ブラック・ブレット 『無』のテイマー現る   作:天狐空幻

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 レールガンモジュール。

 そこには蛭子ペア撃退、ゾディアック撃破、この二つの事柄を乗越えた里見ペアが腰を下ろし目蓋を閉じて休んでいた。そんな中、急な大きな地震に襲われて目蓋を空けて周囲を見渡した蓮太郎は、主モニタに映し出されている光景に唖然としてしまう。

 

「何だよ。これ……」

 

 ゼツが空を翔け、ディアボロモンとミレニアモンがデジモンと思わしき化物二体と相手をしている。その戦いは嵐そのもので、何人たりとも近付けさせない暴風の戦争が繰り広げられていた。

 

「おい延珠、起きろ!」

 

「うぅ~蓮太郎……夜這いか?」

 

「違うわ! 寝惚けてないで起きろよ!」

 

 トンでもないことを口走る延珠に怒鳴り気味で起こそうとする蓮太郎。だが、何度も肩を揺さぶっても起きる気配がなく蓮太郎は溜息を吐きながらモニタを再度見てみた。

 刀を持ち空を飛ぶゼツの姿、その表情は今まで見たこともない怒りに満ちた顔であり、その姿はどこか復讐を果たそうとする木更のダブって見えた蓮太郎は、顔を左右に振って先ほの既視感を振り払う。すると、別のウィンドで映し出されている映像に視線を向けて蓮太郎は身体を凍らせた。

 

「そっ……そんな……」

 

 受け入れがたい事実に蓮太郎は後ずさる。

 ウィンドに映し出されているのは先ほど討伐したゾディアックがいた海域、その海が徐々に盛り上がっていき、けたたましい雄叫びが連太郎たちを襲った。

 皮肉にも雄叫びで正気に戻った蓮太郎は急いで木更に連絡をとろうとスマホを操作して電話をかける。電話相手の木更との連絡は直ぐに繋がった。

 

「おい木更さん、大変だ!」

 

『えぇ解ってる。ゼツくんのことね』

 

「違うッ!」

 

『えっ?』

 

 勿論、ゼツの事でも大変なのは蓮太郎も解っている。だが、それ以上に大変な事が起きているのである。それを木更たちは未だに気付いていなかった。

 蓮太郎は大きく深呼吸、そして答えた。

 

「ゾディアックが生きてるッ!」

 

 

  ◆

 

 

『ゾディアックが生きてるッ!』

 

 木更や聖天子、菊之丞に高官たち、皆の背筋を凍らせる台詞に日本国家安全保障会議の空間が静かになる。そして、最初に声を荒げたのは聖天子であった。

 

「ゾディアックの生存を確認して下さい!」

 

「あっはいッ!」

 

 透き通った声が唖然としていたオペレーターたちを正気に戻させ、会議室内は一気に騒がしくなる。オペレーターたちは迎撃に当たっていた艦隊たちに繋いでゾディアックの生死を確認するようにと連絡していく。そして、

 

「ステージⅤゾディアックガストレア・スコーピオン、生存を確認しましたッ!」

 

「凄まじい速さで各箇所を修復しています。このままでは三十分もしない内に完全復活を遂げますッ!」

 

「何故生存しているかは未だに不明です。各艦隊から迎撃要請を待ってますッ!」

 

「直ちに迎撃を、ゾディアックに止めを刺して下さい!」

 

「ハッ! 各艦隊、迎撃を開始して下さいッ! 繰り返す、迎撃開始ッ!」

 

 主モニタにゾディアックガストレアが映し出されている。

 体は最初に比べて半分以上失っているが、傷口から再生していき徐々に元に戻ろうとしているのが目に見えて明らかにわかる。

 ゾディアック周辺の艦隊たちが一斉に持てる火器で攻撃を行うが焼石に水、攻撃を負うそばから再生していき、傷を与える倍以上に再生を行っていた。

 

