡った。ゼツ以外の者達が一斉に爆発音を響き渡った場所に視線を向けると、そこには原爆でも落ちたのかと思うほどのキノコ雲が発生していた。

 

「なっ何が?」

 

「何か落ちてきたのか?」

 

 蓮太郎と延珠が不思議がる。そんな中、夏世は自然と視線をゼツに向けていた。

 夏世は気付いていた。ゼツの傍に居たデジモンと呼ばれる化物が何処かに向かって飛んでいった事を……。それが、何なのか理解出来なかったが、何かの目的で向わせたのは薄々分かっていた。だが、結果がこうなるとは想像もしていなかった。

 

「何をしたんですかゼツさん?」

 

「こっちに向かってくるガストレアの群れにディアボロモンたちに迎撃するように命じた」

 

 別の場所にガストレアの群れが向って来ていることに驚く夏世。もし気付いていなければガストレアに囲まれて死んでいたかもしれない。

 そう想像してゾッと背筋を凍らせる夏世に、ゼツは背中を軽く叩いた。叩かれた事に驚きゼツに視線を向ける。

 

「死なせない。だから、確りしろ」

 

「……はい」

 

 優しげな瞳を浮べて述べられた言葉。それに夏世は安心感を覚え、持っていたショットガンに込めていた力を緩める。大丈夫だ、この人が傍に居てくれるなら。

 夏世が安らぎに心を満ちていた時だった。先程戦っていたガストレアに変化が現れた。

 0と1の数字の配列が並べられた緑色の帯がガストレアたちを包んでいく。その現象にゼツは初めて顔色に焦りを浮かび上がらせた。

 

「まさか!?」

 

 ゼツの叫び。それと同時に帯に包まれたガストレアは光の繭に閉じ込められ、次に姿を現したのは別の化物だった。

 巨大な恐竜をそのまま白骨化させた形状、胸元中央には心臓が脈り、顔が付いているミサイル型の肉塊を背中に背負っている。

 四足歩行で牛などの足、バッファローを思わせる顔にサーベルタイガーの鋭い牙が生えており、そして一対の翼、だがその全ては白骨化した姿で隙間から白い何かのラインが輝いていた。

 

「スカルグレイモン、スカルバルキモン」

 

 世界が加速する。




ガストレアの群れが出現、それと同時に何者かがゼツを発見して仕掛けてきました。
最後に出てきたデジモンたちは詳しくは語りませんが知っている人は知っているでしょう。

さて、感想に色々な武器について書いて下さりありがとうございます。これを参考に書いて行きます。

次も楽しみに待ってて下さい。

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