ブラック・ブレット 『無』のテイマー現る   作:天狐空幻

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動き出す世界
004


 廃墟のみが残る場所、外周区にゼツが刀を振っていた。

 その銀の線が空に描かれ、それが更に描かれその姿は演舞をしているかのようだった。刀の訓練をしているゼツ、その姿を少し離れた場所で眺めているルリリア姉妹、それとマリアと呼ばれる少女たち。

 刀による素振りの練習を終えたゼツは刀を鞘に戻して、深い溜息を吐く。それが合図とばかりに見守っていた少女たちは近付いてきてタオルと水が入ったペットボトルを渡してくる。

 

「ありがと」

 

「お疲れ様ですゼツ」

 

 お礼を述べ、流した汗をタオルで拭くゼツ。そんな姿にリアが質問してきた。

 

「何でこんなに訓練してるの? 戦うのってデジモンでしょ?」

 

 それはルリとマリアも疑問に思ってた事であった。

 少女たちは以前、長老である松崎の所で会話の中でデジタルワールドでどのような旅をしていた事を、ゼツは話していた。

 デジモンはまともな戦闘が出来る世代・成熟期になると人間の兵器では歯が立たなくなる事を聞いていた。ならば、ゼツは必然的に見守る事しか出来なくなる。

 それなのにゼツは訓練を休む事無く続けていた。

 

「確かにね。でも、それは人間の兵器だった場合だよ」

 

「人間の兵器だった場合?」

 

「コレで戦う」

 

 取り出したのはカード。それカードにデジモンではなく剣が描かれており、名は『フラガラッハ』と明記されていた。

 

「これって……」

 

「盟友スレイヤードラモンが携えていた剣だ。これなら完全体以上でも、生身の人間でも相手が出来る」

 

「見せて!」

 

「見せてなのですので!」

 

 見たがるリアとマリア。特に嫌がる事も無くゼツは二人にカードを渡す。

 2人はそのカードを眺めながら話に花を咲かしていた。そんな2人を微笑みながら見詰るルリはある事を思い出した。

 

「あのゼツ」

 

「ん?」

 

 先程の微笑みは消え、不安な表情を浮べていた。その不安な顔に何か嫌なことでも、それとも厄介事でもとゼツは思いながらルリの話を聞いた。

 

「最近、この辺りに民警さんがうろついてるんです」

 

「なに……」

 

 ルリの言葉に眉を顰めるゼツ。

 民警とはガストレアなどを相手をする存在だ。そんな存在が何故、この外周区をうろついているのか分からないゼツ。だが、それと同時に嫌な予感もゼツは感じていた。

 少しだけ眼を閉じた後、小声で相棒であるディアボロモンを呼び寄せた。

 

「何があるか調べてくれ」

 

「ケケッ」

 

 姿を現さなかったが不気味な笑い声でディアボロモンは返事を返して、その声は遠ざかっていった。そのやり取りを傍で聞いていたルリは微笑みむ。

 

「ディアボロモン、優秀なんですね」

 

「まっ、アイツがその気になれば世界中の電子情報なんて閲覧できるからな」

 

 核ミサイルだって勝手に撃つことも出来るだろう。っと言葉をゼツは加えた。そんな話をしているとスマホが昼であることを告げるアラームが鳴り、皆で朝食を食べる事になった。

 ゼツはスマホを操り、簡単な料理が少女たちの前に出現させる。

 

「凄く便利なのです」

 

「本当だよね。片手で操作するだけで簡単に料理が出来るんだもん」

 

「でも、これだと料理人は不用になっちゃいますね」

 

「あくまで簡単だからな。本物の料理だと味の差がでるからな」

 

 出された食べ物はサンド。

 ツナマヨやタマゴ、ハムなどが大皿にカラフルに並べられており、コップも用意されて中にはオレンジジュースが注がれていた。

 

「簡単と言ってますけど美味しいですので」

 

「うん。不味いって感じはしないよ」

 

「そうですね。美味しいと思いますよ」

 

「いや、サンドイッチは流石に美味い不味いってないんじゃないか?」

 

 他愛のない話。

 周辺は廃墟ではあるが、その一角だけは華やかに見えた。そんな中、無粋な存在が近付いてきていた。それに一番早く気付いたのはゼツであった。

 

「何か用ですか?」

 

 急な言葉に食事をしていた3人の少女は驚きながら近付いてきていた人物の気配に気付いた。

 口元をフェイススカーフ、背中には黒き刀身の大剣を背負った大男。その隣にはワンピースとスパッツを着た少女。その2人組みにはゼツは見覚え所か覚えていた。それと同時にゼツの袖に入れていたスマホが震え、それを取り出しその画面に浮かび上がった文字列を読む。そして、ゼツは舌打ちした。

 

「成程、あの時の騒動が厄介事を起こしたか」

 

「えっ、それってどう言う意味ですか?」

 

 ゼツは不思議がる少女たちに説明をした。

 以前、ルリを助ける際に警察官を重症に遭わせたことで警察から指名手配を受けたこと、そして民警にも捜索依頼が出たこを。その説明を聞いた最初に怒ったのがリアであった。

 