「駄目ですッ! 止めを刺すどころか再生を遅らせるのが精一杯ですッ!」

 

「ゾディアック尚も再生を、あっ触手鎌が一本完全に再生、艦隊たちに攻撃してきますッ!」

 

「戦力の消耗65%を切りましたッ! このままではッ!」

 

 高官たちはこの世の終わりのような青褪めた表情を浮かべ、聖天子もまた悔しげにゾディアックを映し出されているモニタを睨みつける。

 木更はこの危機的状況をどう打開するか思考を巡らせていた。

 

「艦隊の迎撃では倒せない。ならもう一度レールガンモジュールで……駄目、弾丸が無いじゃない。どうすれば、どうすれば……」

 

 色々な撃破方法を模索するも良い案が浮ばなく苦虫を噛む潰す。すると、会議内に男性の声が響いた。

 

『聞えてるか木更さん!』

 

「里見くん?」

 

 相手は蓮太郎だった。

 大声で荒げる蓮太郎に不思議になりながらも耳を傾けた。

 

『レールガンモジュール、まだ動かす事出来るか!?』

 

「レールガンを? えぇ動くし後一回程度なら打ち出すことは出来るけど。でも、里見くんも知ってると思うけど弾丸は無いのよ?」

 

『いや、一発だけある。それも確実にゾディアックを葬る一発を……』

 

 木更は意味が解らずに困惑の表情を浮かべる。

 まだ弾がある。それもゾディアックを一発で葬る事が出来る弾丸、それは一体何なのか解らず木更は聞き返した。

 

「もしかして足の義肢を使うの?」

 

『いや、それだと俺が移動出来なくなる。使うのはゼツから預かった物だ』

 

「ゼツくんから預かった物?」

 

 何を預かったのか知らない木更は訝しげな顔を浮べ、それでも蓮太郎が一発で葬れると答えたい以上信じるしかない。それに、他の方法など今はないのだから。

 蓮太郎、そしてゼツ、その二人を信じた木更は撃つ許可を出してもらう為に聖天子に振向く

 

「聖天子様、レールガンモジュール再使用の許可を頂けませんでしょうか?」

 

「…………」

 

 聖天子は顎に手を置いて悩む。個人的に許可を出しても構わない。だが、最高責任者として簡単に許可を下ろして良いのか迷っていた。しかし、現段階でソディアックを葬る方法もない以上はそれに賭けるしかなかった。

 

「解りました。レールガンムジュール再使用の許可を申請します」

 

「感謝します聖天子様。聞いたわね里見くん、許可が降りたわ。それで、弾丸は何を使うの?」

 

『……カードだ』

 

 

  ◆

 

 

 レールガン再使用の許可が下りた後、蓮太郎の直ぐに行動に移した。

 眠っている延珠を起こし、自身の愛銃から一発の弾丸ろ取り出した後は解体していく。内部に詰まっていた火薬を捨て、その場所に何重に折り畳めたカードを無理矢理に入れる。それは延珠に任せ、入れ終えた弾丸を元に戻してユニバーサルボルトに投げ入れた。

 

「蓮太郎、コレは飛ぶのか?」

 

「微妙だな。だが、これ以外だと俺の脚だけだからな。仕方ないだろう」

 

「しかし、蓮太郎。何故、このカードを使おうと思ったのだ?」

 

 レールガンモジュール出入口前にて別れたゼツから渡されたカード。

 これが一体何なのかは詳しくはゼツからは聞かされていない蓮太郎。だがその使い方、その破壊力、それらを蓮太郎は理解していた。

 ゾディアックが復活がわかり木更に連絡をしていた時であった。急にカードが淡く発光すると蓮太郎は見たこともない映像が脳内に駆け巡った。

 巨大な竜が空を翔け、顎を大きく開き黒き物質を放つと地上は暗黒空間に包まれ全てを焼き払う。他にも、日本の町並みに三本の角を生やした恐竜が居て、恐竜が竜を襲おうとするがそれを鷲掴みにしてノートパソコンを開けている子供に向けると、恐竜がパソコン内に吸い込まれる。

 他にも色々とあるが、蓮太郎はそのカードの破壊力を映像内ではあるが理解した。そして、その一発は確実に負傷したゾディアックを葬れると……。

 

「大丈夫だ。あのゼツが渡したカードだ。信じるさ」

 

「うむ、ゼツが最後に変なのを渡すとは思えぬしな」

 

「さて、問題なのは。コレだな……」

 

 また、此処からゾディアックを狙撃しなければならない。

 またしても奇跡を二度も起こさなければならない。だが、二度も起こらないのが奇跡なのだ。蓮太郎の額に汗を浮ばせ、傍にいる延珠も不安げな表情を浮ばせる。

 

「当てるぞ」

 

「妾がいる。だから大丈夫だ」

 

「どこから出て来るんだよ、その自信は……」

 

「妾の愛だ!」

 

「そうかよ」

 

 座席に蓮太郎が座ってもう一度、レールガン発射専用のトリガーに手を掛ける。その手の上に延珠の手が優しく包む。

 

「今度こそ……」

 

「確実に……」

 

「「消し飛べェェェエエエェェェーーー!」」

 

 二人の声重なり、もう一度レールガンモジュールは光に包まれた。

 

 

  ◆

 

 

 蓮太郎たちがゾディアックの生存を知る少し前、ゼツの激しい争いを蚊帳の外状態にされてしまった将監たちではあったが此方も色々と厄介事に巻き込まれていた。

 デジモンが地上で戦っている為にその衝撃や流れ弾が周囲に眠っていたガストレアたちを起こしてしまい、一斉に寄り集っていたのだ。

 

「クソッ! そっちは大丈夫か夏世ッ!」

 

「ハイッ! でも、数が多すぎて……」

 

 ステージⅡやⅢは当たり前、Ⅳもゴロゴロと寄り集まっており将監たちを襲うが、それらを懸命に捌いて抵抗していた。だが、物量には勝てずに徐々に後退を余儀なくされる。

 すると、将監たちの前方に誰かが降りてきた。

 

「ゼツさんッ!」

 

「夏世たち伏せてッ!」

 

 急な登場と合図に驚きを隠せない将監たちではあったが、急いで頭を下げて伏せた。それと同時に、鋭い剣戟から黒い稲妻の刃が放たれた。

 

「『天之尾羽張(あめのおはばり)』ッ!」

 

 黒き稲妻が周辺に集まったガストレアを葬っていく。だが、その絶対的な隙を相手タクマは見逃さず襲い掛かる。がら空きの背中に凄まじい速さで突貫しるタクマだが、横から急に何かが襲い掛かる。

 

「チッ!?」

 

「このガキは俺様の獲物だッ!」

 

 将監のアンサラーが蛇の如く襲い掛かるが、それを斬神刀を使って巧みに弾き返して逆に使っている将監に襲いかけるようにする。その鋭い剣先が将監に襲う寸前で銃弾に弾かれて逸れる。

 

「無事ですか?」

 

「あぁ……アイツ、ガキみてェに剣捌きが上手ェな。完全に不意を突いたのに弾いて逆に反撃しやがった」

 

「はい。それに戸惑いがないですね」

 

「気にくわねぇな」

 

 即死狙いの眉間への剣先の返し、その一切の戸惑いのない姿に将監は気に入らなく舌打ちをする。

 睨み付ける視線にタクマは気付き、視線を落とす。

 

「……邪魔しないでよオッサン」

 

「あぁ? 見下してんじゃねェぞ糞ガキがッ!」

 

 黒き翼で浮きながら見下ろすタクマに、額に青筋を浮かべさせながら睨み返す将監は身構えながら相手の隙をうかがう。だが、ただ浮いているだけなのに一寸の隙も見せないタクマにイライラを募らせる。

 