「何よそれ。お姉ちゃんもゼツも関係ないじゃない!?」

 

「そうなのですので!」

 

「そんな、私のせいで……」

 

 ルリは顔を真青に染めて酷く落ち込んでいた。そんなルリに頭を優しく撫でてゼツは微笑み、自身を攻めているルリに優しく否定した。

 

「いや、ルリは関係ない。それに、騒動を起こさないように配慮すべきだった」

 

「でも」

 

「とにかく、ルリは皆を連れてマンホール内に逃げていて……直ぐに終わらす」

 

 そう述べて立ち上がり、近付いている民警に向く。

 少女たいもゼツに言われた通りに離れて、姉妹が生活しているマンホールに向って走っていった。

 この場にゼツと将監、そのイニシエーターである夏世の3人だけが残った。

 将監は鋭い眼光をゼツに向け、その隣の夏世は複雑そうに見詰ていた。その対極的な視線にゼツは何食わぬ顔で見詰返していた。

 

「おいガキ……」

 

「……何か?」

 

「あの化物出せ。ぶった斬ってやる」

 

 化物、デジモンを出すように要求する将監。そんな言葉に一番反応したのは夏世であった。驚き、そして恐怖に染まった夏世の表情に、ゼツは複雑な気分になっていた。

 どんな理由であれミレニアモンもディアボロモンもゼツにとっては家族的存在である。それを恐怖に染まった表情で見られるのはゼツは不快感を感じながら、半分仕方ないと思ってしまう。

 

「……断る」

 

「何だと」

 

 眼を閉じ、そして将監の申し出を拒否したゼツ。そんなゼツに将監は不機嫌になり、そして瞳の奥に怒気を孕ませだす。

 

「出さねぇとガキ、テメェから殺すぞ?」

 

「将監さん、今回の依頼は殺すのではなく捕まえる任務で」

 

「黙ってろ! 道具が俺様に命令してんじゃね!」

 

「ッ!?」

 

 警告する夏世、それを怒号で閉じさせ将監は睨む。その睨みに夏世は息を飲み黙ってしまった。

 その2人のやり取りを見詰ていたゼツは、瞳を絶対零度の如くに冷えた眼で見ていた。

 ゼツは、その大男である将監に怒りを覚えだしていた。将監の瞳には少女の、夏世を道具の様に見詰ている、その眼がゼツは気に入らないでいた。

 

「…………」

 

 ゼツは思う。

 未だ後ろで待機させているミレニアモンに一言述べれば、あの大男を瞬殺することは容易いであろう。だが、それでは自分自身の腸煮える怒りが収まらないと……。

 故に、ゼツは袖からソマホを取り出しカードを一枚を出して、

 

「フラガラッハ」

 

 唱え、それと同時にカードは輝きゼツの前に一振りの大剣が現れた。

 その急な大剣の出現に民警の2人は眼を丸くして驚く。そんな表情を浮べる二人にゼツは気にもせずに地に刺さった大剣・フラガラッハを抜いて無形の構えをとる。

 

「そんなに戦いたいなら、自分を潰してからにしろ」

 

「ッ! ガキ風情が」

 

 あからさまな挑発に将監は額に青筋が浮かぶ。将監は背負っていた大剣を抜いて地面に叩き付ける。そして、

 

「ぶっ殺してやる!」

 

 最初に動いたのが将監だ。

 その見た目とは反して素早い動きで一気にゼツに近付き、その巨大な剣を片手で軽々しく振り回し一撃を放つ。だが、それをゼツは一歩も動く事無く、大剣の強烈な一撃を受止めた。

 貴金属の甲高い音が周辺に響き渡る。

 表情を変えないゼツ、そんな姿に将監は内心驚きが隠せなかった。

 将監は自身が放った一撃が受止めれる筈がない、そう思っていたからだ。だが、現にゼツは受止められた。だが、そこは別に何も思わない訳ではないにしろ、その強烈な一撃で、体格でも筋力でも劣っている子供が押し切れずに均等するなど、ありえないと将堅は思う。

 その強靭な一撃を後ろに後ずさる事もなく平然とするゼツに将監は怒りを覚えていた。

 今まで睨んだ相手は例外なく怯えて卑屈になる。それでも抵抗的な眼をする者は全て、このバラニウム製の大剣で屈してきた。それで自身が上であると優越感に浸っていた。

 だが、睨みも大剣もどちらにも屈しない存在に今まで築き上げてきたプライドを粉々にされた気分を味わう将監は、依頼など忘れて子供を殺す事に頭を一杯にしていた。

 せめぎ合っていた大剣同士を将監は一度離れて再度、剣を構えて斬りかかる。

 ゼツはまた同じかと思いながらフラガラッハで受止めようろした瞬間、剣を掴んでいなかった片手を拳にして将堅は殴りかかってきた。

 大剣での防御では遅いと感じたゼツは、その顔に目掛けて襲ってくる野球ボール並みの拳を紙一重で避ける。だが、そこから将監の大剣が襲い掛かる。

 避けた事で態勢を崩していたゼツは、剣で受止める事は良しとせず回避に専念した。ゼツの前髪が将堅の大剣が通り過ぎ、斬れた髪が宙に舞う。

 