「(あのガキといい、このクソガキといい、どうしてこのガキどもはこれ程に手練なんだよッ!?)」

 

 将監の額に汗を浮ばせていると二人の間にゼツが現れる。

 

「無理しなくてもいい。タクマの相手は俺がする」

 

「ガキィ……」

 

 ゼツとタクマ、二人の視線が衝突させ中間に火花が散らせる。すると、遠くから爆発音らしき轟音が響き渡る。

 

「ッ!?」

 

「……お苦労様、ミレニアモン」

 

 タクマは驚きの視線を向けた。

 そこには各所傷付きながらも闘士の宿った瞳を浮ばせるミレニアモン、その手にはボロボロに破壊されて動く事のなく瞳に光を失ったラストティラノモンの姿があった。

 

「役立たずめ」

 

 倒されたラストティラノモンの姿を見下ろしながら冷たい言葉を呟いたタクマに、ゼツはキッと睨みつけた。例え敵とはいえ懸命に戦ったデジモンに対してあまりにも冷たい言葉にゼツは怒りを覚える。

 

「それが……懸命に戦った相棒に掛ける言葉か?」

 

「別に……アイツは完全体の時に拾ってやって、色々な強化プログラミをインストールさせて無理矢理に究極体に進化させただけのデジモン。まっ途中で理性が飛んだけど究極体に進化させてやっただけありがたいと思ってほしいね」

 

「タクマ、お前」

 

 冷徹非道。デジモンを道具の様に扱い、使えなければ破棄する。その姿にゼツは脳内が沸騰するかの如く怒りに滾っていた。

 タクマは視線だけで殺さんとばかりのゼツを無視して手を掲げる。すると、戦っていたディアボロモンを無視してメギドラモンが一気にタクマに向って近寄ってきた。

 

「ラストティラノモンを拾ってこっちに来い」

 

「ッ! 逃げろミレニアモンッ!」

 

 ゼツの掛け声を聞いたミレニアモンは掴んでいてラストティラノモンを離し、その場を離れた。それと同時にメギドラモンが突貫してラストティラノモンの頭を鷲掴みにしてタクマの所まで引き摺りながら持ってくる。

 その間にミレニアモンとディアボロモンはゼツの背後に待機する。

 

「……お前、何をするきだ?」

 

「んっ。使えないデジモンにはそれ相応の罰を与えないとね」

 

 不適に笑みを浮かべたタクマは何かを取り出した。

 紫色に輝く球体、中にはデジコアらしき小さい球体が浮いておりXの字を描いていた。その球体を倒されたラストティラノモンの頭にタクマは思いっきり押し付けた。

 その瞬間、凄まじい衝撃波がゼツたちを襲った。

 光の柱が天を穿ち、周囲の木々を薙ぎ払い、暴風が周囲の雲を払う。ラストティラノモンからは苦痛の叫びを上げ、瞳には涙を流す。その尋常ではないナニかにゼツは焦りの表情を浮ばせる。

 

「タクマ、一体何をッ!?」

 

死のX-進化(デクスリューション)

 

「ッ!」

 

 タクマが呟いた言葉、それが聞えたゼツは顔を青褪める。

 ラストティラノモンの身体全身に0と1の数字列が並び、それらの数字列の帯がラストティラノモンの身体を拘束して侵食していく。未だにラストティラノモンは苦痛の叫びを上げて身悶えるが、数字列の帯は更に暴れるラストティラノモンの身体を串刺しにしていき、そして帯にて包まれて一個のタマゴになる。

 

「おいィ。一体何が……」

 

「ゼツさん、これは……」

 

 将監たちの問いにゼツは何を答えずタマゴを睨みつけるように視線をくべる。そして、タマゴに皹が入り中から何かが出てくる。

 腕らしき物がが出てきて、次に足が現れ、最後に翼らしき物が現れる。

 その姿を見たゼツは出てくるデジモンを確信して将監たちに視線を向けた。

 

「悪いけど……逃げて」

 

「えっ?」

 

「何を言ってやがる?」

 

 険しい浮かべる中に恐怖らしき物も混じった表情を浮かべるゼツに、流石の将監たちも只事ではないと判断した。あのゼツが恐れる何かとは一体、そう思っているとレールガンモジュールが動いて光の閃光を空を切り裂いた。それと同時に残りのタマゴの殻を砕き、中からデジモンが現れた。

 西洋竜の姿、紫色のボディ、黒の皮ベルトで身体中を包み、真紅に濡れた翼、目部分らしき物はなくギラリと輝かせる牙、その姿を見た将監と夏世は恐怖に駆られ身体中を硬直させる。

 究極体、アンデット型、ウィルス種。デジコアを求め捕食本能の赴くままに残虐に進化したアンデッド。自分が進化し続けるために他者のデジコアを喰らい続ける"電脳核捕食者(デジコアプレデター)"となって彷徨い続けている最悪凶悪デジモン。

 

「デクス……ドルゴラモン」

 

「フフフッ、さぁ最後の戦いだよゼツ。メギドモランX-進化(ゼヴォリューション)

 

 メギドラモンもまた、数字列の帯に包まれていく。

 デジコアの配列がXを象り、そして帯から姿を変えたメギドラモンが姿を現した。

 嘗ては体だった部分は尻尾の先まで溶岩を思わせるものに変化されており、翼膜は炎に変化、荒々しく獣らしい姿に変貌していた。

 

「メギドラモンX抗体」

 

「フフッ、凄いでしょ?」

 

 地面が微かに揺れだした事にゼツは気付き、ゆっくりと地を見詰た。

 デジタルハザードが現実世界にも影響を与えだしている事にゼツは焦りの表情を浮ばせる。相手は究極体の中でも凶悪にして最悪のデジモン、それを二体を連れており並大抵の方法では倒す事は不可能に近く、倒すにしても時間が掛かりすぎる。

 

「筋肉達磨……蓮太郎たちと合流して逃げろ」

 

「逃げろって……」

 

「今、皆を守りながら戦う余裕は俺にはない」

 

 ゼツは震える足を一歩踏み出し、凶悪の二体のデジモンを睨みつける。

 そして、計四体のデジモンが衝突する。

 先ほどの戦いとは逆、ミレニアモン対メギドラモンX、ディアボロモン対デクスドルゴラモンの戦いに展開された。だが、結果としてゼツの二体のデジモンが完全に押されていた。

 四本の腕を使ってメギドラモンXを押し返そうとするミレニアモンだが、力比べでは相手が強くために押し負けて地面に叩き付けられる。

 ディアボロモンも素早い動きでデクスドルゴラモンを撹乱するが、視界ではなく本能に近い感覚でデクスドルゴラモンは相手の動きを捉えディアボロモンを殴りつけ吹き飛ばす。

 

「アハッ、嘗てはデジモンワールド中に名を馳せた『ノーネーム』リーダー・ゼツ。それが今ではボク程度に負けるなんて形無しもいいところだよ」

 

「ッ! ディアボロモン、ミレニアモン、無事か?」

 

 傷付きながらもディアボロモンとミレニアモンは唸りながら返事を返した。闘士を宿した瞳を浮かべながらタクマのデジモンたちを睨みつけている。

 相手を小馬鹿にした態度を見せる相手にゼツは苦虫を噛み潰した表情を浮かべながら、この状況を打開する方法を考えていた。だが、考えて浮かび上がる答えは全てが最悪の結末しか迎えていなかった。

 そして、溜息を吐きながら色々な方法の中から自身とっては最悪の悪手を選んだ。

 

「ディアボロモン、将監たちを連れて蓮太郎と合流の後にモノリス内に避難させろッ!」

 

 その台詞に一番驚いたのはディアボロモンであった。

 変える事のない不変の表情から明らかに戸惑いを浮かべていた。それは、出会ってままならない将監たちにもハッキリと判るほどだった。

 