「フラガラッハ」

 

「ッ!?」

 

 小さな呟き。

 そのゼツの呟きに将監は聞え、言い知れない恐怖を感じて後方に飛ぼうとした。だが、下がろうとした場所には鋭い剣先が丁度、将監の後頭部に現れた。

 

「何ッ!?」

 

「将監さん!」

 

 夏世の悲鳴に近い警告、それと同時に将監は頭を咄嗟に避けた。

 身体を転がすように避けた将監は身を屈めた状態で警戒態勢で大剣を構える。そして、ゼツが持っている大剣を睨むように見詰る。

 ゼツが持っている大剣、それは鞭の様に唸りながら元の大剣に戻った。

 

「良く避けた。感は獣並に鋭いようだ」

 

「何だ、その剣?」

 

「蛇腹剣。見るのは初めてか?」

 

 スレイヤードラモン。

 クロンデジゾイドの鎧鱗(がいりん)で身を包んだ竜人型デジモン。

 竜型デジモンだけが挑戦できる『四大竜の試練』と呼ばれる修行を修了した者だけがたどり着ける姿だといわれている。そのデジモンが携えた蛇腹大剣・フラガラッハ。

 

「また変哲な剣を使ってくるとわな……」

 

「変哲とは酷いな。盟友の剣を……さて、どうする?」

 

 まだやるか。そう、尋ねるような瞳をゼツは浮べる。

 尋ねる瞳に将監は睨む目で続行を意を見せる。唾を吐き、屈めていた身体を起こしだ大剣を再度握り締めて構える。

 

「ガキ、予定変更だ。お前を潰して、その大剣を俺様の物にしてやる」

 

「無茶を仰る。……参る」

 

「来いや!」

 

 互いに踵を蹴り、一気に斬りかかり鍔迫り合う。

 剣同士を互いに滑らすように流し、ゼツが一歩後ろに下がる。それを見た将監は一気に前に出て上段から大剣を振り下ろす。だが、それをゼツは身体を回転させて避け、持っているフラガラッハを鞭のように伸ばす。

 

「壱之型『天竜斬破』」

 

 身体を巻き付くみたいに円を描くフラガラッハの刀身。そして、大剣を将監に脳天目掛けて振り下ろす。

 回転によるエネルギーが刀身に宿り、凄まじい勢いで将監に襲い掛かる。だが、将監は大剣を腹で受止めてそのままの状態で斜めに傾かせ、受け流した。

 

「チッ、鬱陶しい!」

 

「ッ!?」

 

 フラガラッハの一撃を将監は大剣で力尽くで弾き返す。その勢いでゼツは身体はぐら付き、その隙を見た将監はチャンスと分かり身体全身で体当たりをした。

 完全に態勢を崩してしまったゼツ、将監はそのままゼツを押し倒そうと足に力を込める、

 

「参之型『咬竜斬刃』」

 

 刀身を伸ばしたフラガラッハの刃、それが将監の身体を蛇のように絡みつく。その想定外なゼツの攻撃に将監は身を引く事を止めそのまま大剣の剣先を突きつける。

 眉をしかめる。将監が回避や防御ではなく、攻撃に転じてきた事が想定外だったためにゼツは身体を捻る。

 将監の大剣は地面に刺さり、ゼツの業は回避行動をしてしまったため不発になってしまう。ゼツは覆い被さってきていた将監の腹に鋭い蹴りを放ち脱出した。

 互いに間合いを取って身構える。

 

「図体の割には身軽だね」

 

「テメェもガキの癖して良い一撃、放つじゃねぇか」

 

 蹴られた腹を擦りながら不適に笑みを浮べる将監。

 ゼツは倒れてしまい汚れた衣服を払いながら、此方も不適に笑みを浮べている。そんな不適に笑う二人を少しだけ離れた場所で夏世は、殺しあってるのに何故笑っているのか不思議と思いながら呆れた顔で見守っていた。

 すると、此方に近付いてくる人影が見えた。

 

「なにやってんだあんた等は!?」

 

「おぉ、アレが木更が言っていた子供か?」

 

 天童民警会社唯一の社員、里見蓮太郎。そのイニシエーターである藍原延珠だった。




将監が将堅って間違えて一からやり直した。面倒だなぁ~。

さて、今回はデジモンが所持している武器を扱って将監と戦いました。ゼツくん強いよ~。
スレイヤードラモンは自分が好きなデジモンの一体でもあります。カッコイイよね。
ゼツくんが何故スレイヤードラモンを盟友と呼んでいるのかは、別の機会に書かせてもらいます。

戦闘シーンを書くのは少し疲れますね。でも、頑張って書きます。
それと、こんなデジモンの武器もいいかもっと思われたら感想に書いてみて下さい。出せるように頑張ってみます。

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