「行って」

 

「…………」

 

「行けッ!」

 

 雄叫びと同時にディアボロモンは飛び跳ねて将監たちの背後に飛び降りて二人を抱えると、蓮太郎たちが居るであろうレールガンモジュールに向って飛び立っていった。

 飛び立ったディアボロモンには一瞥する事無くゼツは相手を睨みつける。

 

「……どういうつもり?」

 

「ミレニアモン、キツイと思うがデスクドルゴラモンの相手、頼めるか?」

 

「グルルル……」

 

 相手の質問に無視してミレニアモンの頷き返すのを見たゼツは『烏王丸』の剣先をタクマに向ける。

 

「こい。『ノーネーム』元リーダー・ゼツがお相手仕るッ!」

 

「……なっ、なめッ――舐めるなッーーー!」

 

 究極体と相手できる数少ない一体を他の相手の救出に向かわせ、二人だけで相手をしようろするゼツに、タクマは額に青筋を浮かべさせて初めて感情を露に怒り狂う。

 

「もういい、メギドラモンX抗体、殺セ」

 

「ガアアアァァァーーー!」

 

 マグマ滾る翼を全開に広げたメギドラモンは襲い掛かる。

 突っ込んでくるメギドラモンに対してゼツはカードを一枚取り出して発動させる。

 

「メタルガルルモン『コキュートスブレス』ッ!」

 

 片手に構えられたカードからは絶対零度の息吹が放たれ突貫してくるメギドラモンに降注ぐ。

 メギドラモンとコキュートスブレスが衝突する。

 一瞬、メギドラモンが押されるも直ぐに押し返す。そのままブレスを受け続けながらも進み続け、目と鼻の先まで近付いたメギドラモンはその豪腕でブレスを放出しているゼツごと吹き飛ばす。

 大地を抉るが如くの一撃、それを見たゼツは咄嗟に『烏王丸』で防御をする。だが、

 

「がはっ!?」

 

 防御の為に盾にした『烏王丸』は一瞬にして粉々に砕かれ、ゼツの胸元にメギドラモンの甲に生えている刃に切り裂かれる。

 切り裂かれ、豪腕の暴風で吹き飛ばされ木々に叩き付けられる。

 ミレニアモンも助けに向かおうとするが、デスクドルゴラモンに阻まれて迎えないでいた。

 

「人間が究極体……ましてやX形態のデジモンに適う訳ないのに……嘗ての『ノーネーム』のリーダーも形無しだね」

 

 未だに身体全身に痛みが走り身動きが出来ずに横に倒れているゼツを、酷く冷たい視線で見下ろすタクマ。そして、視線を外してメギドラモンに向けた。

 

「もういいや、焼いて」

 

 メギドラモンは顎を開き、一個の火球を生み出した。

 それは塵一つ残さず全てを焼き尽くすことが出来る悪魔の劫火球。並みの究極体では耐え切ることなくデータの粒子と化す一撃、そのようなモノを生身の人間が受ければ結果は自ずと判ってしまう。

 そして、火球はゼツに向けられて放たれた。




さて、ここでゼツ君が蓮太郎に渡したカードの正体ですが、インペリアルドラモンDモードの必殺技・メガデスです。
メガデスの効果は『超質量の暗黒物質を撃ち放ち、すべてを無に帰す』ですので凄まじい威力を誇るでしょう。ですので、ゾディアックなどは一瞬で消し飛びます。

とうとうタクマが本気を出してしまいました。
メギドラモンXとデスクドルゴラモンです。ここで何故、ラストティラノモンがデスクドルゴラモンに進化したかと言うと、進化アイテムで無理矢理進化させたからです。ですが、無理矢理の進化の為にデスクドルゴラモンの実力は十全には発揮されていません。
まぁそれでも強いですけど。

さぁ、とうとうラストバトルに突入です。
ゼツとミレニアモンだけで何処まで戦えるか……次回をお楽しみに!

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